展覧会案内
── 田代一倫写真展「はまゆりの頃に 2012年 秋」 ──

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会期:2013年1月15日(火)〜2月3日(日)12:00〜20:00 月休
会場:photographers' gallery/KULA PHOTO GALLERY
(東京都新宿区新宿2-16-11-401 TEL.03-5368-2631)
< http://photo.dgcr.com/2013/01/15/
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< http://www.pg-web.net/
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< http://pg-web.net/kula/exhibitions/
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内容:「撮影させていただいた方を全て展示する」という言葉通り、作者はこれまでに約850人の方を撮影し、その一人一人に撮影日と撮影した状況を記したキャプションをつけたものを私家版写真集としてまとめ展示する。また、壁面には2012年9月下旬から12月上旬までに撮影した作品を展示する。



2012年10月11日、私は初めて福島県双葉郡楢葉町を訪れました。約2ヶ月前に警戒区域が解除された町の中で、生活音がいっさい聞こえない路地、洗濯物が干されていないベランダと手入れされていない草花を見て、突然日々の営みから切り離された町を体感しました。

楢葉町でやっと人と出会えたのは、町役場の前でした。私は役場に勤める男性二人に撮影をさせていただきました。その後、お話を聞いている間に、彼らが働く目的である、楢葉町住民の方々は現在どう暮らしているのか気になりました。「避難した大部分の人は隣のいわき市で暮らしていますよ。今でも仮設で生活している方は多いです」という役場の方の言葉をお聞きし、私はいわき市に建てられた仮設住宅を訪れました。

まず撮影させていただいたのは、約250もの世帯の方が生活している上荒川応急仮設住宅の自治会長さんでした。同じ町内といえども、バラバラの集落から集まった方々が暮らす仮設住宅で、誰が言うこともなく、「自然に自治会長になってしまった」そうです。

私は白い巨大おにぎりとキムチをご馳走になりつつ、「詳しい説明もなく、いきなり西へ逃げろという町内放送があった」という避難生活の始まりから、「最近嬉しかったことは、地区の掃除に住民のほとんどが参加してくれたことです」とおっしゃる、現在の暮らしまでゆっくりとお話をお聞きしました。

また、ニュータウンを作るために整備されていた土地の一画に仮設住宅が建てられている、中央台の高久9応急仮設住宅にもお邪魔しました。「仮設のアイドル」といわれる年配の男性は、はじめに避難した体育館で腰の痛みを悪化させ、次の避難先である栃木県のご親戚の家では、杖を持たないと歩けない状態にまでなったそうです。

続けてこの男性は「不思議だなぁ...」と呟き、現在住む仮設で見知った顔をみると、杖なしでも歩けるようになったことをお話して下さいました。新しい出会いもあったそうで、同じ仮設住宅に、面倒を見に来てくれる方がいらっしゃることも照れくさそうに話して下さいました。

2011年3月12日に突然放置された町。また、住んでいた町から避難させられ、新しい土地で日々の営みを続けていらっしゃる方々とお会いし、被災をされている方の状況は、避難された後にも刻々と変化していることを実感しました。(田代一倫)