歌う田舎者[40]私がビビリスキー/もみのこゆきと

投稿:  著者:  読了時間:9分(本文:約4,200文字)


誰も信じてくれないかもしれないが、わたしはいつ何時もビビりながら生きている。世の中が怖くて怖くて仕方がない。

今月のタイトルを「私がビビリスキー」にしたことについても、デジクリ読者の皆々様に「え? そのタイトルって何? 映画『私がウォシャウスキー』のもじり? 意味わかんねぇ。それで映画の筋とこのコラムに関連性があんの? は? 全然ない? 責任者を出せ!責任者を!」と糾弾されている自分を想像してビビりまくり、部屋の片隅で震えているのである。

前回の「仁義なき戦い YKZ48」を書いているときも、「自分で書いておきながら、『ヤクザ』と『極道』の違いがわからぬ。どちらの用語を使うのが正しいのか。畏れ多くも人目に触れる場所で書いているのに、人様に尋ねられたとき回答できないなど、そんなことでいいのか、もみのこよ。むぐーーーっ!」と、尋ねられてもいないのに、頭を掻き毟ってビビりまくっていたのである。そしてビビっているうちに、毎回締め切りがやってくるのだ。

わたしが斯様なビビリスキーになったのは、父親が度を越したドビビリスキーだったからである。飛行機は怖いので絶対乗らない......という人がたまにいるが、ドビビリスキーは、飛行機どころかJRにも車にもビビっていた。

毎日仕事から帰ってくると、どこそこの横断歩道は危なかったという報告から始まる。横断歩道は右見て左見て、そしてまた右を見て渡れと言うが、その間に左から車が来たらどうするんだ! 危機管理が甘い! と、額に青筋立ててビビっていた。




電化製品に長時間通電していると、発火するとかたくなに信じていたので、冷蔵庫以外の電化製品については、常日頃からパトロールで通電時間をチェックしており、2時間で強制的に電源をオフにして回る。

自分で閉めたドアの鍵が信じられず、「泥棒に狙われる!」と、ビビりながら戻ってきてはドアノブをがちゃがちゃがちゃがちゃやっていたので、ドアのたて付けはだんだんおかしくなっていった。強迫神経症の一歩手前である。

石橋を叩いて叩いて叩き割って、「ほら見ろ! 壊れたじゃないかっ! 世の中は危ないものだらけなんだ!」と叫んでいたが、壊れたんじゃないくて、お前が壊したんだろうが。しかし、そのような親の元で育つと、子どもも洗脳されてビビリになってしまうのだ。



昔からドビビリスキーが言っていた。都会というところは生き馬の目を抜く恐ろしいところで、田舎者だということがバレたら、すぐに盗人に狙われ、暴漢に襲われ、結婚詐欺に遭うことになっている。田舎者が都会に行くとは、死にに行くのと同じなのだと。

なんと恐ろしいことであろうか。だから、物心ついてから、もしわたしが都会に行くことがあったら、忍法都会人の術で、絶対に田舎者だということがバレないようにしようと心に誓っていた。

もちろん電車や地下鉄に乗る時も、都会人のふりをしなければならないため、駅に掲示された路線図やインフォメーションをまじまじと見ることもできない。そんなことをしては、田舎者丸出しではないか。

「わたしは100年前から都会に住んでいるのであって、そんなもの見なくても、全部頭に入っとるわ」という雰囲気を醸し出し、間違っても有人の改札で、駅員さんのお世話になるような無様なマネをしてはならない。

それなのに、10月に行った大阪ではしくじった。日本一長い商店街である天神橋筋商店街に行ってみようと、なんばから大阪市営地下鉄で天神橋筋六丁目駅に向かったのだが、なにやら出る改札を間違ったようなのである。乗り継ぎの梅田で、自動改札機から切符が出て来なかったのだ。

「し、しまった。ここは単なる出口だったのか。なんたる失態!」
切符が吐き出されるはずの自動改札機に取りすがり、「出してくれ、あたしの切符を出しておくれよぅ。あたしは田舎者じゃない。助けておくれ!」とわめき散らす哀れな女がひとり。あぁ、これで大挙して結婚詐欺師がわたしの元に殺到してしまう......。

泣きながら係員のいる改札で事情を説明すると、「乗継乗車券」と書かれた黄色い紙を渡された。これは田舎者専用の往来手形であろうか。聞けば、この乗継乗車券では自動改札機を通れないので、有人の改札を通らねばならないという。あぁ、なんたることか。忍法都会人の術は破られてしまった。これでおしまいだ。結婚詐欺師よ、いらっしゃい。悲しい浪花の思い出である。



最近怖くなったものもある。好奇心旺盛なばーさんだ。どうもバスに乗っているわたしは、ばーさんフレンドリーなオーラを発しているらしく、話しかけられることが多い。

先日、いつものように二人掛け椅子の奥に座ってスマホでFacebookを見ていたら、隣に座ったばーさんが話しかけてきた。

「はら、そいがスマートフォンとかいう電話ね」
「あ、そ、そうですね」
「指で、すーっすーっちすれば、動くんでしょ」
「まぁ、そんな感じですね」
「どげんするの? ちょっとみせてよ」

指で画面をタッチしようとして思い出した。わたしのFacebook友達の中には、女性のセクシー写真を怒涛のようにシェアしまくる人がおられるのだ。ちょうどその時間が怒涛のシェアタイムに当たっており、ばーさんが見つめているFacebook画面を"すーっすーっ"と動かすと、山のようにきわどい写真が表示されることになるのだ。

ど、ど、どうすればいいのだ......。「いや、その、これはわたしの趣味ではなくてですね。えーっと、まずFacebookの仕組みからご説明いたしますと......」そんなまだるっこしい説明をしている場合ではない。

だからと言って「プライバシーに関わるため、お見せできません」などと無下に断るのもあまりに情なきこと。

好奇心でいっぱいのばーさんは、邪気のない顔でわくわくしながら、わたしが"すーっすーっ"とやって見せてくれるのを、固唾をのんで見守っている。どこで止まるか、♪ロ・ロ・ロ・ロシアン・ルーレットではないか。ここまで来たらあとには引けない。

"すーっ"
ぎゃーーーっ! 尻が、オッパイが、♪走る〜走る〜おれ〜た〜ち〜♪
"すすーっ、すすーっ、すすーーーーーっ"
うぎゃーーっ! 裸エプロンが、尻出しサンタが、♪流れ〜る汗もそのま〜ま〜に〜♪

気がつけば、手裏剣を投げる忍者なみの速さで画面を走らせるわたしがそこにいた。それ以来、ビビって、バスではスマホを出せなくなったのである。あぁ、世の中は恐ろしい。なぜこのように恐ろしい事ばかりが満ち満ちているのか。



未来も恐ろしい。最近一番怖いのは、来年のNHK大河ドラマ「八重の桜」である。なぜなら「八重の桜」の舞台は会津なのだ。会津藩から見ると、薩摩藩・長州藩は不倶戴天の敵である。ドラマで薩摩藩の人間がどんな悪逆非道な輩として描かれるかと思うと、心配で夜も眠れない。

綾瀬はるか演ずる新島八重が、苦境に立ち向かい、乗り越えて行くたびに、薩摩藩の人間はどんどん悪者になっていくに違いないのだ。可憐で美しく、おっぱいバレバレーな綾瀬はるかを苦境に陥れるなど、日本国民の敵とみなされても致し方あるまい。

物語が佳境に入る頃には、薩摩藩の人間は、丸に十の字の家紋を、必ず衣服に縫い付けておかねば歩けぬ社会になっているかもしれぬ。

「貴様、薩摩藩の人間だな!」「ちっ、違いますでごわすっ」「ごわすとはなんだ、ごわすとは! その家紋が全てをあらわしておるわ!」「あああっ、お代官様、許してくだせぇ、許してくだせぇ」と命乞いをするも、「えぇい、問答無用! ものども、引っ立てい!」と河原まで連れて行かれ、五右衛門風呂で茹で殺されてしまうのだ。おかん! わしゃあまだ死にたくねぇ。死にたくねぇよぅ!

恐ろしい。なんと恐ろしいことであろうか。このような恐怖を抱いて、ビビりながら生きて行くことはできぬ。よって、来年一年、わたしはフランス人になることに決めた。来年の漢字は「仏」で決まりだ。よろしくシルブプレ。

※「私がウォシャウスキー」
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000BKDRDG/dgcrcom-22/ >
※「ロ・ロ・ロ・ロシアン・ルーレット」中原めいこ
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※「Runner」爆風スランプ
< >

【もみのこ ゆきと】qkjgq410(a)yahoo.co.jp

かつてはシステムエンジニア。その後、名ばかり経営指導員。通販用ジュエリー撮影のバイトはクビ。失業手当は1月年頭で終了。いや、めでたい正月じゃ......めでたくねぇよ!←イマココ。

前回の「仁義なき戦い YKZ48」で、県民の日が休みになる太っ腹な県は埼玉県をおいてないのではないか......と書いたら、「東京都では10月1日が都民の日で、公立の小中高は休校です、でした。最近は休まない学校も増えているようです」という投稿をいただいたそうである。

恐れ多くも東京都もそのような大盤振る舞いをしておいでになるとは。茨城県も公立の小中高は休みであるらしい。知らなんだ知らなんだ。

ちなみにわが薩摩藩は、2月9日が県民の日である。「肉(にく)」にちなんで、である。まー、はっきり言って、県民の誰も知らないと断言する。各都道府県が、「廃藩置県後に初めて秋田県という名称が使われたことに由来」とか、「木更津・印旛両県が合併し、千葉県が誕生したことに由来」とか、「長野オリンピック開会式が行われたことに由来」とか、もっともらしい理由を並べている中で、「肉(にく)」にちなんでという、この激しい浮世離れ感は何なのか......。

[県民の日]
< http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%8C%E6%B0%91%E3%81%AE%E6%97%A5 >

[もみのこより年末年始のごあいさつ]
< http://www.facebook.com/photo.php?fbid=470440486355362&set=a.333679820031430.80719.100001682455033&type=3&theater >