買物王子の家づくり[18]現場で決める迷いと楽しみ
── 石原 強 ──

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家の外周には足場が仮設されました。足場はメッシュのシートで覆われたので、外からは作業する様子は見えなくなります。工事が進む中で、さらに詳細を決めていきます。設計にも時間をかけたので、現場で決めることがこんなに多いとは思っていませんでした。

●隠す方法を決める

大工さんが作業する足場はとても狭い。一人が横に向きで通れるぎりぎりの幅です。家の中を見学するために、何度か足場を伝って入ったけど、所々で頭や身体をひっかけてしまう。ここで作業するのは大変です。

上棟時は「骨組み」の状態でした。まず最初に家の外周にベニヤが打ち付けられて壁ができました。天井にもベニヤが貼られ、その上にFRP防水を施して屋根が完成しました。幸い大雨も降らずに作業は予定通りに進みます。

仕上がった屋上
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窓にはサッシが入りました。多少の雨が降っても、屋内には吹き込みません。
工事が天候に左右されずに進むので、安心できるようになりました。壁には断熱材を詰めていきます。だいぶ家らしくなってきました。

2階ダイニングの壁に断熱材が入りました
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内壁を塞ぐ前に配管工事があります。水道、電気、ガス、エアコンと様々な配管が家の中を巡って外と繋がっています。これらは通常、壁や床に隠されて見えません。これまで気に留めたことがありませんでしたが、建てる時に「隠す方法」を打ち合わせするのです。

工事中に問題になったのが、二階のキッチンから排水のための配管をどうするかです。シンクからそのまま落とすと、一階の洗面室あたりになります。そのまま剥き出しにするわけにはいかないので、水回りスペース全体の天井を下げて、配管を通すことになりました。

一階天井に取り付けられたキッチンの排水管
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ダイニングのエアコンを設置するための配管をどうするのか。そのままだとパイプが露出してしまいます。プラスチックのカバーが剥き出しになるのは格好悪いので、天井に隠したい。エアコンを設置する壁を隔てた玄関に配管することになります。玄関と二階トイレの天井を下げることにしました。

方針が決まったので、工事が進みました。給水、給湯、排水の配管が設置されています。赤と青のパイプは、なんとなく家の「血管」のように見えます。

一階洗面所の床下に設置される配管
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先日、スイッチとコンセントの場所を確認した、電気の配線工事が進みました。分電盤のある二階納戸から、いろんな色のケーブルが家中に張り巡らされています。配管が血管なら、電気配線は家の「神経」に見えます。

2階納戸から延びる配線
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工事が進む中では、施工の間違いもあります。洗濯機の水栓は右側の位置についていたのですが、奥のほうが良い。指摘して奥の正面に移動します。

二階トイレの配管は、トイレと洗面台の二本をあわせて後方で外に出す予定が、間違って工事されています。そのままだと天井から露出してしまうので、フルヤさんの指示で修正してもらいました。

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右側の配管が梁の左に移動しています。

とにかく、作業を止めないように現場で即決していかなければならないので、プレッシャーがかかります。でも、決めたことがすぐに工事に反映されていくのを見るのが楽しみです。

●迷いながら決める

外壁は「外壁通気工法」という方法で施工されている、と説明を受けました。家を長持ちさせるための標準工法のようです。サイディングの内側は、通気のために隙間になります。外壁のベニヤの表面には、透湿防水シートが貼られました。

紙のような防水シート
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外壁のサイディング材をどこで継ぐのかも打ち合わせします。ストライプ状の模様が縦に入ります。上から下まで一枚であればすっきりするのですが、製品は3mしかありません。家の高さは8mなので縦に三枚必要です。どこかで二か所継ぐ必要があります。継いだ箇所にはラインが入ってしまうので、見た目に影響があります。できればあまり目立たせたくない。

家の側面は見えないので、北と南の壁の見た目を重視して検討しました。二階の屋根にあわせて一か所。そこを基準として二階の下部で継ぐことにします。南側はちょうどテラスの位置で継ぐので、あまり目立たないはずです。

階段の形状をどうするのかも打ち合わせします。階段の位置や材質は決まっていますが、デザインが決まっていません。階段の側面にあたる「ささら」の形で印象が違ってきます。階段の傾斜にあわせたライン状のもの、踏み板にあわせた階段状のもの、踏み板の真ん中だけで支えるものなど、バリエーションがあるのです。

最初はすっきりしたライン状のものにしようかと思ったのですが、玄関に上がる外階段は、家の特長なのでしっかり印象づけたい。ささらの上が階段状、下が斜めのラインという折衷案にしました。

最終的な仕上がりは施工が終わるまでわかりません。決めた後も、別の選択があったのではとないかと多少の迷いが残ります。とにかく仕上がりを見るのが待ち遠しい。

●引っ越し屋さんを決める

年末ぎりぎりの引っ越しになるので、早めに引っ越し屋さんを予約することにしました。僕は年末まで仕事があるし、妻も二人の息子で手一杯なので、荷造りを依頼することにします。正月休みを使って荷解きは自分達でやることにしました。

引っ越しの見積サイトから、まとめて見積依頼を出しました。三社から見積をもらうことにしました。引っ越し屋さんに家の中を見てもらい、その場で金額を出してもらいます。見積と一緒に、各社はそれぞれ自社の良さ、メリットをアピールします。

見慣れたCMの大手A社は、作業の迅速さを売りにしていて、一日で梱包から運搬まで済ませるということ。新築戸建てにも慣れていて、専用に開発した養生シートで決して汚さずに運び入れるそうです。案内のパンフレットもキレイで好印象です。

シェアNo.1を誇るH社は、社員教育の良さが売りです。研修用の施設も全国にあるみたい。その施設は、見た目は単なる一軒家だけど、天井高や階段の構造など運び屋泣かせの構造になっているんだそうです。そこで何度も研修をして技術を身につけるので、狭い家でも問題なく運び込むそうです。

比較のために、どのような人員で実施するのか質問をして説明してもらいました。A社は4tトラックで4名の作業員、2名が梱包で2名が運搬。一日でまとめてやるプラン。H社は3tトラックで3名が前日に梱包。2名が運搬という5名のプラン。価格はH社がわずかに安いけど、大きな差はありません。

最後は、中堅D社。ちょっとぶっきらぼうな感じの営業マン。「前日に2名で梱包しておいて、翌日、朝から運びます」と早口でまくしたてます。「一回で運ぶこともできるけど、二回に分けてもいいですか?」と聞いてきました。

理由を確認すると、前面道路の狭さと移動距離を考慮して小型の2tトラックで二往復する。というプランを提示されました。ちょっとだけ時間はかかるかもしれないけど合理的です。価格も前の二社に比較して安かったので決めました。

土地の購入を決めてから早一年。入居まであと一か月に迫りました。これから年末まで、家づくりと転居に関わる手配や手続きなどに追われて、一層慌ただしいことになりそうです。

【いしはら・つよし】tsuyoshi@muddler.jp
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森博嗣の「銀河不動産の超越」を読む。ひょんなきっかけから不思議な家に住む事になった主人公が不思議な出会いに導かれて人生を変えていく。小説の中の家とはいえ実際に住んでみたくなる。我が家も新しい出会いや変化のきっかけになったらいいいなと思います。