買物王子の家づくり[8]住みたい家のイメージのすれ違い/石原 強

投稿:  著者:  読了時間:9分(本文:約4,400文字)


ついに建築家も決まったので、いよいよ本格的に、家づくりの打ち合わせがスタートしました。今あるプランは白地図のようなもの。ここにどんな色づけをしていけば、居心地のよい家になるのだろうか。まずは、自分の中でも漠然としている家のイメージをできるだけ具体的にして固めていく作業です。

●とにかく気に入った家を集める

まずは、自分のイメージにあう家の写真を集めて欲しい。例えば本屋や雑誌でピンときた写真に付箋をしてもらって、どこに惹かれたのか教えて欲しい。とオカザキさんからアドバイスをもらいました。さっそく、収集した本を見ながら、好きな家やインテリアを見つけて、妻と一緒にお互いに付箋を貼ってチェックしていきました。

「マーガレットハウエルの家」 < http://www.amazon.co.jp/dp/4087804445/ >好きなファッションデザイナーが自身のライフスタイルを語っている本。冒頭に紹介されている郊外のセカンドハウスは、こんな家に住みたいという当初からの目標です。手がけるファッションデザインにもつながるシンプルで機能的な家。外観で目立つのは一階の大きな窓。中は書斎で、庭が見渡せる。部屋と庭が空間としてつながって見える。コンパクトな家だけど内側からは広々とした印象です。贅沢な空間って実はこういうことなのかな。

部屋のインテリアでは、さりげなく置かれているイスがいい。記事の中で特にお気に入りとして紹介されていた、イギリスのアーコール社のイスです。この本に触発されて、うちのダイニング用にも同じイスとテーブルを揃えてしまったほどです。新居のダイニングにも持ち込む予定なので、このイスが似合うのは絶対条件です。

CasaBRUTUS特別編集「21世紀・日本の名作住宅」というムック本。
< http://www.amazon.co.jp/dp/4838785925/ >
オリジナリティ溢れる建築家の住宅が並びます。とんでもない変形地に大胆なプラン。見たこともないような不思議な形の家。一見奇抜なデザインも、記事を読むとそれぞれに意味がある。建築家と施主が、お互いのこだわりをどう形にしたのかわかって興味深い。



妻は、どうやら細長い家ばかり探しているようです。間口が狭い家、細長い形の家を見つけると「うちと比べると、こっちのほうが狭いかな?」と聞いてくる。インテリアの参考にするのだから、別に細長い家を選ばなくてもいいんだよ。そしたら次は「こんな階段いいね」と家の外側に階段がある家に惹かれている。確かに二階の玄関にあがる階段は、気に入っているポイントだけど、今はエクステリアよりインテリアの話をしようよ。

本を見せて、どの家に住みたい? と長男カケルにも聞いてみました。すると、これ! と高台に建つ家の写真を指差した。なかなかセンスいいなと思ったら、見ていたのは写真の下のほうに写っている線路でした。「電車が見えるお家がいい」なるほど、それは無理な相談だ。

あんまり変わった家ばかりでは参考にならない。扶桑社の雑誌「住まいの設計」の別冊「MY HOME100選」を手に取った。
< http://www.amazon.co.jp/dp/4594606865/ >
建築家と建てた家がカタログのように紹介されています。写真が大きくて枚数も多い。リビングキッチン、水回り、造作家具など、一つの家に対して、いろんな角度から紹介しています。家のスペックも、土地の建坪率、工法、外装、内装の仕上げ、それに工事費の総額、坪単価と細かい。

妻が気に入って付箋をつけたページを見ると、センスのいいキッチンでした。清潔なステンレス天板に、厨房のように鍋やフライパン、調理器具がぶら下がっている機能的なスタイル。棚板だけのシンプルな食器棚に、かわいい食器が上手にディスプレイされています。片付けが苦手で、今のキッチンもあんまり片付いていないけど、こんなにオープンにして大丈夫だろうかと、心配だ。

「こんな風に『木』が見える家は落ち着かないんだよね」、庭のことかと思ったら内装のことらしい。木造の柱や梁がむき出しで、壁も板張りの部屋の写真をみせられた。しかし、三階建ての準防火地域の建物は、柱や梁は石膏ボードなどを張って防火仕様にしなければならない。だから、どんなに頑張ってもそんな家は作れない。安心して欲しい。

本や雑誌を夫婦で見ながら、いろいろすれ違ったり、意外な好みにびっくりしたり。騒がしい二人の息子を寝かしつけた後、これから住みたい家のことをあれこれ話しているのは、とても有意義な時間でした。

●こだわりのお家を見学

写真だけでは、実際の大きさとか空間のイメージがつかめない。無垢フローリングとか、佐官仕上げの壁とか、費用にもかかわる仕上げの違いも共有しておきたい。これは実際に家を見なければわからない。両方の実家も一軒家だけどハウスメーカーで建てた家なので、外観も内装も当てはまりそうにない。

Boo-Hoo-Woo.comがデザインした家を見学する機会がありました。品川区IS邸< http://www.boo-hoo-woo.com/housing/collabohouse/is_house/index.html >のオープンハウスです。最寄りは東急目黒線の洗足駅、徒歩10分ほど。コンパクトでシンプルな二階建ての家。2LDK+ロフトで、延べ床面積は22坪だから、ロフトを加えるとこれから建てようとしている家とボリュームはかわらない。リビングには吹き抜けもあって参考になりそうです。

路地の一番奥の家なので、家の正面から南に向かって道路がのびている。この敷地の特長を活かして、二階のリビングの南側には大きな窓をとっています。オカザキさん曰く、窓を下に大きくとることは重心を下に持ってくることで、空間の広がりを感じるように意図しているそうです。窓の開け方には特に気を使っていて、光を入れる高い位置の窓。隣家の緑を借景に使うために細長い窓にしたりと、住宅密集地にも関わらず、開かれた印象のある空間でした。

家全体はシンプルながらディテールにこだわりがあります。施主はアンティーク家具を収集しているとのこと。それにあわせて家中の扉もすべてアンティークです。デザインもすべて違う。玄関をあけると個性を持った5枚の扉が迎えてくれるのは楽しい演出。玄関脇の収納に、寝室、トイレ、バスルーム、子供部屋。階段を上がると二階はLDKです。

家の雰囲気にマッチしたキッチンはタイル張りの凝った造作です。「ホーローのシンクに水栓がドイツのグローエ社製なのもこだわりなんです」とミヤケさんが説明してくれました。二階のキッチンの後ろにはパントリー(食品庫)を備えている。ここの入り口の扉が特にいい。と妻が羨ましそうに見ています。

壁の佐官仕上げは、まるで外壁のように荒っぽい。これもアンティークの風合いに合わせるためにわざとやっているのだという。一階の寝室や子供部屋はクロスにしてコストもおさえています。さらに床のパイン材のフローリングは、施主が自らオイルを塗って仕上げたのだそうです。ぜひ家具が入った状態で完成された空間も見てみたい。自分の好きなテイストで細部までこだわる姿勢は参考になりました。

カケルは、家の中を探検。と言って、扉を開け閉め、階段を階段を昇ったり降りたり、ちょこまかしています。リビングの吹き抜けにはロフトに上がる階段がついています。手すりがないので恐る恐る登っていきました。降りてこないと思ったら、ロフトが大のお気に入りのようです。

ちょうどいいタイミングで見学にきた、フルヤさんに出会って印象を話しました。自分の目指す方向性はちょっと違うけど、こだわりをどう家づくりに反映させるかという点では参考になることが多かった。平面図を見ながら部屋を巡ると、手触りや空間の大きさを実感できます。家づくりを平面ではなく立体的に考えるきっかけになりました。

●設計契約日は大揺れ

3月11日は、フルヤさんとの設計契約に指定された日でした。午前中はカケルの保育園の卒園式だったので休暇をとっていました。式が終わって、お昼は保育園のお友達と一緒に食べたいと言って、そのお友達の自宅にいきました。お昼を皆で食べて、遊んでいました。

設計契約はBoo-Hoo-Woo.comのオフィスで、約束の時間は16時でした。そろそろおいとましようかと思っていたところに地震が来た。大きな地震だと思ったけれど、大きな被害もないだろう。鉄道もそのうち復帰するだろうと楽観的に考えていました。タクシーで設計契約に向かった。契約書の取り交わしと軽い打ち合わせで1時間くらいで終了。しかし、徒歩で1時間以上かけて帰ることになってしまいました。

妻とカケルワタルは一歩先に家に帰りました。玄関のドアを開けたら、一面にモノが散乱していて、足の踏み場もない状態。玄関からは一歩も中に入れなかったといいます。一体どこから手をつければいいのかしら? と途方に暮れたようです。

食器棚から皿が飛び出す、冷蔵庫が動く、冷蔵庫の上にあった電子レンジは落下。食器も固い扉や引き戸は、かなり繊細なワイングラスなどが、並んでいたけど無事だった。開きやすい観音開きの食器棚は、かなりダメージが大きかった。大事な食器ほど割れやすい。気に入っているものほど手前にあって飛び出てる。玄関につながる廊下とキッチンは最低限片付けたようです。

僕が自宅に帰った時は、子供部屋の棚が倒れて中身が飛び出したり、寝室の本棚は本が飛び出している状態。大きな損害はなかったのだけど、そのままでは寝られません。元に戻すまで、夜中までかかってしまいました。普段子供のいる部屋で家具が倒れたのだから、もし家にいたら息子二人は怪我をしていたかもしれない。やはりきちんと対策しておくべきだったと反省するものの、後の祭りです。

「マンションってこういう時に怖いね」と妻が言う。家というのは、まず家族が安心して暮らせる空間でなくてはならない。構造は目に見えないから大事だし、安全が確保できる家づくりをしようと心に誓いました。

震災の影響で、資材の調達が困難になってスケジュールが遅れたり、建築資材の価格も上がっているという。予算はこれ以上増やすことができないから、一抹の不安を覚えます。しかし、ここで止めるわけにもいかないので、できるだけのことをしようと決心しました。

【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp
昨日、息子の運動会があった。1学年1クラスで少人数の小学校。
競技は男女混合、今の騎馬戦は一対一で帽子を取り合うんだと知って驚き。
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