Otakuワールドへようこそ![168]不審人物扱い?! セーラー服着て赤坂へ
── GrowHair ──

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おっさんがセーラー服を着て歩くのに、いちばん場違いなところと言ったらどこだろう? って、まあ、どこでもそうなんだろうけど。例えば、罰ゲームかなんかで、もう想像しただけで身も縮まるくらいのありえない場所を選定するとしたら? パリのシャンゼリゼ通りも歩いたし、テレビにも映ったし、エスカレートするにも手詰まり気味な感じもしていたワタシであるが。

友人から、結婚披露宴の二次会にお呼ばれした。場所は、赤坂にあるホテルニューオータニ内のレストラン「Gun-Ship」。ホテルニューオータニといえば、私の中では超高級ホテルとのイメージが定着している。はたして入れてくれるだろうか。ドレスコードとか、なかっただろうか。この格好が私の盛装なんですなんて屁理屈を携えていって、まかり通るものかどうか。ちょっとわくわくしますわな。




●駅前留学仲間として二次会にお呼ばれ

友人の○黒さんは、かつて「駅前留学」をキャッチコピーとして掲げる英会話学校Novaで切磋琢磨しあう学友として、長いなじみであった。切磋琢磨というか、申し合わせなくても土曜の夜にはたいていいて、9時にNovaが閉店となると、放課後はたいてい飲みに行き、その後はたいていカラオケに行き、しばしば朝まで。考えてみると、NovaでよりもNovaの後で過ごした時間のほうが長かったのではなかろうかという仲間の一人である。

○黒さんには、デジクリのこのコラムで '09年6月12日(金)に登場してもらっている(今、読み返してみたら、別の仮名になってたけど、細かいことはお見逃しいただけると)。「翻訳実務検定 TQE(Translator Qualifying Examination)」を受けるというので、ちょこっとお手伝いしたのであった。この試験は、「プロ翻訳者へのパスポート」と謳われており、合格率わずか6%。生半可なことでは通らない。私のお手伝いがどれほどお役に立ったかはともかく、見事に合格しています。
< https://bn.dgcr.com/archives/20090612140100.html
>

人類滅亡の差し迫った昨年12月15日(土)にNova仲間の同窓会で集まっている。高田馬場のさかえ通りにあるトルコ料理屋で一次会。若干の誤差を無視すれば、ほぼ女子会である。○黒さんの恋バナにきゃっきゃと盛り上がる。そのうち、「あれ? この会って○黒さんがダンナさんをお披露目するための集まりじゃなかったの?」とトボケ出す女子たち。お家でおくつろぎ中のダンナ様を急遽、引っ張り出していただけることになった。

二次会の途中から合流していただける話になって、カラオケへ。高田馬場の、新しくできたほうの「ビッグエコー」。ダメモトで言ってみたら、すんなり聞き入れられて、レディースルームへ。以前から切磋琢磨しあったのが功を奏したのか、みんな歌が上手で、いい感じで盛り上がっているところへダンナ様登場、さらに盛り上がる。

○友氏はアイドルオタクであった。特に「ももクロちゃん」(「ももいろクローバーZ」)に入れ込んでいるのであった。あ、なんか近しいものを感じる。ワタシゃ、フランスまで見に行ったクチだし。ももクロちゃんが紅白に出たとき、○友氏はテレビの画面の前でサイリウム(=光る棒)を振ってたそうで。こっちは登場いきなり涙腺が堰を切りましたわさ。本人たち、よく泣かなかったなーと思ったら、出番の後、みんなで大泣きしてたそうで。

そんな調子で、ダンナ様とも10年来の仲間みたくなったのであった。じゃ、披露宴の二次会には、私はセーラー服で行かせていただきますよ、はいぜひぜひ、ということで話がまとまった。

●食いやがってと言われましても......

ホテルニューオータニが、私にとって敷居が天井くらいの高さにある超高級ホテルとのイメージが定着したのにはわけがある。それは、忘れもしない(忘れてたけど)、'04年6月20日(日)のことである。

日曜であるにもかかわらず、仕事に駆り出された。会社の偉〜いお方であらせられる○谷氏から、悪いけど来てくれないか、と言われていたのである。よその会社の社長さんと営業トークをするのだけれど、技術的な話になったら説明してくれ、と。その社長さんも超ご多忙な方で、土曜にアメリカから帰国してホテルで一泊したら、翌日の便で中国に発つことになっているので、その日しかお会いできるタイミングがなかったのだそうで。

その社長さんが宿泊されている新宿で打合せした後、飛行機の時間までまだ少し余裕があるので、それじゃあ美味いものでも食べに行きましょうという話になった。日曜に出てきたご褒美ということか、「ケバヤシも一緒にいくか?」。「ワンっ」。タクシーで赤坂へ。

私もちゃんとスーツを着ているので、ふさわしくない格好ってわけではないはずなんだけど、なんだか私のようなシモジモの者が入ってくるようなとこではないぞ、という上流階級な空気に圧倒されて、非常に緊張した。ホテル内にある「久兵衛」というお寿司屋さんに入る。

回転しない普通のお寿司屋さんにもめったに入ることのない私であるが、そういうお寿司屋さんからもさらに一線を画する、空気に「高級」の二文字が印刷されているかのような、しゃきーーーんとした店構え。こちらから何かを注文したのではない。「苦手なものはありますか」と聞かれ「特にありません」と答えたのであった。

あとは、ぽんぽこぽんぽこ握って出されるのをぱくぱく食べるだけ。うんうん、美味いねぇ。ぽんと握ってぽんと出すって感じではなく、ひとつひとつに細かい細工が施される。柑橘系の果実の汁を一滴たらしたりとか。繊細な芸術品のようだ。

ずーっと後になって、飲み会の席かなんかで、○谷氏からそのときのエピソードが語られた。「ケバヤシの野郎、一人で3万円も食いやがって」と。えっ? そんな値段してたの? と、このとき初めて知る。あー、食いやがってと言われましても、出されたものはいただかないと......。

振り返って考えてみると、我々がいただいている間、後から入ってきたご婦人がいらっしゃった。ハイソっちゅうのか、セレブっちゅうのか、住んでる世界が違います、って感じの。で、「1万円で適当に握ってくださるかしら?」。こっちは「ほ〜ぅ、これはまた豪勢なことだなぁ」と思って聞いていた。ところが、意外と早く帰って行かれたのである。あ、実は我々のほうが、もっと豪勢にやっていたのですな。

そんなことがあって、あの空間は「価値」という概念が根底から異なる、オソロシイとこなんだ、というイメージが定着したワタシである。そんな異空間にセーラー服を着たおっさんを放り込んだら、いったいどんな反応が起きるのだろう。

●だいじょうぶなんですか?

シャイなワタシではあるが、あのころに比べりゃ少しは人並みに大胆さが備わってきたのかもしれない。セーラー服を着てホテルニューオータニに乗り込んで行くのが楽しみであった。今度こそ、あの空気に飲み込まれまいぞ。

1月26日(土)、17:17中野駅発のJR中央線快速電車に乗り、17:26に四ツ谷駅に到着。そこから歩く。二次会は18:00からなので、ほどよく間に合いそう。上智大学のほうへ向かう。

上智大学から帰る学生さんたちとすれ違う。この道を歩くのは、小学校卒業以来なのではあるまいか。小学校4年の後半から、四谷大塚進学教室に通っていた。平日の夜に中野本校で予習教室の授業を受け、日曜の早朝から上智大学でテストを受け、その後、解説講義を聞き、正午に解放されるというのがルーチンであった。

桐朋中学に合格し、順調に行ってればエリートコースに乗っかれてもおかしくはなかったはずなんだけど。40年後にまさかこんな大人になって、セーラー服を着て再びここに戻ってくるとは思いもしなかったよなぁ。どこでどう間違ってこうなったのだろう。あ、ちょっと目から塩水が......。

上智大学の正門前を通り、大学の敷地が尽きると、すぐ向こうにホテルニューオータニがそびえている。3方向に放射状に伸びる建物の上に円盤が乗っかっている。その向こうにガーデンタワーがあり、その向こうにガーデンコートがあり、その4階が会場だ。赤坂見附駅から行けばすぐなんだけど、こっちから行くと、一番奥だ。

入れてくれるかどうかが最大のポイントなんだけど、お呼ばれして行く以上、簡単に引き下がるわけにもいかないので、門前払いを食いそうになったら、パーティ会場に連絡してもらって、怪しい人じゃないと保証してもらおうか、と考えていた。

入るとすぐ脇に総合案内みたいな囲いがあり、中に人が入っている。「ガーデンコートへは中を通って行けますか?」と聞いてみる。大げさすぎるほどのスマイルを返され「はい、あちらでござます」。よしっ、入口突破だ。入っちまえばこっちのもんだ。

上流階級の人々は礼儀をわきまえているので、人をじろじろ見たり、大声で笑ったりしない。これがあたりまえとばかりに堂々と闊歩してりゃ、何の反応も起きず、空気は少しも揺らがない。もともとが芝居がかった空間だともいえる。

えーっと、宴もお開きになってから参加者の一人から聞いたのだが、実はずーっと、ホテルの人につかず離れず尾行されてたんだそうで。私がパーティの受付を通ってから、受付の人に聞いていたのだそうである。「だいじょうぶなんですか?」と。ぶっ。思いっきり不審人物扱いやんけ。

●どっちが主役なんだか

受付で参加者全員にサイリウムとクラッカーが渡される。新郎新婦入場は、アイドルがライブで登場するシーンに模して、という趣向なのだ。新郎友人としてその方面の人たちが5〜6人参加しているので、その人たちを中心として、アイドルシーンが再現される。ひざをついて、両手を斜め上に差し出してお迎えする。ならばと私も加わる。登場した新郎新婦はぶっと噴いてた。成功。新郎とぺちっとハイファイブ!

司会の河合隆司氏は、テレビや映画の出演歴も豊富な俳優さん。背筋がぴんと伸びて、髪は五分刈り。さわやかな印象だ。何事にも積極的にツッコミを入れまくってようけ笑わせてくれる。「とても電車に乗って来れないようないでたちでありがとうございました」と、さっそくこっちに矛先が。「乗って来ましたけど」。

新郎新婦によるウェディングケーキ入刀。後に、切り分けたのをみんなでいただくのだが、まずは新郎新婦がお互いに食べさせるという儀式。新婦から新郎への「あ〜ん」の発声は、新郎の務め先仲間方面からのリクエストにより、私から。裏声を使い、高音から入って下がってまた上がるスウィートな「あぁ〜〜〜ん」。わぁい、ウケたウケた。

新郎新婦それぞれのお知り合いから2名ずつによるスピーチ。私はもともと頼まれてなかったのだけど。スピーチの最中に、こっそり司会者に「私も3分間だけ時間をくれませんか?」。飛び入りをたくらむ。なにしろ「あいつはいったいどっちのどういう知り合いだよ?!」とみんな疑問に思ってるに違いない。説明しておかねばなるまい。

指名してもらえた。「頼まれてないのにしゃしゃり出てまいりました」とごあいさつ。Nova時代のことや、年末のカラオケのことなどを語る。新郎がアイドルに入れ込んでるって話はすでにずいぶん出たけど、新婦も実はカラオケに行くとピンクレディーを振りつきで歌ったりしてノリノリなんですよー、と暴露。大いに盛り上がる。後の人、やりづらくてごめん。

続いて登場したのは、プロのミュージシャン。かつてKUSU KUSUのボーカルだった川上次郎氏。新郎新婦と向き合って椅子を置き、ギターを抱えて弾き語り。2曲演じていただけた。ところどころ歌詞が差し替わっていて、新郎新婦の名前が入ったり、時事ネタで笑わせてくれたり。落ち着いてごく自然に歌いこなしちゃう、堂々たる歌いっぷり。

宴がお開きになると、新郎新婦が出口に立ち、帰り際の出席者たち一人一人にあいさつする。出口付近が混み合っている間、残って待つ人々で、私の撮影会状態に。まるでアイドルかマスコットのような人気ぶり。

なので、私が出るのはほぼラスト。新郎「完全に持って行かれた」。あー、主役を完全に食っちゃいましたかね。思い出に残るというよりは、記憶にこびりついて離れない宴になったのではあるまいか。

●スイートルームで三次会

新郎新婦が宿泊するのは、ガーデンタワー34階のスイートルーム。ごく近しい仲間たちが10人ばかり呼ばれて、そこで三次会。

おお、夜景がきれい。新宿の高層ビル群と張り合う高さで、間には低いビルばっかな感じ。ルームサービスのメニューが、まるでゲームのような非現実感で笑える。お茶漬けが2,100円とか。

新郎新婦は朝から挙式と披露宴と二次会とで長い一日だったに違いない。けど、新郎は少しも疲れた様子はなく、率先して立ち働いてくれる。アイドルの応援で耐久力が鍛えられているのだろうか。新婦はお色直しして普段着で登場。くつろいでいた。

むしろこっちがべろんべろんであんまりよく覚えていない。二次会でも際限なく飲みまくってたっけ。お開きになった後でも、残った酒を自分でついで飲んでたもんなぁ。三次会でもけっこう飲んだかな。地方から来て同じホテルに宿泊するという女性3人を残して、私は最後においとまする。

また尾行されてたのかどうかは分からないが、すんなり出られた。23:38赤坂見附駅発、東京メトロ丸の内線中野富士見町行に乗る。地下鉄の中で思い出し笑いして、一人ニヤけてたかもしれない。

【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。

女子高生のトモエ(仮名)が痴漢をとっ捕まえて警察に突き出した話を前回1月18日(金)のこの欄に書いた。どこの「学校」の女子高生かはあえて伏せていおいたんだけれども。

1月27日(日)、秋葉原や池袋や新宿などの「JKリフレ」店17店舗がガサ入れを受け、15〜17歳の少女76人が保護されたという。そう言えば、去年の7月6日(金)配信号で書いてるんだけど、6月17日(日)の夕刻、セーラー服を着て新宿歌舞伎町一番街通りを歩いていて、セーラー服を着た女の子が客を引いているのに出くわしていた。
< https://bn.dgcr.com/archives/20120706140100.html
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「やーいニセ女子高生」とからかうと、本物だという。現役ばかりによる「女子高生の喫茶店」なんだそうで。入ってみたら、どっからどう見たって怪しいサービスなんかありようもない健全店であった。その後も、この欄に書くネタでも仕入れられないかという下心で、たま〜に行くことがあったワタシである。うっかり平日の仕事帰りに普通の格好で行ったりすると、すごいびっくりされて大笑いされたりとか。

実は、前述のトモエの話も、そこで仕入れたわけで。ガサ入れのニュースを知って、お店のウェブサイトへ行ってみると、つながらないではないか。えっ? その店までやられたの? まさか今度はトモエ本人がケーサツのご厄介ではあるまいな。

1月28日(日)に行ってみると、ちゃんと営業していた。「ガサ入れにあったのかと思った」と言うと、店長「あれはリフレ店だけで、ウチは喫茶店だから」。そうだよねぇ、悪いことしてるわけじゃないんだから。

ウェブサイトにつながらなかったのは、ホスティングサービスがたまたまダウンしていたからのようで。しかしトモエは試験期間中で店には出てきてないそうで。じゃいいや、と入らず、店の前で店長と立ち話しただけで帰ってきた。