気になるデザイン[68]アルバニアとハンガリーで買った「ジャケ買い本」/津田淳子

投稿:  著者:  読了時間:5分(本文:約2,000文字)


もう先月のことになりますが、仕事の谷間に10日ほど旅行に行ってきました。毎年恒例の父、夫との3人珍道中です。父が「ヨーロッパでキノコ狩りをしたい」という要望を出し、僻地旅行家(?)である夫が具体的な場所を決め、ハンガリー、アルバニア、マケドニアという、特に後者2カ国はまったく知らない国へと行くことになったのでした。

今回はその旅行中に買った本の中から、ブックデザインが気になったものを数点ご紹介します。

まずは、一見、クッキーの詰め合わせにしか見えないこれ。

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写真だとサイズ感がわかりにくいですが、箱も縦横が10cm×30cmくらいで、本当にクッキーが入った箱のように見えます。

透明のフィルムスリーブを抜き、中のクッキーを取り出してみると、これが3冊の本になっていて、それぞれ丸いクッキー、四角いクッキーのレシピ(だと思われる)が一見開きごとに紹介されています。

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各本の表紙は、クッキーのアイシングやチョコレートが本物かのように、つるつるとしたグロス感あるニスが塗られていて、つくりもすてきです。実用書というより、プレゼントなどにちょうどいいのでは? という、思わず買わずにはいられない、かわいいブックデザインでした。



次はこちら。
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月そのもののように、丸い本。どうしても綴じる部分だけは直線の背になっているものの、上製本でこれはすごい。大きさも直径40cmくらいあって、けっこう巨大です。

さらに驚くことに、この表紙、ウレタンが入っていて、ふんわり丸くなっているんですが、その表面は、月の表面のクレーターに合わせた凹凸が、ボコボコッとついているんです。

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写真じゃわからないですよね......。私の手元にあるので、ご覧になりたい方は、ぜひ九段下に遊びにきてください。多くの人に触ってほしい! 内容はアポロ11の記録写真+テキストですが、ハンガリー語なので全然わかりません。

ちなみにこの本、シリーズというか、ほかのテーマでもこの装丁でいろいろ出版されていて、テニスボールやレコード、車のホイールなど、各種丸形の本が書店に置かれていました。

次にご紹介する本もハンガリーで買ったもの。さほど驚くものではないかもしれませんが、潜水艦や船、沈没船のことを書いた仕掛け絵本です。

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表紙が5mmもあるぶ厚いもので、そこに潜水艦の覗き窓のような形が型抜きされ、中にはレンチキュラーで3D印刷されたタコが覗いています。レンチキュラー、写真だとまったくわからないですね......。

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表紙をあけると、タコのレンチキュラーが貼られていて、左下にちょっと見えるように、さまざまな仕掛けが各ページに施されています。パッと書店で目立って、ほしくなってしまうブックデザインでした。
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最後の一冊は、アルバニア(私は今回初めてこの国の存在を知りました。近年までいわゆる鎖国状態で、その後多くの国民がねずみ講の被害に合って国が破綻したという、いろんな意味ですごい国です。でも、のんびりしていてい人も親切。建物のきれいでいいところでした)で買った絵本です。

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主人公の動物がマフラーと帽子をいろいろ使われたり、なくしたりして、最後戻ってくるというようなお話っぽいのですが、文字が読めないので全然わかりません......。でもこの本、すごいのは、物語のキーになっている帽子とマフラーが、本当に毛糸でつくられた感じを出すために、全ページにわたって、フロッキー加工されているんです!
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フロッキー加工とは、糊を刷った上にふわふわの「パイル」と呼ばれる繊維を植え込む加工のこと。日本だと、表紙に施すだけでも高いのに、全ページに加工しているとは。おまけに赤とオレンジの2色のパイルを植え込むなんて、どうやっているんだろう......。私いままで見たことない気がします。

とまあ、駆け足で4冊ご紹介しました。内容が読めないものばかりなのですが、どれも類推するに中身と合っているブックデザインになっていて、それがうまく印刷加工されているところに惹かれました。

うーむ、私も負けないように、いい本つくろ。がんばるぞ!

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp  twitter: @tsudajunko

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