電子書籍に前向きになろうと考える出版社[14]情報公開は何より大切なんだ/沢辺 均

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2011年ももう10月だ。デジクリの連載もあとちょっとで1年か?
でも、ネタにつまったぞ。しょうがないので、今二番目に時間をつかってる出版デジタル機構のことでも書いてみることにしよう。でも、まだまだ大きな方向性を出すところまでになってないから、コネタでご勘弁。

まず、出版デジタル機構ってなんだって話。前回も書いたはずだけど、ようは「すべての出版物のデジタル化をめざして」ってことを目標にして、これから作ろうという「株式会社」。そうだ、前回はこの「株式会社」に意味があるって書いたんだ。

で、この株式会社を出資してつくろうってことに合意したのが、インプレスホールディングス・勁草書房・講談社・光文社・集英社・小学館・新潮社・筑摩書房・東京大学出版会・東京電機大学出版局・版元ドットコム(代表:ポット出版・ほか6社)・文藝春秋・平凡社・有斐閣の出版社20社(50音順)。

版元ドットコムの「ほか6社」ってのは、語研、スタイルノート、青弓社、第三書館、太郎次郎社エディタス、トランスビュー。これって版元ドットコムの組合員社(有限責任事業組合なので組合員という表現。株主であったり役員会社でもある)

この出版デジタル機構の連絡会議長の植村八潮さん=東京電機大学出版局も、版元ドットコムの組合員社なので、参加した組合員社は合計8社ってことになる。つまり、システムを担当しているスタジオ・ポットSD(出版社ではないのだ)以外は、全組合員社が参加してることになる。



この出版デジタル機構の会議のなかで印象に残ったエピソード。
9月15日(木)15時に「設立のお知らせ」をメディアに送った。木曜15時にしたのは、平日の新聞に載って欲しいなって理由。その日のうちに取材ができれば翌日の朝刊にまにあうだろうって考えた。

この20社以外にも株式会社設立に参加するってところが何社かあって、でも役員会とかのスケジュールで15日発表には間に合わないよって報告もあり、翌週に延ばそうかって話も出たりした。

そのときに「自炊業者に質問状を送っている。電子書籍への取組みを進めるって意思表示も早くしたい」みたいな意見が出て、15日発表になった。この発言は、質問状を送った7社の1社の人。

このデジクリなんかで「自炊が読者に支持されているのは出版社の電子化への怠慢の結果でもある」みたいなことを書いてきたけど、基本的な認識は質問状を送った出版社も近いんだな、って思ったのだ。

ある種の「怠慢」という自認はある。でも、だけど自炊代行をこのままにしておけない、なのか、だから自炊代行をあれこれする前に電子化を進めようって判断の違い。ズレはホントに紙一重なんだな、って。だって、自炊代行への読者の支持は出版社の怠慢という言い続けているポット出版だって、同じ席に招き入れてるんだから。

さて、この出版デジタル機構はいまどんな進捗状況にあるのか?
先週、最後の連絡会を開いて、発起人会に改組。幹事会(講談社と小学館ね)をおいて、出版社への参加のお願いをすべく、分担して取組みましょうってのを始めることになった。

とはいえ、膨大な準備作業があるので、設立準備室をほぼ常駐体制でつくるところまできている。今週から、設立準備室は仮・仮事務所で毎日集合。11月には神保町に仮事務所をひらく準備も同時並行で進めてる。

あ、そうだ。出版界ってメディアであるくせに(メディアであるから?)情報公開が下手だね。「出版デジタル機構」ってググっても、出てくるのは新聞や、ネットニュースと、ポット出版と版元ドットコムのサイトばっかり。

いや講談社や小学館のサイトをキチッと見ているわけじゃないけど、あの「設立のお知らせ」は掲載されてないんじゃないかな? 出てるとしても、Googleでヒットしないもんね。報道されることには努力してるけど、まず自分で情報公開しなきゃいけないじゃないの? って思わずにはいられない。

これって出版界に限ったことじゃないかもしれないけどね。日本社会では、まだまだ情報公開の重要性が共有されていないじゃないか?

版元ドットコムって、最初は会員30数社で2000年に始めたのだけど、数年は会員社が増えなかった。現在171社だけど、増えたキッカケはアマゾンのおかげだと思っている。

版元ドットコムは書誌情報や本の在庫があるかどうかを、出版社自身で公開していこうって取組み。しかし、その当時、在庫情報を公開する意味って全然共感されなかった。同じ2000年にアマゾンが開業して、在庫があるかどうかわからない(システム化されていない)出版社の本には「在庫ありません」みたいな表示をしたわけ。

そんなふうに表示された出版社は怒った。倉庫に在庫がイッパイあるのに在庫がないと表示するのは何事か! って。ところがアマゾンは、ただ小売店としてウチには在庫がないと書いただけなんだと思う。そりゃヨドバシカメラに行ってMACBOOK Airありますか? って聞いたら、店員さんは「在庫がないんです」って言うでしょう(ホントになけりゃだけど)。アップルストアにはおいてあっても。

でも、ここんとこ誤解した出版社は多かった。そうこうするうちに、なんとか在庫なしって表示を在庫ありってことに直せないか? って思う出版社が増えた。版元ドットコムはもともと、そういう在庫情報とかをできるだけ公開して、書店の店頭で調べられるようにしよう、って目的だったから、当然アマゾンに在庫情報を送る方法を知っていたし、システムもつくってた。

そこで版元ドットコムへの関心が高まって、入会社がどんどん増えたってワケだ(まあ、ほかの理由で入会してくれた出版社もイッパイいるんで、あくまでひとつの要因ですけど)。

アマゾンが、これまでブラックボックスにおかれていた出版社の在庫情報を公開してくれたことが、在庫情報整備への(主に中小の)出版社の認識を変えてくれた。そのなかには著者の果たした役割も大きかった。著者ってアマゾンで順位とか在庫状況を見て、出版社に連絡してくる人も結構いるらしい。「オレの本は売り切れなのか? ならなんで増刷しない」とかね。

こうしたことがあって、情報公開は何より大切なんだってあらためて思い知らされた。ということで、まずは出版デジタル機構のウエブサイトを立ち上げた。つくってくれたはデジクリ読者ならよく知ってるんじゃないか? 深沢英次さん。彼にもこの出版デジタル機構への協力をしてもらってる。

ただし、つくったはつくってけど、情報はスカスカ。なによりも参加出版社の間での情報共有のためのメーリングリストづくりとか、優先してやってるところなんで。

【沢辺 均/ポット出版代表】twitterは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)

ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。おやじバンドでギター(年とってから始めた)。日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。