気になるデザイン[67]大手(中堅)印刷会社の人にも一言いいたい!/津田淳子

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夜寝るとき、夏は暑くて近寄って来なかった猫が、がさごそと布団をめくって入ってくるようになりました。ニヤニヤ。

そんな愛猫2匹をおいて、アルバニア、マケドニア、ハンガリーへ行ってきました。今回は、そこで買ってきたおもしろいデザインの本を紹介しようと思っていたのですが、別送にしたそれらの本がまだ届かないので次回に回したいと思います(届いてくれぃ!)。

私がのんきに旅している間に『デザインのひきだし14』が発売になりました。今回は巻頭特集が「貼る・写す・塗る。ピカピカもしっとりも特殊効果もおてのもの! 表面加工 A to Z」、巻末特集が「小口の美」です。特に巻末特集は完全に私の趣味企画ですが(すみません)、小口装飾についてこれだけまとめたものはないと思いますので、ご興味あるかたはぜひ。ちなみに、本誌小口も2色で水玉が刷られています。

さて本題。今回の巻頭特集でさまざまな表面加工会社に取材させていただいた。すばらしい技術を持った会社も多く、伺う度にあらたなことを知ることができて、たいへんおもしろかったです。

でも、ホンの少数ではあるものの「特におもしろいことはないでしょう? 目新しいこともないし」なーんて話をされる会社もありました。謙遜されている可能性もないことはないですが、私は少々うーむ、と思いました。もっと自社技術に自信を持って、お話してくれればいいのになぁと。「うちはこんなことできますよ」とか「他社と同じ技術ですが、こんなことに気をつけて仕上がりよくしてますよ」とか。

それからこれは今回の特集に関してだけではなく、常々感じていることですが、さまざまな印刷加工技術を持っている会社の中には、大手印刷会社や既存の大手(に関わらないかもしれませんが)クライアントにのみ、自社の印刷加工技術をPRして、それ以外のデザイナーや編集者などにPRすることが、視野に入っていない会社・人が多いなぁ、ということです。にわかに信じられないかもしれませんが、残念ながら本当です。



印刷加工会社の中には、クライアントから直接ではなく、大手印刷会社からの下請け仕事をしているところも数多くあります。それはそれで一つの営業形態だとは思いますし、それが自社の態勢に一番合っているという会社は、新たなクライアントを求めて営業活動しなくてもいいと思います。

でも仕事が減っていたり、今以上に仕事を増やしたいと思っている印刷加工会社なら、大手(中堅)印刷会社に営業するだけでなく、その向こうで、その印刷物をデザインしているデザイナーや、その人と一緒にものをつくっている企画者、編集者などにも、自社の印刷加工技術について、少しでも多くPRすべきだと思います。

確かに直接仕事の発注があるのは、印刷会社からかもしれませんが、その仕様を決定しているのは、その先のクライアントやデザイナーであることが多いのです。その人たちが「こんなことができるのか!」ということがわかっていなければ、その印刷加工技術が使われる機会はありません。

大手印刷会社の営業マンが優秀で、「そういうものをつくりたいなら、こんな印刷もありますよ。こんな加工を施すとよりいいのでは?」と提案してくれるなら、大手印刷会社にだけ営業していればそこから仕事が発注されると思います。でも実際には、そんな風に提案してくれる人はさほど多くありません。デザイナーやクライアント企業から「こんな加工できる?」と聞かれると、「ああ、それなら......」となることが多いかと。

デザイナーや編集者、各種企業にひとつひとつ営業していくことは大変ですが、そうした機会があった場合は、面倒だと思わずに、ちょっとずつでも自社技術をPRしてほしいなぁと常々思っています。

そして、(なんか今日は口幅ったいことばかり言っていますが......)大手(中堅)印刷会社の人にも一言いいたい。ダンッ!(机をたたく音) 「こんな加工がやりたいんですが......」と相談しても、すごく高い見積もりをだしたり、それは今回は無理ですね......と言われたりして、実現できない機会が多すぎる気がします。

確かに予算や時間、技術的条件でできないことも多くあると思いますが、「自社でやってないからわからない。できない」とか「めんどうだ」という理由で、「できない」と答えてしまっていることはないだろうか。

今、印刷物の全体量が年々減っています。それはデジタル化・電子化が進む現在ではしょうがないことなのかもしれませんが、紙に印刷したものの方がふさわしいものというのも、数多くあると思います。

そういうものを、これからもよりよく作っていくためには、「自社でできないから」なんて小さな理由で、さまざまな提案を断るのではなく、協力会社と一緒になって、少しでもいい印刷加工物をつくるべく、尽力すべきではないでしょうか。

今は、自社の利益とか自分の安寧だけを考えるのではなく、印刷加工業界全体で戦っていかなければ、いい未来はないと思うのです。

と、なんだか一人熱くなってしまいましたが、印刷物が大好きで、『デザインのひきだし』をつくっているので、日々、すてきな印刷物を見てわくわくすると同時に、そうした負の面も気になってしまうのです。愛ある故の諫言とご容赦のほどを。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp  twitter: @tsudajunko

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