グラフィック薄氷大魔王[332]「超小型出版」と、紙の本からの脱却?
── 吉井 宏 ──

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Kindle本、安くて手軽なのでどんどん買っちゃって、読むのが追いつかない。iPadのKindleアプリで何冊も同時進行で読んでます。

先週「超小型出版」ってのを読みました。内容は書籍というより雑誌的な方向。従来の出版の枠組み(紙の雑誌を定期的に出すための仕組み)をはずしていいんじゃない? って話。書き手にも読み手にも手軽な最小限電子出版物の理想。僕的にはそれはすでに100円Kindle本で実現されつつあるけどね。

ページ数は少ないです。内容もあんまり具体的じゃなく、筆者の「思い」ばかりが強いかも。でも、従来の出版の枠組みをはずしたらこうなるよ! ってのは、考え方としては知っておくといいかも。これを元に「Kindle自費出版ガイド」などのKindle本解説書に載ってる具体的な方法を参考にすれば、すぐにでもKindle本出せそう。

理想に近いものとして出てくるThe Magazine(英語なので購読しないけど)や、iOSのNewsstandが定期購読や手軽さではいい線行ってるそうだ。日本の雑誌も定期購読できるようになってますね。




無料で全部読めるネット上の読み物でも、手軽に簡単に手に入れられる仕組み自体にユーザーはお金を喜んで払う、ってのは同意だけど、それって要するに帰着点は「ネットの有料サイト/記事」と同じものになっちゃうんじゃないの? とも思った。だったら、「後で読む」的なものをPDFにしてでもオフラインでも便利に読めるようなもののほうが、順序としては先かもね。

おもしろいのは、昔の軽自動車「ホンダN360」を「超小型出版」の象徴として大きく取り上げてること。表紙のビジュアルも。N360好きとしては、なんかくすぐられる。
< http://craigmod.com/journal/subcompact_publishing/ja/
>

アップルストアでイベントがあったらしい。
< http://www.dotbook.jp/magazine-k/2013/01/24/subcompact_publishing_and_ebook/
>

上記記事からリンクされている、筆者のクレイグ・モド氏の考え。
「電子書籍に取り組むということ」
< http://craigmod.com/journal/ebooks/ja/
>

「"iPad時代の書籍"を考える」
< http://craigmod.com/journal/ipad_and_books/ja/
>

●Kindle本、なぜか表紙が飛ばされる

ところでKindle本ってダウンロードして開くと、表紙ではなく「はじめに」とか「目次」あたりのページが開くのは何なんだ? 誰かの読みかけの本を買った気分。気づいた後で何冊か購入したけど、やはり表紙じゃなく「はじめに」とかのページが出る。そういう決まりでもあるのか、きもちわるいです。

読もうとするときにはすでに表紙サムネールで識別できてるわけだから、いきなり中身に行くほうが合理的ってことなのかな。従来の紙の本のメタファーというかシミュレーションをする必要はないと思うけど、表紙ってのはいちおうその本の顔というか象徴。開いたらドーンと表紙があってほしい。

●本を再定義?

逆に、目次は紙と同じ形では必要ないと思う。ナビゲートの仕組みに入れるほうが自然で便利だと思う。

「超小型出版」にも書いてありましたけど、デジタル本では「ページ」自体も不要ですね。一冊丸ごとスクロールでいいじゃん。と思います。タブレット上で指を滑らせてページをめくるのが新鮮なのは最初の1分だけ。もうすでにかなりウザいです。

あるいは、実寸で数メートル相当の正方形か円形に本の内容全部をレイアウトして、縦横無尽にスクロールして見る形式の本っておもしろいと思うけどな。

ページサイズに囚われない自由なレイアウト。もちろん推奨の読み順はあってもいいし。例えば数メートル角の正方形の画像一枚が、そのまま一冊の本に相当とか。展開した巨大画像がどのくらい負荷かかるかは知らんけどねw

●メモの代わりにハイライト

今さら何言ってんの? だけど、Kindle本の「ハイライト」はとても便利! テキストを選択して「ハイライト」を選ぶと、「蛍光ペンアンダーライン状態」になるんです。ハイライトした部分をリストでまとめて見ることもできる。

電子本を読みながらメモする方法をアレコレ試してどれもうまくいかなかったけど、アンダーラインした部分をまとめて読めるなら、メモ不要。書き出すにしても、一回目の通読でアンダーラインしておくほうが便利だし。

i文庫HDでも「しおり」がほぼ同じ機能です。重要部分をページ単位で「しおり」するのは使ってたけど、ハイライトのほうが直接的。他の電子書籍はどうなってるかな?

●Kindle本がアップデート!

初購入したKindle本のレイアウトにがっかりした話を以前書きました。『救いは「電子書籍」だってこと。もしかしたら、まともなレイアウトと写真に変更されたアップデート版が用意されるかもしれない......。』と。

< https://bn.dgcr.com/archives/20121031140100.html
>

やはり、アップデートに期待するのはアリだった! アマゾンからお知らせが来た。「以前お客様にご購入いただいた『バファローベル著バファローベル公式フォトブック ベルがいっぱい』の Kindle商品のアップデートバージョンが来ています。」「誤字が修正されました。読みやすいフォーマットに変更されました。画質が向上しました。」

さっそくダウンロード。う〜〜ん、そんなに変わってないかも。多少は見やすくなってる気もするけど。元のスクリーンショット撮っておけばよかったなあ。

【吉井 宏/イラストレーター】
HP < http://www.yoshii.com
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上京してすぐ住んだのは首都高の上だったし、静かなところに住んだのは数年間だけ。ここ15年ほどは巨大交差点の脇だったのでクルマの騒音がすごかった。新しいところは静かすぎて気持ち悪い。静寂に耐えられず、久しぶりに仕事場に音楽を流したりしてます。音楽の需要が発生!

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