まにまにころころ[26]言葉って難しいね
── 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito ──

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今日はちょっと寒さがマシで、ほっとしている川合です。こんにちわん。やー、このまま春になってくれたらいいなー。いつのまにかもう3月だし。

さて、3月になった最初の日、一部で話題になっていた大阪市天王寺区から、「天王寺区デザインパートナー」募集の中止が発表されました。

「天王寺区デザインパートナー」募集の中止及び
ワークショップ〜デザインと天王寺〜の開催について
< http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/tennoji/0000207303.html
>

何が話題になっていたのかご存じない方のために簡単に説明すると、大阪市の天王寺区が、「デザインの力を行政に取り入れたいから、デザイナーさんの力を貸して、タダで。お金でなくても採用されたら宣伝になるからいいでしょ」と募集して、世のデザイナーの多くからフルボッコにあったという出来事です。

デザイナーを馬鹿にしてるのかと各所で大炎上、署名運動まで行われました。

この出来事についてのきちんとした考察は、先日、まつむらさんと吉井さんがデジクリ3420(2/13)に書かれていましたので、私はもっと低いレベルでの所感めいたことでも。




◎──文面が悪かった

問題の根っこは、まつむらさんが書かれていたようなことなど、深いところにあると思いますが、もっともっと単純な部分では、天王寺区の出した告知から感じられる姿勢がまずかったんだと私は思っています。告知から感じられる、つまり、実際はどうあれ、その文面が悪かった。伝え方が悪かった、と。

元の告知文と、批判を受けて一度変更したものがこちらです。(中止前)

デザインの力で、行政を変える!!〜天王寺区広報デザイナーを募集します〜
< http://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/tennoji/0000203439.html
>

まず冒頭で、「デザインの力で、行政を変える!!」 と大きく思いを語って、こんなことをして欲しい、あんなことをして欲しいと要望が。で、それに続く募集要項の中でしれっと、「報酬なし」と書いて、そこに「ただし」として、名前を出して紹介する旨が並んでいます。

◎──どう伝わったか

その結果どう伝わったかというのは、読んだ人それぞれですが、それっぽく、ちょっと分析してみると、

・冒頭のリード文には報酬がないことについて書かれていない
→対価がないことを当然だと考えている。特別視していない。

・要項中の報酬の説明で、名前を紹介することを書いている
→名前を紹介することが十分な報酬に代わるものだと考えている。

と、そう伝わったんじゃないかと。あえて悪意のある書き方をすると、「行政にデザインを取り入れたいから、ちょっと手を貸して。報酬はないけど、名前売ってあげるからいいでしょ? 有名にしてあげるから」ってな感じで。

そりゃ、怒られるわ。(笑)

◎──お金の問題だけじゃない、たぶん

おそらく怒ったデザイナーさんの多くは、お金が出ないことそのものじゃなく、「馬鹿にされた」ことに対して怒りを感じたんだと思います。その態度はないだろう、と。

まあその態度が一番現れてるのが「報酬なし」のひとことなんで、同じっちゃあ同じなのかもしれませんが、お願いの仕方次第では、こんなことにはならなかったと思うんです。

褒められたことではないですが、私も時々、割に合わない仕事や、お金の出ないものを「心意気」だけで引き受けることがあります。逆に、そういったことをお願いすることもあります。お金の問題じゃない、とまで言い切ることはしませんが、お金の問題「だけ」じゃない。

◎──もう少し「お願いのしかた」を考えていたら......

お金がないものはしかたないじゃないか。ええ、その通りだと思います。ない袖は振れませんよね。特に公共だと予算執行は何かと複雑で、手続きも大変で、「こういう事がしたい!」と思っても、そこにすぐ予算をつけることは難しいと思います。はなからタダでやらせようと意図したわけじゃない、とは信じてあげたいところ。

力を借りたい。でもお金は出せない。せめて何かお返しできることはないか。区の力で名前を出すことで報いることは出来ないか。そんな経緯で出てきた話だったのかもしれません。そこまでは、理解できない話じゃないです。ただ、それをどうして、もう少し考えて伝えられなかったのかと。

このたび天王寺区では、デザインの力で行政を変えたいと考え、デザイナーの方に力を貸していただきたいと願っています。しかしながら現在、そのための予算がなく、報酬をお支払いすることが出来ません。出来ることと言えば、ご協力いただいた方のお名前を広く紹介させていただくこと、それが今は精一杯です。

大変心苦しく、無理は重々承知の上ですが、それでも、区の情報発信のあり方を何とかして変えていきたいのです。どうか、お力を貸してはいただけないでしょうか......と、おそらく気持ちの上ではそんな風に思っていたと想像しているんですが、伝わりませんでした。

伝え方を考えて欲しかった。

ま、伝え方を考えなかった=やっぱ簡単に考えてた、のかも知れませんけどね。

◎──伝えるって難しい

とはいえ、伝えるのって難しいことですよね。特に、文章で伝えるのは、口頭よりニュアンスが伝わりにくくて、難しさも1.5倍(当社比)に。まして、公共団体となると、使える言葉も限られてくるでしょうし、問題になった告知文も、決められたフォーマットに従った結果、そう書くしかなかったのかもしれない。

公共だけでなく、私たちが普段やりとりするようなビジネス文書やメールでも、なかなかしっかり伝えることは難しい。気心の知れた相手となら、少し砕けた表現も許されるので多少はマシにもなりますし、場合によっては、顔文字とか「(笑)」なんて飛び道具も駆使して、感情の表現をなんとか盛り込むように工夫したりもしますけど。

私の場合、場合によってはどころか、相手が誰でもそんな表現ばっかりですけどね......皆さんいつもすみません。orz(汗)

◎──こんな本があった

きちんと書けば書くほど、真意から遠ざかっていくこともあったり、書くことって本当に難しいですよね。去年の暮れに、こんな本を書店で見かけました。

『できる大人のモノの言い方大全』(青春出版社)

こんな時にはこんな表現使おうぜっていうフレーズ集です。結構なボリュームなのに、1000円と、割と安価で買いやすく、よく売れてるみたいです。最近、姉妹書も出たようで、今も平積みで見かけます。

正直、その表現はどうだろうなーって思うものや、それをそのまま使ったら、ケンカになるんじゃないかなーってのも含まれていますが、なるほどそうか、その言い回しいいねって思うものも多くて参考になります。

ちなみにこの本で、「参考になりました」というのは、「参考程度にしかならなかったのか」と、相手をムッとさせかねない表現として紹介されています。(笑)

「モノの言い方」の本なので、書き方の本ってわけではありませんが、書店で見かけられたら手に取ってみてください。難しいのは、書き方だけでなくて、言い方も一緒ですしね。

先に書いたように、口頭に比べてニュアンスが伝わりにくくて1.5倍難しい、と思っていますが、口頭と違って時間かけられる分、私は話すよりも書く方が、どちらかと言えば気が楽です。気楽な性分なので、ペン渡されようがマイク渡されようが、気楽な物言いしかできませんけど。

◎──そんなこんなで

伝える事って難しいね。言葉って難しいね。と、そんな話でした。壊れるほど愛しても、三分の一も伝わらないそうですし、純情な感情は空回りすることがままあるようですが、それでも色んな事を他者に伝えていかないと社会生活を送れませんし、日々精進ってことで。

同時に、話し手や書き手の単純な技量の問題で、言葉や文字から抜け落ちてしまっている情報や感情が、もしかしたらその裏側に何倍もあるかもしれないってことを想像できる「受け止める力」も、同時に養っていきたいものですね。気持ちよくキャッチボールするためには、投げる方も、受け取る方も、ピッチャーも、キャッチャーも、練習しないとね。

私のボールは暴投だらけなので、皆さんは特に受け止める力をどうか是非......

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
< https://www.facebook.com/korowan
>
< https://www.facebook.com/caputllc
>

◎──今週末、大阪で中継セミナーします。

■3月9日(土)【東京・大阪】
東京で開催される「第32回WebSig会議」を、大阪でも中継開催!

・第32回WebSig会議(東京)
< http://websig247.jp/meeting/32/000257.html
>

・第32回WebSig会議 パブリックビューイング(大阪)
< http://kokucheese.com/event/index/75634/
>

日時:
2013年3月9日(土)13:00〜17:30

テーマ:
「便利さと、怖さと、心強さと
 〜戦う会社のための社内セキュリティ 2013年のスタンダードとは?!」

内容:
モバイル、クラウド、SaaSの普及により、個人として、社員として、効率よく働く環境がどんどん成長しているのは、皆さんも強く実感されていると思います。しかし、昨年、巻き起こったノマドブームに対する議論では、実現可能なフレキシビリティに対して、情報漏洩のリスクや、機密保持の問題など、守りの体制が状況の変化に対して追いついていないという問題があり、前に進みたい企業にとって、攻守のバランスをどう取ればいいか?!ということについて、懸案のままになっている会社さんも多いのではないでしょうか?!

今回の2013年一回目の第32回WebSig会議「便利さと、怖さと、心強さと〜戦う会社のための社内セキュリティ 2013年のスタンダードとは?!」では、状況の変化にポジティブに適応している、エンタープライズ、Webの受託、ベンチャー、個人、スタートアップ向け、幅広い視点からゲストにお話いただき、2013年時点の戦う企業にとっての社内セキュリティについて共に考える会議を行います。

参加方法・詳細はそれぞれの告知ページ(上記URL先)をご覧ください。