気になるデザイン[92]感動のポストカードブック/津田淳子

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最近、わけあって、ポストカードブックというものがどんな造本なのか、ということを注意して見ている。これ、いつからこういう形態の本があるのかはわからないのですが、けっこう昔からありますよね? 最初に買ったのって、割と小さい頃のような気がします。

一番多い形は、ポストカートの一辺をのり付けして、レポート用紙のようにピリピリ破れるようにしているもの。それを上製本、もしくは並製本にして仕上げている。無駄も何もなく、本当にポストカードを本に仕立てた、その名の通りの仕様だ。

一方で、その方式ではなく、一工夫あるポストカードブックも少数だが存在する。中でも「!」と感動したのが、石川直樹さんが各地で撮りためた写真をポストカードブックにした『世界を見に行く。』(リトルモア刊/1800円)。ブックデザインは大島依提亜さん。
< http://www.littlemore.co.jp/store/products/detail.php?product_id=826 >

ぱっと見たところ、ポストカードとしてはちょっと細長い。でも、実はこれがこの本のキモ。本を開くと、写真家の石川直樹さんが撮りためた写真が現れる。ポストカードサイズで切り取り用のミシン目が入っていて、そこから切り取ると、写真部分はポストカードになる。

切り取って残った幅6cmくらいの部分は、その写真の地を紹介するお話がのっていたり、「このポストカードを誰に出したか」などがメモできるようになっている。




表紙まですべて同じ仕様でポストカードになっているので、全部のポストカードを使い終わると、残った部分がミニブックのようになる。ポストカードブックは使ってしまうと何も残らない(というか、表紙だけが抜け殻みたいに残ってしまう)ものがほとんどなので、このアイデアはすばらしいなぁと思ったのでした。

そしてこの本、ミニブックが残るという仕様だけでなく、随所に工夫が凝らされているのもニクいところ。例えばカバーは、大きい紙が折り畳まれてカバーになっていて、それを開くと、著者である石川直樹さんが旅した足跡を記した世界地図になる。ページ数との相番がふられていて、それを指でたどるのだけだって楽しい。

また、ポストカード自体には、パスポートに押されるその国の入国(もしかしたら出国もあるかも)スタンプが刷られていたり、宛名面に印刷された「ポストカード」の文字が、それぞれの現地の言葉になっていたりと、すてきなしかけがいくつも現れる。

写真の美しさ、すてきさにわくわくするだけじゃなく、造本もデザインもアイデアがこらされていて、すばらしいポストカードブックだなと感動した一冊なのでした。私もこういう風に、しっかりとした本を作れるようになりたいなぁ。

【つだ・じゅんこ】tsuda@graphicsha.co.jp twitter: @tsudajunko

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