気になるデザイン[85]プチプチでつくる表紙/津田淳子

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またちょっと手前味噌になってしまうのですが、ちょっと変わった表紙になったので、ぜひご紹介させてください。

私は『デザインのひきだし』という、デザイン・印刷・紙・加工に関する定期媒体を編集しているのですが、毎回、中身に合わせて造本でもいろいろとチャレンジしています(私がしているわけじゃなく、いろんな印刷加工製本会社さんがチャレンジしてくれているのですが)。

本全体を型抜きしたり、金銀ピカピカにしたり、アニメーションのような動く表紙にしたりと、毎回たのしみながらつくっているのですが、今週発売になる『デザインのひきだし17』では、表紙が紙ではなくなりました。

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< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4766124340/dgcrcom-22/ >

こちらを見ていただければ、なんとなくわかるでしょうか? この表紙、実は「緩衝材」でできているんです。あの通称プチプチと呼ばれるような、たくさんの空気が入った凸があるシート状のもの、あれです。

一般的には半透明のものが多いですが、生チョコとか海産物とか冷凍冷蔵品を買うと入れてくれる、銀色の保冷バックありますよね? あれにも同じような素材が使われていて、今回はそれに使う緩衝材のピンクメタリックなものを表紙に使用しています。




最初に他人に話したときは「は?」といわれました。うーん、確かにこんな素材、本の表紙にあまり使われない。「印刷はどうするの?」といわれましたが、これはスクリーン印刷で白1色刷りしてもらっています。緩衝材自体がちょっと凸凹していたり、折れがあったりするので、ものによっては少し印刷がかすれているものもありますが、いかんともしがたいのでご容赦のほどを。

次に「製本できるの?」ともいわれましたが、なんとかできました(笑)。でも、通常の製本機ではこの厚くて軽い素材は製本できず、また通常、本は、製本が終わったところで「化粧断ち」といって、背以外の三方をきれいにちょっとだけ断裁するのですが、その作業も無理とのこと。この理由は、非常にふわふわした素材なので、紙を切る刃ではうまく切れないからだそうだ。

そこで、まずは本文ページの1、2ページと、最終2ページを「表紙」として印刷し、それで本文をくるんで一度製本。つまり、表紙が「扉」、裏表紙が「奥付」になった本が出来上がったというわけです。その背に両面テープで緩衝材の表紙を手ばりして完成、というわけです。内職のみなさんの、正確&スピードのすばらしさ! もう感謝感謝です。

いやー、無事に完成したと思ったら、最後に思わぬ伏兵が潜んでいた。それが「シュリンク」。『デザインのひきだし』は、いろいろ付録がついているので、いつもシュリンクフィルムでキュッと包まれています。これはフィルムを本にかぶせて熱でフィルムを縮ませてラップするんですが、この機械に通すと緩衝材の表紙が熱でちりちりっと縮んでしまう!

ぎゃー!!

実は当初からそれは心配していたのですが、素材メーカーから「シュリンクにも使われてますから」ということで、使用を決めたのでした。でもシュリンクは機械によってけっこう温度が違うようで、今回の製本会社のシュリンクだと温度が高すぎて表紙が変質してしまうようで......。

でもこれも、シュリンクではなくOPPフィルムで袋をつくってその中に入れればすむ話。テスト段階で気付いたので、納品時期も送れることなく、本日無事に倉庫に全冊納品されたのでした。

この後、どんどん書店に出荷されますので、書店にいかれた際はデザイン書のコーナーでピカピカふわふわした本書を、ぜひお手に取ってご覧ください。本自体は厚いのにけっこう軽くて変な本に仕上がっています!

※本書の刊行を記念して、青山ブックセンターで10月13日に「寄藤文平×大島依提亜×名久井直子 トークイベント」を開催します。紙についてのディープな話がきけますので、ぜひお越し下さい!
< http://www.aoyamabc.co.jp/event/design-no-hikidashi17/ >

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp twitter: @tsudajunko
デザインのひきだし・制作日記 < http://dhikidashi.exblog.jp/ >

『デザインのひきだし17』は10月5日頃発売です!
< http://www.graphicsha.co.jp/book_data.php?snumber3=1235 >

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