ところのほんとのところ[53]新しい表現なのか? こんなものが?/所幸則 Tokoro Yukinori

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,400文字)


最近Twitterから得る情報が異常なほど有益だったりする。有益にするには、自分にとって有益な情報を呟いてくれる人を数10人見つける必要がある。それまで一週間〜一か月かかるかもしれないが、相当良質な情報が集まってくるようになる。

もう新聞がくだらなすぎると言う面もあるんだろうけれど。例えば、大学入試でカンニングしたという記事が新聞の一面を飾る。新しいやり口とはいえ、カンニングである。悪いものを非難するのは当然だと思うが、そこには新聞のネットへの憎悪もあるのではないか? TVゲームが流行った時も、犯罪者がゲーム好きならそれみたことかと叩く。

なんとマスゴミが多いことか。意外と一般の人も、そのことを薄々感じてるのではないか。だからマスコミに優秀な人材が流れなくなっていて、NZの地震で足を切断した少年に「もうスポーツができないですね。どんな気分ですか?」なんてあまりに心ないことを聞くアナウンサーがいる。

昔からあるメディアにだっていいところはあると思ってる。というか、思っていたいが、こういうことを繰り返すようじゃ、みんなに見放される日もそう遠くはないように思う[ところ]がいる。

数日前、Twitterに分割して呟いたことを書いてみよう。タイトルは「新しい表現なのか? こんなものが?」。



「バクマン」という少年ジャンプの漫画で、漫画を判断できる読者50人と共謀して作る漫画の連載という話が出てきて、それに嫌悪感を覚える[ところ]がいた。嫌悪感まで覚えたというのは、漫画のキャラのせいもあると思うから、そこは漫画家がうまいんだろう。

実は[ところ]は学生時代に、10歳も年上の建築家に聞いたNASAの話から、それを写真に取り入れることを考えたことがあった。

それはこういう話だ。科学はいつも、100年に一人の天才が現れることによって劇的な進歩を遂げてきた。だが世界の覇者であるアメリカは、そんなものを待つわけにはいかない。その天才がアメリカの味方から生まれるとは限らない。

だから秀才を100人、200人と数多くを集めることで、限りなく一人の天才に近い能力を持つチームをつくろうとしている。その発想を具現化したものがNASAだという。20歳そこそこの学生である[ところ]はすごく興味を持った。

そこで[ところ]は、数人でアイデアを出しあって写真を撮るチームを作ろうと考え、大学3年の頃に才能がありそうな友人数人と、写真界のNASA構想をぶちあげた。

しかし、結局は一人のアイデアはその人の思い通りに極限まで突き詰めるほうが、こと芸術においては勝るという結論に達した。集団の場合、合議制をとらざるをえないし、正しい意見というのも芸術では判断しづらく、チームを説得するのも時間がかかりすぎるというデメリットが現れてきたからだ。

しかし、その試みは無駄だったとは思わない。みんなで議論をすることで、自分の頭を使い考えをまとめる訓練になったという面もあったからだ。そして、一人で世間に出てからもその経験は役にたっていると思う。

そしてふと今考えてみると、かつてのレンブラントしかり、ガレしかり、工房という考え方があった。ある技術を、極限まで磨き抜いた集団で作品を作るというやり方だ。レンブラントが指示して、弟子たちがレンブラント・ブランドの絵画を完成させていく。

写真と違い、一点物の絵画はファンが沢山いる場合、みんなの手に渡らないからこのやり方が生まれた。もちろん、レンブラントやガレが一人で隅々まで気を配った作品には及ばないとされているが、みんなが持ち寄った新しい手法や極めた技術を選択し、代表者が独裁的に決定していく方法なら、いい作品がたくさん生まれる可能性はあるのかもしれないと[ところ]は思った。

そして今、現代アートの世界ではそういった方法で生み出されている作品がたくさんあるのだ。映画やオペラといった総合芸術にも、それが当てはまるかもしれない。

このテキストは相当の数、リツィートされて広まっていった(ただし今回はデジクリ向けに相当加筆修正しています)。こうやって振り返ってテキストを書いていくのも検証ができていいものだ。誰かが書いて、読んだ人が有益だと考えれば、どんどんリツィートされていくのがこの時代だ。

さて、「バクマン」の話に戻るが、言っていることは基本正しいと思う。作家がギリギリまで自分を追い込んで作品を作るのと、漫画好きな読者が好き勝手言って、それをまとめた作品。それはやはり前者の作品がキチンと個性も出て、優れた作品になるはずである。

しかし、「その読者50人と共謀して作る」という作家の人間性が、あまりにも酷く描かれているのが気になる。漫画なのだから、敵対する者がいる構造は必要だとも思うのだけれど。しかし今、電子書籍、インターネット関連にもっとも不快感を表しているように見える出版社が舞台なだけに、裏に悪意を感じてしまうのが[ところ]の杞憂であってほしい。

少数精鋭のワークショップSTJを主催しています。リアルメンバー7人まで、枠が少ないので詳細は問い合わせてください。地方の人向けにスカイプで指導する、スカイプメンバーという制度もあります。2年やってみて手応えアリです。今年4月1日から老舗ギャラリーバーである西麻布のバーアムリタで、塾生の個展を一か月開催します。問い合わせ先:tokoroyukinori@gmail.com

2011/03/02 18:30
「写真家の異常な愛情」緊急特番「芸術と経済」好評でした。
タイムシフト再生でぜひみてください。興味深い内容だと思います。
< http://com.nicovideo.jp/community/co60744 >

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >