電子書籍に前向きになろうと考える出版社[12]自炊代行業者への質問書騒ぎで思ったこと/沢辺 均

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講談社、角川書店、集英社、小学館、光文社、新潮社、文藝春秋の大手出版社7社と、東野圭吾氏や浦沢直樹氏など作家・漫画家の122名が自炊代行業者に質問書を送ったそうだ。

質問書の全文はココにあり(ITmedia/eBOOK USER)
< http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1109/06/news064.html >

この動きは、たぶん裁判の訴えのための準備なんだろう。業界のうわさ話でも、「9月に行動開始がきまった」というのを聞いたことがあった。

さて、この自炊問題だけど、過去に、このデジクリや、ポット出版サイトで、こんなことを書いてきた。
[05]書協の自炊代行は違法という注意喚起文に違和感
< http://bn.dgcr.com/archives/20110308140100.html >
[03]自炊と国立国会図書館の「全文テキスト化実証実験」
< http://bn.dgcr.com/archives/20110208140100.html >

[05]では自炊とその代行に関して、
弁護士の福井健策さんの説明をひきながら、こう書いた。




 著作権法の理解については、福井健策弁護士が「書籍の電子化、『自炊』
 『スキャン代行』は法的にOK?」と「INTERNET Watch」サイトで明快に書い
 ていて、ボクも賛成。異論もあるようだが、自炊の著作権法理解に賛成だ。
 < http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20100917_393769.html >

 福井さんの書いていることは、個人の自炊(自分でスキャン)は適法。家族
 で共有することも適法。自炊の代行サービスは「私的複製の範囲を規定する
 著作権法第30条1項を見ると、「『使用する者が』複製することができる」
 と書かれています。こうしたことから、自炊に限らず複製の代行サービスは、
 私的複製として許容されないというのが通説として定着しています(表【2】
 参照)」と、適法違法(2011.09.18修正)だと言っている。

 ボクとしては「そのとおりだね」と言う以外にない。

あるいは、ポット出版のサイトの日誌コーナーではこう書いた。
○2010-12-29 「自炊の森」はだめでしょう+自炊について+書協ガンバレ
< http://www.pot.co.jp/diary/20101229_160836493921832.html >

 妥当な費用負担をして、便利になりたい、という要望に応えることが先決で、
 その対案を出さずに、自炊代行サービスタタキをするのは、妥当性を欠くや
 り方だと思う。提供しているサービスの不足をたなに上げて、その不足を埋
 める第三者の行為を「だけ」をたたくだけだから。

●ブックスキャンに取材してみた

『ず・ぼん──図書館とメディアの本』という本を年に一回ほど発行しているんで、その記事としてブックスキャンの取材をした。ボイジャーストアで、PDFダウンロード版を200円で売っているんで、読んでみて下さい。面白いとおもいますよ。
< http://www.pot.co.jp/news/20110901_193447493925250.html >

ブックスキャンの取材でイチバン興味をもったのは、スキャンしたタイトルのデータだ。ブックスキャンは整理して持っているわけではないようだけど、ぜひ見てみたいのだ。

だってこれ、今日の「スキャン電子書籍」の販売予測データであり、ニーズがどんなタイトルにあるのか? というデータだから。宝の山なんじゃないかな?

ボクは今、数10万のスキャンPDF・OCR付きを、出版社がみんなで一気につくって販売しようぜ、と考えているからだ。どのようなタイトルにニーズがあって、それってどのくらい売れそうか(売れなさそうか)予測する絶好のデータでしょ?

今回の出版7社の行動は、こうしたデータをみすみすのがしてしまう行動ではないだろうか?

●出版社が対応すべきこと

出版社は「妥当な費用負担をして、便利になりたい、という要望に応えることが先決」なんだと思う。

こうした取組みの準備も、実は進んでいる。ボクはまだまだ遅い! とか思うんだけど。でも出版業界も一色ではなくて、要望に応えようと取組んでいる人たちもいるのだ。当然、業界内、会社内の熱心ではない人と議論して、説得したりもしている。こうした仕事を増やして、わざわざ自分を忙しくしてしまっている人がいるんだ。

ボクは、もう少しこうした人たちの努力とつきあおうと決めた。「電子書籍への対応をもっと早くやれよ」みたいに、出版社に考えている人たちがいてくれるなら、お願いしたい。もう少しの間、「電子書籍への対応をもっと早くやれよ」と言い続けてくれないだろうか?

できてないことだけに着目するのではなく、「電子書籍への対応をもっと早くやれよ」という方向に、出版社が動くように促してもらえないだろうか? 少なくとも、すでに出版されている「既刊本」という蓄積を、電子で利用できるようにするのに、今のところ一番可能性をもっているのは出版社なのだ。

もちろん、われわれの既得権を守ってくれ! とだけ言っているのだとしたら、大丈夫、そうした出版社は早晩退出せざるえないと思う。今の、あたらしい状況に小手先、口先だけでしか対応できないとしたら、長い目で見て退出せざるえなくなるんじゃないか? だって、読者に見放されるのだから。

既刊本というみんなの財産を有効に活用する作業をする候補者=出版社が、もしこれに取組めなければ、そんときは、ボクももう出版社みんなで取組もうなどと言うことをヤメるよ。

【沢辺 均/ポット出版代表】twitterは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)

ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。おやじバンドでギター(年とってから始めた)。日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。