[3384] トマソンとステンレス鳥居

投稿:  著者:


《なんだこの予言の書は》

■まにまにころころ[18]
 同じものを目にしていたはずなのに
 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito

■クリエイター手抜きプロジェクト[337]Illustrator CS5/CS6編
 カレンダースクリプト
 古籏一浩

■デジアナ逆十字固め...[128]
 トマソンとステンレス鳥居
 上原ゼンジ

--PR------------------------------------------------------------------
★吉田印刷所が電子書籍販売サイト「印刷の泉」をオープンしました
https://www.ddc.co.jp/estore/
≪≪≪

刷 ●オリジナルの電子書籍・デジタルコンテンツを自由に販売可能
の ●販売価格は50円〜設定可能なので小さなコンテンツでも対応可能

★デザイン・印刷・製本・DTPなどの印刷関係コンテンツ専門のサイトです
-----------------------------------------------------------------PR---




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■まにまにころころ[18]
同じものを目にしていたはずなのに

川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito
< https://bn.dgcr.com/archives/20121203140300.html
>
───────────────────────────────────
こんにちは、震えるほど寒いのに、コンビニでアイスを買ってきた川合です。まあ部屋はあったかいし、何となく食べたくなって。

さて今回は最近読んだミステリの話でも。前に、人の死なないミステリが好きだって書きましたけど、ミステリ全般が好きなので、人の死ぬミステリも読みます。逆に言えば、人が死ぬ物語の中では、ミステリがまだ一番ましかもって思いも少し。少なくとも、感動の押し売りのために登場人物を死なせるような安直な物語よりはずっと。

◎──森博嗣『すべてがFになる』

「ミステリ好きのくせに、今さら?」って言われそうですが、好きといっても、実際たいして色々読んでるわけではないんです。他のジャンルに比べて比較的、という程度で。まあそれでも確かに今さら感があるくらい、有名な作品ですね、これは。私も名前はずっとずっと前から知ってたんですが、なかなか読む機会がなくて、つい最近読みました。で、すっかりハマって、今、そのシリーズを順に読み進めている途中です。

『すべてがFになる』から始まるシリーズは、登場人物のイニシャルから「S&Mシリーズ」と呼ばれる一連の作品で、工学部建築学科助教授の犀川(さいかわ)先生と大学生の萌絵(もえ)が事件に巻き込まれて、あるいは萌絵が積極的に首を突っ込んでは解決していく、といった話。

どんな小説についてでもそうですが、ミステリは特に、その中身について書くわけにはいかないので、私の貧弱な語彙では「面白いよ」のひと言で、他には書くことがなくなってしまうのですが......面白いから、読んでみてください。書評書ける人、ほんと尊敬します。

◎──森博嗣『幻惑の死と使途』

私はまだS&Mシリーズを読み切っておらず、6作目の『幻惑の死と使途』を読み終えたところなんですが、その話の中で個人的にものすごく衝撃を受けた箇所がありました。萌絵と友人の洋子が研究室からインターネットに接続し個人のサイトを閲覧しているシーン(文庫版P350-351)なのですが、


  「なんか、こういうの見てるとさ、一般の人たちがみんな評論家になって
  いくみたいで、どの情報を信じたら良いのか、どんどん分からなくなるよ
  ね」洋子は急に真面目な話をする。
  「このまま、日本中の人がホームページを開設なんかしたら、もう情報が
  多すぎて、結局は役に立たなくなっちゃうんじゃないかしら」

  「たぶん、そうなるわ」萌絵は言う。「今みたいに一部の人がやっている
  間は価値があるけれど。だんだん、自分の日記とか、独り言みたいなこと
  まで全部公開されて、つまり、みんながおしゃべり状態で、聴き手がいな
  くなっちゃうんだよね。
  価値のある情報より、おしゃべりさんの情報の方が優先されるんだから、
  しかたがないわ。でも、それはそれで、価値はないんだって初めから割り
  切れば、面白いんじゃないかしら。そんな気もする」「カラオケみたいな
  もんね」洋子は頷いた。

と、こんなやりとりを、ネットスケープ眺めつつしてるんです。ここを読んで、思わず手を止めて奥付を見ました。初版が2000年。それだけで十分に驚いたんですが、私が読んでいたのは文庫本です。改めて初出の年を調べると、1997年。ちょうど私がインターネットに初めて触れたのが、それくらいでした。

でも、萌絵や洋子が言うようなことは、微塵も思い至りませんでした。あの当時に、こんなことを思っていた人がいた。作者の森博嗣か、あるいは森博嗣が何かを参考に書いたとしても。

海の向こうの話ですが、Googleの原型となるエンジンがラリー・ペイジとセルゲイ・プリンによって生み出されたのが96年。Googleの創業が98年。彼らも同時期に同じようなことを思っていたような気がします。2012年も終わろうかという今になってこれを読んだ私には、「なんだこの予言の書は」といった思いです。

同じものを目にしていたはずなのに、そんなこと考えもしなかった。見ていたのに、見えていなかった。悔しいというか何というか、自分の能なしっぷりに呆れるというか。能なしというより、脳なし? 考えることをしなかったから。

もっとも、いつもこういうことで凹まされることばかりなので、自覚もあるし、悪い意味で慣れてもきているんですが、今自分が仕事にしているWebについての話だったので、ダメージが少し大きくて。職業選択、誤ったかなと......

前回、ポジティブに考えようって書いたところなのに、「こんな脳なしでも、仕事にして生きてられるんだ」くらいにしか思えない。それも自嘲気味に。

もっと何か得意なこと見つけて、あるいは身につけて、それを仕事にするべきかなとも思うところですけど、ろくに何も考えなくても、知った風を装って、のらりくらりと色々やり過ごすことができるってのも、ある種の特技ですよね。この特技で一生なんとか乗り切られることを祈るのは、ちょっとポジティブに過ぎますかね。(苦笑)

◎──理系ミステリ

気を取り直して、ミステリの話に戻ります。S&Mシリーズの犀川先生は、工学部建築学科の助教授。大学の助教授が探偵役になるミステリと言えば、東野圭吾のガリレオシリーズもそうで、あちらは物理学の博士。どちらも、専門分野の知識が謎解きに活かされるわけですが、読んでいて「理系ミステリ」と感じるのは、なぜか断然S&Mシリーズのほう。

理由の一つとして、ガリレオシリーズが、大学の先生と刑事による物語なのに対して、S&Mシリーズは大学の先生と学生による物語で主な舞台が大学だから、ということもあると思います。

ですけど、それよりも、なんというか、S&Mシリーズは最初から最後まで、全体の「物語」が、理系のにおいを感じるんです。文系の私が言うのも変ですが。まあそれも結局、最初に挙げた理由から登場人物の8割くらいが理系だからってのも大きいんでしょうけど。

もっと専門的な森博嗣の「理系ミステリ」への言及は、文庫の『すべてがFになる』の解説にあるので、そちらをどうぞ。私には、「理由は分からないけど、同じように大学の先生が探偵役になっても、印象はぜんぜん違ってて、面白いなー、なんでだろうなー」程度です。脳なしなので。

◎──理系と文系

理系がどうのって書きましたが、理系と文系って分け方にさほど意味があると思っているわけではないです。ただ今回この話を書きながら思ったのは、同じものを見ても、その先を考えるのは理系的かなって。さっき最後に書いた部分で、「なんでだろうなー」をそのまま放置しちゃえるのは文系的かなと。

「こう書くと、世の文系の方々から殴られそうですけど。ここで言ってるのは、学問の分類、というか受験の分類で言う文系・理系でなくて、もっと感覚的な話。哲学は受験では文系ですけど、私の感覚では思いっきり理系的。そんな話で。まあ、深い理由付けなどは何もありません。だって......まあいいや(笑)

世の中をクリエイティブに推し進めているのは、理系的な方々だと思います。私も少し見習って、たまには理系的な思考もしたほうがいいんだろうなーと、軽く反省込みで、そんなことをぼんやり思いつつ、今回はこの辺で。

さて、買ってきたアイス食べよっと。

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
< https://www.facebook.com/korowan
>
< https://www.facebook.com/caputllc
>

・イベント紹介(その2)【東京・大阪】
12/3に東京、12/6に大阪で、アプリクリエイターのためのWindows8パーティ、「8nights」が開催されます!
< http://www.microsoft.com/ja-jp/events/8nights/default.aspx
>


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■クリエイター手抜きプロジェクト[337]Illustrator CS5/CS6編
カレンダースクリプト

古籏一浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20121203140200.html
>
───────────────────────────────────
今回は、指定した年のカレンダーを作成するスクリプトでCS5/CS6用です。カレンダー生成のスクリプトは以前にも掲載しました。しかし、CS5以降では座標系が違うので期待通り動作しません。

そこで座標系の部分を修正し、さらにRGBカラー指定だったものをCMYKカラー指定にしました。休日等の色はコメントの「■↓一週間分の色(C,M,Y,K)」と書いてある下の行にある[0,0,0,100]の数値を変更してください。

数値は0〜100でCMYKの順番になっています。会社の創立記念日など、特別に休日を設定したい場合はコメントの「//■休日・祭日設定」の下の行に数値があります。この数値が祭日になっています。設定するには12,23の後に, 7, 11のように月と日付を,で区切って記述してください。

// Calendar Script for Adobe Illustrator CS5/CS6
baseX = 10; //■カレンダーの最初の表示位置(X座標)
baseY = 0; //■カレンダーの最初の表示位置(Y座標)CS5は左上が原点
calDX = 30; //■カレンダーの1日あたりの横幅
calDY = 30; //■カレンダーの1日あたりの縦幅
blockX = 250; //■1月あたりの横の差
blockY = 250; //■1月あたりの縦の差
txtColor = new CMYKColor();
docObj = activeDocument;
function calendar(theYear_,theMonth_){
var wrtMonth= new Array(0,31,28,31,30,31,30,31,31,30,31,30,31);
var wrtDate = new Array("日","月","火","水","木","金","土");
//■↓一週間分の色(C,M,Y,K)
var wrtColor= new Array([0,100,0,0],[0,0,0,100],[0,0,0,100],
[0,0,0,100],[0,0,0,100],[0,0,0,100],[100,0,0,0]);
//■休日・祭日設定
var special = new Array(3,21, 9,23, 1,1, 2,11, 4,29, 5,3, 5,4, 5,5, 11,3, 11,23, 12,23);
var specCnt = 15;
var specCol = [0,100,0,0]; // 休日の文字色
var theDate = new Date(); // 日付オブジェクトを生成
specCnt = 13; // Happy Monday対策
if (theYear_){ // 年月が指定されていた場合は年月を再設定
theDate.setYear(theYear_); // 指定年を設定
theDate.setMonth(theMonth_-1); // 指定月を設定
}
theYear_ = theDate.getFullYear();
theMonth_= theDate.getMonth()+1;
if (((theYear_ % 4 == 0) && (theYear_ % 100 != 0)) || (theYear_ % 400 == 0)){
wrtMonth[2] = 29; // 閏年だったら2月を29日にする
}
// 春分/秋分の日を求める(1980-2099まで)
special[1] = Math.floor(20.8431 + 0.242194 * (theYear_ - 1980) - Math.floor((theYear_ - 1980)/4));
special[3] = Math.floor(23.2488 + 0.242194 * (theYear_ - 1980) - Math.floor((theYear_ - 1980)/4));
theDate.setFullYear(theYear_); // 指定年を設定
theDate.setMonth(theMonth_-1); // 指定月を設定
theDate.setDate(1); // 日付を1日にし曜日を次の行で取得
var count = theDate.getDay();
var day = 0; // 曜日カウンタを0にする
var date = 1; // 日付を1日にする
var flag = false; // 休日&日曜日フラグ
var hFlag = false; // 休日フラグ
var xFlag = false; // 成人の日/体育の日
var i,j;
var week = 0; // 2000年からの体育の日と成人の日対策
calX = 0; //■カレンダーを表示する相対座標(X)
calY = 60; //■カレンダーを表示する相対座標(Y)
drawColor([0,0,0,100]); // 色の初期化
write(theYear_+"年"+theMonth_+"月", 95, 0); // 相対座標(95pt,0pt)に描画
for(i=0;i<7;i++) { write(wrtDate[i], 0+i*calDX, 30); } // 曜日書き出し
flag = false; // 休日が日曜日だった場合true
for(i=1;i<=wrtMonth[theMonth_]+count;i++){
hFlag = false; // 休日だったらtrue
if (day>=count){
wrt = ""+date;
for(j=0; j<specCnt; j++){
if ((special[j*2] == theMonth_) && (special[j*2+1] == date)){
drawColor(specCol);
if ((day % 7) == 0) { flag = true; } // 休日が日曜日だったらtrue
hFlag = true;
}
}
date++;
if ((day % 7) == 1) { week++; } // 月曜日の場合は週の数を増やす
}else{ wrt = " "; }
// 1月と7月と10月の休日処理(Happy Mondayの処理)
var xFlag = false;
if ( ((theMonth_ == 1) || (theMonth_ == 10)) && (week == 2) && ((day % 7) == 1)) { xFlag = true; }
if ( ((theMonth_ == 7) || (theMonth_ == 9)) && (week == 3) && ((day % 7) == 1)) { xFlag = true; }
if (xFlag){
drawColor(specCol);
}else{
if ((hFlag == false) && flag == false) { drawColor(wrtColor[day % 7]); }
if (((day % 7) == 1) && flag == true) { drawColor(specCol); flag = false;}
}
drawBox(calX, calY); //■枠を表示する部分。しない場合は行ごと削除
write(wrt, calX, calY);
calX += calDX;
if (day % 7 == 6) { calX = 0; calY += calDY; }
day++; // 1日増やす
}
}
function drawBox(x, y){ // 枠を描く
var pObj = docObj.pathItems.rectangle(0,0,calDX,calDY);
pObj.translate(baseX + x - 15,baseY-y+calDY-9); //■ここで位置を微調整
pObj.filled = false; // 塗りなし
pObj.stroked = true; // 線あり
pObj.strokeWidth = 0.2; // 線幅0.2ポイント
pObj.strokeColor = setColor(0,0,0,100); // 線の色を指定(黒色)
}
function write(txt, x,y){
var textObj = docObj.textFrames.add();
textObj.contents = txt;
textObj.translate(baseX + x, baseY - y);
for (var i=0; i<textObj.characters.length; i++){
textObj.characters[i].fillColor = txtColor;
}
textObj.paragraphs[0].justification = Justification.CENTER;
}
function drawColor(col){
txtColor.cyan=col[0];txtColor.magenta=col[1];txtColor.yellow=col[2];txtColor.black=col[3];
}
function setColor(c,m,y,k){
var tmpColor = new CMYKColor();
tmpColor.cyan = c;tmpColor.magenta = m;tmpColor.yellow = y;tmpColor.black = k;
return tmpColor;
}
(function(){
calYear = prompt("作成する年を入れてください",2012);
if (!calYear){ return; }
storeX = baseX;
cal = 1;
for (cy=0; cy<4; cy++){ //■縦に4つ
for (cx=0; cx<3; cx++){ //■横に3つ
calendar(calYear, cal);
baseX += blockX;
cal++;
}
baseX = storeX;
baseY -= blockY;
}
})();


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/
>

今年もあと一か月でおしまい。夏に購入したゲームは少ししか遊べず。まあ、流行のゲームではなく大昔(1980年代のRPG)なので、パソコンがあればいつでも楽しめるのですが。昔のゲームをiPadとかに移植するのは歓迎ですが、いかんせん操作性が駄目で結局遊ばずに終わってしまうという空しいオチに......。

・Kindle(Paper White)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Kindle/paperwhite/
>

・kobo glo 使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/kobo/glo/
>

・iPad mini(アイパッドミニ)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/iPad/mini/2012/
>

・Nexus 7(アンドロイドタブレット)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Android/Nexus7/
>

・すべての人に知っておいてほしい jQuery & jQuery Mobileの基本原則
< http://www.amazon.co.jp/dp/4844362984
>

・HTML5ガイドブック 増補改訂版
< http://www.amazon.co.jp/dp/4844332937
>

・JavaScript逆引きハンドブック
< http://www.amazon.co.jp/dp/4863541082
>

・改訂5版JavaScriptポケットリファレンス
< http://www.amazon.co.jp/dp/4774148199
>

・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/
>

・クリエイター手抜きプロジェクト
< http://www.openspc2.org/projectX/
>

・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
< http://www.openspc2.org/book/PDF/Adobe_Illustrator_CS3_JavaScript_Book/
>
吉田印刷所の「印刷の泉」でも購入できるようになりました。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■デジアナ逆十字固め...[128]
トマソンとステンレス鳥居

上原ゼンジ
< https://bn.dgcr.com/archives/20121203140100.html
>
───────────────────────────────────
トマソンの展覧会をやることになった。といっても、来年の11月に新宿眼科画廊で行われるということだけが決まった。トマソン誕生から30年以上も経ってしまったので、中核メンバー(美学校での赤瀬川原平さんの生徒達)も齢をとり、とりあえず会期を決めてしまわないと、なかなか動けなくなってしまったのだ。

超芸術トマソンとは「不動産に付着していて美しく保存されている無用の長物」のことで、使わなくなり塗り込められてしまった窓の上にさびしく佇むヒサシとか、どこにも続いていない、ただ昇って降りるだけの機能しかない純粋階段などのこと。そういった物件を街を歩いて探し歩き、写真を撮り、報告書を作成するというのが我々の活動だ。

正しくは「超芸術探査本部トマソン観測センター」という。ただ自分たちで観測をするだけでなく、全国から集まる報告書を精査し、トマソンと認められた物件に認定印を押して保管しておくという大切な役割もある。

トマソンの楽しさはふたつあると思う。まず発見する楽しさ。街中を歩きまわって物件を探し出すのだが、そんなにゴロゴロしているものでもないので、美麗な物件などに出くわした時はけっこう嬉しい。そしてもうひとつの楽しさは、誰かが見つけてきた物件について、その物件はどうやってできたのか、トマソンか否か、ということをディスカッションすることだ。

この時、いかにくだらない想像力を働かせるのかということが重要。その物件の主に直接聞いてしまえば、ミもフタもない答えが返ってくるかもしれない。しかしそんな無粋なことはせず、その成り立ちを一生懸命想像するのだ。

たとえばその物件を生み出した人の人物像をプロファイリングするとか、少しずつ変化していった過程を描写してみる。真実を突き詰めるのではなく、曖昧なままにあれこれと考えを巡らせて味わう態度が重要。

赤瀬川さんが著した「超芸術トマソン」(筑摩書房)も増刷を重ねたので、トマソンを発見したという人は世の中に多いと思うが、みんなであーでもないこーでもないと論じ合った経験がある人は少ないはず。展覧会の期間中には報告会も予定しているので、ぜひ物件を見つけて参加して欲しい。

Facebookにとりあえずトマソンのページを作ってみた。今後、報告書の書き方や入手方法についてもまとめていきたいと思っているので、興味がある方は「いいね!」をしておいてください。

◇超芸術探査本部トマソン観測センター
< https://www.facebook.com/thomasson.center
>

●意外に多い金属鳥居

展覧会が決まり、私も久しぶりにトマソンの自主探査を行った。元々そんなにトマソン感度は高くないのだが、ほとんどトマソンと出会うことができずに疲れて帰ってきた。いちおう展覧会までに自宅周辺を中心に報告をしたいと思っているので、少しずつリハビリをしなければならない。

そんな中、トマソンではないのだがちょっと気になるものと出会った。ステンレス製の鳥居だ。銀色に輝くこの鳥居が視界に入った時は、凄い違和感をおぼえた。まあ鳥居と言えば木製がメインだよな。思い返してみれば石で出来た鳥居というのもあったかもしれない。

しかし、ステンレスだといまいち有り難みがない。前の鳥居が木製で腐ってしまったので、劣化しにくいステンレスを使ったのだろうか?< http://p.tl/Gfhf-
>

などと考えながら、Facebookにその写真をアップしてみたら、けっこうコメントがついた。世の中には鳥居好きがいっぱいいたのだろうか? 

二宮さんは「曾叔父でもある二宮忠八翁が建立した飛行神社も、ジュラルミンの鳥居です。かなり迫力あります(笑)」というコメントをくれた。ジュラルミンというのはステンレスよりカッコよさそうだな。飛行機の機体の素材として使われることが多いから、鳥居に使ったということのようだ。拝殿はギリシャ風だし、飛行神社侮りがたし。

◇飛行神社 Wikipedia
< http://ja.wikipedia.org/wiki/飛行神社
>

よく見ると、私が発見したステンレス製鳥居もなかなかよくできている。もしかしたら、飛行神社のように何か謂われのあるものなのだろうか? などと考えていたら、今度は飯村さんがステンレス製鳥居の業者を教えてくれた。

実は現在の鳥居の素材としては、かなり一般的なもののようだ。ただし多くは赤く塗ったり、御影塗装を施したりしているようだ。私が見つけた鳥居は塗装代をケチったのだろうか?

◇ステンレス鳥居の色・石調について
< http://www.sankei-torii.com/color_stone/index.html
>

また柴田さん(女子)は兵庫県高砂市にある鹿島神社には、高さ26メートルのチタン製大鳥居があるという情報を寄せてくれた。するとみんな、この「チタン」という響きに大興奮。男子はチタンが好きだよな。

調べてみたらこの大鳥居の動画もあった。かなりの迫力だぞ。近くの石碑にはこのチタン大鳥居の概要が書いてあるんだけど「耐久年 千五百年」だって(笑)。人類が滅亡した後も鎮座しているのでしょう。

◇街角散策「鹿島神社チタン製鳥居」(高砂市)
<
>

結局私が見つけた鳥居の正体は不明だ。「ご予算がないようでしたら、塗装は後からでも大丈夫ですよ。後々のことを考えたらステンレス製が絶対にお得です」と業者に説得されて、ステンレス剥き出しの鳥居ができたのだろうか? まあ、正しい解は求めていない。考える過程こそが重要だからだ。

●ゼンラボ・ワークショップ「万華鏡写真の巻」
12月9日(日)に下北沢のカフェ&ギャラリー「バロンデッセ」にて万華鏡写真のワークショップを行います。詳細は以下URLを御覧ください。
< http://p.tl/W2GS-
>

◇「こんな撮り方もあったんだ! アイディア写真術」(インプレスジャパン)
< http://www.impressjapan.jp/books/3273
>

【うえはらぜんじ】zenji@maminka.com < http://twitter.com/Zenji_Uehara
>
上原ゼンジのWEBサイト
< http://www.zenji.info/
>
Soratama - 宙玉レンズの専門サイト
< http://www.soratama.org/
>
上原ゼンジ写真実験室のFacebookページ
< https://www.facebook.com/zenlabo
>


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記(12/03)

●あ〜あ、とんでもない映画DVDを見てしまった。三池崇史監督の「愛と誠」(2012、角川+東映)だ。梶原一騎+ながやす巧による1970年代の漫画が原作である。この漫画は雑誌連載をリアルタイムでは見ていないが、コミックスや文庫版になってから熱中して読んだ。たしかに今読んだらアナクロもいいとこだが、名作であることは間違いない。愛蔵の文庫版はオークションで処分してしまったが、ながやす巧のすばらしい作画力はしっかり記憶に残っている。

あの世界をいま再現しろといってもそれは無理だろう。しかし、三池版「愛と誠」には驚いた。主要な人物がなつかしの昭和歌謡(空に太陽がある限り、あの素晴らしい愛をもう一度、また逢う日まで、とか)を歌って踊るではないか。うんざりするほど延々と。ちょっと、いやそうとう居心地が悪い。かといってミュージカルではない。学校や盛り場が主な舞台だが学園ドラマではない。いったいなんだこれは。パロディ版「愛と誠」か。

愛が暴走し(つくづくはた迷惑な女である)誠は当惑、巻き込まれて暴れるしかないという(だけではないが)ふざけたストーリー。愛(武井咲)はどうやら女子高生に見えるが、他はとうてい高校生には見えない。誠(妻夫木聡)だって31歳。17歳権太を48歳の伊原剛志が演じるのだから笑える。あ、けっこうおもしろいところもある。でも全体にくどいところが多く、終りの方はみょうにシリアスになってバランスが悪い。どうせなら徹底してふざけろって。

この映画、誰が見るのか。誰を対象にした映画なのか。原作を読んだことがある人か。1960年、1970年代に青春だった人だろうか(違うだろうな。わたしはど真ん中だけど)。もういいよって感じで、悪いけど早送りした箇所もいくつか。評価できるのは密度の高い画面だ。セットがよくできているし、色彩もすばらしい。やはり原作を読んでいる人の方が見て楽しいかも。見てから読むか、読んでから見るか、なんちゃって。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B008MTJD2C/dgcrcom-22/
>
→アマゾンで見る(レビュー22件)


●続き。ログ計測や仕事メモ用の非公開Twitterアカウントは、iPhoneアプリの『Momento』で吸い上げている。これはSNSやRSS類をまとめてくれるもの。Foursquareや通常Twitter、全然やってないけどFacebookやPosterousなどの別サービスの記録もすべて、このアプリで時系列に並べて見られる。

非公開Twitterアカウントは、メモを検索しやすくするため、『ツイエバ』もしている。これは一日のtweetをEvernoteに自動的に記録してくれるもの。メール送信もできるので、それ用のGmailアカウントをとるとか(持っているアカウントにエイリアス作っても)、フィルタでラベル付けするってのもアリだな。検索に強いから。後で参照したくなるようなものは非公開tweetしておき、あの時どうやって解決したっけな、と検索する。

で、この非公開Twitterに『QuickLog』から自動ポスト。ひとつひとつの作業終了後に完了したことをtweetしてくれるアプリもあるんだけど、『QuickLog』は、何時何分から何時何分までの何時間何分を何々のために使ったという記録を完了時に送信してくれるので、開始時間はいつだったか、それに要した時間はどのぐらいなのかと計算しなくていい。いまTwitterの記録をざっと見たら、「眠い」とばかり書いてるわ(笑)。続く。(hammer.mule)

< https://itunes.apple.com/jp/app/momento-diary-journal/id347019672?mt=8
>
Momento
< https://ja.foursquare.com/
>  Foursquare
< http://twieve.net/ja
>  ツイエバ
< http://nanapi.jp/2424/
>  Gmailのエイリアス方法
< http://quicklog.polygon-house.com/ja/
>  QuickLog公式
< https://itunes.apple.com/jp/app/quicklog-v1.2.1-lite/id377388734?mt=8
>
まずは無料のLite版から