武&山根の展覧会レビュー 過去の取扱い方──【東京国立近代美術館60周年記念特別展 美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年】展を観て
── 武 盾一郎&山根康弘 ──

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武:こんばんはー。

山:こんばんは! すんませんね、遅なりまして。

武:ところでな。

山:お。なんですの。


武:この前、GrowHairことケバヤシさんから「イタリア、ブレーシアにある教会の展覧会に出展しませんか?」って誘われて打合せする為に中野に行ったんですよ。

山:ほう。


武:そのスタッフのバーバラさん(< http://momographica.com/
>)がケバヤシさんと10年らいのお友達で、デザインフェスタ出展に来日してるから会いましょうと。打合わせましょう、と。

山:はい、ほんで?


武:で、中野で待ち合わせたんすよ。バーバラさんはイタリアのお友達のエリザさんと来ていて、ケバヤシさんは松葉杖。セーラー服じゃなかったけど、松葉杖で登場w

山:松葉杖??


武:酔っぱらって足くじいたら骨折だったんだってさ、ちょっと前に中野で。

山:へー。大丈夫かいな。


武:で、「さあ参りましょう」とケバヤシさんの案内でお店に入ったんだけど、そこはなんとメイドカフェ! 「黒猫メイド魔法カフェ中野本店」

山:ケバヤシさんの行きつけのとこなんやな。


武:打合せにならないじゃん!

山:なんで?

武:飲み物出て来たらメイドさんと一緒に「にゃんぱーい!」ってやるし、メイドさんがわりとつきっきりで話をしてくれるし、美味しくなるおまじないもしてもらえる。打合わせてる時間はとれないw


山:あ、おいしくな〜れ、ってやつですか。

武:そうそう「美味しくなあれ、モエモエ、きゅーん!」ってハートマークを手で作るの。みんなでやりました。

山:まあ、行ったらやるんでしょうなw 僕はまだ未経験ですが。


武:メイドカフェはそんな感じでイベントみたいに過ごして店を出たんすよ、「いってらっしゃいませ〜」と見送られてw

山:打ち合わせはどうなったんや!


武:で、「次行こう」と。次はなんか話せるだろうと思って松葉杖のケバヤシさんについて行く。恐ろしく狭くて急な階段を昇ると、アニソン専門のカラオケバー「アニソンカラオケバーZ」。

山:ほう。


武:昔のカラオケスナックって知ってるよね? カラオケボックスじゃなくて。

山:カラオケスナックはたまに行きますよ。


武:ステージがあって客席があって、っていうやつ、あのまんまなんだけど、働いてる娘はみなセーラー服のコスプレで、お客さんがアニソンをハイテンションで熱唱してて、みんなが一致団結して盛り上げてるの。知ってる曲がまったくかからない!www

山:それはこまるな。


武:「武さんも歌いなよ」と促されてマジでビビりました。

山:なんか歌えばええやんかw

武:銀河鉄道999を歌いました。古くてごめんなさい(冷汗)、、って感じで、、緊張したわ〜。でも、みんな合唱してくれた。オタクの人たち優しいw


山:だから打ち合わせはどうなったんや!

武:で、アニソンカラオケバーを出て、ちゃんと話が出来るだろう、と。

山:ようやくかい。


武:またもや信じられないくらい急な階段で、「松葉杖で大丈夫かおい?」てなくらいでw 行った先はメイドスナック。けど、ママはメイドじゃない。普通のスナックじゃん! バイトらしき女の子がメイドの格好してたけどw

山:なんやねんその遊びはw


武:濃かった。。そして、バーバラさんとエリザさんはホテルに帰らないとならないとのことですぐに店を出ました。バーバラさんとエリザさんを見送ったところで、ハタと気が付いた。「ところでケバヤシさん、打合せしてないよね?」

山:結局してないんか!


武:「ああ、そうだった」と。連れてって貰ったところがこれがまた急な階段を昇るとある、メイドバー。

山:まだ行くんかい!

武:メイドさんとセーラー服コスプレがすっかり好きになってしまったw


山:はまっとるやないかw まあ普通そんなに回ることないよな。

武:骨折してまでみんなを連れて行きたかったのでしょう。。有り難うございます。

山:さすがケバヤシさん。


武:不屈の精神だよ。まあ、そんなわけで、

山:どんなわけや!

武:元気になったところで、チャッチャとチャットやって寝ましょう!

山:なんやねんそれw





●【東京国立近代美術館60周年記念特別展 美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年/東京国立近代美術館 】を観て


山:えーとね、昨日展示を観に行ってきましたけど、なんかこう、落ち着かんのよね。時間もなかってゆっくり観れない。ちゅうか500点以上もあったからな。閉館まで1時間ちょっとで、そりゃゆっくり観れないにきまってるねんけど。


武:俺は3時ちょっと前に入館したけど、2時間じゃとてもじゃないけど観終わらなかったよ。だいたい閉館が午後5時ってのは早過ぎる!

山:確かに5時閉館は早いわな。


武:「みんなの東近美 作品人気投票」なんつー企画もある。これAKB48の人気投票のパクリだろ。TKB(東近美)48。

山:昔からあるやんか。作品人気投票なんて。


武:洋画部門の1位がパウル・クレーの『花ひらく木をめぐる抽象』なんだけど、それは俺も好きだからいいんだけどさ。

山:今回は60周年記念なんですね。所蔵品ギャラリーも改装して、いろいろ工夫がされてるみたいやね。
< http://www.momat.go.jp/momat60/renewal/
>


武:なるほど、そうだったのか。

山:色々書いてたやん、日本画の部屋は照明がどうとか床の色がどうとか。

武:ああ、なんか書いてあったね。それがリニューアルだったんだ。

山:そういうことやね。


武:で、4階から観て行くんですよね。

山:どうしよっかね、作品一個一個、ってわけにもいかないんで、もうちょっと展示全体のこととか。そっから何か思うこと。まあ、『実験場1950s』を取り上げた方がいいんやろうけど。


武:そこだけで充分かもだけどね。

山:時間なかったんでちゃんと観てないけどなw


武:第一部が『MOMATコレクションスペシャル』、第二部が『実験場1950s』となってるんだわな。第一部はコレクション大放出! という感じでゆっくりじっくり堪能してください。と言うしかないかもね。

山:まあな。


武:『実験場1950s』は面白かったな。前回、埼玉県立近代美術館で70年代を観たじゃないですか。
< https://bn.dgcr.com/archives/20121017140200.html
>
  そっからの流れで、この『実験場1950s』を観るととても面白い。なんか繋がってる感あるよ。時間を遡って行く体感。


山:埼玉県立近代美術館でも開館30周年記念展で70年代を取り上げて、今回のも60周年記念展で50年代を取り上げてるという、「何周年」っていうのはたまたまではあるんやろうけど、何故今、過去を振り返ってるんだろう?とふと思た。


●原爆から原発爆発まで


武:『実験場1950s』は広島の原爆から始まってるからね。示唆的だよ、そこ。

山:それもそうなんやろうけど、ふたつの近代美術館が、ほぼ同時期に大々的に過去を振り返ってる、ってのはなんでだろう、と。


武:今から50年後くらいには福島の原発爆発から始まる企画展がでるんさよ。でさ、歴史の年表ってあるじゃん、あれって左が古いじゃん。そんで時代が変わるところで色分けされてたりするじゃないですか。

山:はあ。


武:多分ね、後の100年からすると、原発爆発あたりを境い目にして時代が変わるんだよ。年表の色が変わるんだよ。

山:それはあるんかもしれんが。


武:アメリカに原爆落とされた1945.8.6から、今度は自らの手で作り進めた原発が爆発した2011.3.11までで一色。そっから先は違う色。

山:そういう変化のときやから、過去を振り返るってことなんかな。


武:あとは予算がいっぱい出たとか、またはもう今後こんなに予算とれる展示はないだろうと張り切ったとか、そういった「大人の事情」ってあるでしょう。

山:いや、って言うか気にならへん? 二つの美術館で大々的に回顧、あるいは過去の再考をしてるって。


武:「近代」美術館だからじゃね?

山:そりゃそうなんかもしらんけどやね。


武:当時って「藝術=左翼」だったりするじゃないですか。80年代以降はすっかりそれが見る影もなくなる、と。ところが、原発爆発でデモが今盛んに起ってるじゃないですか。50〜70年代のものとはちょっと違うところもあるけどさ、なんつか、こう、共通点が探せるんじゃないのかなあ。50年代ってさ、本当に日本が社会主義になってもおかしくない状態だったりしたわけで、社会形態のありようから作っていける感じのもの、なんだか「熱」みたいなものは感じたけどね。


山:熱ですか。

武:埼玉近代で観た70年代の空気感より国立近代で観た50年代の空気感の方が俺は好みだったな。50年代は変わる可能性が身体的にも受け止められている「熱」で、70年代は観念的になるからこそ過激化して行く「空虚感」、みたいな。


山:なんかこう、どんづまり感みたいなんがあるんかな。今。どうにもこうにも、って感じやから、昔の熱かった時代を思い返してみる、みたいな。

武:「変わらないと生きてけない」という感じはするよね。もう、原発的なる社会の仕組みじゃ無理だしさ。


山:サイトには「現代の原点としての50年代を問う」とある。「50年代美術の精神と活力を、同時期誕生した近代美術館への含意も込めて「実験場」というキーワードで捉えることにしました。」「300点を超える作品と資料によって、その実験精神が提起した多様な可能性を歴史的に検証し、そこから現在の美術と社会の関係を、さらには美術館の未来を考えるヒントを引き出すことを試みます。」と。


●近代以降の美術は「怒り」なのか?


武:あのさ、実はね、膨大な収蔵作品を観ながら、階段降りてる時に、ふと思ったんよ。「この膨大なゴミを保管してどうするんかねえ。。」ってwwww

山:まあほとんど同じような印象は抱いた。


武:俺は画家でありながら、美術品をゴミだと感じ、美術館をゴミの山だと感じたんだよ。。。


山:今の自分の状況も関係してるんやろうけど、あまり何も思わなかったんですよ、作品観ても。そりゃ中には好きな作品もあるけど、「ああ、好きやな」ってそれだけって言うのか。
  で、駆け足で4階から1階まで降りて観て、最終的に何が自分の中に残ったかと言うと、「誰かが怒ってる」って印象だけが残ったんよな。


武:ほお。なんだそれ、「誰かが怒ってる」ってどゆこと?

山:作品が持つエネルギーみたいなものってあるやん。

武:うん。


山:そういうのが、あまり穏やかな印象として感じられなくて、「怒り」として感じられた、ってことかなあ。実際そういう作品が多かったんやろうけど。社会批判的な。

武:悲しみが過ぎると怒りになるっていうよね。


山:作品で僕が深く感じ入るのは、怒りのエネルギーよりも悲しみの方が感じ入る、感情移入しやすいんやけどね。

武:怒りって攻撃だからね。

山:そうやね。


武:表現としては攻撃型の方がインパクトがあるからどうしてもそういうのがもてはやされる。ひとりナイーブにさめざめと悲しんでいてもそれは強い主張にかき消されてしまう。

山:そうとも思わんが。


武:見つける人がいないと。

山:そりゃ何もしないで悲しんでるだけなら見つけられへんのやろうけど。悲しみを内包してるものが弱いとは思わんけどね。


武:もちろん、そうだけどさ。俺は「怒り」を感じたかというと、そうでもなくて、70年代より50年代の方が作品が「ゴリッとしてる感じ」だなあ、と思ったんすよ。なんだろ「ゴリッとしてる」って、言葉が見つからないがwww


山:確かにごつごつしてるな。荒い、っちゅうかね。

武:そうそう。生命的っつうのかしら?

山:マチエール的、とか。
< http://www.weblio.jp/content/%E3%83%9E%E3%83%81%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB
>

武:あー、なるほど。それはあるかも。


武:モノクロ記録映像もさ、古さ故の画面の揺れやノイズもマチエル的っていえばそうだよね。

山:より触覚的、っていうのかね。

武:データ化されない情報が多いってことなんかな。


山:そのノイズ性とか、どちらかと言えば非合理的(?)な感じが、どうも僕には怒りと繋がって感じられたのか、、、いや、違うかな。むずい。


武:やっぱりどこか「革命」の匂いはあったかな。けどそれはロシア革命とロシアアバンギャルドのような政治と藝術の結び付きではなくて、「土着と人間と暴力」みたいな感じというか、、いろいろと乱暴な感じがちょっといいなあと俺は思ったのかな?w


●美術館は墓地なのか?


山:なんやろね。話をちょっと前に戻すと、なんで今過去を振り返ってるのか、って思って。いや、別に過去を振り返るのが悪いということではないけど。


武:俺はね、過去を振り返るというより、最後に一回どかんと持ち上げて祀ってあげてサヨナラをしようとしてるんじゃないか、と感じたのよ。

山:ほう。


武:極端に言えば、「美術館自体の役割が終わった」的な。デッカい作品作って美術館が所蔵して何の意味になるの? 人々は幸福になるの? みたいな根本問題がふと感覚的に沸き上がっちゃうんだよね。

山:美術館自体はあって欲しいとは思うけど、


武:デッカいことをやろうと頑張って来た戦後美術と美術家たちにお疲れさまでした。と。これから藝術ってもうちょっと一人一人が持てるもの、感じられるもの、一人一人の中にちゃんとあるもの、になっていくんじゃないかな?


山:今と同じようなことを続けてても、あんまり嬉しくはないかな、とは思う。

武:だってさ、デッカい作品ってどうよ? パッと見は面白いよ。パッと見たらいいものだったりするんだよな。けど、その為だけに莫大なお金をかけて保存しなきゃならないんでしょ。


山:そうねえ。外にあればええんかなw

武:自然に朽ちて行くとかね。

山:あれと一緒やな、お墓。


武:お墓ってさ、社会将来的にはもう意味ないじゃん。

山:それは知らんけど、お墓今でもいっぱい作るやん。

武:もういっぱいいっぱいじゃんw


山:新しいのいっぱい作るやろ。売る為なんか何なんか知らんが。自分の親が建てた墓があるけど、これほんま意味あんのか? って思う。親の気持ちはわかるけどやね。


武:まさしく美術館は墓地だよね。けどもう巨大な墓地自体が要らないんだよ。まあ、緑があるってのがメリットくらいで。

山:ずらーっとならんでる新しい墓をみてたら、こんなことしてたらそのうち墓しかなくなってしまうやないか、って思うんよねw


武:人が死んだらさ、衛生面をなんとかして肥料とか燃料とか再利用にならんのかね。

山:倫理的な問題やな。

武:「循環しない」、そこが問題なんだよ。


山:やっぱどんづまりか。

武:「個人が生きた証し」ってほとんどウェブサイトでいいんじゃね?

山:そうは思わんが。


武:物質はね、確かに画面じゃ分らないけど。

山:お墓なんていらない!とは思ってはない。あったって全然いいですよ。けどそんなにたくさんいるのか? と。


武:家の中にあればよくね? 家の中に拝む場所があれば。毎日拝めばいいんですよ。

山:仏壇というものはあるわな。そうじゃなくて、お墓。合祀はあかんのかな。


武:そうだよね、家の中じゃなかったら、お空のお星さまが共同墓地でいいんだよ、合祀。だからさ、美術館もさ、墓を含めた葬式仏教と一緒で、根本問題として「要らなくね?」ってのが出てくるんだよ。


山:美術館と墓を同列に考えられるかどうかは、まあまた考えるとしてw でも、そのうち3Dアーカイブとかできるようになれば、作品もいらなくなったりするかもな。

武:そういうことはあるかもしれない。3Dスキャンして廃棄、または屋外に放置して解放して朽ちて自然に還す、とかね。今回の展示、面白かったことは確かだけどさ、ふと、「ここにある作品、全部、要らなくね?」っていう根本問題を感じちゃったってのはね、なんなんかなあ。。それも60周年記念特別展という一大イベントでw


山:ということは、来るべき未来の美術館というのは、今とはまったく違う意味のものになってたりするんかもね。

武:あり得るよ。


【東京国立近代美術館60周年記念特別展
美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年】
< http://www.momat.go.jp/Honkan/Art_Will_Thrill_You.html
>
会場:東京国立近代美術館
会期:2012年10月16日(火)〜2013年1月14日(月)
開館時間:10:00〜17:00(金曜日は10:00〜20:00)
休館日:毎週月曜日(12/24・1/14日は開館)と、年末年始(12/28日〜1/1)。
観覧料:一般1,300円、大学生900円、高校生400円

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/売れっこ画家に俺はなる!】
あれこれ展覧会に参加しております。作品買えます!
☆Picaresque(ピカレスク)主催「Art Inside House,鹿児島展」
2012年11月23日(金)〜2013年2月11日(月)
< http://www.facebook.com/picaresquejpn
>
☆拝借景主催「祭りか?山か?展」
2012年12月1日(土)〜2013年1月19日(土)
< http://haisyaku.jugem.jp/
>
☆アートラッシュ「クリスマス展」
12月5日(水)〜 12月25日 (火)
< http://www.artsrush.jp/
>

こちらでも作品販売しております!
◎地元上尾「原市アースカフェ」
< http://ameblo.jp/koushintounoarucafe/
>
◎宮城県多賀城市ギャラリー「GAONG」
< http://www.gaong.net/
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【山根康弘(やまね やすひろ)/お墓参りは好き】
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