買物王子の家づくり[05]狭くても広い家に住みたい/石原 強

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土地探しの基準が明確になったので、ネットでも複数の不動産情報サイトに登録して土地探しを開始しました。毎日、出勤時のバスの中では、iPhoneアプリで新着情報をチェック。一件でも新しい情報が掲載されると、すぐに確認して、条件に合う物件は、その場で見学の申し込みをします。

そんな風にしていたら、数が少ない近所の物件は、すべて見尽くしてしまいました。不動産屋さんと話をしても「この近所の物件は、イシハラさんの方が詳しい」と言われるほどです。



●9坪の家って何?

土地には詳しくなったけど、肝心なのはその後の家づくりです。どんな家を建てるのか? 家を建てる手順や、気をつけたほうがいいことは? なんて疑問がたくさん沸いてきます。他の人はどうやって家を建てているんだろう? ということで、参考になりそうな住宅関連の本を買って読んでみました。中でも一番印象に残ったのが「9坪ハウス狂想曲」という本。著者は施主の荻原百合さん。

家をもたない賃貸主義を明言していた旦那さんが、急に「家を建てる」と言い出すところから始まる。仕事で企画した展覧会で展示した、家の軸組(柱だけの骨組み)を気に入って、自宅にすることを決意してしまった。その家は、増沢洵さんという建築家が自邸として設計した住宅。戦後の名作建築の一つで「最小限住宅」というもの。1階の面積が正方形で9坪。2階が6坪、合計15坪の小さな家です。

しかし、住んでいるマンションよりも狭い家には、妻である著者は大反対。けれどすったもんだした挙句、その家を増築をせずに住むことを決心するのです。引っ越す時には、収納が限られるから必要最低限のものしか持ち込めない。まるで旅行の準備のよう。持ち込むモノをリストして、ひとつひとつのサイズをはかり、原寸準大の棚まで作ってシミュレーションしたというのだからスゴイ。

15坪とはいえ、廊下が全くなく、スペースを最大限に使っているので、狭い感じがしない。逆に普通の家にはない、吹き抜けと大きな窓がありので、ゆとりある気持ちよさそうな家です。夫婦ともに気に入った理由もわかります。その家に住んだ後の家族の生活の変化や楽しさは、私の求めている家のイメージにぴったりです。

僕もこんな家に住んでみたいと妻に言ったら、私は大丈夫だけど、あなたは無理でしょ。そもそもモノが多すぎる。みんな処分しないと入らないよ。捨てられるの? と一刀両断されました。確かに、妻は片付ける=捨てる。という断捨離な人です。僕は、溜め込むタイプで、確かになかなか捨てられない。

この本を読んで、考え方を変えなければならないと思いました。家族やモノが増えて身体が大きくなるから住み替える。そうではなくて、身体が大きくなりそうになったらダイエットして痩せる。そうすれば、限られた中でも豊かな空間が手に入る。

それは我慢ではなく、都会に住む、住みこなす方法をだと思う。「都心で狭い家よりも、ちょっと離れた余裕のある場所で広い家のほうがいいんじゃない?」という周囲の意見にも迷いはなくなりました。

●こだわりを共有できる新たな出会い

こんな家があると知って、早速ネットで検索します。すると、その名のとおり「9坪ハウス」という名前のサイトがありました。運営は「Boo-Hoo-Woo.com」、デザイン住宅のプロデュースや賃貸を手がけている。デザインの優れたインテリア雑貨を扱うECサイトもある。
< http://www.boo-hoo-woo.com/ >

サイトには土地の情報も掲載されていました。一風変わった物件、都心から近郊の狭小住宅向けの土地ばかりです。だから予算も近い感じがします。早速、「土地を探す」から問い合わせを入れた。すぐに返信があってオフィスで面談をすることになった。

オフィスは東急東横線の代官山です。落ち着いたおしゃれな街。駅から5分くらい歩いた、ちょっと古いマンションの一室です。シンプルですが、名作イスが並ぶ会議室。趣味やこだわりを共有できそうな感じです。好きなデザイナー柳宗理のイスを選んで腰掛けました。

代表のオカザキさん、ミヤケさんの2人から「Boo-Hoo-Woo.com」の紹介を受ける。「9坪ハウス」「東京ハウス」というユニークな名前のプロダクト住宅と、オリジナルの注文住宅を手がけているという。都心の狭小住宅にも実績がある。旗竿状地や、斜線制限の厳しいカド地、変形地など制限ばかりの土地なのに、それを感じさせないデザインの家。狭いのにどの家も個性的で、こんな家に住めたらいいなと感じます。

9坪ハウスが好きという話をしました。ミヤケさんからは、9坪ハウスに住んでいるひとは、モノが少ないシンプルな生活で、みんな家族仲がいい。と言われました。狭いことが、かえって顔が見える家になるということなのかもしれない。壁もほとんどないから、喧嘩していたら居にくいだろうな。でもうちは15坪はちょっと苦しいかもと伝えると、9坪ハウスのシンプルなテイストを残しながらデザインすることも可能ということです。

土地の依頼をするために出かけたのに、楽しく趣味の話をしてきたような感じ。帰りに9坪ハウスのきれいなカタログ本もいただいた。これまでもハウスメーカーや工務店の人と話をしたけど、家のディテールとか仕上げとかデザインとかそういう話はできなかった。カタログから選べます、というだけ。ここならいい家づくりができそうです。

●住んでみたい家。だったけど......

後日、「Boo-Hoo-Woo.com」のお2人に案内をしてもらい、候補の土地をいくつか見て回った。その中で、条件にハマったのは西新宿5丁目の物件。手前に1区画、画奥に旗竿状の2区画の合計3区画。手前がお勧めでした。14坪と狭小だけど、両脇が奥の家の入り口になっているため、東西は空いている3方角地のような珍しい土地。

実は以前に、別の不動産屋さんの紹介で、この土地は見たことがあった。その時は古屋があって、なんとなく狭苦しい感じがしていた。今は更地になっているのでイメージが変わった。価格も下がったみたいです。以前にOZONEで作成した資料でも、必要面積をギリギリで満たしています。

前面道路は狭いから車はキツイが南向き。望みの京王線ではないけど、大江戸線の西新宿5丁目駅からすぐ近く。小学校も変わらず、すぐ近所に長男カケルの仲良しの保育園友達もいる。狭いだけに金額もこなれている。なんとも一長一短で決めかねる。

チラシにある参考プランは、無理やり駐車場をつけたような家。これではイメージがわかないというと、プランを入れてみては? という回答。それなりに良いのかもしれない。そこで、一度「Boo-Hoo-Woo.com」ならではのプランを作成してもらうことにした。

2週間ほど待ってプレゼンを受けました。図面ではわかりにくいからと模型まで準備してくれた。積み木を2つ重ねたような、横から見ると凸の字をした家。家のデザインがかわいい。張り出した部分が広いテラスになっています。東西に空きスペースがあることを活かして、風通しが良さそうです。一目みて気に入った。住んでみたい! 思える家でした。

延床面積は20坪で、敷地に対してはちょっと余裕があります。もう少し床面積を広くとった、間取りのバリエーションも作成していただきました。オカザキさんからは、テラスで大きくスペースをとるのはダメと言われるかと思った、ということ。とんでもない、これが一番気に入った。

家に帰って、プランを妻に見せます。すると開口一番、こんなに広いテラスいらないんじゃない? いやこれがいいじゃない、個性があって、と切り返すと、でも収納ないでしょ。うちはあなたと子供のモノがいっぱいなんだから、デザインが良いのは認めるけど、目一杯床面積とらないと住めないよ。ごもっともです。子供のスペースに、6畳ひと間で息子2人はちょっと苦しい感じがする。

土地の条件から、テラスをなくしたとしても床面積は22坪がギリギリ。さらにプランでは収納はほとんどないから、今ある荷物の量を考えても収納スペースや家具を確保する必要があります。そうなると、今のマンションと比較してそれほど大きく変わらないのではないか? それじゃあ新しく建てる意味がない。9坪ハウスの葛藤もこんな感じだったのだろう。

立地、家、予算それぞれの、良いと思っている点、逆にイマイチと思っている点をリストして、点数づけをして自己分析してみた。結果はプラスマイナス0でした。さんざん迷ったが、この物件は見送ることにしました。条件は満たしているが、あんまりに余裕がなさ過ぎるという結論。

では、あとどのくらい必要なのか? もうひとつ6畳がとれる3坪。最低でも合計25坪が必要だと思う。あまりに狭い土地は難しいという教訓から、計算上は15坪以上が条件ですが、可能なら18坪〜20坪程度が希望となりました。

そうなると、やはり新宿区、渋谷区はキビしそう。初台、幡ヶ谷の次の駅、笹塚駅の周囲、杉並区、中野区ならなんとか希望の物件がありそうだ。また振り出しに戻ってしまったけど、徐々に条件が絞られて、イメージも固まってきたことは確かです。

【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp

明日は長男の保育園の卒園式、4月からは小学校です。仕事も3月の年度末で一区切り、4月からは異動やら新しいプロジェクト立ち上げで、この時期は毎年ばたばたして慌ただしい。でも新しいつながりができるのは悪くない。
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