わたしのノマド事情
── 石北由理 ──

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かつてデジクリに、「クリエイターに11の質問」という企画があった。2007年6月5日の2214号で、「イラストレーターやって、ママもきっちりやるのは、結構覚悟がいるな〜」と回答して来たのが石北(花山)由理さんだった。
< https://bn.dgcr.com/archives/20070605140000.html
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○正直、イラストレーターやって、ママもきっちりやるのは、結構覚悟がいるな〜と。娘が生まれて二年たった今でも、たまに仕事やめるべきなの? と追いつめられる事が度々あります。家族の理解が得られない時とか、娘が何度も入院、通院している時とか。娘の将来を考える時とか。それでも、今、イラストレーターやっているのは、どうしてなんでしょうね〜

あれから5年後、石北(花山)由理さんはどうしているのか。イラストレーターもママもきっちりやっているだろうか。久しぶりにアクセスしたところ、娘さんが小学生になったことと、2世帯住宅に住むことで、仕事のスタイルが変わり、いまはノマドな石北(花山)由理さんだった。(柴田)





■イラストレーターやって、ママもきっちりやるのは、結構覚悟がいるな〜
《Part-2》

◎なぜノマドなのか?

本来であれば、事務所に籠るのがベストなのですが、小さい子供(小学生)をもつ2世帯住宅住まいでは、そうもいかないのです。基本は、急なお迎えにも対応できるよう、子供の帰りを待ちつつ自宅で作業するのがベターでしょう。

ところが、2世帯の家は、まったく仕事ができる環境ではありません。作業場の後ろを洗濯物を干すために往復する義理母や、庭で大音量でラジオをかけながら盆栽いじりする義理父、そのうち掃除がはじまり、あげくにはパソコンの操作の質問攻めにもあいます。

また、自分自身も落ち着きません。仕事に集中しつつも、今日は天気がよくて明日が雨なんて予報を聞くと、とたんに洗濯しなくちゃ病にかかります。また、少しでも埃が舞う状態なんてみたら、今度は掃除したい病にかかってしまうからです。

さらに、疲れがピークの納品日前後は、寝具が側にある環境はまことによろしくありません(笑)。ちょっとのつもりが爆睡してしまいます。

かなり頑強な意思をもっているのならばともかく、大抵の人はこのような環境の中で仕事はできないでしょう。私も然りなもので、そんな事情からノマドをはじめました。

場所はバス1本で行ける範囲。可能であれば、モーニング付きの喫茶店に朝から籠ります。おかわり100円のスタバも利用します。

ノマドでは、フル装備の大きなメインマシンを外に持ち出す事は不可能です。となると、基本持ち出す装備は以下のようなものです。

ノートブックパソコン(MacBookAir13インチ)、筆圧検知式タブレット、無線ルータ、鉛筆、ペン、ノート、ラフ描き用の裏紙数枚。これだけでも10kgはあります。これに財布が加わります。正直、とても重いです。

この装備でできる事を、日中のノマドでしております。平均ワーキング時間は4時間くらいです。

鉛筆ラフ(激務の時は粘土でラフ!)、ノート(ほぼネタ帳面)へのアイデア描き、テキスト打ち込み、メールやtwitter、Facebookのやりとり、ラフからPhotoshopへ取り込みと配色決め、さらに、本番作業(完成手前まではできます)。加えてskypeや携帯での打ち合わせ。

逆にノマドで何が出来ないのでしょうか。それは、メインマシンでないとできない事です。本番作業の細部の描き込み、色調の浅い絶妙に繊細なグラデーションの作成、印刷の色調に近づける色の補正作業。特に最後にあげた色補正は、ノートパソコンの液晶モニタ上では不可能です。

ノマドの合理的な点は、食事を自分で用意しなくてよい(但し、お金はかかる)、エアコン完備!(これ重要)、仕事のみに集中できる、周りに人がいるからか適度な緊張感が保てる。

ノマドの不便な点は、場所によって無線ルータが繋がらない、サブマシン用のコンセントがない所が多い。たまに変な隣人や集団に遭遇して、まったく仕事にならない。そして、長時間席を占領すると、自分の中の良心の呵責が(笑)。最後の仕上げまではマシンのスペック的に無理。

作業時間が少ないので、効率よく仕事をこなす事に集中しています。2つ3つの事を平行でやったりします。自宅の作業場でのワーキングは、22時くらいから5時間くらい。メインマシンにて主に仕上げと色補正。合間に夜食。数日に一度、がっつり眠ります。主に土日と納品の翌日です。8時起床、娘と旦那が起きていようが、とにかくこの時間までは眠っています。

【石北(花山)由理】イラストレーター
主に家電や雑貨等をキャラクターにし、photoshopで3D風ツルテカテイストで描いています。正直3Dの方が早くね? と言われそうなことやってます。
< http://www.yuri-hanayama.com/
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