歌う田舎者[36]夏のお嬢さん
── もみのこゆきと ──

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いまさら『冬のソナタ』を見ている。
「そげなものを見っとじゃなか!」
お盆前後からの竹島・尖閣諸島騒動で、ノンポリなわたしの母まで、竹槍持ってペ・ヨンジュンに飛びかかりそうな勢いである。まぁ、この時期に韓流ドラマを見るなぞ、いわゆるひとつの非国民、国賊、売国奴と呼ばれても仕方がない行為であろう......この"いわゆるひとつの"で長嶋茂雄を思い出す人は、もう少数派なのであろうか。

もとい、常日頃は愛国者なわたしであるからして、当然、わが母とともに竹槍持って参戦すべきところである。しかし、この『冬のソナタ』は、電気機器・ITまるでダメな、遅れてきた韓流ファンのわが妹が、涙ぐましい努力の末やっとのことでブルーレイに焼いて送ってきたものなのだ。それを無下に放置するような侠気のないことができようか。まぁ、見終わったあとは感想でもしたため、親書として李明博大統領に郵送すればよかろう。

しかし、まことにもって突っ込みどころの多いドラマである。だいたい女に結婚断られたくらいで、入院して死にそうになってる男ってどうよ?(←パク・ヨンハ)。で、死にそうになってるからって、やっとそいつと別れた自分の女を、病院に見舞いに行かせちまう男もどうなんだ(←ペ・ヨンジュン)。アホではないか。女返す前に、竹島返せ! 

そもそもペ・ヨンジュンは第2話で交通事故に遭って"取りあえず"死ぬのだが、実は生きていたという設定である。おまいら、葬式ってもんはやらんかったのか。墓はどうしたんだ、墓は。

ペ・ヨンジュンは、セルフレームの眼鏡の奥、優しい眼差しで、チェ・ジウに語りかける。

「すべての星が移動しても、ポラリス(北極星)はずっと同じ場所で輝いているんだ。僕が君のポラリスになってあげる。もう道に迷うことなんてないよ」

そして星をかたどったネックレスをプレゼントする。韓流オバサマたちは、このへんで溶けた白くまみたいになっておられるのであろう。

【白くま】薩摩藩の有名なかき氷の名称
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E3%81%8F%E3%81%BE
>




ちなみにそのポラリスのネックレスは、ペ・ヨンジュン演ずるところの、羽振りのいい建築会社理事のプレゼントと考えると、チェーンと星型のベースはK18WG、埋め込まれているダイヤはクラリティVS2クラス以上、カラーはFクラス以上といったところか。

しかし、冬ソナブームがとっくの昔に終わっているせいか、ネットでいくら検索しても、正面からの写真しか出てこない。サイドから、あるいは裏からのショットがないと、ダイヤモンドをより輝かせるための光を取り入れる穴が開けてあるのかどうか、わからんではないか。

そういうわけで、スケバンまで張ったこの麻宮サキが、何の因果か今じゃ宝石屋の手先。誰が麻宮サキなんだ! という質問はせんでよろしい。それとも、GlowHairさんに加えて、わたしのセーラー服姿も拝みたいか? "セーラー服熟女 今日も濡れ濡れ"に出演したら、1000万円くらいギャラくれんかのう。

それはさておき話を元に戻すと、わたくし、ただいま宝石屋で通販用ジュエリー撮影のバイトをしているのである。もちろん実際に手に取らずに買っていただくわけであるからして、前からも横からも後ろからも撮らなければならない。♪うしろからまえから〜どうぞ〜♪である。

しかし、写真撮影とはなんと難しい仕事であることか。自分の撮影した宝石を見ても、全く買う気が起こらない。この素敵に見えなさ加減は、いったいどうしたことであろうか。

Facebookの中にいる宝石撮りカメラマンに、わたしの処女作を見せて感想を聞いてみたところ「うん、中古品にしか見えないね」
ぎゃーーーーーーーっ!!

♪わったっしは〜泣いて〜います〜 ベ〜ッド〜のう〜えで〜♪

写真って、カメラのシャッター押せば写るんじゃないんですか違うんですかそうですか。わたしもいよいよ「写真を楽しむ生活」の購読をしなければならないのではないか。始めたばかりのバイトであるが、クビになる日も近いような気がする。

ところで、このバイトを始めるにあたって、非常に困った事態が発生した。着ていく服がないのだ。南米から帰ってきたまでは良かったが、その後の動かない失業生活で、夏だというのに、脂肪の腹巻きがまた一枚増えているのである。前屈みになったときの、腹の肉の邪魔さ加減が、わたしに「なんとかしろ、その肥満」と訴えている。

「悲しみのなかに幸福をもとめるがよい。働くんだ、たゆみなく働くんだ」このようにドストエフスキー先生もおっしゃっておられる。バカ高い保険料や市県民税を支払うには、やはり働かねばならぬ。しかしながら、千里の道も通勤着から。たゆみなく働き、立派な仕事を成し遂げるためには、腹に食いこまぬ服が必要なのだ。

そういうわけで、まだもらってもいないお給金を当てに、今の体型に合うストレッチのきいたパンツを二本、ウエストが総ゴムのマキシ丈スカートを一着買った。特にマキシ丈のスカートはウエストが2倍になっても問題ないサイズだ。これで人生は盤石。心おきなく仕事に取り組めるというものよ。

しかしながら、このスカートにはとんでもない罠がかくされていた。

♪罠 罠 罠〜にお〜ち〜そ〜う〜♪

今日も今日とてバイトが終わり、バスから降りようとしたときのこと。後部に立っていたわたしが前方に移動しようとして一歩、二歩、足を進めたときである。バスが急ブレーキをかけた。足元がよろけた瞬間、右足がスカートの裾を踏んづけた。そのままバランスを崩し、左足もスカートの裾を踏んづけた。

しかしながら、これはウエスト総ゴムのスカートである。力が加わると、チャックやジッパーのスカートと違って、引っ張られた方向にずり下がっていくのである。数歩よろけて転んだときには、スカートのウエスト部分は、ひざ上のあたりまでずり下がって来ていた。

季節は夏である。ジージー、ツクツクボーシ、ツクツクボーシ。広葉樹の濃い緑の葉陰からこぼれる太陽の光は、バスの中にいても肌を刺すようだ。

「夏休みも終わろうというのに、まだまだ暑いわね......今日もわたしの心は夏模様だわ」そんな風流な台詞をつぶやいている場合ではない。このクソ暑い気温であるからして、スリップなどというエレガントなランジェリーは身につけていなかったのだ。つまり、ひざ上までスカートがずり下がった結果、どのような景色が乗客の前で展開されたかは......説明したくない。

転んでもタダで起きてはいけないと言われるが、転んだら尻を見せろとは聞いたことがない。なぜだ、なぜこんな目に遭うのだ! ......わたしはもう人生やめたい。もごもごとスカートをウエストまで引き上げ、這々の体で転がり出るようにバスから降りた。乗客たちはどこを見ていいのかわからず、目を泳がせたまま、微妙な沈黙が車内を支配していた。何も知らないのは、急ブレーキをかけた運転手だけである。

♪夏の〜お嬢さん〜
♪お尻がとっても素敵で〜 刺激的さ〜
♪クラクラしちゃう〜
♪チュ〜ウ〜チュウ〜チュチュ

『夏のお婆さん』とは歌わないでほしい。ほんとに人生やめたくなるから。この顛末を鑑賞していた乗客は、帰宅後、みなみな夕飯を喰らいながら一家団欒のネタにしたことであろう。このように今日も薩摩藩の家庭の平和に貢献しているわたしであるからして、薩摩藩名誉市民の称号くらい贈られてもいいのではないか。

本来ならば、尻を見た奴らからはおひねりのひとつも頂戴したいものである。でなければ、わたしの人生の尻が、いや、帳尻が合わぬではないか。

はて、それにしても本日のコラムは、竹島・尖閣諸島に関する近隣諸国の非礼なるふるまいの話から、平和ボケした日本国民に警鐘を鳴らすべく書き始めたのであったが、なぜ尻の話になったのか。平和ボケしているのはわたしの頭か。誰か教えてタムレ。

※「夏のお嬢さん」榊原郁恵
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※「冬のソナタ」
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B003Z6PXI0/dgcrcom-22/
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※「スケバン刑事」
< http://www.dailymotion.com/video/xa2sv7_yy-yyyyyyy-yyyy-yyy-yyyy-ep1-jp-tv_shortfilms
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※「後から前から」畑中葉子
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※「私は泣いています」リリィ
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※「カラマーゾフの兄弟」ドストエフスキー
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334751067/dgcrcom-22/
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※「キッスは目にして」ザ・ヴィーナス
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※「愛してタムレ」谷啓
< http://www.nicovideo.jp/watch/sm12072471
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【もみのこ ゆきと】qkjgq410(a)yahoo.co.jp

かつてはシステムエンジニア。その後、働くおじさん・働くおばさんと無駄話するのが仕事の窓際事務員。ただいま通販用ジュエリー撮影のバイト中。

カメラなど、旅行中にしか使ったことがないのである。押せば写るとしか思っていなかったのである。コンデジ以外は触ったこともなかったのである。最近、露出をいじるという技を覚えて、一頃よりずいぶんマシになった気がする。

しかし、ダイヤモンドのリングを写してPCのモニタで拡大すると、プラチナの腕の部分に、思いっきり部屋の蛍光灯やカメラを構えている自分が写っているのだった。嗚呼、一難去ってまた一難。人が買う気になる宝石撮りへの道は険しい。とほほ。

ところで、薩摩藩と日向の国との境には、韓国岳という山がある。霧島連山の最高峰であるが、名前が韓国岳なだけに、今に「韓国岳は我が国の領土だ」と李明博が言い出すのではないかと心配である。そもそもなんだってそんな名前を付けたのかと思ったら、韓国まで見渡せるほど高いから、という説があるそうだ。実際は見えないが。どーせ見えないんなら、インド岳とかモンゴル岳くらいに改名したほうがいいのではないか。