武&山根の展覧会レビュー エネルギッシュに暗い──【開館30周年記念展 日本の70年代 1968-1982】展を観て
── 武 盾一郎&山根康弘 ──

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山:こんばんはー。

武:はい、こんばんは!

山:突然ですが2、3日前の話しやねんけど、

武:はいはい。


山:いつものように現場から帰ってきてやね、いつものようにポスト開けるやんか。

武:開けないかも知れないけどな。

山:だからいつも開けるって言ってるやないか! いやそれでやね、開けてみたらなんと!

武:ポストに爆弾でも入ってたのか?


山:入ってるか! 僕は誰に狙われとんねん。

武:あ、あれだ。不幸の手紙が入ってたんだ。「これを読んだら3日以内に5人に同じ手紙を送ること...」

山:小学生か! ちょっと懐かしいわ。


武:あ、分った! カエルが入っていた。そして「無事カエルでございます〜、ゲロゲ〜ロ、ゲロゲ〜ロ」なんつてね。

山:なんでカエルやねん。ってなんでボケが全部古いねん。

武:たまにいるけどねえ。。(ゲロゲ〜ロ参照)
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E7%A9%BA%E7%90%83%E5%85%90%E3%83%BB%E5%A5%BD%E5%85%90
>


山:そんなんええねん。それでやね、何が入ってたかと言うと、な、なんと、女物の上着が入ってたんですよw

武:なんだそら!

山:まったく心当たりがない。

武:なぜ、下着ではない! 上着じゃつまらないではないか!


山:いや、下着はきついわw

武:酔っぱらって記憶ない時に女装して帰って来たけど、サイズがきつかったんで自分で入れたんだよ、きっと。

山:ちゃうねん、その日は別に酔っぱらってもいなかった。だから、なんやこれ? と。酔っぱらってたら入っててもおかしくない、っていうのもどうかと思うけどな。


武:潜在的願望が叶ったんだな。「念ずれば花開く」

山:どんな願望やねん!......さて、今回は埼玉県立近代美術館に行って参りました! 「開館30周年記念展 日本の70年代 1968-1982」です!
< http://momas.jp/exhibitionguide/exhibition/日本の70年代展-1968-1982/
>

【開館30周年記念展 日本の70年代 1968-1982/埼玉県立近代美術館】





武:前回は草間彌生だったんだっけか。おおなんと今年ではないか!
< https://bn.dgcr.com/archives/20120516140200.html
>


山:5月か。まあ浦和なんでね、馴染みもあるしなんだかんだでよく行くわな。

武:よく行くねー、埼玉近代からギャラ貰って提灯記事書きたいくらいだよ。

山:なんやねんそれ。

武:提灯記事とは→ < http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%F3%C5%F4%B5%AD%BB%F6
>


山:「これでもかと誉めそやす内容の記事」ってw そんなん武さんできへんやないか。

武:ギャラ貰えばやるよ。

山:ほんまかいな。


武:ってかさ、山根ってすごいヤツだよなあ。山根みたいな男ほかにいないよ!

山:は? なんやねんな唐突に。

武:ほれぼれするわー。

山:何を言ってんね...あ、ギャラは出さんぞ!


武:くっそw 提灯記事書いたのに!

山:あ、でも昨日の飲み代払ったような気がするから、もっと持ち上げてもらってもいいかもなw

武:山根さま、ごちそうさまでございます! 今日の俺が生きてられるのは山根さまのおかげです!


山:「かえって胡散臭く見られ逆効果になるケースも。」やってw て、そんなことより展示ですよ、展示。

武:おおそうか。このまま最後までとぼけて行けるかと思ったけど。

山:それでまとまるんならいいけど。

武:展示について語らなければならないですか?


山:お願いします。展覧会レビューですから。

武:結論から言うと、面白かったっすよ。埼玉県立近代美術館の本気を見た感じしましたね。ぶっちゃけ、草間彌生より良かったよ。


山:「本展は、当館が開館した1982年までの15年間の時代の精神を、美術、デザイン、建築、写真、演劇、音楽、漫画などによって回顧しようとするものです。」というように、まあいろいろ展示されてた。開館30周年記念展やからね。気合い入ってるんやろね。


●1968年とは


武:「1968年」は左翼にとって意味深いキーワードみたいだしね。「そこ狙ってきたのか!」て感じだよ。

山:「面白かった」って、実際何が面白かったんやろ。

武:展示の「気合い」。


山:「気合い」を感じたから面白かった、と。

武:そうね。

山:確かに気の抜けた展示よりは面白いかもな。なんやろ、「迫力」があんのかな。僕も面白いと思ったけど、正直疲れたわ。


武:1968年は政治と文化の進化爆発というかね。
  1968年→ < http://d.hatena.ne.jp/keyword/1968%C7%AF
>

山:おお、三億円事件って68年なのか。

武:「新宿のデモに騒乱罪が適用される」とあるな。石原慎太郎もいるw やっぱり何かカンブリア爆発を起こした年として、1968年はどこか象徴的なんだろうな。


山:カンブリア爆発ってなんや。

武:一気に生物が増えるみたいな。アノマロカリスですよ。
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%A2%E7%B4%80
>

山:変な動物やな。


武:「この時代に動物の多様性が一気に増大した可能性がある。これをカンブリア爆発と呼ぶ。」

山:非常に奇異な姿をした生物が多く見られ、、とある。

武:70年代っぽいよねw


山:じゃあ68年あたりから非常に奇異な姿をした人達がでてきたってことかw

武:そんな感じするよ。

山:どうなんやろね。僕はまだ生まれてなかったんで、実際どんな時代やったのかはわからんのだが。

武:俺が1968年生まれだからね。

山:あ、そうか。だからこんな人になってしまったんかw


武:なんか1968年が左翼の象徴的な年号だってのが気になって仕方がない。

山:確かに武さんも奇異な姿してるしな。。

武:カンブリア爆発の申し子でございます。

山:「カンブリアモンスター」ですかw


●暗いとは


武:学生運動と文化が繋がっていたけど、運動が下火になって文化が高度資本主義化していったんかな。「おいしい生活」というキャッチコピーが消費社会礼賛、バブルの扉を開ける宣言だったんさよ。学生運動は反資本主義じゃないですか、どんどん日本が豊かになって行くベクトルと学生運動の激化、70年代はいろいろ混ざってカオスだったんでしょう、展示もカオスだったしね。80年代に入って資本主義が完全勝利をして、まあ、その後バブルがはじけるってヤツになるわけでしょうかね、で、今に至る、と。月はすでに満ちたと。


山:確かに展示は、わさわさした感じやった。

武:「日本が元気だった頃」みたいなw

山:でもその反面、すごい空虚と言うか、暗いというか、そんな印象もある。

武:あるね。


山:漫画も展示されてたけど、やたらと暗い。なんでやろ。

武:暗さを支えるバイタリティがあったんだよ。「エネルギッシュに暗い」これがアングラ感なんじゃないのかな?

山:なるほど。

武:今はアングラにもカオスにもならないんだよ、すんげー暗くもならない。


山:そう言えば最近は、すごい暗い人、ってあんま見ーへんよな。会わんだけかも知らんけど。昔はけっこういたような気がするが。

武:「暗い人」てインターフェイスの種類だったんだろうね、無口だったり声が小さかったりすると、「暗い」ってなってたけど、案外話すと暗くなかったりするじゃんw


山:ああ、そうかも。今ってあれよな、ネクラ、とか言わんもんな。なんでや??

武:喋るコミュニケーションと同じくらいに、書くコミュニケーションが増えたからじゃないのかな?

山:書くコミュニケーションが増えるとどうなるんだ?

武:誰とも喋らない人でもネットにはガンガン書き込みしてるわけでしょ。


山:はあ。

武:ネクラじゃないじゃん。

山:だいたいネクラってなんやねん。

武:今に置き換えるとネガティブ思考とかになるのかな?

山:ネクラ→ < http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%83%A9
>
  ちょっと面白い。


武:「ネクラ」がのちの「ヲタク」になったのか!

山:なるほどーw

武:70年代の表現の「暗さ」についてもうちょっとありそうだが、、

山:なんでしょう。


武:暗さがヒューマニズムとロマンチシズムに根ざしてるって感じするよね、決してペシミスティックではないような気がするんですよ。

山:ほう。


武:挫折のようなものを感じさせるけど、諦めてないから、悲しくて苦しくて辛い、みたいな。冷め切った目でセンチメンタルになってみせてるのではなくって、ロマンチシズムの中にいるからこそ暗い、みたいな。

山:なるほど。


武:80年代に入ると、「そんなくだらない本気はやめにして、消費すれば、ほら、おいしい生活だよ!」ってなって行くんじゃないのかな。

山:展示でも、70年代と80年代ではだいぶ雰囲気変わってたもんな。

武:空虚感ってのも確かにあったよね。それってなんだろな。「現代から観てる」という視点の問題なのかな?


山:現代から観てる、って?

武:学生運動って終わっちゃうわけでしょ。けど当時はワーワーやってた、その渦中だった。その喧噪を未来から見てみると、空虚に感じるとか?

山:あー、今の自分たちから観ると、ってことか。


武:そう。表現が空虚なんじゃなくて、俺たちの視点が空虚を感じてる、と。

山:でもどうやろ、展示されてた作品からも、そういうものが出てたような気がしないでもないんだが。

武:ふむふむ。確かにあったな。


●ピアノ炎上


山:例えばしょっぱな、まだ会場に入る前に、粟津潔の『ピアノ炎上』という映像作品があったやん。

武:はい。「ブログ炎上」じゃなくてね。

山:はあw 山の中でピアノがどんどん燃えていって、それでも弾き続ける、という。


武:そんだけ。っていうね。今観ると「あー」て思っちゃうけどな。

山:あ、なんと2008年版があった。
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武:うはっ! またやってるのかww


山:うーん、2008年にもやってるとなると、ちょっと意味合い変わってくるな。

武:そうなると、面白みが増すね。

山:なんと言うか、パフォーマンスとしての面白さ、ってとこに焦点が合う。空虚に辿り着かないww


武:今じゃすでに「前衛」ではない。で、「またやる」。ピアノも73年より聴かせるプレイになってるw 2008年の方が面白いぞw

山:わはは。円熟味を増したんか。

武:73年は「ピアノを燃やしながらプレイする」アイデアだけに着目してる気するもん。


山:アイデアとしては当時、斬新やったり前衛的やったりしたんかもしれんけど、結局の所、消えてなくなっちゃうんだ、一過性のものだ、みたいな虚無感を感じたりもしたんだが。あの映像を観て。その美意識、というか。


武:ピアノが燃えて音が出なくって行くのに全力で鍵盤を叩く。どこか「世界共産主義革命なんて不可能とは知りつつ全力で闘争するロマンチシズム」と通ずるというか。

山:そう言う意味ではやはりロマンティシズムなんやろうけど、


武:「負けるとわかっていても戦わなければならないときがある、ロマンチシズム」「挫折するロマンチシズム」

山:でもやってる人達はある意味勝ったんとちゃうんか。ずるいがな。いや、ずるかないけどw

武:なるほどw


●時代の波


山:なんなんやろ、ちょっと思ったのは、あそこで展示されてるような情熱で、
  暗さ全開でバーっとやって、そのままどうしようもなくだらだら生きてる、ってのはないのかな、って思った。

武:きっとほとんどの人がそうだったんじゃね?


山:そうなんかな。

武:ネコも杓子もゲバ棒持って学生運動してたけど、卒業して髪の毛を切って就職して結婚して子どもが生まれて、今はもう孫とかいるわけでしょ、68年あたりに青春を謳歌した人たちは。

山:そういう年齢やろな。


武:みんな転向したんだよ。

山:それはそれで分かるような気はするねんけどね。すごく集団的に見えたな。時代性に着目した展示やったから、そういう風に展示してるんやろうけど、それはちょっとな、とも感じた。だから疲れたんかな。


武:どーっと押し寄せて来る感じしたよね。個人の力量を超えた何かのパワーの波に押されてああなった、みたいな。

山:あの時代の雰囲気を全く無視して、ひたすら全然違うことやってた人、とかっていないんかな。まあ、いるか。


武:だから、名前を残してる人ってのは表現の才能があったというより、時代の波にうまく乗れたかどうかなんだろうなあと思った。普遍的にクオリティーの高いものが多くあったかというと、そうでもなくて。「時代感」だけは強く感じたけど、その絵(視覚芸術)、普遍的に美しいのか?という疑問。

山:流行とかあったんやろうけど、似てるのも多かったな。


武:横尾忠則のポスターとかホントに面白いのかなあ?ww 北斎の浮世絵観てる方がいいよ、って思ったりね。好みの問題だけど、今ひとつ良質な感じしない。せんい館はパッと見すんごくインパクトあってビックリしたんだけど、なんとなく、「あー」っていう感じもしたんだよなあ。「暮らし」を否定してる感じが、「好み」じゃないのかなあ。いや、「好みだった」というか。


山:せんい館→ < http://masudahp.web.fc2.com/expo1970/p-seni01.html
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  でもテーマは「人間生活を豊かにする」やでw


武:インスタレーションにしろ、映像にしろ、音楽にしろ、いわゆる「前衛」てヤツよなー。

山:面白いけどね。やりたい放題で。

武:やりたい放題だね。そのパワーはすんごく感じた。けど、どこかに、「こういうのもういいや」てのもあってね。


山:でもその「気合い」に引かれる部分もある。

武:面白かったのは「気合い」を感じたからに他ならない。ただ、自分の「好み」はここを通り過ぎた。さらば時代の青春。

【開館30周年記念展日本の70年代 1968-1982/埼玉県立近代美術館】
会期:2012年9月15日(土)〜11月11日(日)10:00〜17:30 月休
観覧料:一般1000円、大高生800円
展覧会では70年代の部屋を再現、撮影出来ます。
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【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/週2午前中のパート始めました】
地元上尾の「原市アースカフェ」展示替え!
< http://ameblo.jp/koushintounoarucafe/
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宮城県多賀城市ギャラリー「GAONG」で作品買えます!
< http://www.gaong.net/
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「Picaresque(ピカレスク)」はアートと暮らす。アートと共に生活する。
部屋にアートを。そんな現代美術運動です。
< http://www.facebook.com/picaresquejpn
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