[3291] もてない日本の私

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《それが理科系文科系の違いなのか》

■ショート・ストーリーのKUNI[120]
 漂着
 ヤマシタクニコ

■歌う田舎者[34]
 もてない日本の私
 もみのこゆきと




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■ショート・ストーリーのKUNI[120]
漂着

ヤマシタクニコ
< https://bn.dgcr.com/archives/20120628140200.html
>
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2022年6月。

湿気を含んだ空の下で、古い団地はひっそりと静まっている。壁にはひび割れの補修跡が縦横に走り、窓枠は塗装がはがれてまだらになっている。ニュータウンと呼ばれたのは遠い昔だ。自転車置き場には壊れたベビーカーがほこりをかぶって転がっている。

「ただいま」
買い物から帰った妻が声をかけると、浴室から「おかえり」と声がした。
「何やってるの」
浴室をのぞき込むと、夫は浴槽の前にかがみこんでいた。妻のほうに顔を向け
「ここ、ペコペコしてただろ」
「ええ」

琺瑯引きの浴槽は、いつからか前面のパネルが今にもはがれそうにふらふらしていた。築50年を超える団地だし、夫婦が住みついてからでも30年になる。その間一度も取り替えていないから、そういうことが起こっても不思議はない。家のいたるところで同じようなことが発生していた。

「どうしたら直るかと思ってたけど、ほら」
夫は浴槽をこんこん、と手で軽くたたいた。昨日まではそうしただけでふらついていたパネルが、びくともしなかった。
「あら、すごい」
「だろ」
夫は自慢そうに笑った。

「どうやって直したの?」
夫は答えず、ベランダに向かった。そして物干し用の金具を指さした。竿を通すために天井から下がっているかぎ型の金具だが、さびついてぼろぼろになっていた。それが、薄い銀色の膜でおおわれている。

「これも?」
「ああ、おれが直した」
「すごい。助かるわ。洗濯物を干すたびに手にサビがつきそうでいやだったの。管理事務所に言っても『ここの団地は近いうちに取り壊すことが決まっておりますので』と言うばかりなのよね。気が滅入るわ」
「仕方ないさ」

「でも、どうやって直したの?」
「魔法の素材があるのさ」
「魔法?」

夫がうなずき、いま帰ってきたばかりの妻の手を取って外に出た。なんだか楽しそうだ。いい年をした夫婦が何をやってるんだと思われるだろうな、と妻が気にしたくらいに。夫が連れて行ったのは老人会の会長をしている男の住む家だ。二棟隔てた棟の二階。

「静かねえ」
「ああ、むかしは子どもの声がうるさいくらいだったが、いまは半分以上空き家だからな」

夫婦はぼうぼうに伸びた草を踏み分けながら進んだ。最近は雑草刈りの間隔も遠のく一方だ。この団地に振り当てられる予算が減っているからだろう。もっとも、文句をいうような住民もいない。高齢化がおそろしいスピードで進んでいる。

会長は10年くらい前に妻に先立たれ、元々子どももいないからひとり暮らしをしている。2DKの一室が物置がわりになっていて、そこにそれはあった。

金属のような光沢を持っているが、やわらかそうだ。餅をちぎったような不定形のものが多いが、比較的きちんとした直方体に近いものもある。大きいので枕くらい。小さいものは消しゴムくらい。それが団地の一室で山を成している。

そっと触れるとなまあたたかい。少なくとも金属のような冷たさはない。
おそるおそるさわって、持ち上げてみたが、意外に軽い。
「手でちぎれるし、ぎゅっと押さえているとそのままの形で固定できる。ごく薄くのばして物の表面を包みこむこともできるんだ」

「こんなの......見たことない」
「ああ」
「不思議だろ」
「どうやって、これを?」妻が聞くと会長が答えた。
「落ちてたんだ」
「これが、みんな?」

「集会所の裏の陰になったところに落ちてた。最初は何だろうと薄気味悪かったけど、別に害はないようだ。あのあたり一帯、かなり広い範囲に散らばってるようだった。どこかから風で飛ばされてきたんじゃないかと思うけど、わからない。集会所の裏はだれも通らないし、草刈りも何年もしてないから、いつからあったかもわからない」

「団地の中に秘境があるんだよな。秘境には秘宝があるってわけだ」
夫が言った。
「そうかもしれない。そうだ。まったくこれは秘宝だよ」
夫はその日もバケツに一杯くらいのそれを分けてもらって帰った。
「ベランダの手すりの補修に使えそうだ。いや、ポストのこわれた扉のほうが先かな」

夜になるとまた雨になった。ひそやかな雨の音はかえって静けさを際だたせる。真下も、隣も空き家だ。取り壊しはいつとは決まっていないものの新規入居は受け付けていない。

「テレビもおもしろくないなあ」
最近は地上波のチャンネルが減ったし、放送時間が短くなっている。おもしろい番組も減っている。有料で楽しむ分には選択肢が増えているのだろうが、そうまでして見たいと思わない。

雨の音に交じってきゅ、きゅ、という音がかすかに聞こえた。

「あれはなんだ」
「自動販売機よ。すぐそこにあるでしょ、掲示板の横。買う人もいるのね」
「前からあんな音がしたっけ」
「最近、変わったみたい。硬貨を入れると音がするの」
「でも、変な音だな」
「そう? いまどきのはやりかと思ったわ」
「そうなのかな」

「そうよ、きっと」
「おまえ、自動販売機で買ったりするのか?」
「買わないわ。甘いのは好きじゃないし、お茶なんか家で飲めばいいじゃない」
「そうだな」
「それに、こんなさびれた団地の中だからあまり買う人もないでしょ。入ってる商品も古そうな気がする」
「確かにな」

実際は、妻は最近何回か買っていた。あの音が気がかりで。

硬貨を一枚入れると、少し間があって「きゅ」と音がした。もう一枚入れるとやはり「きゅ」と音がした。それも、そのたび違っているような気がする。音の大きさとか間合いとか。機械仕掛けなら、いつも同じだと思うのだが、それともランダムに変化する仕掛けなのか。

数日後。夫が興奮した面持ちでかえってきた。会長の家に行ってきたのだ。
「今度はこんなものが落ちてたそうだ」

そう言って差し出した手の中にはネジがあった。といっても、見たことのない形の、たぶんネジだろうと思えるものだ。先端が曲がっているし、さわってみると柔らかい。生き物の尻尾のようだ。そしてやはりなまあたたかかった。少し汚れているのは、使用されていたからだろう。多分これは何かの「部分」だ。

「何かに使えそうだろ」
「何に使うの」
「わからないけど、きっと何かに使える。ほかにも、少しずつ形はちがうが、色々落ちていた。それを集めて、おれたち、おれと会長で売ろうと思うんだ」
「売るって。どうやって」

「それは今から考えるんだ。あの素材もいろんなことに使える。これだって、絶対いろんな役に立つ。まだわからないことが多いが、とにかく他のだれかに先を越される前に手を打たないと。さっさと集めて、ほかのだれにもわたさないようにする。それから、売る方法を考える」
妻は何か言いかけて、黙った。

「どっちにしても、ものを保管する場所とか、いろいろ必要だ。金を用意してくれ。会長とおれと折半で会社をつくる」
妻は唖然とした。
「どこにそんなお金があるの」
「定期預金があるだろ。解約すれば」
「そんな...」

「だいじょうぶだ。絶対もうかる。人生最後のチャンスなんだ」
「年金だけじゃ生活できないのよ、あたしたちの世代は。昔の高齢者と違うんだから」
「わかってるさ、そんなこと!」
夫は声を荒げた。妻は息をのんだ。
「だから、言ってるんじゃないか!」

さびれた団地の自動販売機でも、蒸し暑い季節はそれなりに売れるようだった。「きゅ」「きゅ」という音は時々聞こえた。その音が少し変わった、と思った。どういえばいいのだろう。なんとなく重くなった、ような。

ベランダで洗濯物を干していると、何かがぽとり、とサンダルばきの足の上に落ちた。あのネジとよく似た、もっと小ぶりのやつだった。どこから? 妻はそれをつまみあげ、空を仰いだ。

妻はしばらくぶりに自動販売機でコーラを買った。硬貨を投入すると「ぐっ」という、変な音がした。もう一枚投入すると、もう鳴らなかった。出てきたコーラとおつりを取り、家に向かった。

そのとき、ふと自販機の後ろを見た。叫び出しそうになった。何かが、自販機の金属板の継ぎ目からはみ出ていたのだ。何かはわからないが、たぶん、内部で育ちすぎたものが。

「みなさん、覚えていらっしゃいますか」
テレビでアナウンサーが言った。

「今から11年前、日本で大きな地震と津波がありました。たくさんの人が犠牲になり、街が破壊されました。そして翌年、太平洋を隔てた海岸に、被災地から津波で運ばれたものが漂着し始めました。その後も数年にわたってさまざまなものが流れ着きました。今日はその特集です。長い年月をかけて流れ着いたものには、さまざまなドラマが隠されています。第三者からみると何気ないものでも、ひょっとして、それを胸の痛む思いで探し続けている人もいるかもしれないのです......」

ああ、そんなことがあったなあと妻は思い、それからばくぜんと思った。日本から太平洋をわたって対岸に流れ着くのに早くても一年かかった。もっともっと遠いところで大きな災害があったとしたら、そこからいろんなものが流れ着くのにはどれくらいかかるのだろう。つまり、流れ着いたものたちは、いつのころのものなのだろう......。

はっとした。自分は何を考えているのだろう? 何が流れ着いたというのだろう? 会長の家から戻ってきた夫がドアを開けるなり言った。
「まいったよ。暑いのでたまには缶コーヒーでも買おうと思ったら、なくなってるじゃないか。自動販売機が」

【ヤマシタクニコ】koo@midtan.net
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< http://yamashitakuniko.posterous.com/
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ある集まりで隣の席になった女性は、結婚するまで大学の助手を務めていたという理科系の人だった。専門はと聞くと「高分子がどうとかこうとか」でちんぷんかんぷんなのでまあそれはいいのだが、とても謙虚な人で自分は文章もうまく書けないし、そういうのが得意な人がうらやましいという。

「私なんか理科系と聞くとそれだけでうらやましいですよー」と私がいくら言っても「いえいえ」「いえいえ」としつこく謙遜される。しかし、不意に思い出したように「道を聞かれたときに『そこを曲がって西に何メートル』とか、具体的に数字を出して説明をすると『すごくわかりやすい!』と感心されることはありますね」と言う。

「私、目視はできるんです」とも。あー、それ、私、全然できないんですよね。50メートルだか100メートルだか、見当もつかなくて......って、それが理科系文科系の違いなのかどうかは知りませんが。

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■歌う田舎者[34]
もてない日本の私

もみのこゆきと
< https://bn.dgcr.com/archives/20120628140100.html
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4/19のデジクリ原稿「旅に出るスイッチが入ったと感じさせていただきます」
を送信したあと、柴田編集長からいただいたメールには、こう書いてあった。

 言い寄る南米の男たちには
 凛としたやまとなでしこでご対応ください
 それだけが心配だ......

ふふ、そうよ、そうよね。キュートでセクシーでゴージャスでビューティフルなあたくしを、天性の恋愛体質であるラテン男が放っておくはずないわ。
おーーーほっほっほっほ! 柴田編集長のメールを100万回くらい反芻しては高笑いしすぎて、もう少しで牛になるかと心配になったほどである。

しかしながら、せっかくご心配いただいたにもかかわらず、南米をふらついていた間、ラテン男に声をかけられたことなど、ただの一度もなかった。いや、正確には、メンドーサ(アルゼンチン)のバスターミナルで、安宿の客引きに声をかけられただけだったのである。なんたる屈辱!

かつて、イタリアの街を旅していた時には、陽気なラテン男が、あいさつ代わりのように声をかけてきたものだ。
「やぁ、シニョリーナ。どこから来たの? ヒュー!」
実話である。

ウィーンのブルク公園で声をかけてきた男は「日本から来たの? 街を案内してあげるよ」と囁き、小一時間一緒に散歩したあと、夕暮れのカフェでこう言った。

「君は本当の愛を知ってる?」
「え? 本当の愛ですって?」
「僕はまだ知らないんだ。本当の愛を探したいと思わないかい?」
男は潤んだ瞳でわたしを見つめたものだ。
♪ふたりを〜夕闇が〜包む〜この窓辺に〜♪
実話である。

プラハでは、コンサート会場で隣の席になったアメリカ人が、突然わたしの手を取り、こう言った。
「小さな指だ」
「まぁ、日本人の指はたいがい小さなものですわ」
「君の部屋に薔薇の花とワインを贈りたい。だからホテルの部屋番号を教えてくれないか」
男は燃える視線でわたしの瞳を捕えた。

♪ほ・の・お〜のよ〜に〜燃えよう〜よ〜 恋を〜する〜なら〜 愛するな・
ら・ば〜♪
実話である。

しかし、超絶英語ができるわたしであるからして、ひょっとすると「ボクノ部屋ニハ薔薇ノ花ガアリマス。部屋番号言エバ、ワインモ持ッテキテクレマス」
と、単にホテルのシステムを説明していただけかもしれないが、まぁそこは人生前向き、英語も前向きに解釈した方が幸せというものであろう。

チュニスの街角では「観光に行くんだったら、僕が連れてってあげるよ。シディ・ブ・サイドはもう行った? 白い壁とチュニジアンブルーの扉がきれいな街さ」と声をかけてきた男が、人懐こい笑顔でこう続けた。

「ぼくが日本に行ったら、君のうちに泊めてほしいんだ」
「んまぁ、いけませんわ。日本の良家の子女には、家に男性を泊めるなんて、そんな不埒な習慣はございませんことよ!」
「大丈夫、問題ない。君と僕が結婚すれば」
「なんですって!!」
「結婚しないか?」

実話である。
しかし、そのあと「そうすれば、ぼくは日本で出稼ぎができるよね」という発言がくっついていた気がするのは、空耳だったと思う。

そんなわけで、世界のあちこちで、言い寄る男をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、武勇伝には事欠かないわたしだったのだ。それなのに南米でのこの体たらく!

♪あのとき きーみはー わかかったー♪ そう、世界中で武勇伝を打ち立てていた頃、確かにわたしは若かった。しかし、それだけではない何かが、わたしを武勇伝から遠ざけているような気がするのだ。

いったい何がいけなかったというのだ......。スライドショーモードで南米の写真を改めて見直してみた。
「......え、誰ですか、このブス!」

カラフルなカミニートの街角を写した写真の一群に、それはあった。洗いっぱなしで爆発した髪にノーメイクの女が、だぶだぶのスウェットパーカによれよれのパンツといういでたちで、超イケメンラテン男とタンゴのポーズをキメている。

「だっ......誰よ、あんた!」
間違いなくわたしだ。
「いや、そんなはずはない!」
そんなはずもあんなはずも、どう見てもわたしである。

なぜだ! わたしはこんなにブスではなかったはずだ! 武勇伝を打ち立てたキュートでセクシーでゴージャスでビューティフルなわたしは、いったいどこに? そういえば、去年のゴールデンウィークに行ったベトナムでも武勇伝は打ち立てられなかったぞ。

うむむむ......よくよく振り返ってみると、どうやら武勇伝を打ち立てていたのはシステムエンジニア時代で、ブスになったのは窓際事務員になってからだということに思い至った。そうか。ブス分岐点はそこであったか。さもありなん。

世を忍ぶ仮の姿で窓際事務員をやっていた職場は、たいへんに古色蒼然としたところで、昭和30年代で時が止まっていた。昭和30年代と言えば、40代の女子(おなご)など、皆々寿退職して、職場にはいないはずなのである。よって殿方たちは、働く40代の女子の取り扱い方法がわからなかったようなのだ。

男でもないが、さりとて女でもなかろう。ひょっとすると人間でもないのではないか。なにやら「見てはいけない生き物」が突然目の前に現れたかのような戸惑いでいっぱいだったのだ。

「見てはいけない生き物」という属性が女子に付加されるとどうなるか。誰も見てないんだから、別になーんにもしなくていいよね......となるのは人間の佐賀鳥取島根である。

そして気が付けば、ランチタイム後の化粧直しは、あぶら取り紙で皮脂を抑えるのみ、ノーアクセサリー・ノーパヒューム・ノーマニキュア、通勤は連続同じ服。女子力を発揮するルーチンワークはすべて超簡易処理にダウングレードされたのである。もちろんダウングレードされた女子の動作保障およびサポートは、いかなる業者も承っておりません。

「ちょっと〜、もみのこさん。その口紅、最近買ったの? 似合ってない」
「やかましいわ。あんたこそ頭に寝ぐせ付いてるだろ」
「あのさ、ブラから肉がはみだしてるんだけど」
「ベルトの上に腹が乗ってるあんたに言われたくないわ」

システムエンジニア時代は、隣席の殿方とこのようなセクハラ会話を交わしていたものだが、このくらいのジャブの応酬がないと、女子成分はあっと言う間に干上がってしまうのである。

まったく40代で何が悪い! 文句あるならかかってこいっ! 返り打ちにしてくれるわ。そういえば、どこかにそういう失礼な国があったな。......そうだ、サウジアラビアだ。あの職場はサウジアラビアだったのだ。

ご存じの方もいらっしゃるやも知れぬが、サウジアラビアはイスラム教の戒律がまことにもって厳しき国にて、女子の単独旅など許されず、殿方の近親者を同伴しなければビザも出ないのである。

なんとなれば、女子は庇護しなければならないかよわい生き物でありながらも、殿方を堕落させる危険な生き物でもあるため、そこいらに野放しにしてはいかんのだ。しかしながら例外が設定されている。40歳以上の女性にはビザが出るのである。

おい、サウジアラビアよ。貴様、失敬ではないか。40歳以上の女は、かよわくもなければ殿方を堕落させることもできないと言いたいのか。40歳以上の女は、頭を丸めて木魚でも叩いてろってか?

かつて、中東への旅行パンフレットを見てそれを知ったわたしは、40歳になったら、「熟女の女子力を思い知れ!」のスローガンを掲げ、中東の平和のためにサウジアラビアに旅に出ようと考えていた。

必要とあらば、五月みどりや愛染恭子、あるいは昼下がりの団地妻あたりを招集して、熟女ハニートラップ隊を組織し、あちこちでハニーなテロ活動を行ってもよいだろう。♪おひまな〜ら〜きてよね〜 あたしさびしいの〜♪である。

身分の高い殿方を籠絡した方が、社会的な影響もより大きくなると考えられる。ならば王族クラスを誘惑し、第6夫人あたりに加えてもらおうではないか。「おぉ、妃よ、そなたは40歳であったか。いや、我が国の掟は間違っておった。それそれ近う寄れ」あぁ、さすればわたしは働かずしてオイルマネーで一生左団扇である。

このように、中東の平和のため命をかけようという崇高な思想に打たれた神様は、わたしの願いに手を貸してくださったのであろう。「そんなにサウジアラビアに行きたいなら、そのように取り計らって進ぜよう」

そして、薩摩藩のサウジアラビアに、わたしを御遣わしになったに相違ない。さすがは神様。ありがてぇありがてぇ。アッラー・アクバル、神は偉大なり......おい、ありがたくねぇよ! わたしが行きたかったのは本当のサウジアラビアであって、王様もいない薩摩藩のサウジアラビアじゃねぇ。おかげでラテン男が歯牙にもかけないブスになっちまったじゃねぇか。不本意だ。まことにもって不本意である。

そもそもラテン男というものは、ぷりんぷりんのおっぱいと、ぷりんぷりんのお尻でブイブイ言わせた女子でないと、対象にしない生き物なのである。南米でも、うら若き乙女たちは、ことごとく体の線が出るピチピチのお召し物を身につけておられた。

よって、爆発頭にノーメイク、だぶだぶよれよれな服の女子など、ラテン男からは一瞥もされないのだ。

「旅先にドライヤーなんて、重くてやってらんねぇよ。だいたい誰も見てねーし」とか、「全速力で走って逃げられる服でなきゃ、防犯上よくねぇだろ。だいたい誰も見てねーし」などと言っていては、ラテン男は一生言い寄ってこないのである。

あぁ、南米においてもわたしの背中には「見てはいけない生き物」のレッテルが貼られていたのであろう。口惜しや恨めしや。

世の殿方たちよ、心して聞くがよい。たまには隣の女子に「あれ? 髪型変えた?」くらいのジャブをぶちかましてくれ。でないと、女子というものは、いつのまにか「男でもないが、さりとて女でもなく、ひょっとすると人間でもない生き物」になってしまうのである。

「もてない日本の私」は、かくして出来あがったのであった。今後は南米での反省をもとに、殿方が言い寄ってこないと嘆くのではなく、こちらから言い寄ることを決意した次第である。

※「うるさい日本の私」中島義道
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101467218/dgcrcom-22/
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※「君といつまでも」加山雄三
<
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※「恋をするなら」橋幸夫
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※「あの時君は若かった」ザ・スパイダース
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※「おひまなら来てね」五月みどり
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【もみのこ ゆきと】qkjgq410(a)yahoo.co.jp
かつてはシステムエンジニア。その後、働くおじさん・働くおばさんと無駄話するのが仕事の窓際事務員。現在、ひたすら貯金を食いつぶす失業者。

そういえばムハンマドの生涯を題材にした小説「悪魔の詩」を邦訳した学者は殺害されている。わー、イスラム原理主義者の皆さん、怒らないでください! これはわたくしの芸風というヤツでありまして、イスラム教に対して敵対意識のかけらも持っておりません。それでも許しがたいとおっしゃるならば、わが郷土の特産である黒豚狩りを行い、豚肉を忌避するみなさまの口に決して入らないように、わたくしがしゃぶしゃぶにしていただきます。どうかどうか御代官様、お赦しを!

ちなみに、Wikipediaによると、サウジアラビアにおける最新のビザ発給要件は、女性単独の場合、40歳以上から30歳以上に変更されております。これ、そこな女子。今や30歳以上の女もすでに女ではないのだよ。全員頭を丸めて尼寺へ行け!
Wikipedia:サウジアラビア
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%93%E3%82%A2
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編集後記(06/28)

●いよいよ夏の到来。窓を開けっ放しにする(網戸にする)ので、このシーズンには重大な問題が発生する。我が家は15階建ての一階、南向きで日当り良好、風通しもすこぶるよい。よすぎるのが困る。部屋のほぼ真ん中に、部屋をふたつにわける一枚の扉がある。行ったり来たりで、開け閉めはかなり頻繁だが、邪魔な扉ではない。生活のアクセントにもなる、なくてはならない扉である。

だが、南風の強い日は要注意だ。扉を開き切ると、納戸の扉の前床面にある磁石のセットされた止め金具で固定できる。だが、扉を固定せず中途半端に浮かしておいたとき、南から北に向かって強風が通ると(北側の玄関の扉が開いたときなど)、扉はすごい勢いで閉まる。ものすごい音をたてる。立ち直れないほどのショックである。いや、大げさではなく。これを防ぐには開け閉め時に扉を確実に固定するしかない。だが、ついうっかりが続く(バターンと閉まる)と落ち込む。いっそ扉を取り外そうかとさえ思う。

そして、とうとう画期的な解決策を生み出した。要は、納戸の取っ手と、中扉の取っ手を紐でつなぐというシンプルなものだ。うまく説明できないので写真参照。納戸の取っ手に縛った紐の先端ループを、中扉の取っ手にかける。床面固定はしてもしなくてもOK。固定せずに浮いているときにどんな強い南風が通っても、紐に引っ張られて中扉は絶対に閉まらない。大成功。費用ゼロ。ただし、ループをかけ忘れたら効果はない。いまは、必ずループをかけるクセを身体に覚えさせている段階だ。まったくどうでもいい話だが、発明者としてうれしかったもので。見映えはともかく......。(柴田)

< https://bn.dgcr.com/archives/2012/06/28/images/doorstop >
床面にあるストッパーを"必ず"使えば、こんな無粋な紐は要らないのだが

●いったい何が漂着したのだ......。/「今や30歳以上の女もすでに女ではない」
......。あいまいにしてくれる日本に住んでいて良かった。

没ネタサルベージ。東京駅で。コインロッカーの設置場所ごとに動物のマークがついていた。どの場所からでも、他の稼働状況が一目でわかる。日本橋口の牛さんのところなら空いてる! 重い荷物を引きずりながら移動。他の見知らぬ人たちも同様に移動しはじめた。と、外国人を含め、たくさんの人がロッカー前にたむろ。どうしたんだろうと見てみると、まずロッカーの使い方がわからない。わかっても、鍵をかける(支払う、取り出す)には、ひとつしかないコントロールパネルを順に使うために並ばないといけない。このロッカーは稼働状況がわかるところはいいんだけど、混雑する地域には不向きだとわかった。

うろ覚えの使い方。荷物を入れる。扉を締め、ロックするためにプレートを下にスライド。コンパネに支払い方法が表示される。Suicaか現金か選び、支払うとロックがかかる。利用証明書がプリントされ、そこに鍵番号が記載されている。取り出す時は、コンパネで鍵番号を入力すれば開く。

問題はスライド。ロッカーの扉に使い方は書いてあるが、スライドしない。おかしい、おかしいとガチャガチャしていたら、何のことはない、他の人がコンパネを使っている間はスライドできない。順番の予約ができるわけでもない(スライドした順に番号がつけばいいのに。あ、コンパネ通さずロックできたと勘違いされても困るから?)。使い方のわからない人、わかってもスライドできなくてガチャガチャしている人、コンパネの前で呆然としている人たちがいて、外国人もいるので言葉が通じず、人が増えていく一方という流れ。次はあなたがスライドしてね、という譲り合いは、せいぜい3組ぐらいまでじゃないかな。それ以上になると誰が先に来ていたなんてわからないもの。(hammer.mule)

< http://www.fujielectric.co.jp/fit/case/locker/
>
空きロッカー情報がわかるのはいいっ!
< http://www.coinlocker-navi.com/areamap/tokyoeki-1bangai/
>
一階は地上の動物、地下は水生
< http://rocketnews24.com/2012/06/26/224028/
>
アップルマークとジョブズ氏が融合した画像、コカ・コーラの広告
< http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20120627_543120.html
>
アイ・オー、ファイルコピー高速化ツール「マッハCopy」を無償公開
< http://www.justsystems.com/jp/products/atokpad_iphone/
>
ATOK Padが7/3までセール中。Bluetoothキーボードでのかな入力には非対応
< http://www.gizmodo.jp/2012/06/tab_ipad_release.html
>
これがセカイカメラの進化系。興味を行動にうつすアプリ「tab」
< http://www.appbank.net/2012/06/27/iphone-application/433582.php
>
LINEにトークノベル。クーポンにも驚いたが
< http://travelhack.jp/2012/06/27/eleven-fav-timelapse/
>
時間の狭間に迷い込んだような美しいタイムラプス動画10選
< http://applembp.blogspot.com/2012/06/tedpodcast10300.html
>
ついにTED日本語字幕版がPodcastに登場