気になるデザイン[86]全体にわたって「こんにゃろー!」とばかりに力が入ったデザイン/津田淳子

投稿:  著者:  読了時間:3分(本文:約1,400文字)


一見すると、普通の顔をしている。でも手に取って開いてみると、まず最初にちょっと違和感を抱く。カバーのソデ(折り返した部分)脇から見える本体の表紙、青くて目立つ色だけど、本体よりちょっと小さい。

カバーをとってみるとこんな感じ。
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あらら? 表紙になにか微妙な感じ、よく見てみると、表紙が開いてポスターになっている!

(一度開いたところ)
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(すべて開いたところ。本当は真っ平らに開けるが、場所がなくってへんな形に開けた写真ですみません)
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今回驚いて目を丸くしてしまったこの本は『ジョルジュ・ルオー サーカス 道化師』という本。
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この本はB5サイズよりちょっと幅広の判型で、一見普通の並製本(ペーパーバック)された本に見える。だが、表紙に使われているのは、普通のポスターに使うよりちょっと厚めの紙に、ジョルジュ・ルオーが描いた絵が刷られ、それを四つ折りにしたもの。

ここで造本に詳しい人なら、「え? 並製本は、普通、本文を表紙でくるむ形になって、表紙と裏表紙そして背が繋がった一枚の紙のはずだけど、それが四つ折りされた紙ってどういうこと?」と、頭が混乱してしまうだろう。

実は製本自体も、通常の並製本とは違っていて、カバーを外してみると、背が裸ん坊のまま! 折った本文の紙や、それをかがっている糸がそのまま晒されているのだ。
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この製本方法は、製本業界でも正式な名前というのは特に決まっていないようなのですが、最近は「コデックス装」や「コデック装」(どちらもcodex装の読み方違い)などという呼び名が定着してきた感がある。まあ、通じれば呼び名は何でもいいので、こうして定まってくれてきて、本をつくっているものとしてはうれしい。

本の本体(本文部分)に表紙が巻かれず、そのまんまになっている製本。この『ジョルジュ・ルオー サーカス 道化師』もその製本方法が採用されている。これだと、通常の並製本のように表紙を本体に巻かなくていいため、四つ折りされた表紙でも大丈夫、というわけ。

ちなみにこのコデックス装だと、背に表紙部分がなく、糸でしっかりとめてあるため、本文がガバッと180度開いて読みやすい。
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また、まったくの副産物だが、ガバッと開くお陰で綴じ糸が見えるので、この糸の色を工夫して(蛍光ピンク)、ページのアクセントにしているのも、本書のニクいところだ。
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書き忘れてましたが、裏表紙ももちろん四つ折りのポスター仕様。こちらは色が黄色でまた鮮やか!
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造本も凝りまくっているが、本文デザインも、ノンブル位置にパラパラ漫画があったりと、全体にわたって「こんにゃろー!」とばかりに力が入ったデザインの本書。

どなたがデザインされたのかと奥付を見てみれば、アートディレクションは松田行正さん、デザインはマツダオフィスの日向麻梨子さんでした。うーむ、脱帽です。

今日はこの一冊に力を入れてしまったので、この本のみにて失礼を。次回は二冊ご紹介できるよう、ちょっくら書店に行ってきます!

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp  twitter: @tsudajunko

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