デジアナ逆十字固め...[119]思考支援ツールで頭の整理
── 上原ゼンジ ──

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半年以上かけて執筆してきた本の作業がすべて終わり、いまは印刷が上がるのを待つばかり、という状態だ。ずーっと気を張ってやってきたが、終わった途端に風邪を引いてしまった。家族中が風邪になっても自分だけは大丈夫だったのに、気を抜いた途端に床にふせってしまうというのは、なんと現金な体か。

今回の本のタイトルは「写真の色補正・加工に強くなる レタッチ&カラーマネージメント知っておきたい97の知識と技」(技術評論社刊)だ。また書いた本人が覚えられないような長い名前だけど、11月初旬に店頭に並ぶそうなので、見かけたらぜひ手におとり下さい。

この仕事が決まった時は、印刷に対してまで口出しをするのは止めようと思っていたんだけど、結局は印刷機のプロファイルを作成して変換をかけるというワークフローにしてもらった。というのは、今回使った紙が微塗工紙で、かなり沈んでしまう用紙だったので、コート紙用のJapan Color 2001 Coatedで変換してしまうと、いまいちな結果に結果になることが予想できたからだ。

いちおうレタッチ&カラーマネージメントの本なので、レタッチ後の結果が良く見えないというのは、ちょっとまずい。用紙というのは、値段の問題もあるし、束(ツカ)を出したいといったこともあるから、著者がリクエストするようなものではないが、ワークフローの問題で解決がつく部分に関しては最大限努力したい。そんなことで編集担当の方にお願いをし、いつもとは違うワークフローで製作をしてもらうことになった。

まだ、その結果が出ていないので、偉そうにワークフローについて語れないんだけど、まあ本が出て、そこそこイメージ通りの仕上がりになれば、「いかにして微塗工紙でイメージ通りの色再現ができたのか?」ということを得々と語らせていただきます。



●愛用のアウトラインプロセッサ

この書き下ろし本の作業が終わるまで、やりたいことを封印してきたので、私の「To Doリスト」には、やりたいこと、やるべきことの項目がずらりと並んでいる。To DoリストはOmniOutlinerというアウトラインプロセッサで作っているのだが、「まず、何から片付けるべきか?」というプライオリティーに従い、このTo Doリストを整理するというのが、目下の一番プライオリティーの高い作業だ。

別に書き下ろしをしながらでも、いろんなことを少しずつ片付けておけば、問題はなかったのだが、同時にいろんなことができない性分なので仕方がない。で、書き下ろしに専念したおかげでその作業が捗ったのかと言えば、そんなこともなく。気がつけば、To Doリストの「書き下ろしの仕事が終わったらやりたいこと」の欄にアイディアを書き連ねている時間が多かったような気がする。

このアウトラインプロセッサというのは、かなり前から愛用しているが、単にTo Doリストを作るということだけでなく、アイディアを整理するためにも大いに役立っている。写真のアイディアが浮かんだら、それをメモし、さらに発展させたり、項目を入れ替えたりしながら、頭の中を整理するのにすごく便利だ。単なるTo Doリストではなく、アイディアメモでもあるので、自分的には一番重要なデータとも言える。

たとえば、撮影のアイディアで言えば、今30個ぐらいのネタがあり、それぞれに撮影方法、工作の仕方、撮影場所なんかがメモってある。というと、なんか仕事のできる人間のようだが、今のところさほどの成果が上がっているとも思えない。

というのは、撮影のアイディアばかりで、広報、宣伝、営業あたりがおろそかになっていたせいかとも思う。ということは、今度は広報、宣伝、営業などのアイディアをこのアウトラインプロセッサでひねり出せばいいということだ。なんだ、簡単なことではないか。

今回の本の場合も、アウトラインプロセッサを使って構成を考えた。必要な項目をどんどんメモしてゆき、それを後から順番を変えたりというのは、アウトラインプロセッサが一番得意なことだ。章立てをして、うまく構成ができたら、テキストに書きだして、Excelで読みこめば、そのまま台割ができてしまう。

さらに、このOmniOutlinerの場合は、「Apple Keynote」への書き出し、なんていう芸当もできるから、プレゼン用のファイルを作るのにも便利だ。

●「MandalArt」でアナロジー

このアプトラインプロセッサのような思考支援ツールというのは、けっこう好きで「MandalArt」に凝っていた時期がある。これは今泉浩晃氏が考案したツールなのだが、正方形に並んだ、9つのマス目の中にメモをしながら、頭の中を整理する方法だ。

最初に知った頃はまだアプリケーション化はされておらず、紙にマス目を書いてメモをしていた記憶がある。ネタは「写真とは?」でも「カラーマネージメントとは?」でも何でもいいんだけど、とりあえずマス目の一つに書きこんだら、そこから連想されることを別のマス目に書きこんでゆき、アイディアを広げていく。

単にマス目を埋めるだけではなく、左右で対立する項目を配置したりして、マス目の位置関係で項目を整理したりすると、だんだん頭の中も整理されてくる。あるいはアナロジーを考えたりするのにも向いている方法だ。

たとえば「カラーマネージメント」を分かりやすく説明するために「カーナビ」のシステムに例えられないだろうか? ということを考えてみる。まず、9つのマス目を2つ書き、それそれの中央に「カラーマネージメント」と「カーナビ」と書いてみる。そしてそれぞれに関連する言葉をマス目に書き出し、同じ位置に対比する言葉を配してみる。

たとえば、「プロファイル」に対応するのはカーナビで言うと何だろう? ということを考えてみる。プロファイルというのは、デバイスの独自の色を、基準となる色(CIEカラー)に換算するための辞書のようなものだ。ということは、住所から経緯度に換算する地図情報がそれに相当するだろう。

カーナビの「現在地」と「目的地」というのは、プロファイル変換の「ソースカラースペース」と「変換後のカラースペース」と考えればいい。それからカーナビの場合は、速さや有料道路を使うかといったことでルートが選べるけど、これは「マッチング方法」と考えればいい。彩度を優先するとか、見た目の自然さを優先するとかで、変換の仕方(ルート)が選べるのと同じ。という感じで、どんどんと発想を広げ整理していけば、カラーマネージメントのアナロジーが完成する。

けっこう面白い方法なので、興味を持たれた方は今泉氏の本をお読みください。それと現在はiPhone用、iPad用のアプリ「iMandalArt」も販売されている。ただ9つのマス目だけで思考するのではなく、あるマスからさらに思考を展開し、次の階層へとどんどん広げていくことができる。

今、「iMandalArt」のサイトで確認をしたら、別のアプリ用に書きだして図示したりすることもできるみたいだが、これも面白そうだな。久しぶりに「MandalArt」で頭を整理してみることにしよう。

◇「写真の色補正・加工に強くなる レタッチ&カラーマネージメント知っておきたい97の知識と技」(技術評論社刊)
< http://p.tl/G1ym
>

OmniOutliner
< http://itunes.apple.com/jp/app/omnioutliner-for-mac/id404478020
>

OmniOutliner for iPad
< http://itunes.apple.com/us/app/omnioutliner-for-ipad/id430118869
>

MandalArt
< http://www.mandal-art.com/
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