[3436] モノクロが好きだ。の巻

投稿:  著者:  読了時間:14分(本文:約6,700文字)


《あくまで気がするだけですけどね》

■わが逃走[121]
 モノクロが好きだ。の巻
 齋藤 浩

■3Dプリンタ奮闘記[06]
 3Dデータの制作について
 織田隆治

■ところのほんとのところ[92]
 オリジナルプリントを見たい!
 所幸則 Tokoro Yukinori




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■わが逃走[121]
モノクロが好きだ。の巻

齋藤 浩
< http://bn.dgcr.com/archives/20130307140300.html >
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ここ一年ちょっと、趣味の写真はほとんどモノクロフィルムで撮っている。それまではカラーが当たり前で、モノクロは教育用とかノスタルジーを演出するための手段、みたいな認識だった。

ところが、である。

二年ほど前、ひょんなことから憧れのカメラ、ライカM3と50ミリレンズを手に入れたのだ。まずカラーで撮ってみたところ、現代のレンズのような鮮かさには欠けるが、階調の美しさに目をみはる結果となった。

そうこうしてるうち、そのレンズは(当時ポピュラーだった)モノクロフィルムを前提に設計しているということに気づき、ためしにネオパンSSで撮ってみたところ、仕上りのあまりの美しさに腰を抜かしたのだった。

それ以来、すっかりモノクロにハマってしまったオレなのです。

モノクロの魅力をひと言で表すのは難しい。なんでもアリもいいが"色彩を用いずに表現せよ"というルールはとても楽しいし、こうした条件があってこそ創意工夫する余地が生まれる。

いわゆるクリエイティビティが刺激されるってやつか。

また撮影の際、ファインダーに捉えた世界から脳内で色彩を取り除き、モノクロームの世界をイメージしてからシャッターを切る。この行程のおかげで、かなり納得のいく写真が撮れるようになった気がする。

仕上がりをイメージしながら制作する。これは写真だけでなく、すべてのクリエイティブにおいて基本だ。

しかし、自動化された世の中ではつい忘れがちになってしまう。それを改めて意識できるのがモノクロの醍醐味だと思う。

上達を体感できる自己克服型創造遊びの、最もシンプルなもののひとつが、モノクロ写真なのではなかろうか、てなことを考える今日この頃なのである。

そもそも情報過多な昨今、色彩がそこまで重要か? とも思う。ビビッドな世界の中では逆にモノクロームの方が目立つし、目的に対し色彩に必然性がないのであれば、それを排除した世界のほうが、惑わされずに本質が伝わる。

もともとカラー写真は爆撃対象を確認するための軍事技術であり、つまり、説明を目的として開発されたという経緯がある。

人はめんどくさいことが嫌いだ。つまり本能的に説明を嫌う。努力も嫌う。説明されたことはすぐに忘れるし、その意味を知ろうともしない。しかし、自分で興味を持った物事は忘れない。

モノクロ写真は色彩を見る者の想像に委ねる。

例えばリンゴの写真を見せられると、自分の記憶の中におけるリンゴの赤を想像する。

自分でそうしようと努力するのではなく、見た瞬間、自分が今までに見たリンゴの中で最も美しい赤を思い出し、その写真にあてはめてしまうのだ。

純粋な階調だけで表現された形態や質感に、受け手の記憶が組合わされる。

すべてを語らないこと。一部を受け手に委ねることで、そのビジュアルはより印象に残るものとなる。

もちろん、色彩だけでなく露出や構図なども含めて言えることだが、強い写真というものは、だいたいそんな構造なのではなかろうか。

さて、いざモノクロ写真を撮ろうとした場合、モノクロフィルムで撮影するというのが最初に思いつく方法だろう。オーソドックスかつ確実な手段である。

これ以外にも、デジカメで撮ってモノクロ変換したり、カラーフィルムをモノクロに焼いたり、なんて方法がある。

しかしこれを実行するとなると、甘えとの戦いになる。

デジカメだと「すぐに確認できるからいいや」。カラーだと「後でモノクロに変換できるから、とりあえずカラーで撮っておこう」。

こういった気持ちを抑え込むだけの強い意志のある人は問題ないが、オレの場合、基本的に隙だらけの性格なので、ついつい甘えてしまう。

その結果、緊張感がなくなり、必然性のない写真になってしまう場合が多い。

しかし、デジタル全盛の今はその方法が当たり前だし、今後モノクロフィルムの入手が難しくなったらそうせざるを得ないだろう。

たしかに色彩を主軸として構成したつもりの写真でも、モノクロ変換してみたら意外とイケる、なんて発見もある。

実際、撮影時の印象をイメージしつつ現像ソフトをいじくる行為は、暗室作業と同じくらいタノシイし、クセになるほどオモシロイと言える。

とはいえ、フィルムがあるうちはフィルムで撮る方が、気持ちに隙ができない分いい写真が撮れるような気がする。

あくまで気がするだけですけどね。

【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
< http://tongpoographics.jp/ >

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられ
ないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィ
ックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■3Dプリンタ奮闘記[06]
3Dデータの制作について

織田隆治
< http://bn.dgcr.com/archives/20130307140200.html >
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前回、サラっと3Dデータについて書いたが、もう少し述べておこうと思う。

一般的によく言われる「3DCGで使用するモデリングデータ」は、表面だけを皮一枚のスキン、もしくはポリゴンで見せるものが多く、それは「サーフェスのデータ」となる。

3Dプリンタで出力出来るのは、中身の詰まった体積のある「ソリッドのデータ」が必要になる。同じ見え方でも、この「サーフェス」と「ソリッド」というのは全く違う。

例外もあるが、ザックリと説明すると下記のようになる。

「サーフェス」は表面だけを見せるものであって、中身はない2次元の世界。よく見る3DCGアニメーション等は、この「サーフェス」データが多い。

「ソリッド」は3DCADソフト等で、製品の設計等に使う。当然のことながら、製品を作る上での設計なので、体積を持つ、つまり厚みのあるデータとなる。

3Dデータを3Dプリンタで出力して欲しい、とご依頼を頂くことが多いが、サーフェスデータで閉じた形状になっていないデータを送られて、出力が出来ない場合も多い。

これは、まだ3Dプリンタが一般的に浸透しておらず、3DCGを作っている人でも馴染みがないためだと思われる。

世の中には、基本的に厚みのない物は存在出来ず、必ず体積が必要になる。ということを念頭に考えれば、自ずと理解出来ると思う。

そこで、3Dソリッドデータがあれば簡単に出力出来るのか? とも思うが、また出力にも、そのプリンタの特性があり、出力する前に調整が必要になる。

なんでやねん? と思うのが当然。

それは、そのプリンタに応じた配置や分割をしてやる必要がある。
サポートの有無。
出力時間の短縮。
後加工の出来るだけ不要な配置。
等、色々と考えてデータを制作する必要がある。

僕が使用している3Dプリンタは積層タイプとなるので、サポート材が必須となる。しかし、すべてにおいてサポート付きで出力した場合、いちいちヘッドを変えて(機械自体がやるんですけどね)出力するので、仕事に使うには時間がかかりすぎる。

そこで、どういったパーツ分割にして、どのように出力するかを検討し、出来るだけサポートを使わないで出力出来るかを考えた上でのモデリング、出力データの配置をして行くことになる。

この行程が3Dプリンタを使う最大のノウハウとなるのである。そのノウハウを理解することにより、3Dプリンターは最大の能力を発揮する、といっても過言ではない。

これは、3Dプリンタによって違って来るのは言うまでもない。Zプリンタを代表にする、粉体を主な原料となるプリンタは、その素材自体がサポートの役目をするので、比較的安易に出力が可能だ。

自動でサポートを生成出来るプリンタもあるが、サポート材をモデリングで制作する方が制作に時間がかからなかったりするので、この辺もノウハウになる。

つまり、3Dプリンタで出力する上での一番重要なポイントは、この『データ制作』なのではないか? と思う。

【織田隆治】
FULL DIMENSIONS STUDIO(フル ディメンションズ スタジオ)
< http://www.f-d-studio.jp >

今回は3Dデータの扱いと制作についてを主軸に紹介してみました。
次回は、実制作についてを題材にしたいと思います。


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■ところのほんとのところ[92]
オリジナルプリントを見たい!

所幸則 Tokoro Yukinori
< http://bn.dgcr.com/archives/20130307140100.html >
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[ところ]が以前から関わりたかったものに、パリをテーマにした展示がある。念願かなってとうとう実現した。

[ところ]が参加するのは「エスプリ・ド・パリ展」というオムニバス展だ。参加メンバーがとてもゴージャスで、ロバート・フランク、サラ・ムーン、森山大道らが名を連ねている。光栄なことです。

会期:3月1日(金)〜4月1日(月)
会場:GALLERY ENTRE DEUX(東京都文京区 椿山荘/ホテル椿山荘東京)
< http://www.klee.co.jp/entredeux/ >

◇キュレーターによるギャラリー・トーク
キュレーター・太田菜穂子によるギャラリー・トークが開催されます。写真の魅力をさらに深く理解するシーンです。どうぞお気軽にご参加ください。
3月21日(木)15:00〜15:30
キュレーターは14:00から16:00まで在廊いたします。

[ところ]も初日から駆けつけたかったが、3月5日から始まっている高松で進めているプロジェクト「フォトラボK」の展示の準備で行けず仕舞いだった。

そして、3月8日(金)から[TOKYO渋谷LOERS PHOTOGRAPERS]の結成第一回展「変貌する渋谷」の展示が始まるので、高松での展示を確認したあとはその準備に追われている。

会期:3月8日(金)〜3月18日(月)
会場:渋谷ハチ公広場 アオガエル(東京都渋谷区/東急5000系)

この展示さえ始まれば「エスプリ・ド・パリ展」を見に行くことができる。早く見に行きたい[ところ]である。

参加している作家の、オリジナルプリントを早く見たいのだ。印刷やwebでは絶対に伝わらないものがプリントにはあるからだ。

「エスプリ・ド・パリ展」の[ところ]の作品も、太田さんはwebで見ていてあまり関心を引かなかったようだが、オリジナルプリントを見てすごく気に入ってくれた。そういうものなのである。

「フォトラボK」第一期修了生の展示もなかなかに素晴らしいので、ぜひ見に来て頂きたい。[ところ]の高松を撮った作品も展示されています。

「アートとして香川を記録 フォトラボK作品展 part1」
会期:3月5日(火)〜3月24日(日)
会場:香川県高松市サンポート2番1号 高松シンボルタワー タワー棟4・5階
< http://www.my-kagawa.jp/event/event.php?id=620 >
< https://www.facebook.com/KagawaPhotographers >

半年前まで、写真好きレベルだった彼らがどれだけレベルアップしたか。商業写真に慣れきった人とは違って、ほとんど知識がないからこそ素直にのびた彼らの作品は素晴らしい。

もちろん、たった数か月でファインアート作家としてのレベルに到達したとはとてもいえません。まだまだ稚拙だし、私小説的レベルの人も多いけれど、彼らの一年後、二年後がすごく楽しみな[ところ]です。

さて、このテキストを書き終えたらまた渋谷に行く[ところ]です。今回の渋谷での展示は、ポスターや中吊り広告をアオガエルという電車の中に飾るインスタレーション的なものです。6人が別々のアプローチで撮った渋谷を、是非お楽しみください。気をつけて欲しいのは、雨がふると見られません。
さて、早くポスターのように仕上げないと。

【ところ・ゆきのり】写真家
CHIAROSCUARO所幸則 < http://tokoroyukinori.seesaa.net/ >
所幸則公式サイト  < http://tokoroyukinori.com/ >


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編集後記(03/07)

●映画「ゴールデンスランバー」で軽妙な殺人鬼を演じた、濱田岳という俳優が気になっていた。この映画はとくにおもしろいとは思わなかったが、殺人鬼キルオのシーンだけはもう一度見たい。その後、「ロボジー」でのマジメで弱気な会社員役もいい感じだった。そんな彼が主演の映画「みなさん、さようなら」の予告編が興味深かったので、原作の久保寺健彦「みなさん、さようなら」を読んでみた(幻冬舎、2007)。

最初の4ページで、主人公は中学に行かないと宣言し、母(父とは離婚)は、行きたくないなら行かなくてもいいと認める。中学の担任の説得も受け入れない。彼は団地の中だけで生きて行こうと決意する。こりゃまた荒唐無稽な設定である。そうとう無理筋だが、物語の設計は大丈夫か? 納得させてもらえる仕掛けなんだろうな。こんな制限の中でどれほどうまく主役を動かせるものか、期待しながら読み進める。

彼は団地を出ないのではなく、出られないのだった。団地から出るのが怖いのだ。坂を下れば団地の外に出られる。恋人と一緒に一歩を踏み出そうとすると、猛烈な動悸と息苦しさで半狂乱の発作を起こす。彼が団地を出られなくなった理由は、本の半分すこし前でやっと語られる。それは小6の卒業式で彼の隣席で起こった同級生の刺殺事件だ。なるほどトラウマは分かったが、説得力は弱い。その後は、トラウマを克服するであろう彼の成長物語。

結局、12歳から30歳までの18年間、彼は団地を一歩も出ない。その間の出来事は、よく考えられていると思う。なんとなく不吉な雰囲気が漂い、安心して読んでいられないけれど、最後までよくひっぱってくれた。青春讃歌というより闘病記か。ただ、彼にはまったく感情移入できない。濱田岳をイメージしながら読んでいたが、この映画はあまり見たくないなと思うのであった。(柴田)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/xx4344014154xxxx/dgcrcom-22/ >
みなさん、さようなら


●昨日のエネループ。独禁法の関係だという記事を紹介してもらった。旧デザインのものは、大手小売店では売り切れらしい。ありがとうございます。

『airpenPocket++』を買った。このペンにはボタン電池が使われていて、電池寿命連続筆記で90時間程度らしいのだが、エネループを日常的に使っていると、使い捨てするのは、もったいない気になるわ。

airpen自体は2007年12月には欲しいと書いていた。が、その頃はWindows版しかなかったか何かで断念。いまごろ買った理由は4つ。ノートにメモをとる機会が増え、古いノートを参照したくなることが、ごくたまにあること。Evernoteのプレミアム会員になったものの、ほとんど使っていないこと。MacやiOS対応をしていること。Bluetooth接続ができること。続く。(hammer.mule)

< http://anond.hatelabo.jp/touch/20130302105531 >
eneloopを残すつもりだったPanasonicと独占禁止法と国際経済競争
< http://www.airpen.jp/ >
airpen公式