ローマでMANGA[56]アモーレの次はユーリ/midori

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結局のところ、「アモーレ」は5話まで原稿が上がった時点で、制作がストップしてしまった。貪欲なイゴルトがアモーレ制作中にも関わらず別の作品を提示し、堤さんがそれを大いに気に入ってしまったのだ。

それが「ユーリ」。社会派で硬派の「アモーレ」とは打って変わってユーリという子供の宇宙飛行士のファンタジックなお話だ。このキャラクターは「アモーレ」が誕生する前に、スォッチで出していてすでに持っていた。
< http://item.rakuten.co.jp/parksgallery/465870 >

一度どこかで使用するために考案したキャラクターをそのままにしないで、ちゃんと話しあって契約書にも明記して他に使用出来る権利を確保しておく。この辺の抜け目なさは、これから日本の外で仕事をしようとする人は学習すべきと思う。

イゴルトは、スォッチからキャラを他の媒体で自由に使用出来る権利を手に入れた。ただし、スォッチ版を彷彿とさせるような丸い形の時計に「ユーリ」を全身で入れないこと、という但し書きがついたそうだ。

イゴルトの本名が「イゴル」というロシア系の名前のせいかどうかは知らないけれど、旧ソ連の世界で初めて有人宇宙飛行を成功させたユーリ・ガガーリンから名前を取ったそうだ。




「ユーリ」のエピソードの中に「cccp」のマークをつけて宇宙遊泳をしている飛行士が出てくる。旧ソ連から連邦が崩壊して様々な共和国にわかれた時期に、飛行士がステーションから国に帰れない、という事態が発生したことがある。

お迎えのシャトルが壊れたけど、代わりのシャトルを出す予算がないとかそういうことだったと思う。イゴルトは「非人道的だ」とやたら怒っていた。非人道的な出来事は他にもいろいろ世界中で起きているわけでけど、イゴルトにはこの件がすごく気になったらしいことが印象に残っている。

イゴルトは、ボローニャの国際児童図書展の講談社のブースへ「ユーリ」の話を持っていった。国際版権の部署の人が帰国後、担当の堤さんに見せて、堤さんの意にかなった。確かに、キャラクターとしての強さがある形状をしている。編集会議にもかけて、作品を作ってもらおうとトントンと話が進んだ。

このトントンは、キャラの強さだけではなく、これまで2年に渡ってやり取りをしてきて、イゴルトのプロ根性や仕事への取り組み姿勢、仕事の速度などを把握していたからだ。仕事の速度は2年半で32ページx5話という、日本の連載速度から見ると超カメさんだが、イゴルトの作画が遅いせいではない。ラフネーム提出から決定ネームまでのやり取りに時間がかかったせいだ。前回書いた「単行本脳」と「雑誌連載脳」で噛み合わなかったり。

●新しい物語が生まれるところを見た

「アモーレ」は私が間に立った時には、ある程度の打ち合わせが済んでいた。「ユーリ」ではMANGAとして顔を出そうとしているところから間に立つことができた。

イゴルトはキャラを作るとその背景まで考える。例えスォッチのキャラであっても。ユーリ・ガガーリンをテーマに考えたキャラだから宇宙飛行士だ。でも小さな子供というそのギャップが面白い。

形状の面白さだけではなく、ギャップには理由がなくてはならぬ。イゴルトは「宇宙のどこかにいるお母さんを探す子供だから宇宙飛行士なのだ」という設定を考えた。

このMANGAはカラーでしか考えられない。「アモーレ」制作で、日本の雑誌ではカラーページは8ページまでと学んだので、40ページの作品で8ページづつ掲載する、という案を提出した。

実際には、僅かな例だけれど、雑誌に掲載せずに単行本を出す場合もある。1993年の7月7日の堤さんの通信で「ユーリ」の掲載方法について触れている。初めに話を受けた国際版権の人、担当の堤さん、そして編集部で話し合った結果、まず雑誌掲載をして単行本にすることを決めた、とある。これはイゴルトの思惑通り。

そして、堤さんの編集者としてのサジェスチョンが続く。主人公としてのユーリは魅力を覚えるが、それ以外の設定に魅力に欠ける。ついては、イゴルトが編集部に送った数々の作品集、単行本を見て、その中にある「グリーンカンガルー」という大きな宇宙船や、「玩具だらけの部屋」や「青い蝙蝠男」などの世界と合わせたらどうか。

これらの作品は、画家としてのイゴルトの作品だ。やっぱりロシア系に関係あるのか、イゴルトの作風はソ連時代の労働を賛美するテーマで多く描かれた様式(「ロシア構成主義」というらしい。< http://bit.ly/QquxDn > キュビズムに似た様式)を思い起こさせる作風で、宇宙船とかアメコミ風ヒーローとかを大画面に油彩したもの。

ピロスマニ < http://bit.ly/S7TnnG > とか、ワルワーラ・ステパーノワ< http://bit.ly/S7TIqd > の作風を見ると、イゴルトは絶対にこの時代のロシア絵画に影響を受けていると断言したくなる。

このサジェスチョンで、編集者とはプロデューサーの役目もするのだと知った。イゴルトの画集にある作品は光沢を表現し、機械類は流線型をしている。この描き方は宇宙の話にふさわしいし、「ユーリ」の世界を構築したらより深い世界観になるだろう、と続く。

さらに4つの具体案を示す。

1)作品はまず雑誌に連載し、後に単行本にする。連載に関しては一話につき、8ページオールカラー。4話掲載(全32ページ)か5話掲載(全40ページ)の後に単行本にする。8ページで読み切りでも32ページ(あるいは40ページ)で一話でも良いが、後者の場合、連載掲載であることを念頭に置いた構成が必要。

雑誌掲載の段階では右綴じでセリフは縦書き。単行本は左綴じも可。この場合は原稿を左右反転する。フキダシは使わず、テキストはなるべく少なくする。

2)単行本の価格は1000円を超えない。つまり、高級本にはしない。

3)ターゲットは5歳から105歳。つまり、自力で読める人すべて。それぞれの年齢に合った読み方をするであろう。

4)日本での出版の後、世界への出版とTVアニメとその他のガジェットに展開したい。

堤さんがいかにユーリというキャラに惚れ込んだかわかる。惚れ込んだ作品には自信がある。今までにも、猫のマイケルや恐竜のGONを発見して、ヒットに結びつけている。

3)と4)に関してはイゴルトも大喜びだった。後の通信でも、一か月に単行本一冊の速度で進められる。アニメ、アニメ用音楽と多次元に渡って同時進行したい。そのほうがユーリの世界を深められる。と大乗り気だった。ちなみに、イゴルとはマルチプレイヤーでバンドも持っている。

さらに堤さんは、コピー機を駆使してイゴルトの画集とユーリのスケッチを合成して、堤さんが想定する構成を視覚化した。MANGAというより絵本に近く、大きくコマ割りした絵本という感じで、見開きの背景に宇宙に浮かぶグリーンカンガルー、そしてその上に遊泳する小さなユーリ、左ページにコマが二つ。見開きページに縦書きでテキスト。

この新しいタイプの構成はイゴルトの大いに気に入るところとなり、編集者(プロデューサー)と作家は互いに次から次へとアイデアを出し合って、ユーリの世界が形を取っていった。
ちなみにこんなカタチ。↓
< http://www.igort.com/books-notavailable_yuri.html >

ただし、ここでも日本の雑誌の編集者とヨーロッパの作家の思惑の違い、仕事の進め方の違いが顔を出した。

堤さんは、後の予定として単行本化と日本以外での出版の話をした。それでも、まず週刊誌に連載して読者をつかむ、という基本姿勢は変わっていない。一回に8ページ。8ページで一回づつ読者をつかむ構成をしていく必要がある。

イゴルトは、堤さんの通信の中で自分が理解し、賛成した部分を以って、将来単行本になることをまず頭に浮かべてさっさと構成をしていく。つまり、堤さんは1)と2)を重要項目と理解し(だからこそ最初に持ってきた)、イゴルトは3)と4)、特に4)を重要項目と理解した。そして問題が出てきた。

この問題については次回に。

【みどり】midorigo@mac.com

次の衆院選で政権を奪還するであろう自民党の総裁選。党員ではないし、仮にそうであっても日本にいないので、この大事な人事に手を出せない。

願わくば、いよいよ戦後状態から脱却するように日本を導く人になってほしい。まずは現憲法全面見直し。「平和憲法」という美名に騙されてはいけない。「私は平和を愛します」とさえ言っていれば誰からも攻撃されないというのはお花畑もいいところ。

戦後、日本は攻撃を受けていないではないか、という人もいるかもしれないけれどそれは「平和憲法」のおかげではない。日本を敵とみなす国々がそれだけの実力を持っていなかったからだし、アメリカという後ろ盾があるから。

だいたい、自分の国を他の国に守ってもらおうなんて独立国がすることではない。前回の戦争に負けたからなんていうのも変。ドイツもイタリアも自分の国の軍隊を持ってます。

尖閣諸島を守ってくれている海保も出来る範囲は限られている。本来なら、北朝鮮に拉致された日本国民を、軍隊を送って取り戻してくるのが独立国というもの。竹島も北方四島も南樺太も「あ〜、盗られちゃった...」とめそめそするだけの"のび太状態"はもうやめたい。

尖閣諸島の話を家族にしたら「なんで海軍を出さないの?」と、旦那と息子が同時に言った。これが日本の外では普通の反応ですよ。

確かに今までも放っておいた。ただ、戦後すぐから今までは日本の国を立て直すほうにエネルギーを使う必要があった、ということも否めない。働き蜂とかエコノミックアニマルとか揶揄されたお父さんたちが頑張ってくれたおかげで、技術大国として世界中の信頼を勝ち取る国になれた。

今度は精神面と体力面で自分を磨く時。「私と私の家族と祖先が生まれ育ったこの国が好き。大事にしていつまでも存続させたい」という愛国心を国民一人が一人が躊躇なく持てるようになる教育と「自分は自分で守ります。他人が私の家に断りなく土足で入ることは許しません」という意思表示のために、それを実行できる実力がある自国軍を持つこと。......まだ間に合うと信じたい。

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
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