ネタを訪ねて三万歩[89]ネットならではの不思議な関係/海津ヨシノリ

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私は出先によってバッグを変更するようにしています。もちろん珍しいことではありませんが、出先によって荷物の量が2倍になることがあるからなのです。とにかく、バッグを変更したことによるミスは絶対に許されないので、インナーバッグで一発変更できるようにしているのですが、世の中に絶対はあり得ません。

ということで、とうとう忘れ物をしてしまいました。パスモカードです。もちろん財布は持っていましたので困ることはなかったのですが、問題は切符を買う面倒な処理とそれに費やす手間です。これほど面倒だとは思っていませんでした。

そもそも、目的地までの料金確認がこれほど分かりづらいとは思ってもいませんでした。しかし、昔はこれでみんなが移動していたことを思い起こし、なんだか不思議な感覚にとらわれてしまいました。それとiPhoneの地図機能。ご多聞に漏れず初めて出掛ける場所を登録しておくわけですが、正しい方向を歩いているはずなのに逆方向を示すことが多く、意外と信用できないことを痛感しています。

まっ、癖が分かれば、逆に行けばいいだけなので取り立てて困ることはありませんが、なんだか納得できません。もっとも、今の世の中いちいち納得しないと、使えなかったり前に進めなかったりしていたら何も出来ないですからね。

なんだか良くわからない状況の混ぜご飯状態の中で、とにかく生きていかないといけないわけです。そんなわからない世界でも案外なんとかなってしまい、新しい発見や出会いが生まれる確率が高くなっているわけですから。




最近の私は、始めたばかりのfacebookで色々と面白い体験が続き、不思議な空間に迷い込んでいます。例えば、教員をしていることで生まれる学生のと交流は、卒業ともに消滅してしまうことの方が多いわけです。

ところが、私にとって卒業生というカテゴリーに大きな意味はなく、今までも不定期に卒業生とお茶会や飲み会を行っていました。これは、頻度の高いプチ同窓会という流れというよりは、在学中の関係がそのまま延長されているといったニュアンスが正しいかも知れません。

そして、その関係が更に増幅してしまったのがfacebookでの交流というわけです。場所も仕事環境もまったく異なっているにもかかわらず、ネット上に共存していることの方が大きな意味を持ってきます。そして、在学中にはほとんど会話がなかった学生や、音信不通となっていた学生との再会、そして通常ではあり得ない新しい出会いがfacebook上で幾つも生まれています。

多摩美術大学造形表現学部テザイン学科を今年卒業した女性と不思議なイベントを行いました。発起人の彼女は1年生の時に私の共通教育の通年講義を履修してからの仲。具体的には、最終授業の少し前に成り行きで5名の学生を携帯撮影したのが顔を知った最初でした。そのうちの1名は他大学へ行ってしまい、残った4名のうちもっとも会話の少なかった学生だったのです。記憶に残っているのは、4年生の卒業制作の仕上げの時に少し話した程度です。

その後facebookで友達となり、暫くしてから彼女がおむすびを3000個握るイベトンに参加したという話に私がリアクションしたことで、おむすびの話で異常に盛り上がり、気が付けば「おむすびの会」なるサークルを作り、不思議なイベントが開催されていたというわけです。

私から見ると、顔見知りはその彼女と前記した4名の中で一番話をしたことのある女生徒。他は活動場所も職業も年齢もバラバラな8名というわけです。全員を知っているのは発起人の彼女だけです。

さて、この「おむすびの会」とは何か? ということですが、簡単に言うと、みんなでおむすびを食べ合うという趣旨です。お気に入りの具材を持ち寄りおにぎりについて、日本文化について語り合いながら楽しくパーティーをしましょうというものです。こんな素晴らしい文化を造り上げてくれた日本人の知恵に感謝を込めて、というわけですね。ちなみに、今回の参加者は半分が初めてお会いする方ばかりでした。

実は今回のイベントの開催場所は代々木公園だったのですが、雲行きが怪しかったので参加者の1人が飯田橋で経営しているCucina Italiana Sinceroさんの店内をお借りすることになりました。

ただし、発起人は究極の晴れ女を自称するだけあって、結果的に快晴となったのにはビックリです。彼女は未だかつて自身が関わるイベントで、降水量が90%を越える予想が出ていても、ことごとく晴れにしてしまったという神通力の持ち主です。そんなわけで初会は、既に握ってあるおにぎりに具材をいれて食べ合うという形に変わりました。

もう一つの不思議な縁は、本来なら出会うはずのなかった人との関係です。私は共通教育の某教授ともfacebookで友達となっているのですが、私が多摩美術大学造形表現学部で講義を担当する6年も前に卒業した女性がその教授のページから私のページにたどり着き、たまたま開催間近であったアップルストア銀座でのセッションを知り参加してくれました。そして、結果的にそれで知り合うことになったのです。不思議な縁だと感じています。

私の公開セッションの最後に、翌月のハンズオンセッションの参加者の半分を募集し、人数が多い場合は希望者でジャンケンとなっています。そのジャンケンに顔見知りが負けてしまったのですが、その時勝ったのがその女性でした。

帰宅途中にメールで友達申請と同時に、丁寧なメールが届き恐縮してしまいました。実はこの時ジャンケンに負けてしまった顔見知り女性も、1か月前のハンズオンセッションで会話をするようになり、facebookを介して情報交換する友達になったばかりでした。

facebookテーマの最後は、私のことをよく知っているらしいアジア系の女性から突然コメントを受けたのに、当の私は彼女が誰だかわからずいると、同時に届いた友達申請で5年前の教え子だと知った驚きです。

台湾からの留学生で、とても鮮明に覚えていた彼女のことはプロフィール写真ではわからず、他の写真とローマ字表記の発音から漢字を思い出して答えを見つけ出した次第です。今は仕事で中国にいるらしく、彼女が大好きなラッキョウの入った福神漬けが中国では手に入らないという話で盛り上がりました。ラッキョウは中国語で「辣韮」。原作地はチベットであることを伝えると、更に盛り上がってしまいました。

まさか、ラッキョウで盛り上がるとは思っても見ませんでしたが、この先もっと予期していない嬉しい出会いが沢山待っているような気がしてなりません。きっとそれはお互いが色々な種を蒔いてきた結果なのでしょう。昔知っていたというだけで、情報を発しない亡霊を我慢強く見続けていても何も産まれないですからね。

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■今月のお気に入りミュージックと映画

[Air a Danser]by Penguin Cafe Orchestra in 1981(U.K.)

いわゆるジャケ買いでお宝発見した曲のひとつです。そして、この曲はあまりにも有名だと信じていたのですが、初来日の時にコンサートに出掛けた私は、客席がガラガラだったのにショックを受けたことを思い出しました。そのクラシカルナな旋律と、ミニオーケストラで奏でる楽曲は間違いなく名曲です。少なくとも欧米では。数年前に再版が出ましたが、再来日も決定し、なんだかあの頃に戻れそうな気持になってきました。

[大アマゾンの半魚人]by ジャック・アーノルド in 1954(USA)

原題は"The Creature from the Black Lagoon"なので邦題は或る意味トンデモかもしれませんね。直訳すれば「黒潟の化け物」ですが、「沼地の怪物」あたりが妥当ですね。

さて必見はカメラアングル。ヒロインのジュリー・アダムス演じるケリーが船から沼地(どう見ても沼地には見えまず綺麗な池そのもの)へ飛び込むロングショットの構図はあまりにも芸術的。そのままカメラは水中撮影に移り、水面を泳ぐジュリー・アダムスを水中からの逆光で撮りながら、その直ぐ下を、平行して泳ぐ半魚人を同一のフレームで切り取り続けるシーンの美しさは必見。

この美しいシーンは、驚くべき撮影結果と言うべきかもしれません。どうやって撮影したのかと思うほどです。恐らく巨大なプールでの撮影なのでしょうが、特撮ではないのが本当に凄いです。

ちなみに続編「半魚人の逆襲」も作られており、無名時代のクリント・イーストウッドがクレジットすら出ない端役で出演しているなど、そちらも必見です。ただし、原題は"Revenge of the Creature"です。なお、劇中では半魚人を"man-fish"と読んでいました。しかし、どうして怪物(♂)は美女が好きなのでしょうね。種が違うので動物的には反応しないはずなのに...という突っ込みは無粋でしたね。

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■アップルストア銀座のセッション

7月23日(月)18:30〜 アップルストア銀座でのセッション
Hands on a Macとして画像処理セッション
『海津ヨシノリの画像処理テクニック講座Vol. 70』
Illustratorのペンツール速習法とイラストレーション作成をハンズオンいたします。なお、ハンズオンは予約制で申し込みに関してはAppleに一任しております。

【海津ヨシノリ】グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家
yoshinori@kaizu.com
< http://www.kaizu.com >
< http://kaizu-blog.blogspot.com >
< http://web.me.com/kaizu >

某所で立ち寄ったビルのトイレで、清掃を完了したばかりの清掃員の女性が私に向かって放った一言が意味不明で、何日経っても頭の中から消えません。曰く「床は濡れていて綺麗ですが、使えます」。これは正しくは「床は清掃したために濡れているだけで、汚れているわけではありませんから使用可能です」だと思うのです。多分。それとも「床は濡れていて綺麗ですが使えます」には、私の知らない日本語の凄い文法が隠されていたりして......。