境界線の歩き方[02]サーキットベンディング★ノイズリバイバル/出渕亮一朗

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前回は女の子の遊びのお話だったので、今回は男の子の遊びについて話そうと思う。


2008年5月、八王子にある、ある大学構内で行われた、Make:Tokyo Meeting 03を見にいった。自作電子工作なんかの関連の雑誌、「Make:」を出版するO'Reily(オライリー)Media社主催のイベントである。

体育館や教室には、工学系大学生が中心と見られる出展者達による、技術系、アート系、オタク系の作品や展示物が所狭しと並んでいた。

そんな中で、ある教室ではパフォーマンスやイベントを中心にやっていたのだが、入ってみると、数人の若者が俯き加減で、机の上に広げた何やらぐちゃぐちゃした電子回路をいじくって、ピーガガガみたいなノイズを出していた。あーなんか懐かしい音だな〜と私は思ったのだが(理由は後述)。

そう、The Breadboard Bandというグループのパフォーマンスだったのだ。彼らはブレッドボードにより組みたてた電子回路を直接いじくることにより、インタラクティブにノイズを発生させて「演奏」していたのである。ブレッドボードとは、電子回路の試作をするための簡単に電子パーツを取り付け取り外しできる部品のことだ。

たぶん、彼らはサーキットベンディングにも影響されているのではないか?とわたしは感じた。




サーキットベンディング(circuit bending)とは、既成の電子楽器やコンピューター、あるいは、電子オモチャを改造したり適当にいじくったりして、新たなサウンドやビジュアルを作ろうとする試みのことである。

電気/電子工学の知識があって改造するのではなく、なんかわからないけど適当に電子回路をいじって、面白くなるのを見つけるというニュアンスがある。circuit(回路)をbend(ねじ曲げる)するのである。どんなものかは、最後に紹介するYouTubeムービーで感じてほしい。


サーキットベンディングとはちょっと違うけど、ノイズに関するアートで最近面白いと思ったものに、2009年文化庁メディア芸術祭受賞作品でもある、和田永氏のBraun Tube Jazz Bandがある。

この作品は、記録された音楽信号をブラウン管に表示し、それを撮影することによって、また音に戻すことができるという発見から発想されたという。音の信号を表示した複数のブラウン管を、パフォーマーが直接触れることにより映像をサウンドに戻している。歪んだノイズが非常に高揚感のあるサウンドを作りだしている。


文化庁メディア芸術祭といえば、私的には昨年度の最高に面白いと思ったアートは、USAのパフォーマンスグループ、ArcAttackによるものである。→後付けのYouTube映像参考:彼らが説明する英語をなんとか聞き取ったところ、このような仕組みによるものであるらしい。

テスラコイルという高周波・高電圧発生器により稲妻を発生させる(テスラコイルは先に紹介したMake:イベントでも展示実演されていた)。この時にジーというノイズが出るのだが、これをMIDIギターによってコイルの電圧を制御し、その変化する音で音階を作って音楽を演奏しているのだ。

コイルからの稲妻は、安室奈美恵のPVに出てくるような防御服を着たギタリストやパフォーマーに直接落ちていて、視覚効果もすごい。


初めにノイズの音が懐かしいという話をしたのだが、理由を述べよう。実は私も1980年代の初めから10年ぐらい、自作電子楽器等によるノイズサウンドを研究していたのである。

ちょっと今は聞くのが辛くなっているが、当時なぜああいった音を作ることにのめりこんでいたのか、今から理由を考えてみるとこんな感じだ。

ロックやパンクミュージックを聞く時の、高揚感やトランス感を生み出すのはどんなリズムや音なのか? を究極に突き詰めるとどんなものになるのだろうか。ちょうど、醍醐という伝説の食べ物は、牛乳の旨味を究極に突き詰めたものであるように。

その試みははたして成功していたのかどうか、ちょっと気になる方は紹介するムービーをご覧ください。

ちなみにCATDOGを検索すると、USAで1990年代に始まったらしい、CatDogという体の両端が猫と犬の頭という、変てこなアニメキャラクターが出てきてしまうのだが、私はずっとその以前から使っていました。

このライブで使っているのは、Red Noise Synthesizer(RNS)という自作シンセサイザーだ。原理はFMシンセサイザーなのであるが、たくさんの発信器ユニットを直接ジャンパージャックパッチングで自由につないで、周波数変調サウンドを生み出している。


最後に、今またサーキットベンディングや自作電子工作が盛り上がっているのは素晴らしいことなのだけど、少しアドバイスさせてください。

ひとつめは、サーキットベンディングのサイトやムービーに注意書きがあるように、電子機器をいじくるのは大変危険な行為であるということだ。AC機器は決していじらないようにと彼らは言っているが、電池で動作する機器の改造も実は危険である。電池のプラスマイナスを回路的にでもショートさせると熱を持ち、下手をすると電池が破裂することもあるからだ。

もうひとつは、最近はブレッドボードを使ったアート作品もよく見かけるのだが、ブレッドボードはあくまでも試作実験用のものであるので、完成作品はちゃんと基板に部品を半田付けして制作して欲しいと思う。作品を振り回しても、ちょっと落としたくらいでも壊れない強度と安全性が欲しいからである。

参考:
MAKE: Japan
< http://jp.makezine.com/blog/ >

The Breadboard Band
< http://www.breadboardband.org/ >

What is Circuit Bending?
< >

Braun Tube Jazz Band
< http://plaza.bunka.go.jp/festival/2009/art/001204/ >

ArcAttack's Lightning Proof MIDI Guitar
< >

CATDOG / MISSION Live at Channel 100 TV
< >

【出渕亮一朗】ryoichiro.debuchi(a)gmail.com
コンピューターグラフィックス、インタラクティブアート分野のアーティスト
グラフィックス分野のプログラマー
< http://www.debuchi.com >