クリエイター手抜きプロジェクト[304]電子書籍編 「コミPo!」で漫画を横書きにしてみた
── 古籏一浩 ──

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デジクリ2月1日号に、まつむらまきおさんが「マンガが生き残る唯一の方法」として、漫画も横書きにしないと生き残れないのでは、と書かれていました。
< https://bn.dgcr.com/archives/20120201140200.html
>

漫画の横書きとはおもしろい考えなので、私も実際に漫画を作って(描けないので「コミPo!」で作成)、縦書きと横書きの違いを検証してみることにしました。

漫画を紙に描いてしまうと吹き出しや漫符(漫画に特有な記号表現)の修正ができません。しかし、コンピュータ上で漫画を手軽に作れるコミPo!なら、後から自由に吹き出しのサイズが変更できる上に、横書き・縦書きの変更もボタン一発でできます。

・コミPo!
< http://www.comipo.com/
>

ということで、以前使ったキャラを使ってレトロな漫画、RetroProgrammer【生徒会長選挙編】を作りました。
まず、以下が縦書き。
< http://www.openspc2.org/reibun/comipo/RetroProgrammer/story02/
>

次が同じ漫画を横書きにしたもの。
< http://www.openspc2.org/reibun/comipo/RetroProgrammer/story02_portrait/
>



読む側としては、縦書きでも横書きでも大差ないように感じるかもしれません。横書き用は一部検証的な吹き出しもありますが、ほとんど違和感なく読めるはずです。それでも、縦書きと横書きの同じページを開いて見比べれば、その違いは一目瞭然です。

以下に、実際に縦書きと横書きの漫画を作成してみて、感じたことを書いていきます。もちろん、私は本職の漫画家でもなければ、イラストレーターでもありません。素人の意見ですので、プロの漫画家であれば、うまく解決できる部分もあるはずです(「コミPo!」の限界というのもありますし)。なお、ここでは左綴じ、右綴じといった部分は触れないことにします。

まず困ったのが、横書きにすると「情報量が減る」ということでした。上記の漫画は、コンピュータ関係というか家電メーカーネタなので、英文字なども出てきます。英文字が出て来る場合は、あきらかに横書きの方が普通に読めます。しかし、それ以外の場面では横書きにするとセリフが入らないケースが多く発生しました。これは「吹き出しに制約がかかり、読みにくくなる」という状態です。

人物が出てくる漫画の場合、人物は立っている、歩く、走るなど縦長の状態(レイアウト)が多くあります。人間は縦に細長いので当然といえば当然です。縦書きの場合は、その人物の横に縦長に吹き出しを入れることができます。その際、吹き出しを上に置くか、下に置くかを選択できます。これが横書きになるとうまくいきませんでした。

横書きにすると、吹き出しは当然横長になります。横長にすると、人物が縦長なので上か下のどちらかに、吹き出しが来ることになります。その際、短いセリフなら上に配置できますが、少しでも長いセリフでは人物の下(コマの中央から下側)に配置することになります。

というのも、人物の表情を吹き出しで隠すことはできないからです。また、吹き出しが下になることで、たとえば人物が握り拳を作って怒りを表現するような場合、拳が隠れてしまいその表現できなくなりました。

吹き出しが複数ある場合、つまり人物がコマに2人以上いる場合は、さらに困りました。吹き出しは人物の下に配置しなければいけませんが、セリフが多いと人物の頭以外が隠されてしまう状態に。配置が悪いので、人物をコマの端に移動させたところもあります。

セリフの文字数が多くなると、改行しなければいけません。縦書きなら2行で済むところが4行近くになることもありました。その際、句読点も変更しました。どちらかというと、縦書きの方がスペースを消費せず、人物の表現が豊かになると感じられます。

それから、横書きは説明文で縦書きはセリフとして使っているケースもあるので、そういうところで区別付けられるというのも縦書きのメリットかも。

少年漫画はセリフが短く擬音が多いので、横書きにしてもよさそうです。そういう漫画であれば、インターナショナルに対応しやすいかもしれません。逆に、女性向け漫画でセリフの多いものは、なかなか大変そうです。

吹き出しを大きくしたり、配置換えをするということは、見た目では少しの手間で済みそうですが、多分それは違う気がします。これはプログラマが、動いているプログラムを修正する作業に近いと思います。手を加えるに従って、少しずつおかしくなっていき、どこかおかしいけど、そのおかしいところが分からないという感じでしょうか。

漫画をそのまま横書きにしただけでは、「柔道」が「JUDO」になって戻って来るような感じになるのかもしれないですね。まあ、何にしても横書き漫画だとセリフがうまく入らないので、やはり漫画は縦書きの方がいいのではないでしょうか。

【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/
>

とりあえず、上記の漫画は横書きにしましたので、アメリカやヨーロッパで次々と翻訳され、大ベストセラーになること間違いないでしょう(笑)

あと、iBooks AuthorですがASCII.jpで記事を書きました。
HTML5+JavaScriptのコードも埋め込むことができますので、より多彩な処理&表現も可能です。JavaScriptを使えば縦書きも表現することができます。

・毎度おなじみASCII.jpの連載
「iBooks AuthorでHTML5の電子書籍作ってみた」
< http://ascii.jp/elem/000/000/665/665232/
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・クリエイター手抜きプロジェクト【2011年分まで用意しました】
< http://www.openspc2.org/projectX/
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・改訂5版JavaScriptポケットリファレンス
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・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/
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・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
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