[3184] 技術進化が促す人類総デザイナー化

投稿:  著者:


《むやみに形にしないという選択》

■エンドユーザー大変記[17]
 Galaxy Nexus導入前のあれこれ
 ジョニー・タカ

■クリエイター手抜きプロジェクト[301]Adobe Illustrator CS5編
 カラー見本を作成する(1)
 古籏一浩

■データ・デザインの地平[14]
 技術進化が促す、人類総デザイナー化
 薬師寺 聖

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■エンドユーザー大変記[17]
Galaxy Nexus導入前のあれこれ

ジョニー・タカ
< https://bn.dgcr.com/archives/20120116140300.html
>
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このテキストが載る時にはとっくに松がとれておりますが、あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。

今年は、さすがに年賀状が書きにくかった。昨年の未曾有の震災や災害を思うと、慣用句が使いにくいのと、年賀状自体、遠慮しようかなとも思いました。

ただ頂いている以上はご返信をしないといけなかったので、年賀はがきを使わず、通常のはがきに"年賀"と書いて出しました。これほど年賀状を出すのに複雑な気持ちになったのは1995年以来だと思います。

Galaxy Nexusを買う、と昨年高らかに宣言しましたが、年末バタバタしてたのと、もう一つ理由があって一度見送りました。というのは、これを書いた後に群馬に帰省することになり、端末を換えてしまうと、受信感度の問題があるということに気づき、帰ってきてから換えようと思いました。

そして当初の懸念として、XperiaのmicroUSBコネクタが緩んできて、データ転送がうまく行かなくなったのと、充電が不完全になったこと(バッテリ自体の劣化もある)。これは織り込んではいたのですが、とりあえず安定を優先しました。

現に実家では、WiMAXがまだエリア非対応であるためEVO WiMAXは持っていけず、Xiは自宅近辺すらもまだ非対応なので論外、ということになります。

ただ、FOMAは横浜や都内と比べると群馬の方が繋がりやすいのは昨年とみに感じました。都内でFOMA-HiSPEEDを使うと、通常の半分以下の速度しか出ない。これは確かにストレスが溜まります。しかし群馬で使うと、体感でもそれ以上の速度が出ています。多分使用しているユーザーの数も関係があるのでしょう。

電車で移動すると、とくにそれを感じます。群馬に帰省する際、湘南新宿ラインを使うのですが、やはり大宮までは繋がるけれど重い。大宮過ぎたら移動体の中で使う故のネックか、電波が入ったり入らなかったりする。

結局ネットブックは電池保ちの観点から使わず、Xperiaで主にネットを使ってました。実家はネット環境がないので、通信手段はそれに頼ることになります。ないよりマシです。

で、2月末からのMWCでもっといいものが出る、というオチも多分ついてくるでしょう。ちょうど今CESで、レノボのATOM搭載スマートフォンや
< http://www.gizmodo.jp/2012/01/hands-on-with-the-first-intelpowered-phone-you-can-buy-in-china.html
>

大容量3300mAhバッテリ搭載のモトローラ・ドロイドとか
< http://www.gizmodo.jp/2012/01/_ces2012_3300mahmotorola_droid.html
>

かなりそそられるものが出ています。今回のCES、日本メーカーがまったく存在感ゼロなのが気になりますが、デジカメでキヤノンの本気を見たのがこれ、
Canon PowerShotG1 X。
< http://www.gizmodo.jp/2012/01/canon-g1-x-hands-on-this-is-not-your-dads-pointandshootgallery1.html
>

未だにキヤノンはミラーレスに参戦してませんが、この機種を叩き台にし、満を持してミラーレスに乗り込むつもりなんでしょう。

この連載の次回では、今度こそGalaxy Nexusを手に入れているでしょう。何とか1月中に入手しないと、ドコモの「スマートフォンハッピープライスキャンペーン」に間に合わないのだ(該当機種の場合、端末購入サポート解除手数料を棒引きしてくれる。でも、割賦支払いがとうに終わってるのに何で手数料取られなきゃならないんだ...)。
< http://www.nttdocomo.co.jp/campaign_event/smart_price/index.html
>

また右往左往する様をお見せできたらな、と思います。

【ジョニー・タカ】johnnytaka32(a)gmail.com

1976年、横浜・関内で生まれ、上州と越後の風を受けて育ち、来世でもFUNKを踊り続けるフリーランサー。ヴァーチャル・キャラクターに曲を付けて選曲を展開する"コンピレーション"を1998年から行っている。2012年はやっと2月発売になったPSPソフト『フォトカノ』のコンピレーションを展開予定(といっても勝手にやってるだけです。それを続けて14年目)。PS3でも『THE IDOLM@STER2』が発売されたので、そちらの選曲作業も始めてます。
< http://music.ap.teacup.com/cafedejohnny/
>
(日常ブログ)< http://ameblo.jp/johnnytaka/
>

○正月は殆ど食っちゃ呑みの繰り返しで、5日には仕事。でもエンジンはうまく掛かった。こんなにだらけてていいものか? 去年のこの頃は自作PCが壊れ、何とか直すべくビープ音解析や対処法を色々調べているのと同時にAndroidを体に染み込ませていた。なんでリファービッシュPCというものがある、ということをこの時点で思いつかなかったのか...。去年の自分に教えてやりたい。ついでに、「3月になったらでかい地震が来るぞ」も。

しかしお正月の食べ物って、いわゆるつまみばかりでお腹は満たないんだよなぁ...売り場もこの時期は変わってて、いつも買えるものが引っ込められてしまうので買い物がかえって不便になってしまう。結局、食べ足りなくて開いてるスーパーに買い物に行くため、かえってお金を使うという悪循環。

○昨年最後のデジクリで濱村さんが「関西人だが、ラーメンやお好み焼きと、ご飯を一緒にとったりはしないぞ〜」
とコメントされていた。
< https://bn.dgcr.com/archives/20111212140000.html
>

そうか。関西の方すべてが副食にご飯というわけじゃないんだな。むしろ、関東に住んでいるにもかかわらず、「なんで(ラーメンと一緒に)ご飯食べないんだよ」と言われることがある。食を押し付けられるのは嫌いだ。前も書いたが、ラーメンの場合では天下一品でチャーハンを頼むか、行きつけの家系ラーメンの店でチャーシュー丼を勧められるときぐらいのもの。

○「人の話なんか聞くな」という教え〜クリエイティブになる方法30選
< http://www.lifehacker.jp/2011/12/111215ignoreeverybody.html
>

昨年末にこれを印刷して貼り出しておいた。時々振り返りをする時に読んでいる。この時便利だったのが「Evernote Clearly」。webの広告やリンクを極力廃してプレーンな状態でページを保存できるchrome拡張機能。
< http://www.evernote.com/about/download/clearly.php
>
< https://chrome.google.com/webstore/detail/iooicodkiihhpojmmeghjclgihfjdjhj
>

ますますchromeが手放せなくなった。こういうソフト面でも、日本の存在感は完全に薄れている。日本の失われた20年の間に、海外メーカーは力を溜め続けて今の成長があるのだと思う。震災を機に、この現状が浮き彫りになってしまったのが皮肉だ。

○2012 International CES:テレビを見ながらスマホで洗濯機を回す、SamsungがWi-Fi付き家電を提案 - EE Times Japan
< http://eetimes.jp/ee/articles/1201/13/news050.html
>

これこそ日本のお家芸だろう。でもまだテレビ止まりだ。"大企業病"が蔓延しているなら、提案することすら諦めてるのかもしれない。

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■クリエイター手抜きプロジェクト[301]Adobe Illustrator CS5編
カラー見本を作成する(1)

古籏一浩
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デザイン上で助けになるのがカラー見本帳、配色表です。何かネタがないかなと思って本屋に行ったら、ちょうど「MdN」の発売日。今月号(2012年2月号。vol.214)には配色ハンドブックが付録でついてました。中を見ると配色パターンが70ページ近くもありました。

そこで、今回はこの「MdN」付録の小冊子のカラーサンプルを自動的に生成するスクリプトです。配色データは、あらかじめタブ区切りテキストとして以下のように用意しておきます。

221 150 15
200 58 63
255 240 0
208 109 140
101 172 227

左から赤、緑、青の順番です。それぞれの数値は0〜255で、数値と数値の間はタブで区切ります。テキストファイルとして、わかりやすいところに保存しておきます。

次にIllustrator CS5を開いて、新規にドキュメント(RGBカラーモード)を作成し、以下のスクリプトを実行します。最初に、AIファイルを保存するフォルダを選択します。その次に、RGBカラー配色のデータを入れたタブ区切りテキストを選択します。配色の数だけ自動的に横3×縦4個で配置し、AIファイルで保存してくれます。エラーが出る場合は、タブ区切りテキストが間違っていることがほとんどですので確認してみてください。それでもエラーになる場合は、Illustrator CS5を再度起動してください。


// カラーサンプルブロックを描画する
var myFont = app.textFonts["Arial-Black"];
var defFont = app.textFonts["Helvetica"];
(function(){
  if (app.documents.length == 0){
    alert("ベースとなるドキュメントを新規に作成してください");
    return;
  }
  var saveFolder = Folder.selectDialog("保存先のフォルダを指定してください");
  if (!saveFolder){ return; }
  var tabFile = File.openDialog("タブ区切りファイルを指定してください");
  if (!tabFile){ return; }  // キャンセルされたら何もしない
  var flag = tabFile.open("r");
  if (!flag){
    alert("タブ区切りファイルが開けません");
    return;
  }
  var baseX = 20;
  var baseY = -50; // CS5
  var boxW = 120; // 四角形の横幅
  var boxH = 100; // 四角形の縦幅
  var dx = 200;  // 横の間隔(boxW + オフセット)
  var dy = 200;  // 縦の間隔(boxH + オフセット)
  var count = 1; // ファイル名を示すカウンタ変数
  // ファイルの終わりまで繰り返す
  while(true){  // 最初に全てのパスなどを削除
    for(var i=app.activeDocument.pageItems.length-1; i >=0; i--){
      try { app.activeDocument.pageItems[i].remove(); }catch(e){}
    }
    for(var yy=0; yy< 4; yy++){
      for(var xx=0; xx< 3; xx++){
        var data = tabFile.readln().split(String.fromCharCode(9));
        if (data.length == 0){ return; }  // 空行の場合も終了
        $.writeln(data[0]+","+data[1]+","+data[2]);
        drawRect(baseX+xx*dx, baseY+yy*-dy, boxW, boxH, setColor(data[0], data[1], data[2]));
        if (tabFile.eof == true){
          saveFile(saveFolder.fullName+"/"+count+".ai");
          return;
        } // ファイルの終わり
      }
    }
    saveFile(saveFolder.fullName+"/"+count+".ai");
    count = count + 1; // 1つずつ増やす。ページ数に合わせて数値を変えてもOK
  }
  
})();
// ファイルを保存する
function saveFile(filename){
  var savefile = new File(filename);
  activeDocument.saveAs(savefile);
}  
// 指定した色で四角形と文字を描く
function drawRect(x, y, w, h, tempColor){
  var layerObj = app.activeDocument.activeLayer;
  // 上の大きい四角形を描く
  var rect = layerObj.pathItems.rectangle(y, x, w, h/2);
  rect.filled = true; // 塗りあり
  rect.stroked = false; // 線なし
  rect.fillColor = tempColor; // 塗りの色を指定
  // 中央の四角形を描く
  rect = layerObj.pathItems.rectangle(y-h/2-2, x, w, h/4);
  rect.filled = true; // 塗りあり
  rect.stroked = false; // 線なし
  rect.fillColor = tempColor; // 塗りの色を指定
  // 下の四角形を描く
  rect = layerObj.pathItems.rectangle(y-h/2-h/4-4, x, w, h/4);
  rect.filled = true; // 塗りあり
  rect.stroked = false; // 線なし
  rect.fillColor = tempColor; // 塗りの色を指定
  // BLACKとWHITEの文字を描く
  drawText(x+8, y-h/2-h/4+2, "BLACK", 20, myFont, setColor(0, 0, 0));
  drawText(x+8, y-h, "WHITE", 20, myFont, setColor(255, 255, 255));
  // RGBの文字と値を描画
  drawText(x+w+4, y-12, "R "+tempColor.red, 9, defFont, setColor(0, 0, 0));
  drawText(x+w+4, y-22, "G "+tempColor.green, 9, defFont, setColor(0, 0, 0));
  drawText(x+w+4, y-32, "B "+tempColor.blue, 9, defFont, setColor(0, 0, 0));
}
function setColor(r, g, b){
  var tempColor = new RGBColor();
  tempColor.red = r;
  tempColor.green = g;
  tempColor.blue = b;
  return tempColor;
}
function drawText(x, y, str, fsize, font, color){
  var textObj = activeDocument.textFrames.add();
  textObj.contents = str;
  textObj.paragraphs[0].fillColor = color;
  textObj.paragraphs[0].size = fsize;
  textObj.paragraphs[0].textFont = font;
  textObj.translate(x, y);
}


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/
>

あけまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。と書いても、すでに小正月過ぎ。ハッピーマンデーで成人の日が、ずれたので毎週連載なのに、毎年時季外れのご挨拶となっております......。RGBカラーの配色は印刷なんかで使わないよ、ということで、次回はCMYKで、CS3/CS4で動作するスクリプトです。タイトルにもちゃんと(1)とつけてあります、はい。

・クリエイター手抜きプロジェクト【2010年分まで用意しました】
< http://www.openspc2.org/projectX/
>

・毎度おなじみASCII.jpの連載
「CanvasとPhoneGapで作るiPhone用落書きアプリ」
< http://ascii.jp/elem/000/000/661/661027/
>

・新JavaScript例文辞典【HTML5関係も追加】
< http://www.openspc2.org/reibun/javascript2/
>

・Google API Expertが解説する Google Maps APIプログラミングガイド
【発売中】
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>

・jQuery Mobile 1.0例文辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/jQuery_Mobile/1.0/
>

・CSS3(スタイルシート Level 3)例文辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/CSS3/
>

・改訂5版JavaScriptポケットリファレンス
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・10日で覚えるHTML5入門教室【増刷。補習講義でiOS5/Android 4に対応】
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・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/
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・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
< http://www.openspc2.org/book/PDF/Adobe_Illustrator_CS3_JavaScript_Book/
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吉田印刷所の「印刷の泉」でも購入できるようになりました。

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■データ・デザインの地平[14]
技術進化が促す、人類総デザイナー化

薬師寺 聖
< https://bn.dgcr.com/archives/20120116140100.html
>
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本メルマガに執筆を始めて、一年が過ぎました。
今年は、データ設計からさらに枠を拡げて語っていきたいと思います。
また一年、よろしくお願いいたします。

●ノンデザイナーのデザイナー化が進行中

前回の記事「プログラマ or デザイナから、"デベロッパー"へ」で述べたように、「プログラマ」や「デザイナー」という5文字のテキストには、職業上の利便性以上の意味はなく、デザインを理解できるかどうかは、職業名には関係ありません。RIA開発の現場では、純プログラマなどのノンデザイナーが、自らデザインを手がけるケースが増えつつあります。

彼らノンデザイナーは、企画立案からラフを作成してプレゼンを行うまでの、いわゆる業界特有の作業の進め方や慣例からは自由です。そのような人たちのデザイナーに占める割合が増えるにつれ、常識も慣例も変わりつつあります。

アプリケーションのタイトルロゴのデザインひとつとっても、ノンデザイナーの多くは、C.I.マニュアル(※1)で規定されるような制約にはとらわれません。なにしろPCからスマホまで、複数の異なるデバイスでの利用を想定しなければなりませんし、仮に一機種に限定したところで、複数の条件を想定しなければならないのですから、当然です。

たとえばWindows Phoneアプリでは、ひとつのタイトルロゴを、62pxのアイコンから200pxのタイルまで、4種類のサイズに展開する必要があり、同じデザインであっても、大きなタイルには広告の役割が、アイコンにはピクトグラムとしての役割がもとめられます。そのうえ背景色はユーザーの設定次第です。想定可能なすべての条件に利用規定を設けるなど現実的ではありません。

ノンデザイナーたちは、アイコンを自動生成するソフトを用いて、ひとつのタイトルロゴを指定サイズへと展開します。その際、サイズ別に、用途に応じたデザインの調整を行うことはありません。旧来のデザイナーから見れば、これは理解できないことでしょう。が、それでも、問題はないのです。プログラムが正常に動作し、審査を通過すれば、それはれっきとした商品なのですから。

そしてもし、アプリを気に入ったユーザーが、旧来のデザイナーなら立腹するようなデフォルメしたロゴを利用してブログなどで宣伝したとしても、ノンデザイナーの開発者が野暮な指摘をすることは、まずないでしょう。

デザインを手がける人が「プロでなければならない」理由は何もありません。そして、常識が永遠に固定でなければならない理由もありません。誰もが「デザインをしたい」とは思わないかもしれませんが、誰もが「デザインをしてよい」土壌は、既に整っているのです。

●技術進化が促す、エンド・ユーザーのデザイナー化

ノンデザイナーのデザイナー化は、RIA開発者にとどまらず、エンド・ユーザーにも及んでいます。

コンテンツ分野では、すでにプロの制作者ではないエンド・ユーザーが動画サイトに投稿していますし、カメラ女子も増えています。さいきんでは、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社による「KarenT」や作品投稿サイト「ピアプロ」に、ノンデザイナの熱気を見ることができます。これまで受け手だったエンド・ユーザーが、自らイラストを描き、CGを作り、撮影し、編集し、デザインしているのです。

このような状況に加え、以前の記事(第12回「センサーの進化がユーザー・インタフェースを変える」)で紹介したように、技術はすさまじい勢いで進化しています。

先に述べた、Windows Phone のタイトルロゴのデザインについても、すぐに3Dのデザインを要求される時代がくるでしょう(もっとも、2次元の方が珍しくなる時代を見越して、「あえて平面的」なデザインをするのも一手です)。

近い将来、画面サイズの制約が消え、カードを持ち運ぶだけでどこでもディスプレイとなり、動けばKinect(※2)が意図通りの処理を実現してくれるようになります。さらには、(これまでの連載で述べたように)「存在のデバイス化」時代には、カードすらなくなり、思考をセンサーが取得して処理を実行するようになります。

それらの技術は、エンド・ユーザーのデザインを強力に支援するでしょう。新しい技術は、人類総デザイナー時代を推し進めます。

こうした「プロでなくとも作り手になれる」状況は、著作権などの厄介な問題を引き起こすだけだと思われるでしょうか? 否、過去記事で何度か触れているように、センサが進化すれば、著作権の範囲はあいまいになります。常識は変わります。それは、さほど遠い未来のできごとではありません。

●日常生活の中の、エンド・ユーザーのデザイン

では、これからの技術が支援するエンド・ユーザーのデザインとは、どのようなものでしょうか。一例をあげてみます。

たとえば、あるユーザーが新居に移転して、カーテンを買うとします。近未来、もはやネットショップで、どのデザインをチョイスするか、ひどく迷う必要はありません。

機能性の充実した白いカーテンを一点購入すれば、エンド・ユーザー自身が図柄をデザインできるからです。考案したデザインを、生地に投影したり、クリアしたりというと試行錯誤のすえに決定したデザインを、指定した期間、生地に定着させることができるのです。

エンド・ユーザーは、吊られている白いカーテンにカメラを向け、部屋の壁に投影されている画面のうえに、一個のミカンをかざします。画面上にカーテンが撮り込まれ、その上にミカンの画像が浮かび上がります。

ユーザーが、画面の中のカーテンの、ミカンの絵をいくつかレイアウトしたい部分にタッチしていくと、そこにはミカンの画像が表示され、タッチする度にミカンの画像が増えていきます。タッチの強度により、画像の大きさが決まり、標準的なペイントツールのように、透過したり、線を加えたり、パターン化して、デザインを仕上げていきます。

デザインが決まり、設定を保存すると、カーテンという「モノ」は白いままであるにもかかわらず、即座に柄が反映され、オレンジの模様に彩られた、華やかな部屋が出現します。その柄はいつでも変更することができるので、ユーザーは、明日は朝庭に咲くはずの花の柄に変えよう、などと考えるかもしれません(※3)。

それがカーテンではなく衣料品なら、デザイナーのデザインした服を買うのではなく、自らテキスタイルデザインを実践して、その結果をまとう、デジタル衣装が実現するでしょう。

●デザインにとどめて、モノを作らないという選択

エンド・ユーザー自らがデザインをするようになると、デザイナー人口が増え、それに比例して蓄積されるデータも増えます。データを格納するハードウェアと、それを維持する電気も必要になります。作り手の食指を動かすハードウェアが次々と発売され、その製造には、いっそう資源が使われることになります。そのうえ、デザインしたものを次々製造してしまうと、いくら資源があっても足りません。

人類総デザイナー化が直面する最初の問題は、省資源と真っ向から対立するということです。

我が国では、高度経済成長期以前は、誰もが生活の中で、デザインに関わってきました。食事にせよ被服にせよ、生活必需品は、一点ずつ、手作りしていた時代がありました。

今でも、生活の中で、何がしかのデザインをしている人は多くいます。キャラ弁を作ったり、日曜大工に汗を流したり、家庭菜園やガーデニングに取り組んだり、さらには時間をかけて布を織ったり、一点ものの服作りやパッチワークや刺繍やアクセサリー制作に凝ってみたり、膨大な人手をかけて田畑に絵画を描いてみたり。それらのすべてにデザインという工程があります。

これほど賢明な行為があるでしょうか! 生活に必要なものをデザインの対象とし、ヒトが自らの頭で考え、考えることにできるだけ多くの時間を費やし、人力でモノの形にし、作られたものを自然に返す行為こそが、最も省資源です。

しかし、かつて我々は、大量生産大量消費の道を選びました。結果、"製造や廃棄の工程で資源を消費し、人体に悪影響を及ぼす物質を排出する"モノがあふれています。季節がめぐる度、作られ、捨てられるモノの往来を、我々は受け入れています。そのうえに、どんどんデザインし、データを蓄積し、それを次々形にするのでは、我々は過去から何も学ばないことになってしまいます。

デザインの結果はデータの状態にとどめ、むやみに形にしないという選択をしなければなりません。50点のデザインを考えたなら、50点のデータを作って終わりとすればいいのです。50個のモノを作ってはならないのです。それがどうしても生活に必要ならば、モノの形にするのは一個だけにとどめるべきです。

人類総デザイナー化が良い結果に帰結するために必要なこと、それはエンド・ユーザーが、形ある結果を得て満足するのではなく、デザインの過程を楽しむ能力を獲得することに尽きるでしょう。

●人類総デザイナー化の行く末

さいごに、人類総デザイナー化の先に待っているものを、すこし覗いておきましょう。

インテリアが精神が影響し、デザインされたカトラリーに盛り付けられた食事が脳を育くみ、それが人となりに影響するように、モノのデザインは、ライフスタイルの一部を形作ります。モノのデザインに慣れたヒトは、次のデザインの対象を、ライフスタイルに定めます。

さらに、デザインの対象は、自分自身のライフスタイルから、他者のそれへと移ります。ヒトは、生き方をデザインすることを望み、人生を完全に制御しようと試みます(※4)。

そして「私は、どのようにデザインされた社会の中で、どのようなデザインとして存在したいか」と考え始め、社会にコミットし、その限界を知ると、今度は自分自身を「物理的に」再構築しようとするでしょう。

しかしながら、社会が変わっても、自分が変わっても、世界が変わるわけではなく、ヒトは、私という「存在のデザイン」について問いを発するしかなくなるのです。

次回は、ノンデザイナーのデザイン実務について、具体的な話をします。


※1 カラーの場合/モノクロの場合/白地の場合/黒地の場合を想定して色を決定し、各種サイズについて、ロゴのバリエーションや用途を規定した資料。

※2 Microsoft、「Kinect for Windows」に最適化したKinectデバイスを発表(ITmediaニュース)
< http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1111/23/news013.html
>

※3 脳内イメージをそのまま出力して図柄とする技術も登場するでしょうが、ノンデザイナーのエンド・ユーザーが鮮明なイメージを出力することには、技術以外のハードルがあるでしょう。

※4 「自分の人生は自分の意思通りにデザインされるべきだ」という考えは、生命倫理や脳神経倫理の問題につながります。

◆Windows Phone アプリケーション 続々開発、公開中

国内旅行のお供に!「道友日本 Ver.1.0(115円、試用版あり)」
旅での出会いをテキストと写真で記録するアプリ。
企画デザイン:薬師寺聖 開発:kuniyasu。
< http://www.windowsphone.com/ja-JP/apps/3b73dbc8-64bd-42b4-aacd-52bb24ad398e
>

「一日一句 Ver.0.8(無料)」俳句を記録するアプリ。企画開発:薬師寺聖
ソーシャルメディア対応版を開発中、近日公開予定。
< http://www.windowsphone.com/ja-JP/apps/5299e050-6ad2-4e8f-84a1-e1f7b755576e
>

ほかにも続々開発、公開中。最新情報は、PROJECT KySSのWebサイト(Silverlight 4)。
< http://2008r2.projectkyss.net/NewKySSTopR2/NewKySSTopR2.Web/NewKySSTopR2TestPage.aspx
>


※MSDN Code Recipe「逆引きサンプルコード」
< http://msdn.microsoft.com/ja-jp/ff363212#WinPh
>
ブログ「イメージ AndAlso ロジック」
< http://blogs.itmedia.co.jp/seindesign/
>に、サンプル解説記事を書いています。
Windows Phone アプリケーション開発にご利用ください。

※脳機能をテーマとする2曲入りアルバム「Change The Brain」を、Listen.jp、Amazon MP3 ほかで発売中です。
筆者サイトでは、HTML 5 のAudio要素を使った試聴を展開しています。
< http://lyric.seindesign.net/info/ChangeTheBrain.htm
>


【薬師寺聖/個人事業所セイザインデザイン】
個人事業所 < http://www.seindesign.net/
>
ブログ < http://blogs.itmedia.co.jp/seindesign/
>
PROJECT KySS < http://www.projectkyss.net/
>
< infosei@seindesign.net >

ヴィジュアル、サウンド、テキスト、コードを扱う、四国の個人事業主。科学技術や医療・福祉分野のXML案件の企画デザインに実績があり、コラボレーションユニットPROJECT KySS名義で、XML、RIA、.NETに関する書籍や記事、多数。さいきんは、Windows Phone 対応 Silverlight アプリケーション開発に注力している。
Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev
(Oct 2003-Sep 2012)

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■編集後記(01/16)

・昨日は毎年恒例のマンション定期総会であった。恒例「させていただきます」大会である。管理会社の担当が過剰かつ不適切に敬語を使うので、聞き苦しいったらありゃしない。ありがたいことに今年から担当が代わり、「させていただきます」は少し減った。説明もテキパキしている。出席者側にも恒例わけのわからない人がいなくて、これまたラッキー。わたしは経理関係はサッパリなので説明は聞き流しているのだが、出席者にはその方面の専門家が何人もいて、なるほどねえ、それは重要なポイントだなという質問を繰り出してくる。運営側の反応も的確で、いつもより30分くらい早く終わった。ただ、新しい担当も「重要事項説明書を見てください」で済むのを、「お手元に重要事項説明書をご用意いただいてよろしいでしょうか」なんて言うので「いやです」と応じたかった。読売1/13コラム「いやはや語辞典」で、作家の関川夏央が「○○させていただきます」を取り上げた。しきりに「させていただきたがる」人だった鳩山由紀夫の、「ていねいなんだか人をバカにしているのかわからない言葉づかいが、その異星人的雰囲気とあいまって、ちょっと怖かった」と書き、あれは「人間関係に慎重、というより人間関係にビクビクした日本語だ」と断じる。使われるのも、使うのもいや言葉である。いっぽうぜひ使いたい言葉もあって、先日妻とのささいな諍い時に発してみた。「私の関心事は天下国家の話だ」......火に油を注ぐ結果になった。(柴田)

・リファービッシュPC。そうかこれなら安く手に入る。Windows専用機が欲しいけど、普段ほとんど使わないものにコストかかるのはなぁと二の足を踏んでいた。もうすぐ出るAdobe CS6に備えたいし、カギつき保管庫をはじめとした家具類も欲しい。修理したいものもあるしと悩んでいたので、出費が減らせそうなリファービッシュPCを探してみようっと。/MdNしばらく買ってないなぁ。見てみようっと。/ノンデザイナーの話が興味深い。/家事が楽になる、家事が楽しくなる家電が欲しいよ。家事をしながらでも情報収集したいよ。最近はテレビ離れする人が増えているらしいけれど、ラジオではがっちりニュースや討論番組は多くないような気がするし、耳からでもテレビニュースを入れておきたい。家事をしながら語学勉強できるほど器用ではないので、ニュースあたりがいいし、テレビだとラジオよりゆったりしている(密度が高くない)ので、多少聞き逃しても意味はわかる。しかし家事をしながらテレビを持ち歩くのも何だしと、結局はiPhoneに入れておいた録音していたラジオ番組やら音楽を聞くことに。あ、PodcastのNHKニュースのこと忘れてた。(hammer.mule)