まにまにころころ[12]想像力の欠如
── 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito ──

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こんにちはー。あっという間に一週間。今週もまた本の話を書こうと思います。前回はインタビュー本だったので、今回は小説の話でも。

◎──想像力の欠如

私はむやみに暴力を振るう人が大嫌いです。肉体的な暴力も、精神的な暴力も。そういう人間は想像力が決定的に欠けている。別に、そんなにも豊かな想像力が求められるわけじゃなく、その行為が相手や周囲にどんな影響を与えるか、どんな思いをさせるか、ほんの少し、イメージするだけでいいのに。

天国なんてないとか、国なんてないとか、そこまでのイマジンは求めない。ただ殴られたら痛いだろうとか、罵倒されたら苦しいだろうとか、そこに居合わせた人や見聞きした人の心の平穏も奪ってしまうだろうとか、その程度のこと。

伊坂幸太郎の小説「重力ピエロ」に葛城という男が出てくる。少し長くなるけど、この葛城の台詞をいくつか並べます。文庫版の216-217ページの部分。

「よく、相手の気持ちを考えて、なんていう奴がいるだろう? 優しさは想像力だ、とかな」

「俺は、想像力の塊だよ。想像力が服を着て歩いているようなものだ。強姦される相手だとか、痛めつけられる相手が、どれくらい苦痛を感じるのか、想像することが出来る」

「俺はさらにその先を考える。その苦痛を受けている被害者は俺ではない、ということを、俺は知っているんだ。俺はそこまで想像できるわけだ。相手の気持ちを想像して、自分の苦しみに感じるなんて、それこそ想像力が足りないんだ。もっと想像力を働かせれば、その苦しんでいるのは自分ではない、ということまで理解できるはずだ。そうだろ」

とんだ詭弁だと思う。相手の気持ちを想像できていれば、苦しんでいるのは自分ではないと理解したところで、苦しいはず。そうでないのは、想像力の欠如だ。と、この葛城に言ったところで話は平行線だろうけれど。

こういう輩はそもそも、自分は正しい自分は悪くないと、自分のことしか頭にないから。程度の差はあれ、私も同類だからよく分かる。




◎──本を読む理由

前置きが長くなってしまいました。しかもちょっと重く。暴力だの、想像力だの、そんな話をしたかったわけではなくて、好きな本を紹介したかっただけ、でして。でもそのための前置きとして、必要だったんです。で、まだ前置きは続きます。

さっきの話の延長じゃないですが、私は人が社会の中で互いに幸福に過ごすには、想像力が不可欠だと思っています。何か少し話が大きいですけど、まあ我慢してください。(笑)

世の中の不幸の、全てではないですが、結構多くが、「ちょっと考えたら分かる」ことが、分からなかったり、考えるのを怠ったりした時に起こっているような、そんな気がします。

何気ない行動にしても、また言葉の選び方ひとつにしても、ちょっと考えたら分かるだろうというような些細な見落としが、周りや、本人を不幸にしてしまう。先日のサッカーにおけるフランスの国営放送での発言しかり、馬鹿発見機と言われるtwitterでのあれこれしかり。

人には想像力を養うことと、その想像力を発揮できる余裕が絶対に必要で、その両方を手軽に与えてくれるもののひとつが読書だと私は思っています。

ま、自分が本を読むのが好きなことを正当化するための詭弁で、さっきの葛城とそういう意味でも大差ないんですけどね。

◎──小説を読む

そんなこんなで本を読むことは大事だと考えている私は、時には無理矢理にでも本を読むようにしています。好きなことを無理矢理、というのは変な話ですけど、本を読むにはそれなりに時間とエネルギーが必要なもので、忙しい時には、つい、後回しにしてしまいがちで。

で、その「後回し」は放っておいたら、いつまでも、順番が回ってこなかったりするものなんですよね。特に、小説は。

実用書とかドキュメンタリーは、必要に迫られて読むこともあるし、忙しい時も、これは必要なんだと言い訳が出来たりもして読みやすいんですが、必要に迫られ小説を読むことは稀ですよね。

でもさっきの「想像力」や「余裕」を育む読書となると、小説の方が向いてると思っています。なので私は、時に無理矢理にでも小説を読むように心がけています。実用書を買うため書店に行った時も、一冊は小説を買ったり、少なくともその棚には足を運んだり。

◎──ミステリ小説が好き、だけど

やっと、好きな本の話、今回の本題にたどり着きましたが、私は小説の中では、ミステリに分類されるものが好きで、よく手に取ります。割と気楽に読めるし。人によっては探偵さながらに、謎解きをしながらじっくり読まれますが、私は、あまりそういうことはしない性質で。一言で言えば、面倒くさいから、ですが、素直にだまされ、素直に驚く、書き手にしたら手応えのない読者です。

ただ、ミステリには、私にとってひとつ、問題がありまして。それは、とにかくよく人が死ぬこと。しかも大抵は殺されることで。殺人なんて、今回最初に私が大嫌いって書いた暴力の最たるものですよね。

その殺人=暴力が、「むやみ」かどうかはともかく、フィクションであってもあまり好きにはなれない。ミステリの殺人に限らず、人の死そのものを安易に扱うこと全般が嫌いなんですけどね。

そんな私が好きなミステリは、「人が死なないミステリ」です。

◎──人が死なないミステリ

私が一番最初に好きになったのは、北村薫の円紫さんと私シリーズ。「空飛ぶ馬」「夜の蝉」「秋の花」「六の宮の姫君」「朝霧」と続く5作です。主人公の「私」が遭遇する謎を、落語家である円紫さんが、ヒントをくれたり、解決したりするお話で、その謎の多くは主人公の日常の出来事です。

シリーズの中では、番外編ともいえる「六の宮の姫君」が一番好きですが、是非、一作目から順に、一気に読んで欲しいところです。シリーズものは最初から順に読みましょう。原則的に人が死なないミステリですが、自殺者の話が一回だけ。

最近好きなのは、松岡圭祐の万能鑑定士Qのシリーズです。キャッチフレーズから、「面白くて知恵がつく人の死なないミステリ」と、それだけでもう素敵。これは、「万能鑑定士Q」という、変な名前の屋号で鑑定業を営む凜田莉子が、ずば抜けた記憶力と論理力で、様々なジャンルの謎を解決していくお話です。

刊行が超ハイペースで、つい最近の時事ネタも、毎回のように盛り込まれたりと、それも面白さのひとつです。どこまでが本当の話で、どこからがフィクションか分からなかったりするところも魅力で、荒唐無稽な話にもリアリティを感じて、楽しく読めます。

莉子が論理的思考で謎を解くのに対し、姉妹篇として始まった、特等添乗員αのシリーズは、添乗員の浅倉絢奈が、水平思考で謎を解く話。姉妹篇というよりも、合わせてひとつのシリーズだと思うので、是非Qとαでセットものとして刊行順に読んでください。どちらも、他殺はもちろん、自殺も自然死もありません。

せっかくなのでもうひとつ紹介を。鯨統一郎の「邪馬台国はどこですか?」から、「新・世界の七不思議」「新・日本の七不思議」と続く早乙女静香シリーズです。

こちらは歴史の謎を新解釈で解き明かしていく話。軽いノリの語り口ながらその説得力はすごい。歴史の専門家からしたらどうなのかは知りませんけど、歴史の謎が宮田六郎によってさくさくと解かれていくのが気持ちいいです。

ほか、最近アニメ化もされた米澤穂信「氷菓」の古典部シリーズや、本屋大賞に今年ノミネートされてた、三上延のビブリア古書堂の事件手帖シリーズもお薦め。

◎──書を求め、町へ出よう

紹介した作品の中で、鯨統一郎だけは前職の同僚、熊ちゃんにもらったんですが、他の作品は全部、書店でなんとなく手に取ったのがきっかけ。そんな偶然のほか、たまたま書店の棚に目をやったら、誰かがどこかで紹介してた本が目に付いたり、あるいは読んだことのある本の新刊や、気に入った著者の他の作品が並んでたり、色んな偶然が書店には潜んでいます。書を求め、町へ出よう。書店に飛び込もう。

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
< https://www.facebook.com/korowan
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最後にまたイベントのご案内。

・【大阪】10月26日(金)
おおさか地域創造ファンド コンテンツ企業「Osaka ブランド形成」事業
「ソーシャルメディア時代のコミュニケーションデザイン」
あの佐藤尚之さんが講師です!
< http://dcc-net.biz/event/
>

・【大阪】11月3日(土)
WordCamp Osaka 2012「めっちゃ気になるWordPress」開催!
世界最大シェアのCMSであるWordPressのユーザーイベントです。
< http://2012.osaka.wordcamp.org/
>

・【大阪】11月9日(金)・10日(土)
「関西オープンソース2012」と「関西コミュニティ大決戦2012」の2つでひとつ、合わせてKOF2012です。懇親会の受付も始まり、内容も続々公開されています。
< http://2012.k-of.jp/
>