講師だって、最初は初心者だもの[番外]Webアドバイザーになりたい 〜クライアントと制作者をつなぐ人が必要でしょう?〜
── 森 和恵 ──

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こんにちは。森和恵です。
今回は、めずらしく自分の意見をまとめる記事を書こうと思います。

今年の初めぐらいから、漠然と「Webディレクター」の仕事がしてみたいと思うようになりました。きっかけは二つ。

「Webサイト導入[超]入門 〜ホームページをこれから始める方のために〜」
 |< http://www.sansokan.jp/events/eve_detail.san?H_A_NO=11840
>
「Webサイト[出直し]入門 〜あなたのサイトには何が足りないか〜」
 |< http://www.sansokan.jp/events/eve_detail.san?H_A_NO=11841
>

というセミナーを担当しているのですが、受講生の方から相談を受けるのが、外注の制作会社さんへの不安や不満でした。諸処ありますが、一様にお話されるのが、自分の思ったようなサイト運営が出来ないことだそうです。

また、同業のWeb制作者の方からの話でよく聞くのが、クライアントや間に立っているWebディレクターの方への不満。先方が何をしたいのかが見えず、右往左往させられて疲れている......のだそうです。

双方から話を聞くにつけもどかしく、何とか間を取り持てる方法があればなと思ったのがきっかけでした。まずは情報収集から......ということで、ディレクションに携わっている方々のお話を積極的に聞くことにしました。その中で、お二人のセッションが心に響いたのでまとめて見ようと思います。



●中川直樹さんのセッションから得たもの

「Webデザイン・ディレクション道場(大阪)
Webデザインのディレクション力をあげるためのワークショップ」
 |< http://www.zusaar.com/event/69051
>

「CSS Nite OKAYAMA
クリエイティブを加速させるヒアリング+ディレクション術」
 |< http://cssnite-okayama.jp/vol01/
>

に参加してきました。

中川さんのセッションは、CSS Nite FUKUIでもお聞きしたことがあり、大規模・広告系のWebサイト案件制作にまつわるお話が聞けるのが新鮮でした。

【目鱗ポイント1】
『コーポレート・アイデンティティ(Corporate Identity)・ビジュアル・アイデンティティ(Visual Identity)・ブランド・アイデンティティ(Brand Identity)が伝わるデザインが必要』
 |用語説明 < http://fmstudio.jpn.org/docs/graphic/ci.html
>

Webサイトは、企業の問題解決のツールであるとはよく聞きますが、中川さんはそれに加えて「企業の強み、ポジショニングの確立」が大切だと続けました。

私はサイト設計において、「企業の利潤・ゴールを見据えた設計」には重点を置いていましたが、これは盲点でした。というか、想像できなかったのです。企業のアイデンティティ=識別=ひと目でそれとわかること。他者との差別化。同じようなサイトが林立する中で、重要だと感じました。

【目鱗ポイント2】
『Webサイトに人格を。ブランドパーソナリティを昇華させてサイトの人物像へ』

サイトと訪問者のコミュニケーションは、リアルでの人対人のようになるのが理想。とすると、サイトにも人格が必要と中川さんは話されました。サイトを擬人化し、それに合う・合わないキーワード(見た目・行動・マインドから表現)を列挙して一枚のシートにするそうです。このシートを、クライアントと制作者、お互いの共通イメージとし、制作のあらゆる工程で表現のブレを少なくすることに役立てているそうです。

このように、クライアントとのコンセンサスにおいて右脳的な相互認識が大事だと話されていました。マーケティング戦略からなる綿密な設計書も必要だけれど、五感を使って表現する右脳的な感覚訴求されるイメージ像が必要だということなのだと理解しました。ここをきちんと詰めておけば、「こんなイメージじゃなかったんだけど......」などのクライアントからのNGが少なくなりそうですよね。

【目鱗ポイント3】
「 守破離 の考えをデザインに取り入れる。
守...先人の教えを守る、破...奇をてらう、壊してみる、離...一度出たデザインから、離れて考える」 
|用語説明 < http://www.la3-beam.com/contents/shuhari.html
>

まずは、定石通りのデザインをし、クライアントに出す前に、破と離の法則で再構築してみるのだそうです。作った後にもう一回、別の観点で再考してみるということで、一段階(クライアントの要求+αされた段階)上がれるのだと思います。

一度完成したものにはどうしても執着してしまうので、これは口で言うほどやさしいことではないと思います。時間的な制約もあるでしょうし。でも、必要だなということはわかります。単純にすごいパワーだなと思いました。
※独りでデザインを完結せずチームで検討することができるから、の強みでもあると感じました。フリーだとなかなか難しいでしょう。

●長谷川恭久さんのセッションから得たもの

「パンダの会 その陸:これからのWeb
Webをつかって何をしたいか見つけ出そう」
 |< http://pandanokai.net/event/evt6/index.html
>
に参加してきました。

長谷川さんは、ブログ" could "でデザインの本質的な良い記事をお書きになっていて、今回はディレクターの仕事というより、Web制作で必要な考え方が聞けました。
 |could < http://www.yasuhisa.com/could/
>

【目鱗ポイント1】
「Webデザイナーに必要なことは、インタラクション
相手の反応、人振る舞いやその理解、Webがどんな媒体か知ること
うらづけや未来を見据えて行動すること」

流行の技術やデザインを習得するよりも、インタラクション(対話)を理解すること。物と人、人と人のWeb上でのコミュニケーションを勉強することから始めようと話されました。それには、いろんなサイト、サービスを見たり、使ったりして、その本質を見ることが必要とも。

「Web馴れしてきて、敏感でかしこい顧客にどう伝えるか?」
──そういうことが実現出来る技術を探す。技術ありきではない。技術は必要十分なら何でもOK......とも話されました。

無計画に「流行ってるから」で飛びつくのではなく、よく調べて、使う必要があれば有効利用するということなのだと理解しました。

【目鱗ポイント2】
これは、セッション中の話ではなく、ラジオ収録中の話です。プレゼンターの長谷川さんと村岡さんお二人の掛け合いから。

「プロジェクトごとにデザインの原則を決めることが必要。それが、戻れる場所、原点になる。制作行動の一つ一つを原則に照らしていき、ブレをなくす。原則は誰でもわかるものにする、具体的、用語、業界用語を使わない」

「クライアントにアウトプットを響くようにするためには、に提示するデザインには理由づけが必要。説明責任がWeb制作者にある」

中川さんのお話と、とても一致していました。やっぱり、それが正しいんだなと思いました。

●いろいろ聞いてみて、自分が思ったこと

お話しを聞いて、おぼろげながらに必要なことが見えてきたような気がします。Webサイト制作では、クライアントの事情やネット環境を十分に理解する調査が必要なこと、それを踏まえた設計が必要なこと......。それをせずにスタートするということは、転覆するとわかっている泥船を作るに等しいということ。

また、それを実現するには、Webディレクターやプロデューサーなど中間の立場にいる人のスキルアップが必要だと感じました。技術知識・企画力・コミュニケーション・現状把握......高い能力が必要だろうと思います。

逆に、中間の立場がしっかりしていれば、制作に携わるすべてがコミュニケーションしなくていいとも感じました。「クライアントの利益を上げるためにこれをしている」という意識をモチベーションにして、設計に見合った制作をデザイナーやエンジニアの各々がすれば良いと思うので。

ただしそこまでやるには、中間職の仕事に対する対価を見積もりに乗せてきちんと受け取る必要があるので、クライアントの理解をどう取るのか? も難しいところだと思います。

なるほど。中間職は、これから方法論やテクニックが成長するフィールドなのかも知れませんね。会社組織に入らないとその職に就くのは難しそうですが、何かお手伝いできることがないか、関われないかをもう少し模索しようと思います。

......ということで、今回の報告は終わりです。

さて、次回こそは、先日登壇したWDFイベントの「伝える技術」をデジクリで記事にまとめてみたいと思います。意思疎通は大事ですしね!(専門はクレーム対応とかセミナーとかですが)

ではまた次回。(^θ^)

※記事へのご意見・ご要望は下記より受付ま〜す。お手柔らかに。
< http://bit.ly/gIHFfu
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【 森和恵 r360studio 〜 Web系インストラクター 〜 】
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< mail: r360studio@gmail.com >
サイト制作の教科書 r360study < http://www.facebook.com/r360study
>

今回はすごい大それたことを書いてしまった気がするんですが、割と長い間考えていたことでもあります。この業界、クライアントと制作者の中間が足りないよね、って。本職(天職と思ってる)のセミナー講師とどう折り合いをつけていこうかも悩み所ですが、試してみたいんですよ。自分を。もう、年齢的にも割とイってるし(笑)諸先輩方、アドバイスよろしくお願いいたします。(誰となく告げてみる)