[3113] カッコイイ広告で未来へゴー!

投稿:  著者:  読了時間:17分(本文:約8,100文字)


《僕的には「メモは思考力を奪う」って一面もある》

■ユーレカの日々[04]
 カッコイイ広告で未来へゴー!
 まつむらまきお

■グラフィック薄氷大魔王[270]
 メモ魔になりたい。ことえり、Google日本語入力
 吉井 宏



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■ユーレカの日々[04]
カッコイイ広告で未来へゴー!

まつむらまきお
< http://bn.dgcr.com/archives/20110914140200.html >
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先日、京都へ学生のグループ展を見に行った帰り、ふと立ち寄った書店で面白い、というか、ものすごい本を見つけてしまった。「昭和ちびっこ広告手帳」(青幻舎)である。

上巻
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4861521815/dgcrcom-22/ >

下巻
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4861522129/dgcrcom-22/ >

この文庫本が発行されたのは2009年(底本は1999年の「ちびっこ広告図案帳」)。タイトル通り、昭和30年〜40年の少年少女雑誌に掲載されていた広告ばかりを集めた本である。フルカラー、各巻300ページで、上巻は1960年代、下巻は1970年代の広告が収録されている。

この本が目についたのは、最近は死語に近い「ちびっこ」という語感と表紙のビジュアル。

60年代編(東京オリンピックからアポロまで)は「シェー」のポーズをするイヤミと、シェーのポーズをする少年の写真だ。以前、テレビの探偵ナイトスクープでもやっていたが、ぼくのような60年代生まれの人の少年期のアルバムには必ず、このイヤミのシェーのポーズの写真が収められているのだ。

下巻の70年代(大阪万博からアイドル黄金期まで)の表紙は「モーレツ」の小川ローザのスカートをめくっているニャロメである。当時、スカートめくりは小学生男子の紳士の嗜みであった。元祖草食系の私はしなかった(できなかった)が。

さてページをめくると、これがもう、めまいがするような内容。アトムのシール付きマーブルチョコ、おそ松くんペナントが当たるおそ松くんチョコレート、科特隊の流星バッジが当たるウルトラマンチョコレート、ウルトラQの怪獣ソフビにサンダーバードのプラモデル。きせかえリカちゃん。フラッシャー付き自転車に短波ラジオ。

当時最先端の「子供たちが欲しかったモノ」の広告がぎっしりと詰まっている。ページの間から欲望のオーラが立ち込めるようだ。これらの昭和製品そのものは、テレビの鑑定団などでしばしば紹介されたり、本にまとめられていたりするので、さほど珍しいというものではない。

しかし、この本では商品そのものではなく、広告という形で紹介しているところがミソ。モノだけだとただのノスタルジーだが、これらのこども心を鷲掴みにせんと、扇情しまくりの当時の広告は、当時の強烈な飢餓感を鮮烈に蘇えらせるのだ。

特に凶悪なのが懸賞だ。今の時代、あまり射幸心をあおりすぎるような景品はダメ、ということになっているらしく景品は市販されているモノが中心だし、オリジナルグッズであってもヤフオクなどでいくらでも手に入るので、それほど魅力的には見えない。しかし、昭和時代の子ども向け景品は暴力的なまでに魅惑的だ。

たとえば、小学生の頃欲しくて欲しくてたまらなかった懸賞品に、「悟空のきんそう棒」というのがある。虫プロアニメ「悟空の大冒険」のグッズで、明治のお菓子で当たるという懸賞。この本を見るまですっかり忘れていたが、これがすごい。

推定長さ1m直径8cmほどのきんそう棒の中には「すごい倍率のカッコイイ望遠鏡」「金貨や指輪が入ってる宝袋」「どこでも方向がわかる精密な羅針盤」「あかるい懐中電灯」などなどの、きっとすばらしく役に立つであろう「12のひみつがギッシリ!」収納されている、当時の小学生の想像をはるかに超えたスーパーアイテムなのだ。

今の人にはあまりピンと来ないかもしれないが、当時、懐中電灯もコンパスも望遠鏡も、子供たちにはあこがれのスーパーメカ、これさえあれば、自分は万能になれるに違いない、iPhone並のスーパーアイテム。

それが一本の棒なんと12個もつまっているのだよ!! しかもそれはどんなに親にねだっても、お金では買えないオリジナル景品なのだ!! 雑誌広告やTVCMでさんざん煽られるのに、クラスのだれもその現物を見たことがない幻のガジェット。市販品ならお店に行けばウィンドウ越しに見ることができるが、これは見ることさえ許されない、本当に特別なモノなのだ。

もし今、iPhone並の、しかも市販されていないガジェットが12個入った景品が存在したら、世の中の大馬鹿共はチョコレートであろうがキャラメルであろうが、10万、100万でも投資して応募するだろう。まぁ、そんな熱さが当時の小学生にはあったのだ。

ところが、まぁ、そういう景品は当選しない。少なくとも当時の小学校で当たった、という話は聞いたことがない。そもそもこの懸賞は明治のお菓子のラベルを100円分集めて応募するのだが、当時のお菓子の相場というのは10円〜30円程度、しかも明治などのメーカー品はたまにしか買ってもらえない高級品であり、日常の駄菓子は10円を割るのが普通。100円分というのはかなりハードルが高く、応募するのも大変なのだ。

そこで、当時の子どもはどうしたかというと、自作するのだ。きんそう棒も科特隊の流星バッジもロボットもスパイアタッシュケースもとにかく自作。紙やら竹ひごやらで、想像力の限りを尽くし、まだ見ぬあこがれの景品を自作するのである。ここにこういうものが収納されているに違いない、ここはこう動くに違いない、と妄想力を自力で形にしていくしかなかったのだ。

おかげで工作やら絵やら妄想やらばかりがどんどん得意になり、後に美術系に進み、クリエイティブな仕事に就くことになったわけだが、そのルーツがこんな子供だましの広告と景品だったのかと思うと、うれしいやら情けないやらである。

景品も暴力的だが、当時の宣伝コピーも相当暴力的。「カッコイイ水中モーターでカッコイイテープレコーダーが当たる!」カッコイイの二乗で、ATOKさんにツッコまれそうだ。「君にもいるかい、兄さんが?!」(ミクロマンの前身、少年サイボーグ)って、いないよ!「赤い血潮のフラッシャー。熱き思いを振り捨てて、男十四の帰り道」(自転車)「男ならエレクトロニクスをやろう」(電子ブロック)......うーん、熱い、熱すぎる。思いが先走って意味不明、これはもう、島本和彦かプロジェクトXの世界だ。

こういう広告と比べると、今の広告は抽象的か説明的、一言で言えばまぁ草食系で、モノが売れず経済が停滞するのもわかる気がする。「カッコイイハイブリッドカーで君も未来へゴー!!」とか「12の秘密メカがギッシリ詰まったスーパーカーが当たる!」とかやったら、プリウスも今の10倍くらい売れるんじゃないだろうか。売れないか。

ちなみに、この本の画像は図書印刷株式会社が当時の雑誌からスキャン、Photoshopを駆使しまくってレタッチしているそうで、ものすごくクオリティが高い。印刷物からの復刻なのに、スキャン画像にありがちなモアレもボケも皆無。きっとオペレーションされた方々もこの本の内容に燃えまくって作業されたに違いない。デジクリ的にはこのあたりも見どころだ。

まぁとにかく、60年代前後生まれのオヤジは、だまされたと思ってこの本をAmazonでポチッとすることをオススメする。一冊で白ご飯10杯、上下巻で白ご飯20杯保証する。若い人達は、オッサン達の意味不明な情熱がどのあたりから来ているのかを知る、貴重な資料となるであろう(ならんか)。広告に携わる人は、これを読んで目からウロコを10枚くらい落とすがよい。

【まつむら まきお/まんが家、イラストレーター・成安造形大学准教授】
< http://www.makion.net/ > < mailto:makio@makion.net >

iPad2を買ったとたんに、ハードディスクレコーダーとNASがお亡くなりになった。うむ、これはいよいよディスクレス、シリコンの時代が来たということだなっ!(泣)

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■グラフィック薄氷大魔王[270]
メモ魔になりたい。ことえり、Google日本語入力

吉井 宏
< http://bn.dgcr.com/archives/20110914140100.html >
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●メモ魔になりたい

メモ魔の人って何をメモしてるの? 僕はといえば、忘れるとマズいことくらいは書き留めるけど、手帳やノートにメモする習慣はほとんど身につかなかった。ノートをものすごい勢いで消費してるメモ魔の人がいるけど、僕はノートを最後のページまで使い切ったことがほとんどない。使い切るどころか、最初の数ページを使って終わり。パソコンでメモやコピペメモはATOK PadやEvernoteでやってるけど紙にはほとんどしない。

デジクリにも書いたけど、しばらく前に本や雑誌とか読みながらノートにメモする実験をしてみた。おもしろいと感じたことのメモがすごい勢いで増えていき、「おお! これがメモの神髄か!」とは思ったものの、「書き留めておくべきおもしろいネタ」があまりにもたくさんで、ぜんぜん読み進められない。週刊誌を読むのが大仕事になってしまう。ついに挫折。そもそも大きな原因といえば、ペンで字を書くのが遅すぎ。キーボードなら一息で文章一個書けるけど、ペンだと一息で一単語くらい。

で、パソコン上のメモなども含めて、無数のメモがたまってくると、何かアイディアとか出すとき、考えたり思い出したりするより「メモしたはず」とか「メモに何か書いてないか」が優先されちゃって困る。思考がぜんぜん進まない。その意味で、僕的には「メモは思考力を奪う」って一面もある。メモしなきゃ忘れるようなことは、忘れてオーケーって言う人もいるし。

メモ魔、実はあこがれなのです。だから使えもしないノートをいっぱい買い込んでは挫折してる。テレビでやってたコストコ、30冊の分厚い束ノートが千円くらいで一冊約30円。確かに安いけど、千円分のノートを使い切るのに、僕だったらたぶん150年くらいかかる。なので、ノートのコストってほぼ無視して大丈夫なんだけどね。

あ、ICレコーダーとかの音声メモなら僕に合ってるかも! iPod touchでやってみよう。

●ことえり、Google日本語入力

最近のことえりって賢くなってるみたい? なんか割と普通に打てる。長文変換でなければ大丈夫みたいだ。ATOKのユーザー辞書をことえりに読み込めないかな? そしたらことえりに乗り換えちゃってもいいや。MobileMeの同期でことえりのユーザー辞書がシンクできるって魅力。

iPhone/iPadでは、ATOKアプリが期待したほどでなく、これならアプリと完全に連携が取れてる標準IMEでいいやと感じたから、Macでも標準IMEであるところのことえりを使いこなしたらいいと思う。Wikipediaで見たら、「なお、iOS搭載のインプットメソッドはことえりではなく、米アップルで増井俊之ら日本人開発者により新たに専用開発されたもの」だそう。

試しに、ATOKの単語をユニコードテキストで出力、ことえりの「テキストや辞書から読み込む」したら、あっさりと数百単語がことえりでも使えるようになった! とりあえず、郵便番号変換以外はこれで支障なし!

っていうか、ことえりで、「みっしょんこんとろーる」って打ったらちゃんと「Mission Control」って変換された。LaunchpadもApp StoreもiCloudも、Apple関連用語ってだいたい出てくる! ちゃんと変換されない場合は、自分の読み方が間違ってる可能性大。「ふいんき←なぜか変換できない」みたいに。

Apple関連で変換できないものは、ロジック、ファイナルカットプロ、アパーチャ・・・、あ、「・」中黒を打つときのキーがちがう! っていうか、なかぐろで「・」に変換されやんの! これは環境設定で切り替えできた。

ことえり、イケるかなと思ったけど、ATOKの「きょう」で「2011年7月25日」、「すいよう」で「2011年7月27日」に変換される便利さにはやっぱ負けるわ。やっぱATOKの「かゆい所に手が届く」変換はすごいんだよなあ。

あと、テンキーなしのキーボードを使ってる場合、ATOKだと数字を打つと強制的に半角数字に変換するように設定できるのが便利で手放せない。あと、「7がつ25にち」って打つと「7月25日(月)」って曜日まで追加された候補が出るとかも便利だし。

まあ、テキスト打ってるときの効率の良さではどうしたってATOKはすごい。ことえりしか入れてないっていうシンプルも捨てがたいのだけど。

で、Google日本語入力を入れてみた。数文字打つだけでかなり的確に候補が出てくる。さすがかしこい。単語登録やカスタマイズしなくても、そのまんまで使えるっぽい。っていうか、「そのまんま」って打とうとしたら候補に「そのまんま東」が出るし。

ことえりではできなかった「きょう」とか「きのう」で日付入力できるんだ〜。ぜんぜんイイじゃん。っていうか、郵便番号辞書まで入ってる〜〜!! っていうかATOKがかわいそうなくらい。「ふいんき」もちゃんと「雰囲気」と変換される。それでいいのか? は置いといて。ちなみにATOKでは「ふんいき、の誤り」って注意書きが出る。

ATOKのユーザー辞書もインポートに成功。タブキーで候補を選ぶ操作はまだ不慣れ。候補のリストがインライン入力している下部にチラチラ出てくるのはかなり邪魔だけど。それほど違和感なく入力できるみたい。ついこの間ATOKの新しいバージョンを購入したばかりなので、ちょっともったいない感はあるけど。

○東北復興支援「赤べこプロジェクト」展に参加しています

「福島県の縁起物・郷土玩具の「赤べこ」をクリエイターたちが自由にペイント。展覧会を定期的に日本各地で開催することで、様々な人々が「東北」に触れ、震災と原発の問題を自分の事として意識するきっかけをつくることで、問題の風化を少しでも防ぎたいと思っています。」という趣旨です。すごい豪華メンバーが参加しています。
会期:2011年9月2日(金)〜9月25日(日)
会場:@btf 3A(東京都中央区勝どき2-8-19 近富ビル3F/3A)
< http://www.shopbtf.com/at/tenran_akabeko.html >

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com >
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/ >

文頭に「まあ、」って書いちゃうクセ。「逆に、」や「っていうか、」から始まりがち。「っていうか」はバカっぽい感じが好きでわざと使ってたら定着してしまった。他には、「なんか、」「あと、」「で、」「あ、」「おー!」「なんちゅうか、」などは多用しすぎてる自覚アリ。便利だもん。しかし、「まあ、」は使うけど、「まぁ」「マァ」「ま〜」は不可という厳然とした基準が僕にはある!

・iPhone/iPadアプリ「REAL STEELPAN」販売中
REAL STEELPAN < http://bit.ly/9aC0XV >

・「ヤンス!ガンス!」DVD発売中
amazonのDVD詳細 < http://amzn.to/bsTAcb >

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■編集後記(9/14)

・中高年登山者のバイブルは深田久弥の「日本百名山」らしい。高校生物部の同輩が何10年もかけて100座を制覇した。快挙を讃える飲み会をやったとき、彼が「ところで、深田久弥ってひとでなしなんだ」と驚くべきことを言う。至高の「山の文学者」であり、ヒマラヤやシルクロードの踏査隊長もつとめ、「山の聖人」とまで言われた存在であることは知っていたのだが。教えられた安宅夏夫「『日本百名山』の背景─深田久弥・二つの愛」(集英社新書、2002)を読んで驚愕。純文学畑の作家だった深田が登山エッセイを書くようになり、それが大成功をおさめた背景には、小説を超えたとんでもない事実があったのだ。カリエスで寝たきりの妻がありながら、かつて片思いだった女性と不倫を重ね、ついには妻を捨て再婚する。社会の倫理観が今よりはるかに厳しかった戦前のことである。しかも、彼が鎌倉文士として名を上げたのは、妻・八穂の創作をリライトして深田名義で発表し高い評価を得ていたからであった。それが暴露され、深田は文学者生命の危機に瀕し、10年もの失意と流転の日を送るが、起死回生、山の文学の大成功でその汚名を払拭した。一方、八穂は後に児童文学者として大成する。といった、結果オーライ(?)のまるでフィクションみたいなノンフィクション。ひとでなしと言うべきか。つづく。(柴田)
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087201368/dgcrcom-22/ >
→アマゾンで見る(レビュー3件)
ちびっこギャング
< http://blog.livedoor.jp/ussyassya/archives/51865119.html >

・勢いで買っちゃう......ってことはないような。マッ波によって壊れた話、久しぶりだ〜。/仕事や電話でのやりとりとか、頭から追い出したい「やることリスト」なんかはノートにメモることがあります。ToodledoやiPhoneでメモる余裕のない時に殴り書き。最初は1項目1枚なんて決めてたけれど、見返すことはほとんどないし、デザインラフや計算なんかもそこでするので、ぐっちゃぐちゃ。経緯が残るので、たまに見返す時とその場の雰囲気も思い出せたりする。大事なこと、ひっかかることは、ペンでぐりぐりマーク。四角やら丸やら矢印やらのオンパレード。メモしながら自分と対話。いろんな紙に殴り書きしていた頃よりはいい感じ。ノートの消費も進む。いま使っているノートは、極東のA5版リングノート。F.O.B COOP styleと書かれてあるもの。学生時代はマルマンのルーズリーフの滑らかさが好きだった。買ってあるけど、もったいなくて使っていない「コーネルメソッドノート(リング)」は、勉強時に良さげ。ノートは頭の整理に使うものと割り切っていて、多少折れようが、破れようが気にしない。裏紙使う感覚。見返す必要があり、ゆっくりメモれるものはEvernote、lino、Toodledo、自分宛のメールだったり。メモより抜粋。「うでひしぎ十字固め」「そうじ!! せんたくも」「ワープの魚眼レンズ」「alt入れこむ」「logo01.jpg 610」「コート180 厚手コート160 Gコート180.5」「請求書出すこと」「バター しお こしょう しょうゆ」「コーディングの勉強しなさいよ」(hammer.mule)
< http://www.kyokuto-note.com/products.php?f4=046047 > このノート
< http://www.gakkensf.co.jp/lineup/cornell/ >  コーネルメソッドノート