Otaku ワールドへようこそ![156]ニセ女子高生の日常
── GrowHair ──

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●「もったいビジネス」にハマる人たち

そりゃあ、毎度同じ顔ぶれのおっさんばかりで飲みに行って毎度同じようにくだを巻いてるよりは、きゃぴきゃぴした若い女の子がいて楽しくおしゃべりできたほうがリフレッシュになるに決まってるんだけど。そうであっても、やっぱりキャバクラやガールズバーのような商売が成立していることを、不思議に思う気持ちは払拭しきれない。

だって、話をするぐらい、普通はタダじゃん。話し相手だったら、そこいらへんにいくらでもいる女の子たちの中から気に入ったコを誘ってみればいいじゃん。飲み代をおごったとしてもキャバクラよりは安上がりだと思うぞぉ。

そこいらへんにいくらでもいたりはしないぞぉ、と思うのはたうん錯覚である。人類はだいたい同数の男性と女性からなる。男性が余っていれば、どっかに女性が余っているはずの勘定である。あるいはどっかのイケメンが一人占めしているのでなければ。

おしゃべりという、本来タダのものにもったいつけてお金を取る商売なので、皮肉を込めて「もったいビジネス」と呼んでいる。もったいを売ってるわけだね。まあ、仕事のストレスを発散し、乾いた土に水をやるように心に潤いを求める気持ちに応える商売という観点からすれば「自尊心回復ビジネス」とも呼びうる。しかしアレだ、お金を払ってちょっとちやほやしてもらうと回復する自尊心っていうのも、なんだか安っぽい感じがしないかな?

そういうわけで、私の人生にとって、キャバクラやガールズバーは必要ない。一生無縁であってよい。これは、まあ、一種の信条である。そんなところへ魂を売り渡してたまるか、という。いや、それよりも、ちっとも楽しくないし、何がいいんだかさっぱり分からない。




じゃあ、なんで行くんだ、と問い詰められると大変窮するのだが。足が勝手に向くというか。信条というのは頭で考えるものだが、実際にキャバクラへ向かうのは足なんで。犬が西向きゃ尾は東、というくらいで、逆を向いていてもおかしくないのである。なんで男ってそういう生き物なの? と聞かれても、知らん。神様に聞いてくれ。

6月17日(日)の夕刻、セーラー服を着て新宿歌舞伎町一番街通りを歩いていると、セーラー服を着た女の子が客を引いている。けっこうかわいい。「やーいニセ女子高生」とからかうと、本物だという。なんとっ。現役ばかりによる「女子高生の喫茶店」だという。その名も「KODOMOCAFE」。これまた挑発的な。

そういえばつい先ごろ、その手の店が摘発されてなかったっけ? 今検索かけてみると、そのニュースが報道されたのが13日(水)。飲食店「SEXY居酒屋ふじこちゃん」JR横浜関内駅前店で、横浜市立高校の女子生徒(16)ら4人に下着や水着で客の前で歌を歌わせて接客をさせるなどした容疑で、店の経営者が逮捕されている。こういうお店って、どうしていつもオレが発見する前に、警察が発見しちゃうんだろう。

これは行っておかねばなるまい。摘発されてからでは手遅れである。入ってみると、同じように考えたであろうおっさんたちでにぎわい、ほぼ満杯である。このドスケベオヤジどもめ! カウンターの一番奥の席がひとつだけ空いていた。ラッキー。って、どうってことのない健全店であった。去年の11月末にオープンしたというから、もう半年以上経つ。

奥には大きな液晶スクリーンがあり、競馬が実況中継されている。なぜ競馬かといえば、私の右隣に座っているお客さんからのリクエストだという。なるほど、惜しいところで外れたと言って悔しがっている。

私は競馬をやったことがないので、仕組みがさっぱり分からない。聞いてみると「3連単」という方式で、これは、1着から3着までをズバリ当てるというもの。14頭走れば、その順列の数は14×13×12=2,184通りである。

そのおじさんは、1着を1点買いし、2着を3点、3着を5点買っていた。その組合せの数は、1×3×5=15通り。1通りあたり100円なので、この組合せの値段は1,500円。本来ならば15枚のチケットが発行されるべきところを1枚のチケットで表現されている。2,184通りのうちの15通りであるからして、もし事前情報がまったくなくランダムに着順が決まるとしたら、当たる確率は1パーセントに満たない。

なんと、1着は当たっており、2着は買った3点の中に入っており、3着が買った5点の中になかった。なるほど、惜しいところで外れている。当たれば2万5千円になったという。

女子高生喫茶に入って、結局隣のおっさんに競馬の仕組みを講釈してもらって終わった。いや、隣のおっさんにしてみれば、セーラー服を着たニセ女子高生と話して過ごしたわけだから、もっとひどいか。ウハウハなことを期待しても、ものごとそううまくはいかないものだ。

●アイダホのもうひとつのイメージ

アメリカのアイダホ州というと、何を思い浮かべるだろうか。何も思い浮かばないか、出てきてせいぜいポテトであろう。それ以外のものが思い浮かぶ人って、そうなかなかいないのではなかろうか。

アイダホといえばポテト。台湾といえばバナナ、秋田といえば美人、編集長といえば鬼、不動産屋といえば悪徳。定着したイメージってありますわな。って、なんでやねん。

田舎へ行けば、景色の基調は緑色、と思うのは日本の話であって、アメリカはそうはなっていない。薄茶色なんである。あんだけ広くても、大部分は薄茶色。日本に戻ってきて、成田エクスプレスの車窓からの景色が緑色基調なのを見ると、あー日本、と安堵感に涙出そうになる。

オセロ盤は、緑色の地に黒線で8マス×8マスに区切られ、各マスの中に、表裏が白黒の丸い平べったい石を置いていくわけだが、アイダホを上から見ると、薄茶色のオセロ盤に緑色の丸い石が敷き詰められている感じ。各正方形のマスの中央にスプリンクラーが設置され、ぐるぐる回転して水を撒くのだが、届く範囲がちょうどマスの内接円になっているのである。

円周率をおよそ3とすれば、4分の3、すなわち75パーセントしか土地を利用していないことになる。土地はいくらでもあるけど、水はそうはいかない。土地全体を覆うように水を撒くと、重なった領域は2倍撒くことになるけど、どうせすぐ浸み込んじゃうだけ。水の無駄使いよりは土地の無駄使いの方がマシってことだろう。私だったら正六角形を敷き詰めて、その内接円に散水するけどなぁ。そうすれば土地利用率はおよそ90パーセントにまで上がる。

さる消息筋からの情報によると、サンフランシスコ国際空港からアイダホ州のボイジー(Boise、正しくはボイシーと濁らないらしい)に向かう飛行機には、スーツを着たおじさんたちが乗っているそうで。行き先は2つに1つと思っておけばほぼ間違いないらしい。ヒューレット・パッカードか、マイクロン・テクノロジ。

日本には、日立製作所と日本電気のDRAM事業部門の統合により設立されたエルピーダメモリ(株)という会社がある。が、このたび、マイクロン・テクノロジに吸収合併される見通しとなった。これからは、本社出張というと、オセロ盤じゃがいも畑を見下ろしつつ、アイダホの上空を飛ぶことになるわけだね。いいなぁ。よくないか。台湾のイメージがバナナから半導体に変貌しつつあるのと同様、アイダホもポテトから半導体になっていくのかもしれない。

●日本大好き、ビジュアル系大好きなイタリア人

去年、イタリアで出会った大学生のイタリア人女性と、6月9日(土)、日本で再会することができた。Giulia(ジュリア)さん。

出会ったのは去年の4月3日(日)のことで、Brescia(ブレーシア)で開かれた日伊文化交流イベント "Il Giappone nel Chiostro" で出展者として参加していたのである。美術館の中庭の周辺にテーブルが並べられ、各出展者が日本にちなんだ思い思いの物を持ってきて、展示販売している中、Giuliaさんはヴィジュアル系の音楽に関連するポスターなどを展示していた。

Giuliaさんはヴェネツィアに住んでいて、4月5日(火)には、丸一日かけて案内してくれた。出身はミラノの近くなのだが、ヴェネツィアにある大学に通うために、そっちに住んでいる。日本のヴィジュアル系の音楽から入って、日本語や日本の文化全般が大好きになり、大学では日本語を勉強しようと決めたそうである。イタリアで一番いい日本語学校がヴェネツィアにある。

7月17日(日)に渋谷でヴィジュアル系のバンドであるVersailles(ヴェルサイユ)のライブがあり、それに行ったことをこの欄でレポートしたとき、GiuliaさんはVersaillesのよさを熱く語る、とても素敵な文章を寄せてくれた。Versailles は日本に興味を持ち始める発端であったそうだ。
< https://bn.dgcr.com/archives/20110729140100.html
>

さて、大学の3年間のカリキュラムで、最後の仕上げとして、4月頭から7月頭までの3か月間の日本留学が組み込まれている。それで日本に来ていたのである。ヴェネツィアのお礼もあり、さあ今度は東京の面白いとこをあちこちご案内する番だ、と楽しみにしていたのだが、結局会えたのは一回だけ。チョー多忙な日々を送っていたようで。

6月9日(土)、同じ大学のお友達のSaraさんを紹介してくれた。大久保駅で待合せ、3人で一緒に浅草橋へ行き、戻ってきて中野へ行き、それから秋葉原に行き、またまた大久保に戻るという、東へ西へ2往復という、妙な行程になってしまった。

私の格好は例によって、セーラー服。後でキーワード「セーラー服」に「おじいさん」「白髪」「中野」などを組み合わせてツイッター内検索をかけてみれば、例によって目撃情報が20件ほど出てきた。なぜか私まで外国人とみられているツイートが数件あった。

中野ではメイド喫茶「黒猫メイド魔法カフェ」中野本店で映像作家の寺嶋真里さんと待合せ。にゃんぱ〜いっ! 寺嶋さんも、刺青彫ったりスキンヘッドにしたりと、いい加減尋常ならぬいでたち。なんともいわく言い難い4人の集まりであった。

4人で、函館ラーメンの店「大門」へ。ここの冷やし塩ラーメンが絶品なのである。この日はやや涼しかったので、GiuliaさんとSaraさんは熱いのを注文してたけど。そっちはそっちで、薄味の上品な味で、たいへん美味いのである。

それからブロードウェイ4階にある少女チックなファッションのお店「ペイ*デ*フェ」へ。お店には、インテリアとして清水真理さんの人形が何体か置いてある。デザイナーのりむちゃんをお二人にご紹介。
< http://pays-des-fees.com/
>

ヴィジュアル系大好きなGiuliaさんが、好きなバンドのひとつとしてBuck-Tick(バクチク)をあげると、りむちゃんは、そのバンドのCD「ROMANCE」のジャケットの衣装をデザイン・制作したとのことで。それを聞いたGiuliaさんはたいへん驚いていた。

寺嶋さんは、そこで帰り、3人で秋葉原へ。メイドカフェ&BAR「ばぁんぱいあ夜宴迷宮」に用事があるのだそうで。何の用事かというと、そこで働いているイブキさんからチケットを譲ってもらう用事なんだそうで。6月18日(日)に横浜アリーナで開かれるゴールデンボンバーのライブのチケット。
< http://www.yaen-meikyu.com/vanpaia.html
>

Giuliaさんとイブキさんはmixiで知り合ったのだそうで。チケットを譲る件で、メールをやりとりしていて、会うのは初めて。イブキさんは、Guliaさんをてっきり日本人だとばかり思っていたと、たいへん驚いていた。

さて、それからカラオケへ。GiuliaさんもSaraさんも、普通に日本語で歌えちゃう。夏コミに合わせて毎年日本にやってくる Biancaさんとは、何回もカラオケに行っていて、Biancaさんもそこそこ上手く日本語で歌えるのだけど。画面の日本語の歌詞にはついて行けないので、animelyrics.comから落としてきたローマ字の歌詞をプリントアウトして、どさっと束で持ってきていた。

GiuliaさんとSaraさんは、画面の日本語の歌詞をリアルタイムで追いながらちゃんと歌えちゃうところがびっくりである。
Giuliaさんの歌った曲目は、
・Raphael「夢より素敵な」
・Buck-Tick「くちづけ」
・SHAZNA「すみれ September Love」
・ゴールデンボンバー「女々しくて」
など。うーん、すごいっ。お二人はきっと将来、日本の文化をイタリアに広めるのに、大きな役を担ってくれることになるんだろうなぁ。

余談だが、お二人と別れて一人になったら、まだ飲み足りない、歌い足りない気分。中野のメイドバーと歌えるスナックをハシゴ。午前2時半ごろ、歩いて帰る途中で、酔っぱらったおばさん二人連れにナンパされ、バーへ。帰るとき、外はすでに明るかった。長い一日であった。

●武さんのアトリエで芸術論シンポジウム

さて、その翌日、6月10日(日)には、武さんのアトリエへ。山根康弘さんとチャット形式でデジクリに「武&山根の展覧会レビュー」を書いている武盾一郎さん。

写真はこれとかこれとか。
< https://picasaweb.google.com/107971446412217280378/xUfqJL#5758275460086343650
>
< https://picasaweb.google.com/107971446412217280378/xUfqJL#5758275458861356514
>

中野で新しいスクールバッグを買い、新宿で酒を買い、S玉県A尾に向かったのだが、中野で買ったものを新宿に置き忘れたことに電車の中で気がついた。店で保管されていて、翌朝取り戻すことができたが。

武さんのアトリエを拝見するのも前々からの懸案だったのだけれど、それに加えて、まったく別の方面で知り合った人たちを引き合わせて芸術論を交わしてみたら面白いのではなかろうかという試みを実行に移すことができた。

お誘いしたのは、東京学芸大学で彫刻を研究している吉村眸さんと岡野茜さん。先日、入間川の河川敷に置かれた車の中に住んでいるおじさんのところでお二人の作品の写真を撮らせてもらい、デザフェスに出展した。

アートへのアプローチのしかたも表現方法もまったく異なる人たちという意味では、異質な文化を交差させることによる「メディチ効果」を期待したということがひとつにはある。しかし一方、われわれ4人は、アートを生みだす底流をなすフィロソフィーの部分で、どこか通底するものがあるんじゃないかという感覚があった。

そんじょそこいらにありふれている飲み会とはぜんぜん趣を異にする、非常に意義深いひとときを過ごすことができた。しょせんは酔っ払いの会話であるからして、内容はよく覚えてないけど、ルサンチマンから人類愛へ、みたいなのがひとつのテーマだったかも。

「シンポジウム」の原義は「共に飲む」ことだと、ずっと以前に武さんから聞いていたが、冗談かと思っていた。岡野さんは今、プラトンの「饗宴」を読んでいるところだそうだが、その中にそれが書いてあるという。え? ホントだったの?

愛に関する議論は帰りの電車の中まで続き、後で振り返ってみれば、セーラー服を着たおっさんが、若い女性二人と、プラトンの「饗宴」を参照しつつ愛について議論しているというのはけっこう妙ちきりんな光景だったかも。

アトリエに手帳を置き忘れた。月曜日、会社帰りに再びA尾へ。せっかく来たのだからと、駅の上の階のサイゼリアで飲んだ。今度はそこに腕時計を置き忘れた。なにこれ、A尾無限ループ?

金曜日、会社帰りに三たびA尾へ。そう言えばA尾にはもう一人知合いがいたな、ってことで、武さんと3人で一緒に飲むことにする。月曜と同じサイゼリアで。腕時計はちゃんとそこにあった。

ひよ子さん。ひよ子さんは、日本でもトップクラスのコスプレイヤー。うん、A尾以外、まったく接点なし。ひよ子さんは、2006年の世界コスプレサミットで万鯉子さんとユニットを組み、日本代表としてチャンピオンシップ大会に出場し、2位に輝いている。当時は蝶子さんというコス名であった。
< http://www.tv-aichi.co.jp/wcs/2006/j/cosnews.html
>

武さんとひよ子さんと一緒にいるというのが、私にとってはたいへん不思議な気分であったが、これまた面白い飲み会であった。武さんがアニメ方面に話を振ってくれたおかげで、なかなか盛り上がった。むしろ私が、このところ興味があっちゃこっちゃへ分散してしまっていて、メジャーどころのアニメも見そびれているあたり、ちょっとなさけなかったな。

まるっきり別方面の知合いを引き合わせちゃうのって、けっこう楽しいかも。あ、人によるのかなぁ。

6月23日(土)、セーラー服を着て銀座を歩いていたら、以前に一度だけお会いしたことのある作家さんの石神茉莉さんとばったり遭遇、というか、石神さんに見つけていただいた。その日もなかなか楽しかったのだが、そのことはまた機会があったら書くことにしましょう。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。

7月5日(木)〜8日(日)、フランスのパリ郊外で「ジャパンエキスポ」が開催されます。ももクロといい、きゃりーぱみゅぱみゅといい、なかなかいいところを招待しているんじゃないかなぁ、と。ちょいと行って見てきます。

■最新情報:デジクリ発行直前に届いた〜 パリでもニセ女子高生かい!

よしっ! ももクロ、いったな! 日本から行った100人ほどの「もものふ」という名のサムライたち、グッジョブ! 親衛隊も含めてももクロを表現していた。君たち、日仏文化交流の立役者! フランスにもすでに濃ゆい「もものふ」が100人ほど。

パリの写真 2012年7月4日(水)
< https://picasaweb.google.com/107971446412217280378/Paris12070402
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パリの写真 2012年7月5日(木)
< https://picasaweb.google.com/107971446412217280378/Paris120705
>