more READ, more MESS!![03]MESS002 フェルト動物ブローチ作品集「URBAN SAFARI」制作記
── 宮崎希沙 ──

投稿:  著者:


自費出版レーベルMESS。前回に引き続き、ラインナップの書籍を作るまでの具体的なお話をしたいと思います。

第二弾は、「URBAN SAFARI 2012 Collection」。羊毛フェルトでスーパーリアルな動物のブローチを作っている、茨木菜摘 < http://d.hatena.ne.jp/ivrk/
>のブランド「URBAN SAFARI」のカタログ的役割の本です。

URBAN SAFARIとは......「身につける野生」をテーマに、都会に暮らしながらも野生動物の力強さやエネルギーをキャッチできるようなアクセサリーを制作しています。< http://www.facebook.com/urbansafariiiii
>

羊毛フェルトという柔らかい毛の素材に、ニードルを刺してゆくことによって、徐々に固く成形してゆく手法で、作品を作る人はいま結構いるのではないでしょうか。彼女の場合は、その手法でとてもリアルな描写をすることにより、動物モチーフでありながら、可愛いだけでなく力強さを持ち合わせた作品を産み出しているのです。

もともと動物をこよなく愛す彼女は、この手法に辿り着くまでにも沢山の観察を重ね、絵や立体で描写を続けていました。その愛ゆえに産み出される力強さが、何にも代え難い存在の作品になっています。




可愛らしい手芸作品とは一線を画す"かっこいい"動物ブローチたち。ただ、一点一点の手作業ですから、生産にかける時間はある程度必要です。完成した端から展示会や委託販売店舗でどんどん売れていってしまうので、彼女の手元に様々のバリエーションの動物たちが残らないことが、とてももったいなく思っていました。

そこで、きちんとした撮影環境で作品を記録したいという彼女の希望から始まり、2011年秋までの段階で作ったバリエーションの動物を、一度カタログ形式の本にしてみようという話に進んでゆきました。

スタジオを借り、カメラマンを志す友人の熊原哲也さん< http://tkumahara.blogspot.jp/
> に作品の物撮りをお願いしました。

白バックで各作品の接写と、友人何人かにモデルをお願いして、着用写真も撮影。ブローチたちは、女性だけでなく男性にもぜひ着けてもらいたいというコンセプトから、男女を同数撮影して使用しました。

実際に、男性が着けてもとっても似合うことがよくわかります。表紙に採用した、たくさんのブローチを床に敷き詰める写真のディレクションも、その場で出て来たものです。

ブローチをカタログにするにあたって、実物のブローチだけでもう充分な完成度があるので、それを美しく見せるだけのできるかぎりシンプルなビジュアルを提案しました。ブランドのロゴタイプはもう既に出来上がっていたので、それに合わせたマークによるノンブルなど。

そして外見ですが、普通の形で冊子にしても芸がないので、ブローチのサイズがわかるように、すべてをほぼ実物大で一ページにつきひとつ載せ、本自体のサイズを120mm×120mmの変形にしました。ブローチを実際に手に取った可愛らしいサイズ感と同じような、手に馴染むサイズになりました。

本文はもちろんフルカラー印刷で50ページ。こうなると、予算がかさんできます。オンデマンド印刷を使っても、かなりのコスト。単価が上がり過ぎても困るので、50部での出版になりました。

また、デザインを考えているときから、本を裸の状態ではなく箱入りにしたいという思いがずっとありました。実際にブローチを箱に入れて販売していた経緯から、ブローチを手にする感覚と同じように、どうしても型抜きの窓を付けた箱にスリップインさせたかったのです。でも、印刷代だけでもう予算がほぼ尽きてしまった!

そこで、ファーストビンテージという種類の紙の最厚口を使い、50個の箱を手作りすることになりました。まず片面に、ロゴの矩形で窓を空けて、そこから表紙の写真を覗かせるために、カッティングマシーンで窓型を切り取ります。

ちょうどその頃に、クラフトロボというパーソナルなカッティング・マシンを知人から譲り受けたので、それを駆使しました。このマシンは小型のプリンタのような形をしていて、USBでPCに繋げばillustratorのパスデータに沿って、カッターの刃で紙を自動的に切り出してくれる、とっても優秀なメカです。

そしてもう片面に、位置を合わせてロゴを金色インクでシルクスクリーンプリント。箔押しとはまた違う風合いの、しっとりとした金色の印刷が上質感を醸し出しています。シルクスクリーンは、Tシャツくんという機械を持っていたので、それで感光させ版を作り刷り上げました。

仕上げに、本の本体に合わせた厚みでスジ付け。箱の形に折り、接着。両サイドが空いたスリップケースの出来上がり。こうして、自宅で完結させた作業によって、ほぼ紙代だけで「ロゴ型抜きとシルクスクリーン刷りの箱」を完成させたのです。それによって、本一冊の価格はフルカラー50ページにもかかわらず1,365円(税込)に抑えることが出来ました。

この本に載っているものが、URBAN SAFARIのブローチのすべてではありません。彼女は常に新しい種類の動物たちを産み出しています。URBAN SAFARIブランドは、GWの最後の週末5月5日・6日に、青山spiralで行われたSICFにも出展。次々と新しいシリーズを作り続けています。今後とも期待して下さい。

「URBAN SAFARI 2012 Collection」茨木菜摘は、こちらから。残り部数はかなり僅かになっています。ブローチのディティールが、貴方の手元でじっくりと眺められます。
< http://mess-pressed.com/002.html
>

【宮崎希沙】グラフィックデザイナー/自費出版レーベルMESS主催
< http://mess-pressed.com/
>
< http://d.hatena.ne.jp/december_girl/
>

とある会社のDTP部署に潜り込み、日々必死に勉強。朝が早くて苦戦。デザインを学校で学んでいただけでは、知らない事の方が遥かに多く、実戦技術を身につける努力の必要さを身に染みて実感中。勤めに出ながら自分だけが出来る仕事もちゃんとやって行きたいです。

最近読んで面白かった本は、「プロ無職入門/高木壮太」「TOKYO 0円ハウス0円生活/坂口恭平」「分福茶釜/細野晴臣」「異性/角田光代、穂村弘」「再起動せよと雑誌は言う/仲俣暁生」など。

最近のお仕事は、< http://d.hatena.ne.jp/december_girl/
>より
・大倉山の美容院"iCE"のためのイラスト制作
・新進気鋭の映画監督たちによる映画祭"前夜映画祭"
< http://zenyaeigasai.tumblr.com/
>の当日パンフレット制作
・名古屋のアンティークレースブランド"Angelica Leaf"のカタログ制作
・日本各地へ移住計画の作家・竹内波のHP制作のお手伝い
< http://takeuchinami.com/
>
(最先端と、不便な最古感の同居というアンバランスさが最高なHPです。
何故かトップの絵がつまんで動かせる謎機能搭載。スマホでも見れるけどPC推奨です。音量注意)
4人組zine制作ユニットyakk < http://yakkblog.blogspot.com/
> でも、初夏に向けて大型企画を構想中です。