アンビエントメディアの夜明け[21]ライブメディアコーディネーターの挑戦
── 川井拓也 ──

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この「アンビエントメディアの夜明け」という連載は、デジタルハリウッド大学院に「アンビエントメディア研究室」を開設したことがきっかけだったのですが、今年の3月をもって教授を退任したこともあって、この連載も今回入れて2回で終了となります。

そこで今回は、アンビエントメディアとは別のことを書きたいと思います。私はここ一年「ライブメディアコーディネーター」という新しい職種を作り仕事しているのですが、その立場からもっとも研究しているのがマイクロ一眼を使ったシネUstという中継形式です。

Ustreamというライブフォーマットは、ニコ生などに比べてビットレートの制約などが少なく、配信者がさまざまな工夫をして高画質で中継することができます。



一般的な中継は500kbps程度が常識ですが、1Mbpsでも2Mbpsでも可能なのです。ただし、ビットレートを上げれば上げるほど視聴者の回線負荷、マシン負荷が重くなり「再生が止まった」などの苦情も増えることになります。

そう考えたとき、500kbps程度のビットレートでバランスのよい絵を作るとなると、SD画質がメインということになります。たとえば、HD機材を使ってハードウェアエンコードしても、最終的なアウトプットは640×360ピクセル程度に落ち着かせる必要があるわけです。

こうしたライブメディアの特性を考えながら、いくつもの配信をしてきたのですが、必ずしも大きいカメラだからいい絵になるとは限らないということを感じてきました。

大きいカメラ、つまり業務用のカメラは解像度もシャキとして色も豊かなのですが、テレビの絵に似てくるのです。これはいいような悪いような側面があります。

テレビに絵が似てくると、視聴者はテレビと無意識に比較を始めてしまうからです。これがiPhoneで中継してるような、コマ落ちした240ピクセル程度の絵であればグダグダした展開も味になってくるのですが、テレビのようなシャキッとした絵でグダグダすると、金のない深夜放送みたいに見えてくるのです。

そこで私が考えたのが、絵をテレビに似せるのではなく映画に似せていく方法論です。

ライブメディアの特徴は、ソーシャルストリームにコメントすると、映像の中の人が答えてくれるということです。ラジオにハガキを送ったら、パーソナリティが読み上げてくれる、あの現象がリアルタイムに行われるのです。

なので、映画のような絵にも関わらず、自分のコメントに映像の中の人が答えてくれると、面白いギャップが生まれるのではないか? と思ったわけです。では、どうやって映画の絵にしていきましょう?(つづく)

【川井拓也 / Takuya Kawai】
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