気になるデザイン[89]古の印刷サンプル集がおもしろい!/津田淳子

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昨日は東京も(東京にしては)めちゃくちゃ雪が降って、本当に身にしみたご挨拶になってしまいますね......。寒中お見舞い申し上げます。

私は毎年、年末年始はなんとなく落ち着かない日々を過ごしています。というのも、私が編集している『デザインのひきだし』という定期媒体の校了が、年明けすぐなためです。

『デザインのひきだし』は年に3回刊行していて、それぞれ2月、6月、10月刊なのですが、2月刊の『デザインのひきだし18』が、先週末校了できました。年末年始のお休みにかかってしまうため、内容を確認していただいたり、デザイン作業をしていただいたり、といったことが、ちょっと滞ってしまうのが玉に瑕。

......でも、改めて考えてみると、6月刊はゴールデンウィーク直後が校了、10月刊はお盆休みや夏休みを終えて程ない頃に校了と、どれも選んだかのような大型休み後の校了......。




『デザインのひきだし』はデザイナーや印刷加工関連の方に取材させていただいていることが多いので、記事内容を確認していただくのもその方々。こうした大型休暇の前は、印刷業界は「年末進行」「ゴールデンウィーク進行」「お盆進行」と、三大前倒し進行(勝手に命名)になるので、みなさん、いつも以上に忙しい。そんな中で、記事確認とか、正直面倒ですよね......。

よりによってなんで三大前倒し進行時に締め切りにしてしまったのかと、刊行スケジュールを決めた自分の愚かさを嘆く日々です。......といって、今さら刊行時期を変えるのは会社から許可がでなそうだし。グスン。とまあ、年末進行を乗り越え、先週ひいひい言いながら校了した『デザインのひきだし18』は、発売が2月頭なので、また別の機械に書かせていただければと。

そんな年末進行+校了時期となると、あまり書店に行かれず、仕事の合間にネット書店でお買い物と相成る。

新刊もネット書店で買うが、特に古書は「日本の古本屋」で検索するとかなりかんたんに探せるので、気になるものがあるとついつい買ってしまう。昨年は、日本の昔の装丁や造本を見られる展示会が数多くあり、そこで見たものや関連書籍をずいぶんと入手した。展示で見られるのはうれしいのですが、やはり本は手に取ってじろじろ眺め、すりすり触りたいので、現物入手できるものはできるだけ買っている。

日本の古本屋
< http://www.kosho.or.jp/servlet/top >

古書でいつも探しているのが、日本の明治期〜昭和中期のころまで、いろいろとつくられていた、全国の印刷会社が自社の技術を駆使した印刷物をつくりそれを集めて綴じた、印刷サンプル集ともいえるものだ。

日本で最初につくられた、そういったサンプル集は、たぶん「花の栞」(全5集)だと思う。これは明治期につくられたもので、先日(1月14日)まで行われていた、印刷博物館の「印刷都市東京と近代日本」展に、全冊揃いで展示されていて、もうよだれをだらだらたらしながら見た。

といっても、開かれてるのは一冊のみだったので、なんとかして他のページも見られないものか......と、叶わぬ夢を抱きつつ眺めたのだが。これは古書店で見かけたことがなく、もしあれば、有り金すべてつぎ込んででも買いたいと思っている、夢の一品だ。

他にも『印刷美術大観』や『印刷の栞』『印刷の研究』などなど、さまざまなものが出版されていて、それらは安いものだと数千円、高くても数万円で手に入るものが多くある。

私は『デザインのひきだし』を始める前、不勉強にもこうした古の良書を知らずにいた。海外ではイギリスで「ペンローズ年鑑」という最新印刷技術年鑑のようなものが19世紀末から刊行されていることは知っていたが、日本にもそれと同じ頃から、そうした最新技術サンプル集があったとは。知ったときには驚きであった。

当時のこうしたサンプル集を眺めると、印刷方式も製版方法も、今とは比べ物にならないほど、多種多様なものがある。そしてサンプルのデザイン自体も、今でも目を見張るようなものも多く、当時の印刷会社の心意気や業界の伸び様などを、肌と目で感じることができる。

そうした多種多様な製版や印刷方式から、きれいさ(というのが曖昧な表現だが、写真のように刷れる、高精細に刷れるということが「きれいさ」ということになっている感じがする)と早く安くということを追求して、いくつかの印刷だけが技術革新を遂げ、現在の印刷状況になってきているのだと思う。

もちろん、それは需要を満たし、意味ある進化だとは思うのだが、「印刷物としてのおもしろさ」という側面から見ると、古の印刷サンプル集の方がおもしろかったとも思う。玉石混淆、いろいろな製版や印刷があり、力技ですごいエンボス加工をしていたり、技術の制限を逆手に取ったビジュアルを刷っていたり......。

まあ、成長期の勢いを今の印刷業界で、というのは、技術自体がかなり成熟している産業ではなかなか難しいとは思うのだが、でももうちょっと盛り上げて、印刷はおもしろい! という状況になればいいのになぁと思っている。そして私は『デザインのひきだし』を通じて、それを少しでも盛り立てていかれればと思っています。

というわけで、今年もフルパワーでがんばりますので、『デザインのひきだし』共々、どうぞよろしくお願い致します。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp  twitter: @tsudajunko
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デザインのひきだし・制作日記 < http://dhikidashi.exblog.jp/ >