[3428] ITエンジニアが介護に直面するとき

投稿:  著者:


《現実からの脱出ゲーム、乞うご期待!》

■まにまにころころ[25]
 幻想を懐かしむ
 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito

■クリエイター手抜きプロジェクト[344]Illustrator CS5+Mac OS X編
 Spotlight検索できるようにする
 古籏一浩

■データ・デザインの地平[27]
 ITエンジニアが介護に直面するとき
 薬師寺 聖




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■まにまにころころ[25]
幻想を懐かしむ

川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito
< https://bn.dgcr.com/archives/20130225140300.html
>
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月曜の朝、寒さに震える川合です、こんにちわん。まだまだやっぱ冬ですねぇ......どうにも寒くて、寒いねーって話を誰かと分かち合いたくて、思わずSiriに、「寒い」って、ひと言つぶやいたら「気温は0度ほどです。私にとっては寒く感じられます」って返ってきました。そうか、Siriも寒いのか。

◎──のすたるじー?

北国の人には怒られそうですが、これだけ寒いともう外に出るのが嫌。寒くて出られないというか、「寒そうで」出られない。心が折れます。(笑)実際、目一杯あれこれ着込んで出れば、0度くらいなら、顔以外は平気で。しかも仕事の大半は室内なんで、外気に晒されるのは移動のわずかな間だけですしね。

そんなことを思ってたらふと、好き放題に着込むわけにはいかなかった中高生時代、どうやって冬を乗り切ってたのかと不思議に思いました。若さで寒さに打ち勝ってたのかな......まとめ買いした使い捨てカイロを100円で友達に売って、ちょくちょく差額を稼いでた覚えはあるんですが。(笑)

私は友人関係に結構無頓着なほうで、同窓会にいったりやったりもしないし、学生時代のことなんて忘れる一方です。思い出す機会が、なかなかないので。でもその反面、「学生時代」への変なノスタルジーは強くあって、学園ものの小説や漫画を見ると、何とも言えない気持ちに襲われます。

そう「変な」で、「何とも言えない」なんです。ノスタルジーって基本的には過ぎた過去を懐かしむ気持ち、ですよね。でも、ろくに覚えてないくらいに、これといってイベント事もなくするりと通過した学生時代を懐古するわけでもなくて。自分の中で作られた「学生時代」という幻想への憧れ、というほうが近いような気がします。記憶1割、幻想9割くらい。や、10割幻想かも。

体験していない幻想を懐かしむ。

学生時代っていいよねぇ......と、存在しない過去に想いをはせつつ、実体験は無視して、学生を羨ましがったりしてます。(笑)

◎──まにカレ

ちょうど一年前くらい、「まにまにフェスティバル」の告知でたっぷりと書かせていただいた時に触れたかも知れませんが、そんな学生時代への想いから、セミナーイベントを学校に見立てて名付けたのが、「まにまにカレッジ」です。

学生気分を味わいたい、というのと、「学校」って何かとよくできたシステムだったなーという思いと、そんなこんなで。「まにまにフェスティバル2012」は、「学園祭」のイメージでした。ほんとは屋台で食べ物出したり、演奏やら演劇もしたかった。(笑)

そんな「まにカレ」では、これからも何か「学校」と絡めたネタを織り込んでやっていきたいと思ってるんですが、とりあえず思いついたものを、いくつかご紹介してみます。

◎──体育祭

これは前にも書いたような。体動かすイベントをしたい。私たちの業界、運動不足の人多いですし、たぶん。もう運動不足の域を超えてる人も多そうなので、怪我に注意しつつ、何かしたいです。体育祭というか、球技大会的なのでも。

◎──社会見学

これは早めにしたいです。例えば工場見学でも。大人の目で観察すればきっと、仕事に活きてくるヒントを得られることがあると思うんですよね。時々まわりで、サントリーの工場に見学行ったって聞きますが、ウィスキーも、ビールも、縁がないので違うところへ。

◎──遠足

これも社会見学と同じ感じ。野山でリフレッシュも良し、寺社仏閣にデザインを感じるも良し、と。そういえば、遠足ってどんなとこ行ったっけ。(忘)

◎──健康診断・体力測定

これ、やりたいんですよねー。見立てでも何でもなく、そのまんまですけど。みんなもっと、体のこと考えよう!(みんな、というか、自分)

これはまるっきり思いつきで書いてるわけじゃなくて、実際にスポーツメーカーさんに、体力測定イベントなどの相談に行ったりしました。今のところそこで止まってますけど......

◎──修学旅行

これは、開発合宿みたいなのになりそうな。なかなかでも皆の都合を合わせて行くのは大変そう。広く募ってというよりは、うちうちでの企画になりそう。とか書きつつ、私すっごい出不精なんで、遠足程度ならともかく、旅行なんて自分では企画しないと思います。(爆)

◎──ひとまず、こんなところ

他に学校行事って何かあったかなーとググってみたんですが、だいたいこんなところでした。こういった行事に限らず、期末試験とか給食とか、休み時間のドッジボールとかキックベースとか鬼ごっことか、何でもいいから、あれこれやりたい。ぜーんぶひっくるめて、その根底にあるのは「現実逃避」かもしれないですけどね。現実からの脱出ゲーム、乞うご期待!

「こんなことやりたい!」というリクエストも大募集。無茶な案でもどんどんください。やるかやらないかは別として。(笑)

あ、何をするにしてもきっと関西でやります、他地域の皆さんすみません......

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
< https://www.facebook.com/korowan
>
< https://www.facebook.com/caputllc
>

◎──最後にまたイベントのお知らせ

■第32回WebSig会議

東京で開催される「第32回WebSig会議」を、大阪でも中継開催!

・第32回WebSig会議
< http://websig247.jp/meeting/32/000257.html
>
・第32回WebSig会議 パブリックビューイング大阪
< http://kokucheese.com/event/index/75634/
>

日時:2013年3月9日(土)13:00〜17:30

テーマ:「便利さと、怖さと、心強さと 〜戦う会社のための社内セキュリティ 2013年のスタンダードとは?!」

内容:モバイル、クラウド、SaaSの普及により、個人として、社員として、効率よく働く環境がどんどん成長しているのは、みなさんも強く実感されていると思います。

しかし、昨年、巻き起こったノマドブームに対する議論では、実現可能なフレキシビリティに対して、情報漏洩のリスクや、機密保持の問題など、守りの体制が状況の変化に対して追いついていないという問題があり、前に進みたい企業にとって、攻守のバランスをどう取ればいいか?! ということについて、懸案のままになっている会社さんも多いのではないでしょうか?!

今回の2013年一回目の第32回WebSig会議「便利さと、怖さと、心強さと〜戦う会社のための社内セキュリティ 2013年のスタンダードとは?!」では、状況の変化にポジティブに適応している、エンタープライズ、Webの受託、ベンチャー、個人、スタートアップ向け、幅広い視点からゲストにお話いただき、2013年時点の戦う企業にとっての社内セキュリティについて共に考える会議を行います。

参加方法・詳細はそれぞれの告知ページ(上記URL先)をご覧ください。

■第10回リクリセミナー「Webデザイントレンド 大阪版」
< http://recreators.doorkeeper.jp/events/2476
>

日時:3月2日(土)14:00〜17:30(13:30開場)

昨年末開催された「CSS Nite LP, Disk 25:Webデザイン行く年来る年(Shift6)」でのセッション「Webデザイントレンド年末スペシャル!!」の120分の拡大版となります。

出演は、オリジナルメンバーの原一浩さん、矢野りんさん、坂本邦夫さん。そして、大阪版ならではの地元枠として、深沢幸治郎さんもご出演。Webサイトのデザインに関わる人はもちろん、ディレクションに関わる方やWeb担当者の方にも、幅広くお楽しみいただけるオススメのセミナーです。

参加方法・詳細はそれぞれの告知ページ(上記URL先)をご覧ください。


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■クリエイター手抜きプロジェクト[344]Illustrator CS5+Mac OS X編
Spotlight検索できるようにする

古籏一浩
< https://bn.dgcr.com/archives/20130225140200.html
>
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しばらく自動海外、じゃなくて自動化以外のネタが多かったので、いったん自動化ネタに戻るということで。

Mac OS Xでは、Spotlightのおかげで文章中に存在する語句を簡単に検索することができます。語句に限らず文でも検索できます。単なるテキストだけでなく、PDF内にある文字も検索されるので便利です。

しかし、Illustratorで作成したAIファイルと、EPSファイルに関しては検索されません。Illustratorで作成したデータが、常にPDFで保存するわけではないのでAI、EPSファイル内にある文字を探すのは手間がかかります。

AI、EPSファイルを検索にひっかかるようにするには、一度開いてPDFで保存します。これだけでSpotlightですぐに検索されるようになります。

以下のスクリプトは、選択したフォルダ内にあるAIファイルとEPSファイルを開いて、同じ階層にPDFとして保存します。ディスク容量が少ない場合には、PDFの分だけディスク容量を消費するので、あまりよい方法ではありません。


(function(){
var aiList = getAllFiles(["*.ai", "*.eps"]);
for(var i=0; i<aiList.length; i++){
//$.writeln(aiList[i].fullName);
app.open(aiList[i]);
var opt = new PDFSaveOptions();
opt.trimMarks = false; // トリムマークなし
opt.compatibility = PDFCompatibility.ACROBAT8; // Acrobat 8
opt.generateThumbnails = false; // サムネールなし
var saveFile = new File(aiList[i].fullName+".pdf");
activeDocument.saveAs(saveFile, opt);
app.activeDocument.close(SaveOptions.DONOTSAVECHANGES);
}
})();
// File Library
function getAllFiles(fileTypes, basePath,options){
options = options || {};
if(!basePath){
basePath = Folder.selectDialog("フォルダを選択してください");
if (!basePath){ return; } // キャンセルされた場合は処理しない
}
var allList = [];
// パラメータが文字の場合
if (typeof(fileTypes) == "string"){
getFileList(new Folder(basePath), fileTypes);
return toJapanese(allList, options.japanese);
}
// パラメータが配列の場合
if (fileTypes.push){
for(var i=0; i<fileTypes.length; i++){
getFileList(new Folder(basePath), fileTypes[i]);
}
return toJapanese(allList, options.japanese);
}
function getFileList(currentFolder, fileType){
var fileList = currentFolder.getFiles(fileType);
var fileList2 = currentFolder.getFiles("*"); // Sub Folder
allList = allList.concat(fileList);
for(var i=0; i<fileList2.length; i++){
if (fileList2[i].getFiles){
if (fileList2[i].name.charAt(0) == "."){ continue; }
getFileList(fileList2[i], fileType); // フォルダがある限り繰り返し
}
}
}
// 日本語に変換(nameJ, fullNameJ)
function toJapanese(fileList, flag){
if (!flag){ return fileList; }
for(var i=0; i<fileList.length; i++){
fileList[i].nameJ = File.decode(fileList[i].name);
fileList[i].fullNameJ = File.decode(fileList[i].fullName);
}
return fileList;
}
}

ちなみに、Photoshopでは入力したテキストはSpotlight検索できるようになるので、上記のようなスクリプトは不要です。。

【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/
>

先週の川合和史さんのアニソンネタ。13曲の10倍くらいなら勝負しても勝てそうな気がするなあ。

映像のRAWファイルをいじってみた。一眼レフのカメラだと普通にRAWファイル保存できるけど、映像でRAWだとそれができるカメラは限定されます。で、とりあえず映像のRAWファイルを扱えるアプリの使い方のページ作成。それから、Adobe Premiere CS6のページも項目を追加しておきました。

・REDCINE-X PRO 使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/RED/REDCINE-X/17.2/
>

・Adobe Premiere CS6自動化作戦
< http://www.openspc2.org/book/PremiereCS6/
>

・Adobe Premiere Pro CS6使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/PremiereCS6/
>

・Kindle Fire HD使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Kindle/Fire_HD/
>

・Nexus 7(アンドロイドタブレット)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Android/Nexus7/
>

・iPad mini(アイパッドミニ)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/iPad/mini/2012/
>

・JavaScript逆引きハンドブック
< http://www.amazon.co.jp/dp/4863541082
>

・改訂5版JavaScriptポケットリファレンス
< http://www.amazon.co.jp/dp/4774148199
>

・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/
>

・クリエイター手抜きプロジェクト
< http://www.openspc2.org/projectX/
>

・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
< http://www.openspc2.org/book/PDF/Adobe_Illustrator_CS3_JavaScript_Book/
>
吉田印刷所の「印刷の泉」でも購入できるようになりました。


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■データ・デザインの地平[27]
ITエンジニアが介護に直面するとき

薬師寺 聖
< https://bn.dgcr.com/archives/20130225140100.html
>
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今回は、筆者が突発性難聴の再発のためにPCに集中して向かうことができないので、抽象的な話ではなく、生活上の具体的な問題について取り上げます。

●誰にでも可能性のある介護離職

昨今、介護離職が問題になりつつあります。親と同居しているシングルがそのまま介護を担って離職するケースもあれば、仕事に生きがいを見出している人が親の介護認定をきっかけに帰省するケースもあるでしょう。少子高齢化により、いまや介護は、多くの人が直面する問題です。

健康と病気、生と死はグラデーションのように連続しています。健康か要介護か、生きているか亡くなっているか、といった二つの状態を、きっちり線引きできるものではありません。

突発的な病気や事故で寝たきりになるのでない限り、持病から要看護状態になり、要支援、要介護のように遷移していきます。

いまは若くて健康な人も、年を重ねれば、遅かれ早かれ、要看護状態から要介護状態になります。人によってその期間や支援の程度が異なるだけです。

●共倒れを防ぐポイントは、睡眠、収入、生きがい

介護を担うようになったとき、要介護者の症状の程度や期間によっては、介護休暇を利用できるでしょう。が、昨今では、病気や怪我を抱えていても、入院ではなく、在宅療養となることがままあります。要介護認定にいたらない、要看護や要支援の段階から、多くの時間を支援のために使う必要があります。そして、その状態は何年続くか分かりません。

少々の介護休暇や在宅勤務制度では、焼け石に水です。離職してフリーエンジニアとして働きながら介護をする人も、ますます増えていくでしょう。

どのような選択をするにしても、重要なのは、自分の人生と親孝行のバランスです。いずれか一方に偏ってしまっては、共倒れになりかねません。常にバランスを考えながら、次の三つの問題をクリアする必要があります。

(1)睡眠時間の確保

最大の問題は「睡眠時間の確保」です。

介護を始めると、想像以上に忙しくなります。まず、介護認定が要支援以上になると、いろいろな事務手続きが生じます。

年に数回、介護認定の再確認や、ケアプランの検討、ホームヘルプサービス会社との契約などの事務手続きが行われます。保証人の理解と署名と捺印が必要なので、仕事を中断して対応する必要があります。

介護作業をラクにするために電化製品を導入して要介護者に操作を教えたり、官公庁からの文書を読んで説明したりといった、生活上のこまごました支援も必要になります。

遠距離介護では、要介護者からの度重なる電話への対応も必要です。高齢者は、淋しさと不安から、心配ごとや体調不良を並べる電話を、しばしばかけてくるものです。

急な病状悪化、突然の入院も考えられます。微小脳梗塞、白内障手術、転倒骨折などによる入院準備と付き添いは、まず間違いなく必要になります。高齢者は、複数の病院に通っていることがあるので、入院した場合は、別の病院でもらっている常備薬の受け取りなども必要になります。

その上に、療養食の調理や配膳、排せつや入浴の介助、見守りといった実作業が、介護の程度によって必要になります。

家事、育児、育夫(!?)を担っている人の場合、その上に介護が追加されるのですから、一日24時間では足りません。睡眠時間を削りがちになって当然です。が、それはやってはいけないことです。削るなら、健康な家族に協力を訴え、家事の手間を減らして、睡眠時間を確保すべきです(なかなかむずかしいことですが)。

睡眠が不足すると、免疫力が低下して病気になりやすくなりますし、事故のリスクも高まります。ショート・スリープが頻繁になると、外出時や入浴時に一瞬眠ることが増えてしまい、非常に危険です(そのような状態で車の運転をしてはいけません)。

また、質の良い睡眠がとれていなければ、思考がまとまらなくなり、悲観的になりやすいものです。歌手の清水由貴子さんの自殺は記憶に新しいところですが、彼女を追い詰めたものは、睡眠の質ではなかったのかと筆者は推測します。

しばしば介護者による虐待事件をmsnニュースで知りますが、最初に虐待されているのは、要介護者ではなく介護者のほうではないでしょうか。あまりにも早く少子高齢化が進んだために構築が追い付いていない介護システムが、介護者に対して、睡眠妨害という虐待をしているのではないでしょうか。

介護を通しての成長や、親子の絆の再確認といった美談は、あてはまる家庭もあれば、あてはまらない家庭もあります。それは、すべてのケースにおいて在宅介護を正当化するための口実のように思われます。

虐待を断ち切るには、一対一の介護ではなく、我が国の技術の粋を結集して、複数の要介護者を一台で世話するロボットを開発し、そのロボットを一人の職員が制御する方法しかありません。

とくに夜間の作業は完全自動化して、介護者の睡眠を確保する必要があります(そうしなければ、この国の人間は、介護者か要介護者のいずれかに分類されるようになり、介護者が睡眠不足に倒れた暁には、労働人口が激減してしまいかねません)。

介護ロボットはヒトの動きを真似るタイプでなくてもよいのです。排せつ介助にしても、介護者をお手洗いに運ぶのではなく、お手洗いの方が療養ベッドに近づいてきて、処理後、自走式でお手洗いに戻って処理するというものでもよいのです。新しい視点のロボットが必要です。

(2)定収入の確保

介護が長期におよぶということは、それだけ家族が長生きしてくれるということですから、うれしいことでしょう。が、勤務先にとっては、介護の長期化は望ましいことではないでしょう。企業側に利用しやすい制度がなければ、離職せざるをえなくなります。

離職後、当座の生活費は、介護者の退職金と、要介護者の年金と、貯金の切り崩しで賄うことができるかもしれません。しかし、資産家でない限り、それだけでは心もとないと思います。介護に専念して、いっさいの仕事をやめることを、筆者はお勧めしません。

要介護状態では、支出が増えます。介護用品や医療用品が必要になります。バリアフリーへの住宅改築費用も必要になるかもしれません。また、介護度が進んでホーム入居を検討する場合、年金だけでは不足する場合がままあります。安価なホームは順番待ちですが、費用のかかるホームにはしばしば空きがあるのです。

離職に際しては、自分と親の資産や、毎月の生活費を細かく調べ、Excelで試算して将来設計を行い、離陸(新しい仕事で収入を得られるようになること)の時期を決めておくべきです。

試算時には、交通費、介護用品(車いす、療養ベッド、杖など)、ヘルパー代なども調べて検討材料とします。各市町村で補助される用具や、おむつなどのように控除対象になる介護用品や医療品もありますから、市町村やメーカーのWebサイトを調べて、できるだけ出費を抑えるように工夫しましょう。

現在の日本では、賃貸物件を借りるなど多くの局面で、まとまった額の貯金があるよりも、少なくても定収入のある方が世の中を渡っていきやすいと思います。また、仕事が好きで、それがストレス解消になる人は、細々とでも仕事を続けられる方法を、ケアマネージャーに相談して検討すべきです。

(3)生きがいの持続

ストレスを軽減するには、なにかひとつ生きがいになるものを持っておくことが大切です。それはライフワークと呼べるような大それたものでなくても、たとえば、フィギュア収集のような趣味であってもよいのです。

なにしろ、介護にもっとも適していないのは、ITエンジニアでしょうから、生きがいになるものがなければ、潰れてしまいます。

というのも、日進月歩の世界で働くエンジニアの時間の流れと、年金生活の高齢者の時間の流れには、大きな差があるからです。

介護以前に、高齢者の時間の流れに合わせる生活そのものがストレスになることでしょう。通院の付き添いでも、1時間以上待つことは、ままあります(筆者は付き添い時に、IS12Tを持参して触っていますが、これからは Microsoft Surfaceにしようと思います)

また、電化製品を導入して介護負担を軽減しようにも、操作を教える相手は後輩のエンジニアではありません。見守り用のカメラを設置することについて、相手が理解できるように説明することは難しいでしょう。

独居でガスコンロの使用が危険になってきたからといって、簡単にIHクッキングヒーターに切り替えることもできないでしょう。高齢になると、もの忘れも増えて、論理的な話は通じにくくなります。そもそも高齢女性には、メカニックなものが苦手な人が多いように見受けられます。

そしてなにより、「良心との戦い」に押しつぶされそうになるでしょう。

いかに介護と仕事を両立して頑張っていようと、第三者から「仕事はほどほどにして親御さんを大切にしたら?」とか「毎日子供が訪問しなかったために、親が倒れていることに誰も気付かなかった」といった話を聞かされることが増えます。

真面目に取り組んでいる人ほど、この程度のことしかしていない自分は冷たい人間なのだろうか、と、自分を責めがちになります。そして、頑張りすぎると、共倒れになります。自分の人生を後回しにすることは避けましょう。

●親が要介護になる前に

親が要介護状態になる前に、身内でしっかり将来設計について話し合い、対策を講じておかなければ、看護や介護が必要になってから検討を開始したのでは手遅れです。

もし、遠距離介護になる可能性があるなら、近所づきあいは必要です。水道のパッキンの交換、電球交換、室内の備品の移動、重い買い物、外注依頼するほどではない面積の除草作業、布団干しやシーツ交換など、健康な人なら普段意識することのない作業が、要介護者には困難です。

配食サービスや買い物サービス、スーパーの配達サービスを利用するとしても、それらはドアの前までのサービスです。

入浴や食事の介助などの定期的なサービスは居宅介護事業者に依頼できますが、突発的な小さな作業は、システムの隙間にあります。

要介護者の近所の人々が、こまごました軽作業を気軽に手伝ってくれる状況になければ、遠距離介護は厳しいと思われます。

介護者に兄弟がいる場合は、親が健康なときから、話し合って金額を決めて、毎月介護のための積み立てをしておくとよいでしょう。その方が、いざというとき、費用分担に悩むことがありません。

いずれか一方が、介護費用を考慮することなく人生設計を立て、大きな金額の買い物をしてしまうと、ローンを抱えて介護費用を捻出できなくなってしまいます。そうなると、もう一方に負担がかかりすぎます。

さらに、介護にいたる前に、看護のための準備もしておくほうがよいでしょう。

ひとつは、入院準備です。入院準備品の多くは災害対策非常用品と重複します。そこで、非常用品リュックと入院用品用バッグの2つを準備しておきます。

入院用品用バッグは、病人でも扱いやすく、ベッド横カウンターに収納できる、軽量で形状の変えられる素材のバッグが良いでしょう。家庭で洗濯できる、キャンバス地やデニム地のものがお勧めです。

非常用品リュックの中のものを選択して、入院用品バッグに移し、何点か追加すれば入院道具になるようにしておくと便利です。何を選択し、何を追加するかというリストを作成して2枚印刷し、両方のバッグに入れておくと万全です。

もうひとつは、預金通帳や証書などの貴重品の扱いです。本人が思考可能な間に、話し合って合意を得ておきましょう。遠距離介護の場合は、入院中の貴重品の置き場所も決めておく必要があります。介護者が預かるのでなければ、銀行の貸金庫などを検討してもよいかもしれません。

居住地域の介護事業所の情報もあらかじめ収集しておくとよいでしょう。市町村のWebサイトと、介護情報のポータルサイトをチェックして、介護認定の申請方法や、公的機関の利用可能なサービス、介護事業者のサービス内容を調べておきます。

警備保障会社などの緊急通報サービスも検討しましょう。何かあったときに駆けつけてくれるので、遠距離介護や、外出や出張の際にも安心です。

もし、介護に際して転居するなら、医療機関が近く、通院時の交通の便を確保できる場所に住むと、日常の負担を軽減できます。

●泣く泣く離職より、積極的離職

では、看護や介護により離職する場合、ITエンジニアはどのようにして自分の口を糊していけばよいでしょうか。

筆者の経験をもとに、難しい順番にリストアップすると、次のようになります(動画サイトに技術情報を投稿して広告収入を得る方法は、まだ試していないので含まれていません)。

ケースバイケースではありますが、(6)〜(10)は、比較的負担も少なく実行できると思います。

(1)技術セミナー講師
(2)短期受託開発案件
(3)技術雑誌の連載(週1、月1など)
(4)新技術を紹介する書籍
(5)オンライン記事連載
(6)普遍的技術についての書籍
(7)長期受託開発案件
(8)出来高業務(データ入力、編集)
(9)電子本の独自出版
(10)アプリの独自開発と公開

(1)のように、時間や場所の変更ができず代理のいない仕事や、(2)のようにクライアントからいつ連絡があるかも分からず、常に臨戦態勢を強いられる作業は、できなくはありませんが、精神的には厳しいものがあります。

(3)のように締切に追われる作業は、長年継続することは難しいものです。突発的な入院付き添いなどで穴をあけないためには、常に前倒しに作業を進めておかなければなりません。筆者はずっと、締め切りの2〜3日前には原稿を完成させる方法で、連載を落としたことは一度もありませんが、さすがに10年以上続けると疲れてしまい、現在息切れ休養中です。

書籍は、雑誌連載と異なり執筆期間に余裕があるので、連載よりは容易です。が、(4)の新技術に特化した書籍では、校正中に開発環境や動作環境のバージョンアップがあって全体を見直すなどの事態がしばしば起こります。そのような時に、介護作業が重なることがあります。(5)も同様です。

筆者は徹夜も昼夜逆転も大丈夫ですが、時差ボケになりやすい人には厳しいと思います。

一方、(6)のような普遍的な基幹技術についての書籍ならば、環境の影響を受ける部分が少ないので、看護や介護と両立しやすいと思います。

(7)の長期受託業務では、介護者が企画立案してスケジュールを立案できる立場にあれば、じゅうぶんに可能です。ただし、他の技術者が立案したスケジュールに従って実作業を行う立場では、難しいものがあるかもしれません。

(8)は、空き時間に行うことができますが、単価によっては、それで生活をしていくことは難しいかもしれません。

(9)と(10)のように、自ら企画、開発して、独自発信する仕事なら、確実に看護や介護と両立できます。

マーケットプレイスを利用して、海外に発信できるアプリを開発し、そのノウハウを電子本に仕立てて販売するといったことです。

それで口を糊していけるだけの売上を確保することは、容易なことではないでしょう。しかし、挑戦してみる価値はあるのではないでしょうか。

泣く泣く離職より、積極的離職です!! 介護離職を、自分の開発したアプリや執筆した本を世界に向けて販売するきっかけと捉えて、希望をもって精進していきませんか。

□Microsoft Surface with Windows 8 Pro、発売開始!
899ドル、ペン付き!
PCに遜色ないハイスペック、これぞ究極のタブレット!
< http://www.microsoft.com/Surface/en-US/surface-with-windows-8-pro/home
>


【薬師寺聖/個人事業所 セイザインデザイン】
個人事業所 < http://www.seindesign.net/
>
< infosei@seindesign.net >

絵・音・詩・文・コードを扱うフリーのクリエイター、思索家。エンジニアリング会社を経てデザイン事務所に勤務後、XML1.0勧告翌月に退職して開業。科学技術や医療・福祉分野のXML案件を手がけながら、書籍や記事を多数執筆(PROJECT KySS名義)。現在は、受託業務から独自開発にシフト中。
Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2013)


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編集後記(02/25)

●クレジットカードを使わない一生だった。現金主義ではない。後払いが好きじゃないというだけ。分割払いは、若くて貧乏なころ丸井でライティングデスクを買ったときの一度だけだ。つきあい上、仕方なくつくらされたクレジットカードがいくつもあったが、全部処分した。だから、クレジットカード決済しかないネットサービスは利用できないのだが、仕方ないと思っている。ネット上の買い物も銀行ネット振込やコンビニ決済にしていた。

しかし、Kindle Paperwhiteを導入したからには、ネット上で決済して電子書籍を買わなければならない。そこでAmazonギフト券を初めて使った。ワンクリックで今すぐ買えちゃう便利さには感動したが、これはなかなか危険な仕組みだなと思った。電子書籍購入以外には使わないようにしようと決意したが、いつのまにか電動歯ブラシとかアンテナ分波器とか文房具などをワンクリックしていた。あぶないあぶない。ま、先払いだからいいか。

ルアル本も買ってしまった。諸星大二郎の漫画と、買いそびれた雑誌「幽」のバックナンバーだ。マーケットプレイスを初めて利用した。さすがに1円という価格ではなかったが、送料250円を足してもずいぶん安かった。ブックオフで探す手間もなく、たぶんそれより安いから、今後も使い続けたい。しかし、こういうサービスは便利だが、出版社や書店、流通にとって困った存在だろう。しかも外資だ。これからどうなるんだろう。

マーケットプレイスは、オークション出品で古本の価格設定の参考になる。マーケットプレイスの価格(最安と最高の差はかなりあるが)+250円を相場と考える。いままでいい加減な値付けをしてきたが、この方法はかなりいいと思う。まだ成果は出ていないけれど。ところで、46年前に490円で買ったある書籍が希少品で、10,000円から38,000円の値がついていた。オークション出品しちゃおうかなあ。(柴田)


●新卒で銀行員になった。初社会人で、右も左もわからない入社すぐの時期に、渉外さんから新人らにクレジットカードの申込書が渡され、みんな入ってもらうものだからという理由で、3枚は作ったと思う。取引先の応援用カードが含まれていると知ったのは数年後。

自分から入ろうと思ったのは、テレフォンカードが2枚ついてくるというおまけにつられた『ペルソナVISAカード』。阪急百貨店系列でお得に使えるというもの。これがいまのメインカード。

iD契約もしていて、コンビニや喫茶店でも使っちゃう。通信費やWebサービス費などの会費にも使っていて、たまるポイントは、年に5,000円〜10,000円程度のキャッシュバックとなる。飲み会の幹事をほとんどしないし、してもカードでは払わないけど、皆の分をカードで払ったら結構たまるだろうな〜と思う時もある。続く。(hammer.mule)

< http://www.smbc-card.com/nyukai/affiliate/persona/index.jsp
>
ペルソナVISA