[3270] 飲み会キャラバンとfacebookと

投稿:  著者:  読了時間:24分(本文:約11,900文字)


《15時に「新しい朝が来た!」って感じ》

■ネタを訪ねて三万歩[88]
 飲み会キャラバンとfacebookと
 海津ヨシノリ

■グラフィック薄氷大魔王[303]
 昼寝&大友克洋原画展
 吉井 宏

■デジアナ逆十字固め...[126]
 尾仲浩二の「極・私家版 あの頃、東京で・・」
 上原ゼンジ




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■ネタを訪ねて三万歩[88]
飲み会キャラバンとfacebookと

海津ヨシノリ
< http://bn.dgcr.com/archives/20120530140300.html >
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4月の某日、多摩美術大学造形表現学部デザイン学科で私が関わっているデジタルコースの歓迎会が行われました。これは2年時からコース別れするために、3年生が2年生を歓迎するという飲み会をコース毎に行っている慣例行事です。

実は私、何故か映像コースの歓迎会にも毎年デフォルトで組み込まれていたりします。で、今回も場所は例年通りに二子玉川のTAPAとなりました。しかし、何故かビジュアルコースや映像コースの学生、更には転部や他大学に編入した学生に卒業生まで加わった40名ほどで大騒ぎ。学生と色々本音で話せるこんなセッティングは本当に大歓迎です。

その6日後の17時45分に、新宿のランキンランキン前で女性と待ち合わせるオジサン二人。もちろんオジサン二人のうちの一人は私です。最初は当然意識していなかったのですが、周りで待ち合わせしているのは圧倒的に若い人だらけ。

オジサン系はホームレス風(?)のファンキーな方ぐらいしか目に入りません。大学の新歓(新入生歓迎コンパ)の待ち合わせ場所ということも影響していたようです。とにかく、なんだか異空間に放り込まれてしまった感じでした。

そのあと三人で茶茶白雨にて酒盛りという名の打ち合わせを行い、デザートまで食べて終了のはずが、店を出たとたんに軽くコーヒーでも......ということになり、たまたま目に入った中村屋のパーラーに即決し、エレベータに乗ったのですが、入り口に若い女性が沢山いた違和感から、そのまま上のレストランに向かいます。

コーヒーだけでもいいですか? と店員に聞いて、大丈夫ですよと確認したのに、席に着いた途端にワインをボトルで注文することになってしまったのです。まっ、適当な客は色々いると思いますが、自分達がそのいい加減さをネタにワインで盛り上がってしまいました。

人の行動は本当に予測できません。アルコールが入っていて仲間が居たら更に増幅してしまいます。でも、このお互いがスイッチを入れ合っている絶妙な関係、あるいは空間が大切なのです。とにかくじっくり時間を掛けて親密になった友人達だからこそ、お互いのツボをわきまえているからか、本当に心地良い時間を過ごすことができました。

ちなみに、この宴席は学生とではなく、東京都立中央・城北職業能力開発センターの教員同士の情報交換会です。実はここでの活動が多摩美術大学の学生にも影響し、また多摩美術大学での活動が職業能力開発センターの学生にも影響しています。もちろん、それを認識しているのは私だけなのですが、世の中は意外と間接的なパワーで支えられているわけです。

そしてその翌日、多摩美術大学造形表現学部造形学科日本画専攻を2011年に卒業した学生、同じく造形学科油画専攻を2012年に卒業した学生二人と二子玉川で食事会をしました。二人とも女性です......と、しっかり強調したくなるオジサンモード。

実はその日は授業のある日で、授業を終了したのは少し早めの21時ジャスト。しかし、いつもより質問する学生が多く、結局食事を始めたのは22時過ぎとなってしまいました。このように授業終了後の一時間ぐらいは質問の対応に追われる事も珍しくありません。

前にネタにしましたが、私の記録は2時間半です。つまり21時から23時30分まで質問に対応していたことがあります。順番待ちの列の後ろにいた学生は相当疲れたのではないでしょうか。夜間部はこれが少し大変です。

余談ですが、私の共通教育(全学共通カリキュラム)での講義は全学科の全学年が履修できる関係から、単位が取れているにも拘わらず何年も聴講する学生、卒業したはずなのに何故か座っている学生が多く、話題に事欠きません。

ですから、新しいネタを仕入れるのに少々苦労しています。そんな関係で、本来なら出会うはずのなかった学生と卒業生が、私の講義の後に出会ってしまうことも珍しくありません。人間どこでどんなつながりが発生するかわからないですからね。もっともそれが楽しいのです。

そして数日後の5月某日、今度はデザイン学科プロダクトデザインコースを今年卒業した男性二名と、何故か武蔵野美術大学を今年卒業した女性を交えて三軒茶屋で飲み会です。

実はここでfacebookへ丁寧なお誘いを受け、色々と思うところはあったのですが、そろそろ限界と重い腰を上げました。そもそもこの一連の飲み会キャラバンに関わったほとんどの人が、facebookを行っていたことも当然影響しています。ちなみにSNSはこれが初めてです。正確にはGoogle+の方が先なのですが、まだまったくの白紙状態ですので。

で、連絡を取りたい人を検索すると一応出てくるのですが、写真も含めて本人だと確証の持てる情報がないことが多く、ダラダラ捜していても時間ばかり経過してしまうので断念してしまいました。

なにせ、登録一日で友達が100名突破してしまったからです。うまく隠れたつもりが、四方八方から発見されてしまった感じですね。一番驚いたのは、スウェーデン人の友人に開設10分後に発見されたこと。勝手が分からな過ぎたこの日はかなり焦ってしまいました。

ところで、この友達の定義は実に曖昧ですね。今の時代、同じ東京の半径5km圏内に住んでいるはずなのに、10年以上も何の連絡もコネクションもなければ、友達ではなくて「あんた誰?」でしょう。

最低限、年に一度の年賀状のやりとりぐらいがギリギリの境界線かも知れませんね。もちろん、引っ越し等の関係で連絡が取れなくなっている場合は例外です。引っ越しもなくメールアドレスも変わっていないのに、10年超えはあり得ないですからね......普通は。

話を戻すと、飲み会の場所は三軒茶屋中央劇場(映画館)の近くにある「こんにゃくの刺身」が有名な居酒屋でした。お店は原則予約制で、完全禁煙が嬉しい日本酒の専門店。ただし何でも高過ぎて、普通の居酒屋の3倍は覚悟しないと危ない店でした。

そして、悲劇は突然起こりました。ビールで祝杯を挙げた後、専門店と言うことで日本酒に切り替えようとしたのですが、見慣れない銘柄に困惑したので居合わせた店員(中年の女性)に「何か辛口のお薦めを」と私が言ったことで空気は一変。

店員曰く「日本酒に甘口も辛口もない。米を原料としているので......」とウンチクを機関銃のように放ち始めた段階で、私は聞く耳を捨てました。この場合、専門的な知識ではなく単に「そのような場合は......」と、ニュアンスをくみ取って銘柄を提示すればよいこと。にもかかわらず、上から目線で客の揚げ足を取り、専門知識をひけらかす店員の態度に不快感が大爆発。

学生が同席していなかったら「ファストフード店でアルバイトの高校生から接客のイロハを学べ!」と捨て台詞を吐いて、その場で席を蹴っていたと思います。多分二度とこの店には行くことはないと思いますが、紹介してくれた学生に対して本当に申し訳ない感じでいます。人気にあぐらをかいた殿様商売の典型例ですね。とにかく感じの悪い店員の仕切る店でした。

そしてその一週間後、デザイン学科の某カテゴリーに入り、あまり話をしたことのない学生達との飲み会がありました。実はこの飲み会は、facebookを始めてから実際にfacebookを行っている「友達」との初めての記念すべき飲み会となったのです。

だからかもしれませんが、予想外の話題で盛り上がってしまったのは言うまでもありません。ただし肴はfacebookではありません。重要なのはキッカケ。それがお互いの色々なスイッチをONにしてくれます。

というわけで、こんな目まぐるしい飲み会というかイベントが最近とっても癖になっています。刺激をもらえるからかもしれません。どこか打算的な大人の集まりではないことも含め、色々な複合要素が癖に繋がっています。

そして、これがとっても楽しいのです。きっと打算的な大人達からはもらえない何かを沢山分けてもらえるからだと思います。もちろん学生としか飲まないわけではありません。打算的ではない大人だって世の中には沢山いますからね。

そもそも多摩美術大学造形表現学部は夜間部なので、現役生でも大人が多いということは、ある意味特殊事情かもしれません。でもこれは重要な事ですね。

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■今月のお気に入りミュージックと映画

[Chorus Of Fools]by The Crookes in 2011(U.K.)

ザ・クルックスの『Chasing After Ghosts』に納められている一曲。ジャングリーなギターとポエティックなボーカルで綴られる、ロマンティックでセンチメンタルなメロディーは体に鈍く、でも重く突き刺さる感じ。「ネオアコ」「ギタポ」「UKロック」ファンにとっては涙ものですね。

[Defendor]by Peter Stebbings in 2009(Canada)

日本未公開のカナダのアクション・コメディ映画。冴えない男アーサーは、ディフェンドーのコスチュームに身を包み、今日も夜の街で悪と戦う。という内容なのですが、かなりシュールで考えさせられる内容です。
主人公のアーサーは、知的障害を持つ真面目な男ゆえ、悪に対して苦悩するという内容です。この手の作品としては「キック・アス」や「スーパー!」がありますが、どれも世の中が荒廃していることの裏返しなのかも知れませんね。被害者は晒し者で加害者は人権保護ですから......。とにかくお薦めです。

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■アップルストア銀座のセッション

6月11日(月)19時00分〜 アップルストア銀座でのセッション
Made on a Macとして画像処理セッション
『海津ヨシノリの画像処理テクニック講座Vol. 69』
Adobe Photoshop CS6の可能性として、リリースされたばかりのAdobe Photoshop CS6に搭載された新機能の検証と、それらの利便性を独自の視点で整理いたします。Photoshop CS6はどこが変わったのか? 予約不要・参加無料・退席自由です。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/
怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com >
< http://kaizu-blog.blogspot.com >
< http://web.me.com/kaizu >

お菓子の世界で最近注目を集めているのが米粉。アレルギー対策としても外せません。問題は使い方。なにせ食べ物の場合は失敗しても完食しなくてはならないので、そう簡単にあれこれ試せません。さりとて少量だけ作っても見事に失敗してしまいます。結局少しずつチャレンジしていくしかないのです。

幸いというか、今年はかなりのハイペースで学生とお茶会を開催しているので、ノウハウは少しずつ溜まってきました。しかし、そうなるとオーブンや調理器具に色々と欲が出て来てしまうのが気になります。道具は物作りの基本ですからね。

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■グラフィック薄氷大魔王[303]
昼寝&大友克洋原画展

吉井 宏
< http://bn.dgcr.com/archives/20120530140200.html >
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●昼寝&時間の価値

眠いのをガマンして仕事するのはキライなので、午後は昼寝します。どうせ眠くなるんだから、眠くなる前に先手を打って昼寝する。もともと、午後はたいして集中できないからそれでいいのだ。

昼寝にもいろいろライフハック的ノウハウがあふれてたりします。主に言われてるのは「熟睡するほど寝るのはムダ」「15分ウトウトするだけで十分」とか「濃いコーヒーを飲んで昼寝、カフェインが効き始める20分で起きれば頭超スッキリ!」とか。

そりゃ、せっぱつまってる時にはそんな方法もいいんだろうけど、時間が自由なフリーランス的には、毎日の快楽としてちゃんと昼寝したいじゃん。だいたい1〜2時間くらい、パジャマに着替えてしっかり寝ます。どっちにしろ、トイレに行きたくなるのでそのくらいで起きることになってます。

ぜんぜん昼寝しない時期もあります。でも一度昼寝すると、昼寝癖がつくというか、体内タイマーが昼寝するようにセットされちゃうようです。よほどスケジュールが危ういのでなければ、寝ることにしてます。15時に昼寝終了してシャワー浴びてコーヒー飲むと、「新しい朝が来た!」って感じなのです。一日が二日に使える感じ。

午後から夕方にかけてはダラダラしがちなので、ちゃんと集中してできるのは8時〜13時くらいまでと、20時〜23時くらいまで。結局、長時間労働でもなんでもなく、普通に8〜9時間くらい。この両方の時間をしっかり集中できてれば大成功。どちらかでもまずまずの成功。それ以外の時間は寝てようがダラダラしてようが全体の進度とかあんまり変わらない。

ところが、午前中ってどうしても今日はまだ時間がたっぷりあるって思ってるから粗末に使っちゃうことが多いんだよなあ。夜はちょっとテレビとか見ちゃうと時間なくなっちゃうし。で、思ったのは「時間の価値に優劣はない」。午前中だろうが夕方だろうが、使える1時間はちゃんと最高の1時間として使わなくちゃね。眠かったり集中しにくい時間を除いた時間は特に。

逆に、朝の時間って10時半くらいまでダラダラと過ごしがちだけど、実は一日の中で最も充実させなきゃいけない時間なんだよな〜と。それほどはかどらないまま14時とかになって眠くなってきて、「損した〜〜〜!」感が最近大きいので自分に警告。

っていうか、日蝕を見るために数週間前から習慣づけたせいで、何時に寝ても6時に目が覚めるようになってしまったのでした。一日が長い!

●大友克洋原画展に行ってきた!

金田のバイク! < http://twitpic.com/9nwgrl >
ズン壁 < http://twitpic.com/9nwgzs >

大友克洋原画展、一人で出かけたんだけど、会場内になんと! 妹がいた。びっくりしたわー。AKIRAの原画のところですれちがって「あれっ!○○子!!」って思わずでかい声を出してしまい、しゃがんで隠れたのでした。しかし、よりによって同じ時間を予約するとは〜。妹夫婦が来てたので、撮れないだろうとあきらめてた写真を撮ることができたわけなのでした。

ちょっとデブってるように見えますがそれは目の錯覚じゃなく、先週書いたとおり海苔巻き太りです、っていうかすでに3kg落としたから今はここまでひどくないです。まああの「ズン壁」のヒビ割れは大友克洋っぽくなかったです。あんな大味な割れ方じゃないと思います。

AKIRAの原画すごいけど、さすがにあれだけの枚数の展示方法としてはかなり無理が......。陳列ケースの間の通路によっては、上下逆さまにしか見れない原画が半数もあったのが残念。普通に通路側に向けてくれればよかったのに。

線がすごかった。ビルの横線とか1mmに3本くらい引いてある! AKIRAの見開きの黒い球体あるビル群なんか、一般のマンガの単行本一冊分くらいの描き込み量かも! 

思ったのは、印刷されたものは手の届かない高みに見えるけど、丸ペンと真っ黒じゃない薄い部分が目立つ墨汁の原画を見ると、人間が書いたものって感じ。なんか自分でも描けるんじゃないかって気がしてくるから不思議。

NHKの「YOU」のタイトルバック(坂本龍一の曲が流れるアレ)の原画が見れたのはかなりうれしかった。すごい好きだったのです。PANTONEカラーシートを全紙のまま貼り付けてあったりしてゴージャス! 学生には高くて買えなかったのでした。あと、当時楽しみにしてた角川「バラエティ」誌の連載の原稿もあった! ウナギイヌとか、サイボーグ009の解剖図とかの。図録に載ってなくて残念。

●MS OfficeとPDF

以前にも少し書いたけど、添付書類で送られてくるMS OfficeとPDFの件。Mac版Officeは最初のバージョンから持ってるので、「WordやExcelの書類が送られてきて開けなくて困る」ってのはないです。っていうか、クリエイターでもいちおう社会とつながりを持って仕事してるんだったら「MS Officeがないので開けません」ってのはマズいだろうくらいは思ってます。

最近はiWorkとか持ち出すまでもなく、OSX標準でもQuick LookでたいていのOffice書類は閲覧できるので便利。でもやっぱ、どこかの会社の人からいきなり当然のようにOffice書類が送られてくるのにはまだ抵抗感ある。向こうの世界にムリヤリ連れ込まれる感じ。

そもそもWordもExcelもパワポも、ひょっとしたら「作成ソフト」であって、「閲覧ソフト」じゃないじゃんね。改変可能な生書類なのになんでみんな配っちゃうんだろう?

そんな疑問に関連してか、最近は「添付書類はPDFにしよう運動」とかあるのかな? 単にJPG画像でかまわないような資料写真などを、わざわざPDFにして送られてきたりすることがやたら多い。PDFが環境を問わないすぐれた書類閲覧用の形式ってことは百も承知だし、もっと活用されてもいいとは思ってますけど、なんで画像一枚をPDFにする必要が??

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com >
Blog < http://yoshii-blog.blogspot.com/ >

AQUOSフォンが「しゃべってコンシェル」に対応したー! ちゃんとCMみたいに対応してくれる! 「今日の天気は?」って聞くと地域の天気をおしえてくれるし、「近くのラーメン屋?」って聞くと付近のラーメン屋を教えてくれるし、「メール」って言うと宛先を聞いてきて本文まで音声入力。こら便利だわ。画面のキーをほとんどいじらなくて済む! まあ、声を出すほうがおっくうってことも多いんだけど。

●iPhone/iPadアプリ「REAL STEELPAN」ver.2.0がリリースされました。
「長押しロール」のオン・オフ切り替えスイッチを追加しました。
「オフ」ではレスポンスが速くなるので、素早い演奏が可能になりました。
REAL STEELPAN < http://bit.ly/9aC0XV >
●「ヤンス!ガンス!」DVD発売中
amazonのDVD詳細 < http://amzn.to/bsTAcb >

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■デジアナ逆十字固め...[126]
尾仲浩二の「極・私家版 あの頃、東京で・・」

上原ゼンジ
< http://bn.dgcr.com/archives/20120530140100.html >
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以前にもちょっと書かせてもらったことがあるが、尾仲浩二さんが「デイズフォト通信」で連載していたエッセイが、「極・私家版 あの頃、東京で・・」(matatabi文庫)としてまとまった。私家版とあるが、実際に編集やレイアウトなどの作業もすべて尾仲さん自身が行った限定発売の本だ。

内容は、尾仲さんが写真をやるために東京に出てきた1980年から、最初の写真集である「背高あわだち草」を出版した1991年までのことを回想した自伝的エッセイ。東京写真専門学校(現東京ビジュアルアーツ)の森山大道ゼミに通い、CAMPのメンバーとなり、ギャラリー街道を立ち上げた頃の話がまとまっている。

私が尾仲さんと初めてあったのは1986年のこと。FOTO SESSIONという写真のグループに参加し、月に一度森山大道さんに写真を見ていただいた。その時に森山さんの助手のような感じで付き合ってくれたのが、尾仲さんや山内道雄さんだった。尾仲さんは26才、私は24才、森山さんが47才の頃の話だ。ということは、私もあの頃の森山さんの年をいつの間にか越していたということか。

FOTO SESSIONではアジトと呼ばれるアパートを借り、昼間は畳の上に写真を並べて写真を見ていただき、夕方から夜半にかけてはその場で飲み会。そんな場で、森山さんや諸先輩から話を聞きながら、写真のコアな部分に触れていった。

現在、尾仲さんは街道塾を開講し後進の指導にあたっているが、その街道塾の卒業生にリサーチしたところ、酔っぱらうとけっこう無茶なことを言っているらしい。これを聞いて、当時森山さんが酔っぱらってみんなに無茶なことを言っていたのことを思い出した。こんなところで、森山さんの流儀が今も継承されていたというわけだ。

たとえば、ある先輩は森山さんからバイトをするなと言われた。写真家が別の仕事をするなということだ。しかし、これは職業的にカメラマンで食って行けというわけではない。じゃあどうやって食っていいけばいいんだ、と誰しも思うのだが、まあそれくらいの気概を持てとか、覚悟をしろと言われていたのかと思う。

尾仲さんの本の中には、「自分の写真を撮る時間を確保するのにこれは大切なことだ。雑誌などの仕事は、事前の打ち合わせや、原稿の受け渡しなどで、ひと仕事でも数日とられるだろうし、何よりそのために編集者やデザイナーに付き合っていると、本物のカメラマンになってしまいそうだから敬遠した」という一文がある。職業的に写真を撮るのではなく、写真家として自分の写真を撮り続けるために選んだ生き方ということだろう。

翻って自分のことを考えてみれば、やはり写真を撮る時間を確保したいために会社を辞めたのだが、食っていくことに費やす時間が多く、どうにも中途半端に生きてきてしまったものだと思う。

ただ、あまり突っ走り過ぎてもどこかで息切れしてしまうし、何事か成したい人はそれぞれが自分にあった方法を見つけて、継続していくことが重要だと思う。まあ進むべき道を誤っていれば、継続も無駄になってしまう場合もあるから、気をつけなければいけないのだが......。

●「背高あわだち草」から21年

尾仲さんの初めての写真集「背高あわだち草」が、蒼穹舎から刊行されたのは1991年。この時の制作費は蒼穹舎の大田通貴さんと、尾仲さんが折半したのだということを、この本によって初めて知った。出版社とはいっても、大田さんが自分の好きな写真集を出版するために作った会社で、二人にとって制作費の捻出は大変なことだったと思う。

その後、尾仲さんは自分の写真集を着実にまとめてきた。そして現在までに11冊の写真集が刊行されている。もちろん、すべてが自費出版というわけではないが、今回の本にしても「人がやってくれなきゃ自分でやる」という態度が一貫していて格好いい。

あらためて尾仲さんのバイオグラフィーを眺めていると、写真の王道を歩んできたのではないかという印象を持った。なんか、これからでも尾仲さんを見習いたいと思わされた一冊だ。

◇「極・私家版 あの頃、東京で・・」
B6判、モノクロ、108ページ、限定500部
定価1000円
< http://www.onakakoji.com/2012/04/21/極-私家版-あの頃-東京で/ >

◇尾仲浩二写真展「I'm full オナカイッパイ」
こちらも尾仲色たっぷりの写真展。会期中にはトークショーやライブなども行われる。
会期:6月1日(金)から17日(日)までの金・土・日、13時〜19時
会場:そら塾(東京都台東区根岸3-13-25)
< http://www.onakakoji.com/2012/05/22/i-m-full-オナカイッパイ/ >

【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com < http://twitter.com/Zenji_Uehara >
上原ゼンジのWEBサイト
< http://www.zenji.info/ >
Soratama - 宙玉レンズの専門サイト
< http://www.soratama.org/ >
上原ゼンジ写真実験室のFacebookページ
< https://www.facebook.com/zenlabo >

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編集後記(05/30)

●一週間前の金環日食のときに撮影された写真が、ネット上にたくさん公開されていて、その見事な出来映えに感心している。古籏一浩さんは太陽そのものでなく、家の周辺の風景を撮影し、明るさが変化する様子を動画で捉えている。日食独特の暗さがよくわかる。わたしは読売新聞の特集で読んだ「日食はゆっくりと進むので目が慣れてしまううえ、金環日食中でも太陽は一部残っているため、感じられる変化はほとんどない。ただし、温度計や照度計で調べれば変化は分かる」という解説を信じていたので、金環日食に入ったときのちょっと不気味な外の暗さを、うす曇りの日にたまたま起きた現象と思い込もうとした。だが、あれは明らかに日食特有の現象だったのだ。正しくない解説を書いた読売の科学部の二人、どう申し開きするつもりだ。

日食の当日はまったく何の兆候もなかった我が家のバラが(正しくは隣家から枝がのびてきたバラ)、翌朝一斉に開花した。これには感嘆。数えてみると花は80輪を超える。蕾を持っていたことはわかっていたが、開花の予感はまったくなかった。隣家と境のフェンスは一気に白い花で埋まった。いまは毎朝、芝生に散り敷いた大量の花びらを拾っている。けっこう一仕事である

その庭のフェンスの先のグリーンゾーン、歩道、市道の向こう側に建つ二世帯住宅の若いパパが、朝になると玄関前にウンコ座りしてタバコを吸う。かなり距離があるものの、我が家の真ん前だから、何となく視線を感じてうっとうしい。対面するマンションの多くの部屋から、そのみっともない姿を観察されていて、「タバコ猿」と呼ばれていることを彼は知らない。嗚呼。(柴田)

・金環日食時の外の明るさの変化(古籏一浩)
< >

●「改変可能な生書類なのに」確かに!/スカイツリーの後は浅草寺。叔母の耳が良くなりますように。雷門の提灯は松下幸之助さん寄贈。初めて仲見世に行った時は、異空間すぎて、楽しくて笑い転げていたが今回はそうでもなかったな。次は東京現代美術館。叔母がまだここには行ったことがなかったから。ここの静かな雰囲気は好きだ。チケット販売窓口のお姉さんはとても優しくて親切。人が並んでいなかったこともあって、雑談につきあってくれたよ。2Fのアジアンカフェで昼食。野菜たっぷりまぜまぜごはん・プレート。メニューには、「ベトナムの中部フエの郷土料理に、鶏肉や海老、甘酢漬けのにんじんやきゅうりを混ぜた『コム・アフー』という米料理をヒントにアレンジして作りました。グリーンカレー風味のひき肉にクリスピーなピーナッツを散らし、グリーンカール、みつば、水菜などシャキシャキ生野菜がたっぷり入ったランチタイムにぴったりのヘルシーごはんです。」と書かれてあった。広尾にあるベトナム料理「kitchen」の系列店なんだって。/大阪の観光案内ってどういうところがあるかなぁ。通天閣はあまり行きたくないので、大阪城に道頓堀に四天王寺さんぐらいかなぁ。(hammer.mule)
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%B7%E9%96%80 >
松下幸之助が病気だったころに浅草寺へ。治ったためお礼に。
< http://www.mot-art-museum.jp/ >
東京都現代美術館
< http://blog.goo.ne.jp/negokunta/e/46fcc29ac6c2bc4c11688a5458147263 >
まぜまぜごはん
< http://www.fc-arr.com/site/kitchen.html >
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