クリエイター手抜きプロジェクト[291]雑談編 ああ勘違い/古籏一浩

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スティーブ成仏。有名な人がお亡くなりになった。仏教徒だったようだ。他にもC言語を作ったデニス・リッチー(K&R本のRの方)もお亡くなりになった。今後は、どんどんコンピュータ業界で有名な人が亡くなっていきそう。

ということで今回は雑談。スティーブ・ジョブズのネタにしよう、と思ったけど、実際にはあまり興味がなくて詳しく知りません。どちらかというとスティーブ・ジョブズに言われて製品を作った技術者の人や、できあがって動いている製品の技術の方に興味がありました。例えばMacintosh(以後Macと略)には、多くのソフトウェア技術者が興味を持っていたと思います。

Macが特徴的だったのはマウスやGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)でした。ソフトウェア技術者が惹かれたのは、マウスではなくGUI処理部分です。これを真似てたくさんの「ウィンドウシステム」が登場しました。という私も、SHRAPの8bitマシンMZ-700でウィンドウシステムを自作した一人です。以下に実際のソースコード(Z80用)があります。

< http://www.openspc2.org/mz700/SYSTEM7c.html >

iPhoneが登場して売れ始めた時にも、「タッチパネル付きの携帯なんか日本ならすぐにできる」というような主旨の発言をした会社がありました。その後、すぐにタッチパネル付きの携帯やデジカメが登場しました。タッチパネルにすれば売れるだろうと。

タッチパネルくらいは日本の技術なら実装できるのは間違いではないですし、タッチパネルの方が使いやすそうです。どちらも間違ってはいないのですが......。これは勘違いとも言えますし、経営的にはあのように言わないといけなかったというのはあります。



これと似たような勘違いが1980年代にもありました。Macが出て「使いやすい」との評判。そして聞いて実際に触って「勘違い」。

「これはウィンドウシステムだから使いやすいに違いない」
「マウスだから使いやすいのだ」

特に1980年代は円ドルレートが1$=350円ほどで、海外のものが非常に高価な時代でした。Apple IIでさえ45万円ほどしていました。Macは、さらに高額で高嶺の花でした(高"値"の花の方が感じとしては、あってそう)。ですから本や人から聞いた噂で推測するような事は多々ありました。Mac関係で内部処理を解説した本としては、以下のものがありました。

・マッキントッシュの道具箱
< http://www.amazon.co.jp/dp/4893620231/ >

正直、翻訳が悪いのか元が悪いのか、さっぱり理解できませんでした。日本語なのに意味不明でした。それもそのはず、今考えれば肝心な部分がすっぽり抜けていて、何をやっているのかが分からなかったからです。

結局、肝心な部分が抜けたまま、ウィンドウシステムがたくさん作られることになりました。私が触った中でも、以下のようなものがありました。

・TOS
これはAtariマシンのGUI。ゴミ箱が画面左上だったりしますが、見た目はMac。ROMに焼かれているので電源を入れれば、すぐに使えたようです(楽器屋でいじった程度なので詳しくは分かりません)。

・Amiga OS
多分、見た目はWindows 2.0にひけをとらないほどNGです。ソフトバンクでいじらせてもらいました。まあ、Macに比べれば何ともです。

・Human 68K/SX Window
和製Macとも言われたSHARP X68000上で動作するウィンドウシステムです。Human 68KがMS-DOS、SX WindowがWindows 95といったところです。SX Windowは使い勝手は悪くないのですが、すでにMac IIなどではフルカラーの世界でしたので、個人的にはイマイチ感がありました。

・Just Window
これは一太郎や花子で使われていたウィンドウシステムです。回路図など描いてましたが、PC-9801ではもっさり感が多く、Mac SE上で動いていたMac Drawとは比較になりませんでした。悪くはなかったのですけど、技術力の差を見せつけられた感じがしました(DTPだったので結果的にMac Drawも使い物にならず、Adobe Illustrator 88を使うことに)。

・Microsoft Windows
有名なマイクロソフト社のウィンドウズです。マイクロソフトもかなり早い時期から開発着手していました。マイクロソフトも多分勘違いした会社のひとつだと思います。私が使ったのはWindows 2.0からでした。タイトルバーが黄色。DTPソフトであるPageMakerを動かすために会社が導入したものです。ファイルをコピーしたりする場合は、MS-DOSのコマンドを入力するという意味不明なものでした。かえって使いにくく、どうしようもないシロモノでした。

・X Window
これはUNIXマシンで動作するウィンドウシステムです。Macよりも高価なUNIXマシンなので、画面写真から想像するばかりでした。実際にいじったのは1995年以降、UNIXがローエンドのマシンでも動作するようになってからです。使い勝手は、まあ今でもあんまりよくない。

これ以外にもたくさんウィンドウシステムがありました(会社/個人を含めて)。ウィンドウシステムなら使いやすいはずだと、勘違いして(?)突き進んだと思われる会社のひとつがマイクロソフト。

本当に勘違いしたかどうかは分かりませんが、10年以上にわたって改良しつづけ、おおよそ15年かけてようやく実用性、安定性とも優れたWindows XPが発売されました。

Macの使いやすさはウィンドウシステムやマウスではないのですが、それでも間違いを信じて突き進めば、Windowsのように花開くこともあります。スティーブ・ジョブズもビル・ゲイツも、信念で突き進んだことには変わらないと思ってます。

ということで、マイクロソフト社はiPad真似てWindows 8(Metro)出すみたいです。入れて見ましたが......。業務で使う人は混乱しそうです。どのみち時代の流れとしてはクラウド環境にデータが移行し、過去の遺物としてクラウドの仮想環境でWindowsやMacなどが動作するといったところでしょう。

クラウド上にある仮想環境ならMacOS 9とか、昔の8ビットマシンとか、ゲームセンターのゲームとか、過去の資産(アプリ/データ)を残しておくことや動作させることもできるはず(多分、そうなる)。結果的に手元にある端末は、単なるデバイスセンサーにしかならないかもしれません。未来のマシンは面倒だったことが、簡単にできるはずですから。

【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/ >

ウィンドウシステムというのは、どこか惹かれるところがあるみたいで、Webブラウザで動くようなものもありました。まあ、そこだけ真似ても仕方ないのですが、それだけでも魅力があったということでしょう。楽しければ/使いやすければ、ウィンドウシステムでなくてもよい、というのがiPhone/iPad。で、今度はAndroid陣営が勘違いしている感じが......。他にもiPhoneはタッチパネルだから、iTunes Storeがあるから、とか勘違いしている間はうまくいかないでしょう。勘違いしたまま突き進めれば違うかもしれませんが。

※10/12のデジクリの、まつむらさんの「Stay hungry, Stay foolish」の謎は参考になりました。
< http://bn.dgcr.com/archives/20111012140300.html >

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< http://www.openspc2.org/reibun/CSS3/ >

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< http://www.shoeisha.com/book/hp/10days/down/index.html#9784798124186 >
(補習講義。Z80エミュとか1980年代のレトロゲームのサンプルと解説あり)

・毎度おなじみASCII.jpの連載
「第9回 JavaScriptで作れるiPhone用ボイスレコーダー」
< http://ascii.jp/elem/000/000/640/640963/ >
「第8回 PhoneGapのMedia APIでバイブ付き音楽プレーヤー」
< http://ascii.jp/elem/000/000/638/638339/ >

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