気になるデザイン[58]紙、インキの現状は?/津田淳子

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震災から一か月が経ちましたが、未だ余震も多く、被災地のみなさんの心身の疲労は如何ばかりかと存じます。一日も早い復興をお祈り申し上げます。

昨今、出版関係の人や印刷・紙関係の仕事をしている人と会ったとき、かなりの高確率で出るのか、「紙はある?」「インキはある?」という話です。

コート紙や新聞用紙などをたくさんつくっていた、日本製紙の石巻工場やその他の工場、また三菱製紙の工場などが、今回の震災で被災し、操業停止になっていたり、つくって在庫していた紙が地震で崩れて使えなくなったり津波でダメになったり。また紙はあっても、震災直後の燃料不足や混乱で物流がうまくいかなかったりと、さまざまな要因で紙不足になっているので、お互いの状況を聞いているという感じでしょうか。



実際、私も4月新刊(3月中旬に印刷)を二冊担当していましたが、二冊とも本文用紙は銘柄変更となりました。一冊は「b7トラネクスト」という本文用紙で、もう一冊は「b7ナチュラル」という本文用紙だったのですが、偶然にもどちらも被災した日本製紙石巻工場品。b7ナチュラルは日本製紙グループの日本大昭和板紙がつくる「コスモエアライト」に、b7トラネクストは「ユーライト」というコート紙に代替となりました。

こういう状況下にありながらも、似た風合いの紙、ほぼ同じ束になる紙の在庫を見つけてくれた印刷会社には感謝です。

関係者と話をしていると、さまざまな情報や噂の域を出ない話を耳にします。少し前々では、全貌が掴めない感じもあって、twitterなんかを見ていても、部分的な情報からより大きな不安を感じている人が多いように思ったので、私が細々書いている「デザインのひきだし制作日記」に、その時点でわかる範囲の情報をまとめました。その頃からまた状況も変わってきているので、近々またまとめ直そうと思っていますが、それを差し引いてご覧いただける方は、こちらをご参照ください。
< http://dhikidashi.exblog.jp/ >

このブログを書いたときから復旧が進んだ大きな話としては、日本製紙岩沼工場(宮城県岩沼市)の一台の新聞用紙をつくるマシンが操業開始したことでしょうか。4月10日に試運転を開始し、翌11日から連続運転が再開されたそう。いやぁ、よかった。

・日本製紙の発表(PDF)
< http://www.np-g.com/contents/200124298.pdf >

私の感触としては、紙以上にみなさん心配しているなぁと思うのが印刷インキ。インキの一部の原料について、日本でつくっている会社が一か所しかなく、そこが被災したため、その原料の在庫がつきるとインキがつくれない、という話です。噂レベルでは、海外からその原料を調達するとか、いろいろ耳にしていましたが、昨日のニュースで、印刷インキ工連が代替原料入手による新インキ設計と海外調達準備へ入っているという報がありました。
< http://www.pjl.co.jp/news/group/2011/04/2128.html >

みなさん、必死にがんばってくれてるんだろうなと、こうしたニュースを目にする度に、刷る価値のある本をつくらねばと、私も気合いを入れ直している毎日です。

地震から一か月。最初の一週間ほどは落ち着いて本屋さんに行く、という感じにならなかったのですが、その後はできるだけ日常生活を粛々と送ろうと、書店通いも再開。そうした中で気になる装丁の本も相変わらず買っています。今日はその本のことを書こうかとも思ったのですが、そちらはまた日をあらためて(めちゃくちゃ溜まっているので、長文になりそう!)。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp
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