デジアナ逆十字固め...[118]書き下ろしのプレッシャーの中で
── 上原ゼンジ ──

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前回デジクリに原稿を書いてから、随分と間が空いてしまった。ずーっと書き下ろしの本の原稿を書いているのだが、なかなか終わらない。私は同時にいろんなことができない性質なので、私の回りではいろんなことが停滞してしまっている。まあ、原稿書きの仕事は今までにいっぱいやってきたけど、この「書き下ろし」のプレッシャーというのは、けっこう強いんだな。

元々は自分でやりたいと思って出した企画なのだが、いざ始めてみるとなかなか捗らず、気ばかりが焦る。企画が通り打ち合わせをし、さあてやるぞ! と思った翌日に大地震が起きた。原発のことも気にかかるし、気もそぞろ。原稿を書かなきゃと思いつつ、いろんなサイトで情報集めをしてしまう。やらなきゃ、やらなきゃ、やらなきゃ、という気持ちばかりがどんどん空回りする。

私の社会人としての始まりは編集者だった。編集者として、書き下ろしの本の原稿取り立て人もしていた。雑誌連載をまとめる場合なら、時が立てば少しずつ原稿が溜まり、やがて一冊の本になる。しかし、書き下ろしの場合は何年もかかる場合がある。何年も刊行予告の広告ばかり打っている本もあった。そう言えば、いまだに出ていない本もあるなあ。



知り合いの作家も皆、書き下ろしだけは嫌だと言っていた。つい引き受けてしまった書き下ろしの本だけが出ず、コツコツ書いた連載だけが、どんどん書き下ろしを追い越していってしまう。書き下ろしだってコツコツ書いていけば、やがては一冊の本になるはずだが、どうしても日々の細々とした仕事が優先されてしまい、書き下ろしは後回しになる。

だから、世の中には作家に原稿を少しずつ書かせるための雑誌が存在する。雑誌の売れ行きはいまいちだけど、掲載されているテキストが一冊にまとまり、書籍が売れればそれでよしとする考え方だ。だから、雑誌を持たず、書籍だけでやっているような出版社というのは、なかなかキツイ。書き下ろしで書いて貰うか、広報誌などのように、書籍と連動していない原稿を見つけてくるしかないからだ。

まあ、最近はメルマガとかブログなんかもあるから、それも書籍化するための重要なメディアになっている。私の初めての著作も、このデジクリでの連載をまとめて貰ったんだった。あの時は後で本にしやすいように、最初から構成も考えて書き始めたんだった。賢かったなあ......。

しかし、今回はこんなに苦しんでいる。書き下ろしじゃなく、またデジクリで連載させて貰ってから一冊にまとめればよかった。なーんていう後悔をしてもしょうがないんだけどさ。それに大変な仕事ではあったが、ようやくゴールも見えてきた。本の中身は「レタッチとカラーマネージメント」です。詳しい内容に関してはまた、本が出てから......。

●「ARTALK2」に参加します!

9月の2日から三日間、「デザイン・フェスタ・ギャラリー原宿」で行われる「ARTALK2」というイベントに参加する。デザイン・フェスタ・ギャラリーは、小さなギャラリースペースの集合体だが、私もその中に一部屋を借り、写真と機材の展示をさせてもらう。

ネタとしては、宙玉レンズ、万華鏡写真、手ブレ増幅装置、蛇腹レンズ、電動ドリルドライバーカメラ等々、私のテキストを読んでいただいている人にとってはお馴染みのもの。それに今回は、太陽画という新しいシリーズの写真も少し展示する。

これは日光写真をデジカメでやってみるというコンセプトで、日光写真の感光紙をデジカメに置き換えるとどうなるか? ということをやっている。つまり太陽があり、オブジェクトがあり、そのオブジェクトを透過した光を紙ではなく、デジカメの撮像素子が記録するという方法だ。

まだ始めたばかりだから、点数はあんまりないんだけど、もう見せちゃう。普通はある程度写真が溜まってからバーンと発表するというのが正当なんだろうけど、撮ったらもうすぐに見せちゃう。でも、デジクリでの連載というのは、そういう発想から形になるまでの過程を公開してきたわけだから、別にいつもやってることと変わりはないか。

以前と比べると最近は、撮ったら「見て、見て!」という気持ちが強くなってきた。写真を撮り始めた頃というのは、そんなに人に見せたいという気持ちも強くなかった。撮ることは撮るけど、それを写真展などで人に見せたいという欲望があまりなかった。写真をやるために会社まで辞めたのに、ただ撮ってるだけじゃあ意味はないのだが。初めの頃は自分で気に入った写真が撮れていなかったということだろう。

今日撮影したのは、ホオズキとミニシービスケット。ミニシービスケットというのは、スカシカシパンの仲間の海の生物のこと。そのホオズキとミニシービスケットを太陽画の手法で撮影した。ブログの方にアップしたんだけど、こんなことを始めました。そして興味を持っていただいたら、「ARTALK2」にも足をお運びください。三日間とも会場にいるつもりなので、聞きたいことなどあれば、ぜひおいでください。

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