買物王子の家づくり[10]ショールーム巡りの愉悦
── 石原 強 ──

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3回の打ち合わせで、家の間取りが徐々に固まってきました。「こちらで決めておくことはありますか?」と聞くと、フルヤさんからは「どんな設備を入れたいのかを検討して欲しい」と言われました。そこで設備機器メーカーのショールームを見学してみることにしました。



●設備はできるだけシンプルに

この打ち合わせの少し前に、OZONE住まいづくりセミナー「予算オーバーしない家づくり」に参加しました。家を建てるときに予算オーバーする原因の一つとして、設備工事費をあげていました。設計をしている時に人気の設備をどんどん取り入れてしまうと、あっという間に予算オーバーしてしまう。

きちんと作られた家は、手入れさえすれば30年以上持つのだから、10年〜15年程度で寿命がくる設備は、交換時にグレードの高いものにしてもいい。後から取り付けられるものならば、お金に余裕ができたときに検討してもいい。設備を入れるために、家の躯体工事費を下げるのは本末転倒である。確かにそうだと、納得したものの、必要な設備は沢山あるので悩ましい。

住宅の機器ってピンキリなんだけど、こだわりはじめると上のグレードのものが欲しくなります。ユニットバスはメーカーの定価だと100〜200万円もします。クルマも買えてしまうお値段。システムキッチンも同じくらいです。トイレだってハイグレードのものなら30万円くらい。洗面所の蛇口だって海外の高級品は10万円以上するものもあります。

実際、工務店から仕入れると割引になるので、そのままの金額ではないのですが、思ったよりもずっと高い。こんな高い買い物をまとめてすることなんて滅多にないことなので、こだわって選びたいけど時間も限られます。

とにかく、良いモノを選ぶには足を使って見て回るのがイチバン。ネットで検索してみると、新宿にキッチン、バス・トイレ、家具など、沢山のショールームが集まっていました。住所に休業日、営業時間など、いちいちメーカーサイトをチェックするのも面倒と思っていたら、便利なマップを見つけました。

「新宿住まいのショールーム会GUIDE MAP」
< http://www.sumai-showroom.com/
>
新宿駅西口とその周辺にある23のショールームがわかりやすく紹介されています。マップのPDFをダウンロードしてiPhoneに入れ、いつでも確認できるようにしました。それを持って今日はバスルーム、次はキッチンなど、テーマを決めて週末にショールームを巡りました。

●風呂は実際に入ってみなければわからない

日本を代表する水回りの専門メーカーが二社。
TOTO < http://www.toto.co.jp/
>
INAX < http://inax.lixil.co.jp/
>

一階に設置するバスルームを比較するために、両社の新宿ショールームを往復します。実はトイレを見に来て以来二度目です。前回は、INAXのショールームは震災の影響で、ユニットバスのコーナーが閉鎖されていました。

両社ともカタログは既にもらっていて、家でおおまかなグレードや金額感は予習済み。実際の見た目や使い勝手を確認するのが目的です。プランに入るユニットバスは、1坪タイプの「1616(160×160cm)」という一戸建てでは標準的なサイズです。

僕は今のマンションの小さい浴槽で足が伸ばせないのが不満。新しい家では、のびのびと足を伸ばしてお風呂に入りたい。妻はあまり風呂にこだわりはなく、「掃除がしやすければ、なんでもいい」と言ってます。だからミストサウナとかジェットバスとか、そういう贅沢なものは考えていません。価格にも影響するからデザインも機能も、なるべく削ぎ落としてシンプルなものがいい。

見学にきたものの、外から眺めているだけでは、よくわからない。係の人に聞くと、靴を脱げば浴槽に入ってもよいということ。そこで片っ端から浴槽に入ってみました。浴槽の幅、深さ、形状でかなり感じが違う。感覚的にしっくりこないもの、落ち着くものもの差はなんだろう。今までお風呂を入り比べたことなどなかったので、新鮮な驚きです。

浴槽の形状は、おおまかに二種類、四角いものと楕円のものがあります。見た目では、シンプルな四角くて底が平らなものがいいと思っていました。でも実際に入ってみると、丸みのあるほうが、背中で寄りかかったときに包まれる感じがして気持ちよい。

底の部分が平らだと、座って足を伸ばせるもののぴったりして窮屈。少し段差がついている、と深い方から斜め上に向かって足を伸ばすので、足が浴槽でつっかえない。ちょっと広く感じます。お風呂が暑いと浴槽の縁に座ったりすることも多いので、半身浴ができるのも良い。

浴室は洗面とあわせてタイルばりにしたい。ユニットバスだと、全面が専用のパネルでデザインは自由になりません。タイルばりもできるけど、オプションになって値段も高くなります。もちろん、在来工法で作れば完璧だけどさらに費用がかかりそう。

オカザキさんからは、デザインと価格を両立するなら、「ハーフバスルーム」という製品があると聞いていました。
< http://www.toto.co.jp/products/tnm/products/bathtub/PYP1600-JK-SN1/
>

防水が重要な浴槽と床の部分だけがユニットになっていて、壁や天井部分は自由にデザインできるのです。TOTOのショールームには展示がありました。
< http://www.toto.co.jp/products/tnm/setplan/04.htm
>

これならデザインしたバスルームが実現できそう。この浴槽にも入って座り心地を確認、見た目もシンプルでちょうどいい感じです。

さらにユニットバスでは選べないシャワーの水栓も自由です。海外の水回り製品を扱う「セラトレーディング」のショールームを見ると、日本製のものより、海外のものが圧倒的にデザインがいい。
< http://www.cera.co.jp/
>

気になるのは、普段使っているシャワー水栓と、温度調節とお湯の出るつまみの位置が逆なこと。日本車と外車のウインカーの操作レバーの違いみたいなもので、最初は戸惑うかもしれない。このあたりは価格見合いで考えることにします。

●電気だけに頼らず、昔ながらのガスがいい

オール電気にするか、ガスを入れるかは、大きな分れ道。オール電化は、安全だし電気代も安くなると聞いて、妻は迷っている様子です。とはいえ震災以降、停電を考えると電気だけというのも不安です。

僕はガス床暖房にも惹かれていました。実家がガスの床暖房を入れていて、暖かいと聞いていたからです。ランニングコストが安いことにも魅力を感じます。ネットの掲示板でも、電気式の床暖房は初期は安いけど、ランニングコストが高いという評価が多い。せっかく入れても、妻が「電気代がもったいない」と使わせないだろうと思う。

新宿パークタワーにある「東京ガス新宿ショールーム」を見学。
< http://home.tokyo-gas.co.jp/showroom/tss/f_index.html
>

大型のクーラーで冬の外気温での室内をシミュレーションした体験ルームがあります。片方の部屋はエアコン、もう片方がガス床暖房です。室内の温度分布で足もとから暖かいのがわかる。しかし、比較するエアコンがちょっと旧型なのはご愛嬌か。

料理をするなら、昔ながらの中華鍋も土鍋も使えるガスがいい。というのが夫婦の共通見解です。同じ建物内のリビングセンターOZONE 7階にも「暖炉とコンロ」という体験型のガス機器のショールームがあります。ガス床暖房のダイニングに、火力の強いガスコンロの入ったキッチンが体験できます。「子供のいる家庭では、IHのほうが安全と言われるけど、鍋は熱くなるので火傷の事故はある。炎が直に見える方がかえって手を出さない」とのこと。

最新のガスコンロでは、グリルに専用のダッチオーブンを入れて料理ができるということで、実際に作った料理をいただきました。「新しくするなら、これ使いたい」と妻は気に入った様子。ガスを入れることで合意しました。

このショールームの床に使われているフローリングが、6階にある「マルホン」のもの。
< http://www.mokuzai.com/
>

フローリングは、床の生活で寝転がったりするから、なるべく自然な素材がいい。無垢材のものにしたいと考えていました。合板のフローリングとは見た目も手触りも違います。

無垢のフローリングを使いたいけど、床暖房を入れるつもり。と相談しました。「無垢材のフローリングは、いくら乾燥させているとはいえ、空気中の水分を吸ったり出したりして変形する。床暖房を使うと、熱で急激に乾燥して変形するために、隙間が大きくあいたり、反ってしまう可能性もある」という説明を受けました。

「それじゃあ、あこがれの無垢フローリングは使えないの?」と聞くと、床暖房に対応できるフローリングを案内してくれました。床暖房対応のフローリングは、熱で変形するのを抑えるために、先に熱処理をして強く乾燥させて形状を安定させているのだという。部屋のイメージを伝えて、いくつかサンプルをいただきました。

●照明は部屋を明るくするためだけじゃない

照明については、家の明かるさは重要だけど、それ以外にはあまり気を配っていませんでした。今の家は、各部屋の天井にシーリングライトが一つずつ付いています。夫婦二人の時に使っていた間接光のスタンドなどは子供に蹴飛ばされるので、すべて片付けてしまいました。ムードは出ないけど、困ったこともありません。

フルヤさんからは、ラフなプランが出ていましたが、どのように詰めていくべきかわからない。汐留にある「パナソニックリビングショールーム東京」に行くと、まさにありとあらゆる形状の明かりが並んでいました。
< http://panasonic.co.jp/showroom/tokyo/
>

見慣れた天井につけるシーリングライト、ぶら下がったペンダントライト、壁にとりつけるブラケットライト。向きを変えられるスポットライト、天井に埋め込むダウンライト。シンプルな形から、和風、洋風の装飾的なものまで、ほんとうに沢山ある。器具の形はわかっても照明は効果はなかなかイメージしにくい。どこから手をつけたらいいのかもわからない。

そこで、図面をもとに照明プランを作成する「明かりプラン」を申し込みました。簡単なアンケートと、間取り図をみながらヒアリングを受けます。各部屋は、どんな用途に使うのか、インテリアはどんなイメージなのかなど。そのあと、ショールームの中の体験ルームを案内していただきました。

吹き抜けのあるリビング、ダイニングキッチン、寝室など、実際の部屋を想定して、複数の照明器具が取り付けられています。説明を受けながら、実際の部屋を想像して好みの照明を選びます。

同じ形の照明でも、一般的な蛍光灯と最近話題のLEDのライトを比較しました。蛍光灯は陰影が弱くふんわり全体があかるくなり、LEDはシャープで陰影がはっきるするということを知りました。寿命や消費電力といった性能ではなく、適材適所の使い分けが大事になってくるということ。また、手元を照らすような直接光と、壁を照らす間接光の組み合わせなど、実際に目で見て確認すると、イメージがわいてきます。

重要なところを、一通りチェックして一時間程度。プランと見積を無料で作成してくれます。到着までに一週間くらいかかるとのことでしたが、三日後に届きました。器具の写真付きでわかりやすい。でも見積はちょっと高い。できるだけ無駄を省こうと思うけど、手を入れると、バランスが崩れそうで迷ってしまいます。

OZONE住まいづくりセミナー「照明器具の選び方」にも参加してみた。明るいところから暗いところにいくと目が慣れるのに時間がかかる。玄関が明るいと部屋は暗く見えてしまう。暗い玄関から明るい部屋に行くように、暗い寝室へは、少し暗い廊下を通って行くとよい。

部屋の役割を考えて必要な明るさに変えたほうがいい。部屋全体を明るくする必要はない。本来、明るいと目が疲れる。暗い方が落ち着く。部分照明で壁が明るくすれば部屋が広く見える。ワット数は小さくても明暗にメリハリをつければ、明るく感じて快適な空間になる。

なるほど、暗くしたほうがいいとは思わなかったので、考え方を変えなければなりません。再度、作成してもらったプランを見直して、できるだけ必要最低限に絞ることにしました。照明で、部屋をどんな風に変化させようかと、想像するのが楽しくなりました。

●見て触って楽しい体験、でも家族はついてこない

実際に見てみると、カタログの写真とは違って見えることが多い、思ったより大きかったり小さかったり。値段が高いものでも、意外と安っぽい感じのもの、価格以上に見えるもの。見た目は気に入っても触ってみると戸惑ったり。やはり毎日使うものだから、シンプルかつ感覚に合うものにしたい。

ショールームからの帰りは、いつも鞄がカタログでずっしり重くなります。大きめのトートバックを持っているのに、入りきらなくて紙袋をもらうこともしばしば。家はカタログの山ができました。カタログを眺めて気になることがあると、二度三度と同じショールームに足を運んで、さらに吟味します。

週末出かけようとすると、妻は「また行くの?」とあきれた様子。しまいには「最後に決めるときだけ確認すればいいよ、もちろん予算内でね」とついてこなくなってしまいました。でも、僕にとって西新宿は家づくりのテーマパーク、ショールームはアトラクション。何度行っても新しい発見があって楽しめる空間でした。

【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp
暑い日が続きますね。暖房器具のことを書いていると、汗が出てきます。7月1日からは、オフィスも節電で、エアコンの設定温度が上がります。つらい夏になりそうですが、ビールは、いつもより美味しく飲めるかな。
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