わが逃走[103]バブルの裏で の巻/齋藤 浩

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学生時代に撮影した写真のネガが大量に出てきた。S玉県O宮市の風景である。当時私は「失われつつある当たり前の風景を記録する」とか言って、一眼レフ片手に自転車で走り回っていたのだ。

世の中がおかしな具合に浮き足立ってきて、当たり前だった景色に金色のビルが建ち、くねった道もまっすぐに矯正されていった。とくにそのスピードが尋常でなかったことが妙に気にかかり、早く撮らなきゃ! とアセっていたことを思い出す。

こうして見ると、まさに歪んだ時空。四半世紀近く前のはずなのに昔っぽくもあり、また妙に今っぽくも見える。これらの風景とあの六本木の狂乱とが、同時期のものであることはわかっていても、未だ実感できず。

そもそも、サラリーマン家庭に生まれ育った実家暮らしの男子学生の私は、あの空気を見ることはできても入っていくだけの、力のないまったく損な存在であった。

同学年の女の子などは、広告代理店勤務の年上の男友達がなんでも買ってくれるので羽振りが良いし、実家が自営業の男子学生は毎月数10万の仕送りに加え、BMWの新車を乗り回していた。

中学時代の友達に会っても、株だの起業だのといった話をされるし、どんな会話をしていても結論は「なあに、税金対策さ」と言われておしまいである。それが普通だった。なので居場所がなかったともいえる。

その居場所をなんとか留めておこうと撮った写真のいくつかをご紹介します。構図が甘かったり、現像ムラや荒れが目立ちますが、そこはまあご愛嬌ってことで。

瓦屋根とおばあさん
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具体的な場所は全く覚えていないのだが、おそらく家の近所。
これで遠景に山があればなーっていつも思ってた。




生け垣の道
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これもたぶん家の近所。こんな雰囲気の道が好きだったのでよく歩いていた。指扇と日進の間のどこかと思われる。

都市計画街路用地
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バイパスと国道の間に、いい雰囲気の農道があった。たしか近所に梨園もあった気がする。現在はバイパスのバイパスみたいな、訳のわからん道になってしまった。

日常風景
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いわゆるO宮市の標準的風景。当時はつまんない景色だと思っていたが、今見るとわりと趣がある。

未舗装の路地
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あぜ道さえ舗装されている時代なので、もうこの路地も消滅していることだろう。営業中の床屋を見てみたかった。

廃車体
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こういうのを普通に見かけましたよ、そういえば。

瓦屋根
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こんな感じの空き地と平屋建ての住宅は好きだなあ。
好みは当時から一貫しているらしい。

ガスメーター
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電気と水道とガスのメーターが何故か昔から好きでして、
未だに似たような写真撮ってます。

長屋門
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時代劇のロケにも使われたらしい。今は市の文化財になっている。

植木やさん
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戸板で昼寝ってカッコいいぜ。
それにしても庭でなく道に生えてる松という存在が好きだ。

1000枚以上のネガから、どうにかセレクトしたのですが、思い入れのあるものはまだまだたくさん残ってるので、そいつはまたの機会に紹介できればと思っています。

風景の他にも錆びたボルトや歯車の写真なんかが大量に出てきまして、趣味というか興味の対象がほとんど変わってないことに改めて気づき、思わず苦笑いする齋藤浩でした。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/ >

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。