電網悠語:HTML5時代直前Web再考編[186]Web愛とIE6問題
── 三井英樹 ──

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体調を崩して少しばかり休んでいる。ネットに触れるのを極力抑えて、その分諸々思索する時間を持てている。

ここ10年少しの間、Webのことしか考えずに生きて来た気がする。そのことをもうすぐ大学生になる娘からの言葉で気付かされる、「パパといえば、残業だよね」。体調を崩していることもあり、こたえる。

   試合に勝つのは素晴らしい。
   試合に出るのも素晴らしい。
   しかし、試合を愛することが何よりも素晴らしい
    ペンシルベニア大学バスケットボール競技場「パレストラ」の飾り版
    出典/参考:最も偉大なこと ≪ 今日のデイリーブレッド
    < http://bit.ly/zt3qxb
>

パレストラとは、大学バスケットボールの殿堂でもあるそうだが、この言葉に見守られながらの試合って、参加する人も、応援する人も、背筋を正されるのではないかと思ったりする。そして、試合を愛するって何だろうって再考させられることもあるのではないか、とも。

礼儀正しく、お行儀よく、ではないだろう。真剣なプレー、もう1点あと1点という貪欲さはフィットする。でも何か礼節がある。ただ勝てば良いのではない。ただ負けたから恥じるのではない。そんな何かか。






例によって、ネットやWebを「愛する」とは一体何なのだろうと考える。先ずは時間のかけようだろうと考える。でも、時間をかけることが、そのまま愛する事ではない。それでも、一番時間をかけるということは、一番の関心事である証拠にはなる。一番時間を忘れて没頭できるからこそ、それだけ時間をかけられるのだとも思う。

それほどの時間をかけて何をやって来たのだろう。私自身はWebに接して何か喜びを得ている、正直言って楽しい。諸々の情報に指先だけでアクセスできる、この至福。子供の頃の面倒な手続きが消えたと実感できる喜びでもある。

でも、と考える。ネットのために私は何をしているんだろう。愛しているのなら、一方的な利益享受は最終的には残念な結果になるような気がする。そういえば、90年代の頃には、幾つもの先人達のセミナーで、「御社はWeb普及のために何をしていますか?」と面倒臭い質問をしていた頃があった。ネットがこんな短時間で、生活必需インフラになるとは思っていなかったからだ。

その同じ質問を今自分にしている。無念ながら、情けない答えしか示せない。建設的な何かを残せた訳でもない、何か万人のためになる発明をした訳でもない。貢献度は限りなく低いと思ってしまう。



でも、これからできる事があると思い始めた。悪名高きIE6問題である。この終焉速度を速めるのは、Webサイト開発に携わる者であれば誰でもできる。クライアントにサポートを止めることを薦められるのは我々だけなのだから。

すでにIE6をサポートしていることは、実装スキルを誇示する事にはならない。むしろクライアントの説得に失敗したと見なされる気さえする。なぜなら、もはやIE6は国際指名手配されているようなものだから。

IE6問題は、既に世界的な問題である。それはレンダリング能力の低さやパフォーマンスや非標準というだけでなく、セキュリティ上も由々しき課題を抱え、かつサポートも直に切れる状況にある。

同時にHTML5時代への過渡期という今、開発コストにも悪影響を与えている。だから、世界的な課題なのだ:

   ▼Internet Explorer 6 Countdown | Death to IE 6 | IE6 Countdown
   < http://www.ie6countdown.com/
>

サイトへの来訪者の1%でも利用しているブラウザは、サポートすべし。某巨大ポータルの運営ポリシーである。それ自体は、利用者のことを慮(おもんぱか)る大切な思想だと思う。

でも、それがそのユーザにとってもリスキーであるならば、警告を出すことこそが、正しい対応なのだと思う。

「あなたのお使いのブラウザはかなり危険です」とシツコイくらいに警告した方が世のためその人のためになる。会社の規則か何かで縛られていようが、その警告が突破口の口実にはなり得る。何かあってからでは遅く、警告を出した方が感謝される場面だってあると思うのだ。

IE6の未来は、端的に書けば、「WindowsXP用のIE6は2009年4月までサポートが受けられ、2014年4月まではセキュリティプログラムが提供される予定」。

   ▼IE6のサポート期間 - Microsoft Answers
   < http://bit.ly/qiJQJM
>

まだ2年ではない、もう2年しかないのである。ネットは情報の伝達は早くとも、行動の浸透にはそれなりに時間がかかる。今、ネットに関わっている人で何かしらの権限のある人は、とにかく脱IE6を促す方向の活動をすべきではないんだろうか。諸々の事情はあるだろう。でも、ここで一致団結しなきゃいつするんだ。



残業、というか四六時中ネットと睨めっこしている父親を見ている子供達は、大人になった時、どんなネット生活を送っているのだろう。ネットが生活のインフラになっているようには育てたつもりだから、それがない状況を良しとはしないだろう。でも、何かしら今の私とは違う世界を目指すはずだ。

だとしたら、スローライフを支えるWebというかITなのかもしれない。流れ行く膨大な情報に自らは流される事なく、自分たちの生活を守りつつ、ネットを介して様々な人達と会話しながら生きて行く。それはひとつの求めるべき未来だろう。

その時に、少しでも悪しきモノが少なくあるように。そう願って動くのも使命の一部。何がなくなればよりハッピーか、それも今やるべき事を考える上での道筋なのだろう。未来の為に。

   参考:
   ▼IE6 とお別れしたいあなたの背中を押してくれる資料集
   < http://bit.ly/rbhrJu
>
   ▼Yahoo!JAPANもIE6サポート終了へ - ITmedia ニュース
   < http://bit.ly/zHHkT9
>

【みつい・ひでき】@mit | mit_dgcr(a)yahoo.co.jp
http://www.mitmix.net/2012/03/186.html


会社が引っ越したこともあり、持ち前の資料の棚卸しをする。思っていた以上にFlash系が多い。RIACに関わっている以上、当たり前と言えば当たり前。でも、それ以上にFlash好きなんだな、と改めて気付かされる。Macromediaが語っていたブラウザを包み込むような大PlugIn世界制覇構想(?)など真面目に感無量。