ところのほんとのところ[58]写真とは、芸術とは、表現とは?/所幸則 Tokoro Yukinori

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なにゆえ人は、過去の写真家の言葉に縛られるのだろうと、[ところ]は悩む。フォトグラフというもの自体が、科学技術の進歩や、人間がどう使うのかによって大きく変化する表現形態なのだ。かつてはきちんと人と判別できるように撮るには、被写体は数時間じっと停止していなければならない時代もあり、中判カメラや35mmのカメラが生まれる以前は、ピントや露出を素早くあわせて素晴らしいスナップを撮るのは非常に困難な時代もあった。

そのころ、こういう言葉を放った人もいた。例えば、ロバート・キャパ。「写真を芸術であるという人はアマチュアである。偉大な人はそれを専門の職業だと答える。」かの時代にこの言葉を使った彼は、死を恐れず戦場で写真を撮り散っていった。説得力のある言葉だと思う。だが、それはあくまでその時代を考え合わせて読むから説得力があるのである。

例えば絵画もそうだ。その昔、絵や彫刻はうまい人が少なかった。絵だけ描いていられる人間自体がほとんど存在しなかったから。上手いだけでも天才と言われたりもした。もちろん歴史に耐え、現代においても素晴らしいとされる美術作品は、上手いだけで残ってこれたわけではない。

だが、現代においてはうまい人は毎年何万人、何十万人と輩出される。これも時代の変化により、美術においての評価の方向性が変わっていった理由でもある。美術の世界のこの話をちゃんと書くと、それこそ一冊の本ができてしまうので、このあたりでやめておくが。



写真の話に戻そう。現代において、写真の専門的な技術は、カメラ本体の機能やアプリケーションソフトに置き換わっているという事実を認めなければいけない。今はだれでも、素早くピントが合って露出もバッチリな写真が撮れるのである。もちろん、フレーミングやシャッターをいつ押すか、何を撮るのかは撮影者が決めるのだけれども。

そして、こういう言葉を持ち出す人もいる。「写真はすべてドキュメント、手法はおまけ」。どういう文脈のなかで使われたのかは知らない。しかし、こういう言葉と「写真を芸術であるという人はアマチュアである。偉大な人はそれを専門の職業だと答える」を組み合わせることに意味はない。

この二つの言葉を組み合わせる人の意図は、だいたいにおいてこうだ。写真はすべてドキュメントであるから、ドキュメント写真家であるロバート・キャパのいう写真を、芸術であるという人はアマチュアである。ゆえに、写真はすべて芸術ではない、偉大な人はそれを専門の職業だと答える、ということだろう。

要するに、写真において芸術は存在しない、ということを言いたいわけだ。すべての人ではないけれども、こういうロジックを使いたがる人は、自分の表現が見つけられなく焦っている人が多いように感じる。

良く考えてみて欲しい。写真機で撮ったものだけがフォトグラフではないけれども、仮に写真機で撮ったものと限定したとしても、存在する物を撮ることしかできないという意味で言えば、写真はすべてドキュメントである。ただし、広義な意味で、である。いわゆる、ドキュメンタリー写真と言われるものは狭義の意味である。

ドキュメントといういう言葉を広義で使えば、もはや絵画も頭に浮かんだ物を定着させたドキュメントといえる。小説も、ファンタジー、アニメーションもそう言えなくはないではないか。

日本人だけが過去の人の言葉に縛られるのだろうか? 世界の人もこうなのだろうか? [ところ]はちょっと考えてみたい。昔の偉人の言葉が格言として使われるのは世界共通だろう。あれは様々な状況で使える汎用性の高い言葉だからだと思う。だが、有名な君主論を書いたニッコロ・マキャヴェッリはこう言った。

何故人々は、過去の偉大な人々の経験を学ぼうとしないのか? 何故くり返し同じような失敗を繰り返すのだろうか、と。

結局、人間はどこまでも自分の都合のいいようにしか、過去の経験や言葉を解釈しないものなのかもしれない。[ところ]も含めて。

写真は[ところ]の作品世界を広げてくれた。近々、このことについてブログで発表しようとおもっている。

[ところ]は個人的に、写真によるアートを探求したい人の応援を所塾でやっている。働きながら写真を学ぶ人でも、お互い時間を調整してできるので、好評を得ている方法でもある。
< http://ichikojin.sakura.ne.jp/tokorojyuku/ >

今後、東京にいるからとか、地方にいるからとかいうハンデはどんどんなくなっていくのではないだろうか。そして、3.11被災地の人達の中で写真を志す人が出て来るような状況になったときにも、役立てるのではないかと思っている。

3.11はまだ終わっていません。
これから救済も支援も始まるといってもいいのです。
みんなの力をあわせましょう。

8劇団合同オーディションのお知らせ
< http://alotf.cocolog-nifty.com/nikki/2011/06/post-83a2.html >

「日本の問題」(←小劇場劇団8劇団でやる「日本」をテーマにした演劇フェスティバル)では、来る7月16日に8劇団合同オーディションを行います。時間は9時から19時となっていますが、この時間みっちり参加していただくというのではなく、この時間のいずれかにオーディション会場に来ていただき、そこで8劇団主宰の前で課題の演技をしていただくと言う形になると思います。

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >