ところのほんとのところ[56]なにかきっかけが欲しい/所幸則 Tokoro Yukinori

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渋谷ハチ公広場内・青ガエル(旧東急電車の車両)での作品展示は今までの展示とは違い、アートに特に興味のない人の目にも触れると、どういう反応があるのか? そういうことにも興味があり決断しました。展示内容と、反応の件は前回のこの連載で書いています。

この展示はもともとは、建築家の西森陸雄くんの仲間たちが主催するフォロというクローズドなサロンに、ゲストで呼ばれ対談したのがきっかけで、そこから西森陸雄>東急建設>渋谷まちづくりの会の会長>渋谷区の青少年課と話がつながっていって、渋谷のこれ以上ない真ん中である渋谷ハチ公広場で展示してほしいと[ところ]は頼まれました。

ただ、直前の3月11日に東日本では大震災があり、東京では写真展に限らずさまざまなイベントが中止になっていったことに加え、[ところ]自身もあまりの悲惨な報道の毎日に心がおかしくなりかけて、どうすればいいのか分らなくなっていた、というのが本当のところでした。

相変わらず報道は国により規制されているし、被曝の問題も何が事実なのかさっぱりわからない。いまだに不安だらけではありますが、今回の展示はギャラリーでの個展とは違った層の人にも見てもらえてよかったと思います。



西日本の人には実感がつかめないとは思いますが、日本では今までとは比べものにならない大変な事態が起こっているということを認識して、ぜひ各々の出来る範囲で支援してください。お願いします。[ところ]も東日本大震災チャリティプリントをやっていますので、よろしくお願いします。本物のオリジナルプリントを見るいい機会でもあります。
< http://www.tokoroyukinori.com/information/charity/ >

さて、最近街を撮ること、自分の作品を撮ることに、いろいろ考えこむことがある[ところ]です。大震災による津波で、いくつもの村や町が目の前で消えていった映像を見たからということも関係していると思いますが、なぜか花を撮りたくなってきました。

これは多分に今の状況の中で自分に起こった心理的変化で、一過性のものかもしれないので、ちょっと戸惑っています。今まで、[ところ]は花を作品のモチーフに選んだことがないのです。花は美しく儚く脆く、香りも好きですが、実物を超えた花の写真をいまだ見たことがなく、禁断の被写体とすら思えるのです。

この葛藤はいつまで続くのか、まだわかりません。そして、街を出歩くことも今は積極的にはなれないのです。歩いてみればそれなりに5月の風は気持よく感じられるのですが、眼に見えない恐怖にまだ心が囚われているような気もします。体が蝕まれいく環境にあっても、匂いも痛みもないから気づかずに、数年、数十年後になって体がおかしくなったとしても、因果関係はわからない。しかし、渋谷を[ところ]のように撮り続けてる人は他にいない。撮り続ける義務があるようにも感じる[ところ]も存在します。

最近、「ニコ生」で色々な人と対談しています。その中には押井守監督のように、何事にもへっちゃらな感じで強い人もいるし、アイデアの編集長のように、グラフィックデザイナーの歴史を残し続けるために一心不乱に頑張っている人もいるし、東京フォトの実行委員のように、写真をもっとアートとして根付かせるために尽力している人もいます。

[ところ]はといえば、まだ完全にはショックから立ち直れないでいます。先週の日曜日に出演した、アートプロジェクトを立ち上げた深瀬さんに、日本の市場だけでは芸術家は成り立たないと言われても、様々な事態から今身動きが取れなくなっています。「写真家所幸則」はこれからどうしていけばいいんだろうとずいぶん悩んでいます。

なにかきっかけが欲しい。正直、しばらくどこかの大学の講師とか、専門学校の講師をしながら、これからのことを生徒たちと論議しながら一緒に考えてみたいと思うようになりました。

現在、回りの要望もあって私塾「所塾」を始めています。スカイプとfacebookを使っての指導など面白い試みもやっています。リアル塾生の中には、もう2年も[ところ]にくっついてくる熱心な者もいます。ただの素人から審査の厳しいギャラリーで展示できるまで、2年でたどり着いた者もいます。なにかこう、彼らに話すこと、注意することで、自分も再確認ができて、有意義な経験をしているという実感もあります。

「所塾」は私塾なので何10人も受け入れるのは難しいのですが、リアルメンバーはあと3人まで、スカイプメンバーはあと5人まではOKです。目標は高く、世界に通じる写真家と呼ばれるようになることを掲げています。詳しくは塾生がつくったこちらをごらんください。
< http://ichikojin.sakura.ne.jp/tokorojyuku/ >

次回の「ニコ生」は押井守監督を連れてきてくれたVFXスーパーバイザーの佐藤敦紀さんと、押井監督の話のその後と、[所塾」の塾生の写真に対する考え方などの話をするつもりです。よかったら見てください。5月29日19時30分から2時間SPの予定です。
< http://com.nicovideo.jp/community/co60744 >

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >