私の[視考]した[京都のありさまへの私自身の解釈]───写真展「京都 洛苑考─花(さくら)のころ」
── 笠井 享 ──

投稿:  著者:


こんにちわ、デジクリ読者のみなさん。笠井享(あきら)です。私は、ビジネスとしては画像処理技法やカラーマネージメントのコンサルタント、技術的・科学的な要求要素のある写真撮影や色彩測定などを行う会社を経営しています。

また、1995年ごろから2000年代初頭には、Photoshopやデジタル写真、カラーマネージメントの解説書を執筆したり、関連雑誌のライターでもありました。

もともとは、大学は芸術学部写真学科、大学院でも写真史研究など、典型的な文系の人間であり、今も昔も片時もカメラを離すことなく、いつでもどこでも何かしらん写真を撮ってきたカメラ小僧でもあります。

そんな私が、30数年ぶりに(学生時代にはよくやっていたのです)、写真の個展を開催することになり、本メールマガジンを通じて、ピーアールさせていただくことになりました。以下に、写真展のコンセプトなどを少し紹介いたしたく思います。全国4カ所で巡回いたしますので、ぜひともお立ち寄りいただきご高覧・ご批評のほどお願いします。





京都に住み始めて25年になります。初めの10年ほどは、この地の写真的光景があまりにも完成度が高くて、「ベタな光景だなぁ〜」と、とまどうばかりでした。それは、その光景が寺社なら古来から造園師たちが、公園や河川敷では古都の景観維持のために、そして街並みもまたそれなりに「京都らしいたたずまい」としてデザイン設計され、完成されているからだと思うのです。

ある光景に出くわしてレンズを向けファインダーを覗いても、高名な画家の描いた絵を複写しているかのようなもので、撮影以前に完成度の高い作品がそこにあるように感じてしまい、写真としての創作意欲が萎えてしまうという、今ひとつ燃え上がらないことがたびたびでした。

しかし、それでもここ5〜6年ほどは京都という「予定調和的光景」を見ながらも、こういう視方・こういう解釈で別仕立ての作品にもできるぞと「視考」することができるようになってきました。

すると、今まで見向きもしなかった、いや敢えて避けてきた「景勝・観光都市」としての京都の光景を探して散策するのが楽しくなり、特に「さくらのころ」「もみじのころ」「まつり」など、確立されたイメージとしての京都らしさがあふれているほど、がぜんファイトが湧き撮影行動の密度が高まってきたのです。今回の「京都 洛苑考」は、私の「視考」した「京都のありさまへの私自身の解釈」と考えています。

そして、2006年以降2012年までの6年間の、デジタルカメラによる京都市(一部、京都市近郊)で撮影し、ラフに選出した700カットの作品群から、春の、とりわけ「花(=桜)のころ」だけに集約厳選した30カットについて、京都という楽園、つまり「洛苑」への私なりの解釈を、「花(さくら)のころ」なるサブタイトルを設けて個展にすることにしました。

ちなみに、私の写真創作への原動力は、私の視覚の記憶棚にあるいろんなシーンへのすでに確立されたというか、すでに既成となっているような「イメージ」とは異なる解釈をして、「新説」や「亜説」を写真的に展開することにあります。なので、特段のテーマを定めて、何かを取材し続けるというわけではありません。

出かけるときはいつもカメラを携えていて、肉眼で視るのとカメラで撮るのにあまり差を感じないような気軽な撮影方法でもあり、特別な手段を取り入れることはほとんどありません。

私に見えている眼前の光景が、私にとって新発見であれば、それがスナップ写真風であっても、あるいは、風景、ポートレートであってもぜんぜん構いません。何でもありなのです。

一方、私にとって「再生」は、紙へのプリントが大前提で、プリントとしての完成度を高め、こだわり抜いたファインプリントを作り続けて来たと自負しています。

撮影後の画像処理過程では、原画の光と影による演出を尊重しつつも、階調再現や色再現に対しては、私自身の解釈で納得のゆくまで画像処理を繰り返すスタイルです。場合によっては、初期に出力したプリントを手元に置いて、半年くらいの時間をかけて細部の補正を繰り返して完成へと導くということもあります。

と言っても、デジタル特有の処理である絵像の一部を消す、移動する、その他のフィルタ処理などの「光学的結像情報の改変」はしないように自らに制限を与えています。あくまでストレートショットをそのままで、プリントとしては美しいキメの細かいオブジェを作り上げています。

今回の写真展の作品はは、撮影場所は主として京都市。景勝地やその近辺をモチーフとしています。カメラは、ライカMデジタルとキヤノンEOSデジタルシリーズを使いました。先にも述べましたが、スナップショットや風景写真など、過去に撮りためてきた作品群から「桜の咲く時期」のものだけを30点の写真展です。

プリントは、ファインアート用コットン用紙ハーネミューレ社の「PhotoRag 188」を使い、半切〜大全紙程度の大きさにプリントした作品を展示予定です。どうぞ、「洛苑京都」の花のころの美しい光景と、プリントとしての美をご高覧・ご批評ください。


◎インクジェットファインアートプリント
笠井享写真展「京都 洛苑考──花(さくら)のころ」
< https://bn.dgcr.com/archives/2013/02/07/images/A_Kyoto_RakuenKou_Kasai >

3月 7日(木)〜3月13日(水)キヤノンギャラリー銀座
3月21日(木)〜3月27日(水)キヤノンギャラリー梅田
4月18日(木)〜4月30日(火)キヤノンギャラリー福岡
5月14日(火)〜5月19日(日)ギャリエ・ヤマシタ2号館(京都市中京区)

【かさいあきら】< bonjour_ia@infoarts.jp >

1990年代にデジタル画像処理の各種解説書などを執筆し、94年に設立した自社インフォーツ株式会社にて、デジタル写真関連メーカーの製品開発支援/大手印刷需用社内のコンピュータ化/フォトアルバムサービスシステムの開発などのコンサルタント事業を展開して来た。現在では、一般撮影も積極的にこなしているが、中でも自作品をていねいにインクジェットプリンターを活用してファインアートプリントに仕上げる創作活動にウエイトを置いている。