デジタルちゃいろ[12]パキスタン廃人月間
── browneyes ──

投稿:  著者:


最初に言っておきますが、今回はクリエイティビティの欠片もない記事になりそうです。あっ、いつも大したことないから今回に限り断りを入れるのもアレですね。

いえね、これでも毎回、おかしな音楽はあくまで副菜のつもりで主菜は用意してたのですが、いやぁ、3月後半、ワタシの最も興味そそられる文化圏、パキスタン関連イベントが目白押しで、頭の大半、まんまとそっちに持ってかれておりました。

●生カウワーリ追っかけ

イベント目白押し! ...と言っても考えてみると実質、パキスタン現地でも若手イチオシ的なカウワーリ楽団、バダル・アリ・ハーンの追っかけを中途半端にしてただけのような感じでしたけど、カウワーリを生でなんて、少なくともメジャーどころだと21世紀初...? いや、わかりませんけど。

カウワーリだけではなく、大衆音楽も含めてパキスタン界隈の音楽を最初に知ったのがヌスラット(Ustad Nusrat Fateh Ali Khan)だった割に、来日公演にはどうも縁がなく、「また来ないかなぁ」なんて思ってたら亡くなってしまい、つくづく、マイナーどころのライブに「また」はない、という前提で参戦しなくては...という思いが、今回の中途半端な追っかけに現れてる訳です。




●カウワーリ?

いきなりカウワーリ、カウワーリ言い出してますが、カウワーリ(カッワーリー | Qawwali)とは、パキスタンを中心に主に南亜細亜のイスラム神秘主義(スーフィズム)ベースな宗教歌謡です。一人か二人のメインの歌い手さんと手風琴やタブラと手拍子とコーラスで、主に聖者廟で演奏され、聴いている人たちを宗教的陶酔に導いていくために欠かせないものです。そしてワタシの大好物です。

それまで西洋的な音楽しか知らなかった当時のワタシは、はじめて聴いた時はご多分に漏れず、なんじゃこりゃ! と、びっくりしました。非常に泥臭くて原始的な感じで、西側目線の優美さからは程遠いのですよね。でも、多分適性のある人は、あの泥臭さの中から色々な美を感じ取れるようになって、そうなったら後はずるずるとハマる一方でしょう。まずはお試しください。(どこぞの化粧品セールス的にw)

●「聖者の宮廷講」の部

まずはエキゾライター兼DJのサラーム海上さんと、和光大学非常勤講師の村山先生による「聖者の宮廷講第14講」。宮廷「講」なので時折軽い説明をちょこちょこ挟みつつの親切ライブ。長年闇雲に聴いてるだけだったので、その軽い説明がいちいち「へー!」でした。

開場前の列にはやや出遅れてしまい、いい席逃したな、と軽い諦めモードで受付を済ませて中に入ると、いいタイミングで「ここで観たっていいんですよ、どうぞどうぞ!」と、ステージ上の(と言っても客席と10cmも段差はないのですが)タブラのすぐ脇を指さされたので、ほいほい壇上に座り込みました。やった、最高のかぶりつき! 手を伸ばせばそこにタブラ!

□ワタシ目線のかぶりつきライブ。
└< http://drawer.posterous.com/114082765
>

途中、汗を拭くものが手元になくて困っていたタブラ担当の長兄さんに、旦那がポケットティッシュを渡す、という妙な触れ合いも出来ました。

□Musique Nonstop : 3.22 Thu. 聖者の宮廷講 第14講:カウワーリーとスーフィーの木曜縁会
└< http://salamuna.exblog.jp/17410786/
>

上記サイトに掲載の動画を見るとわかるのですが、カウワーリの楽しみ方はただ聴くだけじゃない。陶酔した人が思い思いに奏者へのお礼の紙幣をバラ撒き、その舞い散る札束で奏者も更にアガる、そして人々も踊り狂う、そんな「場」の相乗効果が堪らない訳ですよ、現地では。

宮廷講では観客が基本的には日本人なので、そういう「場」については過度な期待は持てず、ワタシもお金撒きには行ったものの、どうしても「ごっこ」っぽさがつきまとってしまい、残念に思ってました。まぁ、こればっかりはパキスタンから観客ごと連れてくるわけにもいかないので仕方ないんですけどね。

そこでパキスタン・バザールですよ!

●パキスタン・バザールの部

土日開催だったパキスタン・バザール、ワタシは日曜しか行ってないのですが、カウワーリ目的なら日曜が大当たり以上でした。約30分程度の演奏予定が盛り上がるに任せてなんと約2時間! 大使館の方も軽く困ってたみたいですけど、それでも後のスケジュールを犠牲にしつつも、あの盛り上がりを続けさせてくれた南亜細亜的ユルさは有難かったし、それぐらいアツかった。

開始前から計画的にいい場所狙って、座席より前の地べたにパキスタン人の子供たちに混じってぺったり座って見てました。そこは盛り上がると人がしゃしゃり出てきて踊るスペースの目前。この場でどの程度盛り上がるのか、始まるまで全然読めなかったものの、ああ、やっぱり期待通り! ステージの右から左から舞い散る札束。一人、二人と前で踊りだす人。

踊る、舞い散る紙幣、踊る、踊る、奏者もアガる、相乗効果がすごいすごい、どんどんみんなの熱が上がってくし、どんどん人がステージ前に、ステージ上に躍り出る、踊り狂う。で、紙幣が舞う。パキスタン人も日本人も前に押し寄せる、踊る。踊る大人たちの足元では子供が冷静に紙幣を集めて主催側に渡す(現地ではちゃんと紙幣集め係がいる)。やだ、もう、期待以上!

大分盛り上がっても尚、客席最前線で地べたに座りっぱなしだったけど、バランスを崩したパキスタン人は倒れこむし、知らないパキスタン人たちも上から「あんたも立って踊れや! ほら!」とにこにこジェスチャーしてくる。一体感と思い思いの好き勝手感がない混ぜでこの上なく気持いい。

●やっぱりいつかは現地で...

そんなこんなで日本にいながらにして、という前提ではかなりパキスタン気分を味わえた3月後半でした。それでも現地の聖者廟の雰囲気のほんの一部なんだろうな。

YouTubeで眺めてても、今回のイベントみたいに女子までわいわい踊る、みたいな絵はあまり観たことがない。女子の不自由さも余所者感も織り込み済みで構わないから、いつか現地で眺めてみたいです。以前訪れて帰国した時には二度と行きたくない、なんて思ってたのに不思議なものです。

●知らないパキスタン人にウルドゥを書いてもらう

ここまで延々カウワーリ三昧でしたが、当日現地であれこれTwitterでつぶやいていたら、フォローして戴いている、以前大学でウルドゥ語を教えてらした先生からTwitter経由ですごい指令が飛んできました。

「会場にいるパキスタン人に、とある出店屋台のとある料理をウルドゥ語で書いてもらう。その出店屋台のお店の人は不可!」

どうやら、とある料理を巡って、Twitter上の印度料理クラスタの方の間で議論が起きていたようで、現地の人に料理の名前を書いてもらったら解決する...かも? という試みのようでした。

案外引っ込み思案なワタシ、暫くもじもじしてから意を決して数名当たってみる。ほいほい逃げられる(笑)。何でだろうか、デジタル一眼レフぶら下げた上に手帳とペンで臨んだのが、怪しい取材か何かと間違われたのか。

日本に居ながらにして日本人と交流のなさそうな、純度の高そうなパキスタン人じゃなくて、日本人と話してる人なら話が早そうだ、と思って日本人女性と話をしていた方に話しかけたら、流れるような日本語で色々説明付きで書いてもらえました。

フタを開けてみたらその流暢な日本語のパキスタン人は、八潮にあるカレー屋さん、アルカラムの社長さん。当日も出店してて、来る前から必ず食べるお店リストにピックアップしてたお店。しかも日曜限定で、その辺のカレー屋ではあまりお目にかかることのない、ハリームというカレーを出していたので大喜びで食べた後だったのでびっくり。

□やっと書いてもらえたウルドゥ。アルカラムの社長さんのサイン入り(笑)
└< http://twitpic.com/90zb2j
>

八潮って、パキスタン村と呼ばれる地域があるほどにパキスタン人コミュニティが出来てるらしく、アルカラムを始めとして、この辺りならではというパキスタン人向けなカレー屋さんがいくつかあるそうです。アルカラム、いつか食べに行きたいお店リストの常に上位にいるのですが、遠くてなかなか...。

□アルカラム Al Karam - 八潮/パキスタン料理 [食べログ]
└< http://r.tabelog.com/saitama/A1102/A110205/11021841/
>

ありゃりゃ、ホントにパキスタン一色な記事になってしまってドン引きですね、これは。でも反省はしてません! 多分次回までには正気に戻ってることだと思います。こんなにニヤニヤ反芻しながら記事書いたのははじめてかしら。個人的に、これは墓に入る前には一度は体験したかったのですよね、生カウワーリ。もう現地行くしか見る手立てはないだろう、と思っていたので、今回の一連のイベント主催の方たちには本当に感謝。

            +----+----+----+----+

■今回のどこかの国の音楽

もはや今回はこのコーナーが機能しないくらいパキスタン一色ですが、抗って別の国を紹介するのも不自然なので(居直り)。音度外視で、パキスタン・バザールの臨場感を脳内反芻するとこんな感じ。過去に見たことのあるNusratの壮観なお金ばら撒かれ動画は見つかりませんでした。残念。

□Nusrat Fateh Ali Khan "Dum Mast Qalandar"
└<
>

日本であまり名前を聞かないけど、おそらくワタシが今のところ最も大好きなのが、下記の人相の悪い兄弟によるカウワーリ。こちらももうお兄さん(長髪)は他界しており、他のペアでは代え難いこの強くて美しいハーモニーは聴けませんが、悪人顔の弟さんも(酷いこと言ってますが弟さんの歌い方がかなり好き)かなりの年齢ですが、まだ一人で続けてるようです。

□Sabri Bros "Shabaz Qalandar"
└<
>

【browneyes】 dc@browneyes.in

日常スナップ撮り続けてます。
アパレル屋→本屋→キャスティング屋→ウェブ屋(←いまここ)しつつなんでも屋。
□立ち寄り先一覧 < http://start.io/browneyes
>
□デジタルちゃいろ:今回のどこかの国の音楽プレイリストまとめ
└< http://j.mp/xA0gHF
>

おそらく次回までには正気に戻る...と書きつつ、パキスタン月間が終わったと思ったら、4月は南印度の新年イベントがテルグ地方、タミル地方と控えています。5月以降は代々木公園の各国フェスも本格稼働。なぁんて、こう見えても今年はかなりお遊び自粛の予定なので、どうしても、というもの以外は控えるつもり。どうしても、が多いのが困りものですが。