ネタを訪ねて三万歩[84]ズレまくりをエンジョイしたい
── 海津ヨシノリ ──

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もう1月も終わろうとしているこの時期に、新年の挨拶は意味がないですね。書いている内容も的外れ全開の、私らしい滑り出しになっていますが、今年もよろしくお願いします。

さて、昨年最終授業後に、造形表現学部映像演劇学科一年生の作品発表会が盛大に行われることを知ってビックリしてしまいました。今まで映像演劇学科の学生とはそれほど親しくはなかったので、気がつかなかったわけです。

正確には映像演劇学科の映像系の学生とのコネクションはありましたが、演劇系の学生とのコネクションがほとんどなかったのです。これは、昨年ちょっとしたことから、映像演劇学科の多くの学生と知り合えた賜物なのです。

とにかく、本格的な演劇だけでなく、色々なパフォーマンスや展示はとても衝撃的でした。時間をかけて練習した成果が、誰の目にもハッキリと感じ取れる作品や上演だからです。どう考えても一夜漬けじゃできない内容です。

ところが、このイベント自体を大学側ばかりか、学部としても公式に告知を行なっていなかったのです。だから、私も今まで気がつかなかったわけです。これはとってももったいないことだと思います。おそらく授業の一環であることと、年末という時期などからセキュリティも関係していたのかもしれません。

私論ですが、大学は地域と共存できなければ意味がないと感じています。地域とは、老若男女がバランスよく住んで普通に生活している町です。つまり、学内のイベントは積極的に地域へPRすることで、地域の方々が見聞きし学生を育てるといった関係を、私は良しと考えています。




とにかく、世の中にはコンピュータでササッと処理したものがデザインだと勘違いしている方が多いので、このように時間をじっくりとかけた造り込みの成果を、多くの人に感じ取ってもらいたいと思っています。

とりわけ学生に感じて欲しいのは当然です。そんなわけで、今年の年末は、私の講義後などでもしっかりと告知したいと考えています。まっ、告知しないと伝わらないほど広いわけでもないのが謎ですけど。まずは情報のうまい流れを誰かが創り出すことが大切ですね。

私はいままで、狭い敷地の大学なのに意外と他学部との交流が少ないことを不思議に感じていました。だから、可能な限り接点をつくるように心がけています。もちろん積極的に交流している学生だっています。それは一目瞭然で直ぐに分かってしまいます。一種のオーラのようなものが、全身から滲み出ていると言い替えた方がいいかもしれません。それ程その違いは如実です。

実はこの問題は実生活、とりわけ仕事関係でも見ることができます。例えば、頻繁に出向く会社も、部署が違えばまったくわからないわけです。もちろん、それは当然の話なのですが、もしかしたら面白い出会いがあるかもしれません。つまり、自分の直ぐ近くをすり抜けていく人のことに気が付かない「もったいない」があまりにも多すぎると感じています。

逆に、周りにいる素敵な人達との出会いも、間にいる無神経でいい加減な人のためにチャンスを逃してしまうことも少なくないはず。それは出会うはずだった素敵な人達の、さらに先にいる人達との関係をも遮断してしまうわけです。出会わなければ今の場から動くことはできません。

もっとも、嫌な人と無理に関わる必要もないわけです。必要以上の無理はお互いのためになりませんからね。結局、いつの時代も気持ちの良い人同士の出会いや関わりは、案外少ないのかも知れないと感じています。そうでなかったら何百人、何千人もの親友を誰もが持っているはずですから。

そんなこんなで、昨年末の多摩美術大学造形表現学部は色々とイベントが続いて大変でした。極めつけは授業最終日22日に、担当コース外の学生の打ち上げに引っ張られて乾杯。翌23日は海津ゼミの忘年会で乾杯。そしてその次の24日(クリスマスイブ)がこの映像演劇学科の発表会という、かなりの強行軍をクリアしたことです。さすがに3日目は、深夜に車の運転予定があったので宴席には参加しませんでした。

しかし、意識している訳ではないのですが、デザイン学科よりも造形学科や映像演劇学科(2011年から唐突に)の学生からの、制作相談やアドバイス依頼が多いのがとても不思議です。

なぜって、この両学部を足さないとデザイン学科の学生数と同じにならない人数差。しかも、デザイン学科の学生とは異なり、共通教育で私の講義を履修していなければ知り合うことはまったくありません。つまり、接点がとても少ないのです。にもかかわらず、比率は圧倒的に非デザイン学科という不思議は、私のまだ気が付いていない怪しい(?)要因が何かあるのでしょうね。

そんな不思議なつながりをいつも感じています。例えば、良く一緒に騒いでいる学生が、別の私と騒いでいる学生のグループと仲が良かったなどがソレです。それは大学だけの話ではありません。仕事関係でも同じですね。

これは、案外と同じ種族だからかもしれないと感じています。実はこの同じ種族という感じを、子供の頃から色々と体験しています。少しニュアンスが異なりますが、似たもの同士と言い換えると分かりやすいかもしれません。

上手く説明することが難しいのですが、「あっ、この人は○○さん系だ」という感じです。容姿としての類似性と癖や性格、そして仕草としての類似性と様々なのですが、瞬間的に判別できてしまいます。

また、昔々知っていた人にそっくりな人を発見することも多くなってきました。もちろん、似ているという思い込みは人それぞれです。でも私が感じた似ている人とはこの範囲ではなく、本人の分身ではないかというレベルです。

例えば多摩美術大学造形表現学部では、小学校時代の同級生の生まれ変わりではないかという学生数名に遭遇して、絶句したことがあります。あまりにも似すぎているので、不気味に感じてしまったくらいです。

また、別の学校の教え子と瓜二つというケースも発生しています。世の中には自分に似ている人が3人いるとよく言われていますが、それは同時代に共存している人のことで、時代がズレてしまうと話は別です。このように、時代がズレてしまっている類似性が、何故か私の周りには多いのです。

たぶんこの感覚は、私自身がズレまくっているからなのかもしれませんね。もちろん、ズレていることはネガティブなことだとは思っていません。色々なズレが切磋琢磨して共存し合うからこそ、新しく面白いモノが産まれるからです。そう考えると、私の周りにいる人達は大いにズレまくっていることをエンジョイしているように思えて仕方がありません。だから、巡り巡って私もズレっぱなしになろうとしているのかもしれません。いや、お互いに......。

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■今月のお気に入りミュージックと映画

[Crazy Little Thing Called Love]by Queen in 1979(UK)

邦題「愛という名の欲望」はQueenの代表曲の一つですが、30年以上経過しても色あせない、ブリティッシュロックの世界がとても気持ちがよいです。そして、何故か70年代のロッカー達が次々と再結成してくれていることに。

昨今目立つ計算されすぎた楽曲と、デッチ上げられたヒットでは、人は本当に感動などしませんからね。ちなみに、今回どうしてこの曲を選んだかについては、「少年マイロの火星冒険記」を最後まで見て下さい。ところで、最近はデンマークやフィンランドといったヨーロッパの音楽にはまっています。それはまた別の機会に紹介したいと思います。

[Mars Needs Moms]by Simon Wells in 2011(U.S.A)

邦題「少年マイロの火星冒険記」。冒頭で少しだけ、梅図かずおの「漂流教室」の親子関係がを思い出してしまいましたが、その後のストーリー中の親子関係も結末もまったく異なります。主人公マイロのお母さんリサの声優&モーションキャプチャを演じた、ジョーン・キューザックはトイ・ストーリーのジェシー役で有名ですね。

ディズニー作品なのでオチにブレはないのが分っていても、ラストは本当に手に汗となってしまいました。ただ、真空空間なのに酸素吸入用のヘルメットだけで、半袖スタイルでもOKというのは、かなり科学的に無理があり過ぎますし、今の子供は騙せないと思うのですが......。

なお、一部ではキャラクターに華がないという意見もあるようですが、私はこの作品に関しては、コレは間違っていなかったと感じています。普通で華がない分だけストーリーが生きてくると。もし華があり過ぎるキャラクターになってしまうと、「お子様ランチ」になってしまいそうですから。ちなみに、私はグリブルという火星でマイロが出会う謎の地球人がかなり気に入っています。彼こそがマイロそのものですからね。

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■アップルストア銀座のセッション

2012年2月20日(月)19:00〜20:00 Apple Store Ginza
Made on a Macとして画像処理セッション
『海津ヨシノリの画像処理テクニック講座Vol. 65』
Adobe Photoshop CS5によるブラシ機能とスタンプ処理として、Adobe Photoshop CS5の可能性としてイラストレーション手法としてPhotoshopのブラシ機能のインタククティブ性について整理してみます。
予約不要・参加無料・退席自由です。
なお、セッションの翌月(3月19日)に予定されるハンズオンセミナーの参加希望者を、セミナー修了後に募集するのがここ数ヶ月の恒例となっています。


【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/
写真家/怪しいお菓子研究家
yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com
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< http://kaizu-blog.blogspot.com
>
< http://web.me.com/kaizu
>

最近は飲み会でもあまりお酒を飲まなくなってきました。翌日の心配や体調のこともあるのですが、やはり深酒のメリットなんて皆無ですからね。とにかく普段は自宅で飲むことはまったくないので、余計にそう感じるのかも知れません。ところが、日によってはかなり悪酔い一歩手前になってしまうことがあります。

これは完全に歳のせいだと思っていたのですが、どうやらタバコ酔いしているらしいことが分かりました。ヘビースモーカーの多い宴席だと確実にやられてしまいます。服は臭くなるし、気持ち悪くなってしまう場に参加する苦痛はとんでもなく大きいものです。

事前に分かっている場合は、コート類をしまい込む大きなビニール袋を用意するのですが、突発の場合はアウトです。その点、最近の学生は喫煙率が気持ちよいほど低いので、楽しく適度なお酒で盛り上がることが出来ます。だから、ついつい学生との宴席を最優先させてしまったりするわけです。