[3447] 身体性を獲得するハードウェア

投稿:  著者:  読了時間:31分(本文:約15,400文字)


《我々は今、ハードウェアの転換期に生きています》

■まにまにころころ[29]
 ええとこやでおいで(その1)
 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito

■クリエイター手抜きプロジェクト[348]映像編
 ブームが去った後の3Dカメラ
 古籏一浩

■データ・デザインの地平[28」
 身体性を獲得するハードウェア
 薬師寺 聖

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■まにまにころころ[29]
ええとこやでおいで(その1)

川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito
< http://bn.dgcr.com/archives/20130325140300.html >
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まいどー。大阪生まれ大阪育ちの川合です。全国区のデジクリやのに大阪の事ばっかり書いてんがな、ええんかいな、って心配してくれはる人がおるんで、逆にいっそちょっとの間、大阪づくしでいったろかいなと。どないでしょ。

大阪の話し言葉で入力するのは、ATOKでもやっぱ面倒なんで言葉は戻しますが、しばらく大阪話にお付き合いください。今回は、大阪の中枢である「北区」の話から。俗に「キタ」と呼ばれる辺りが中心です。ちなみに南区はありません。

ちょいちょい大阪の人にも新鮮な話を織り交ぜるので、お付き合いください。

◎──「大阪」と「梅田」

他府県の方を惑わす地名、梅田(うめだ)。
 大阪の人「今どこにいてるん?」
 東京の人「大阪駅に着いたよー」
 大阪の人「ほな梅田向かうわー」
 東京の人「梅田ってどこ?」
 大阪の人「そこや」

と、まあ、別に惑わせるってわけでもないんですが、「JR大阪駅」があるのが、「梅田」という地名の場所なんです。で、その辺りにある私鉄各駅は、「梅田」「西梅田」「東梅田」と、みんな「梅田」を名乗ってます。だいたいJRは、県庁所在地にある中心駅はその行政区の名前で呼ぶみたいですね。

この梅田周辺がいわゆる「キタ」です。秋葉原のヨドバシとそっくりな外観の、ヨドバシ梅田もあります。もともとは湿地帯を埋め立てて田畑にした地域で、「埋田」という地名だったのが、もうちょっとオシャレな名前にしようぜってことで「梅田」になったそうです。

大阪と言えば大阪城って思われるかも知れませんが、大阪城は少し離れ中央区。梅田にはありません。HEP FIVEの観覧車や高層ビルからは大阪城も見えます。

ちなみに大阪では今「あべのハルカス」という日本一高いビルを、阿倍野区に建てていますけれど、梅田にはハルカス以上の高層ビルは現状では建てられません。伊丹空港との兼ね合いで、200m制限があるんです。

◎──梅田北ヤード

「大阪最後の一等地」として、ここ数年その開発に一部から熱い視線を注がれてきた北ヤード。大阪の人もなんとなくしか知らなかったエリアかも知れませんが、JR大阪駅の北側にあった、JR貨物駅のコンテナヤード跡地のことです。

もうかれこれ10年くらい話題になり続けていますが、ここ数年の梅田の変貌はこの北ヤードの開発に合わせてのもので、三越伊勢丹、大丸、ルクアからなる「大阪ステーションシティ」も、エキマルシェも、阪急の改装も、そのため。対抗して、南側にある阪神周辺も変わっていく計画が立てられています。円筒形で有名な大阪マルビルは、10年かけて安藤忠雄の発案でツタが這うらしい。

さっきから北ヤード、北ヤードと呼んでいますが、公募で「うめきた」て呼ぶことに決まったそうです。まだ定着してない感じですけどね。

このうめきた、あまりに広いのでエリアを分けて開業予定で、先行開発区域の「グランフロント大阪」は、いよいよ来月26日に「まちびらき」予定。産官学の知の集積をコンセプトにした「ナレッジキャピタル」「ショップ&レストラン」「パナソニックセンター大阪」が開業します。

ショップ&レストランは当分かなり賑わいそうです。ナレッジキャピタルは、正直言ってオープンするまでよく分かりません。ここに至るまでの数年間に、色んな話が二転三転しつつ、気がついたら開業を迎えたという感じ。

テナントの埋まり具合も、八割方埋まったらしいという話や、まだ半分空いてるらしいという話が、同時にあちこちから未だに聞こえてきます。賃料も二転三転したようですが、全部埋まったという話はまだ聞いていません。一部で、このままでは空きテナントだらけの「大阪駅前第五ビル」になるぞと心配と揶揄まじりの会話がされてたり。

あ、大阪駅の南側に「大阪駅前第一〜四ビル」という、全体的に小綺麗なキタの中では異色なくらい超カオスな商業ビルがありまして。最近はカオスながらも良い感じですが、ひと昔前は......まあいいや。(逃)

たぶん、ナレッジキャピタル含め、オープンからしばらくはとんでもなく大勢が訪れてニュースになると思うので、その期間に次の手を仕込めるかどうか。10年以上の間その辺りで賑わい続けているヨドバシ梅田をみれば、ショップ&レストランは、よほどのことがなければ大丈夫だと思います。人の取り合いで個々には苦しいこともあるかも知れませんけど。そこでの集客力を上手く全体として活かすことが出来れば、良い意味でとんでもない街になると思います。

ただ正直、未来都市のようなハイテク感も、予想される人混みも、個人的にはできれば当分は避けて過ごしたい。(笑)

・グランフロント大阪
< http://www.grandfront-osaka.jp/ >

◎──商店街がいっぱい

続いては、うってかわって商店街の話。全国的には「シャッター通り」など、商店街の苦境がニュースになることも多いですが、大阪には、元気な商店街が多くあり、特に北区にはそんな商店街がいくつもあります。そりゃあ都市型の商店街は、地域の生活密着型の商店街と事情が違うだろうと言われそうですが、そのどちらもしっかり存在します。

そもそも商店街とは、歴史を遡れば楽市楽座や門前町に......って、そんな話はさておいて。大阪の商店街の雄はなんと言っても天神橋筋商店街。日本一長い商店街としても有名な天神橋筋商店街は、端から端まで2キロ半以上、店舗数は約600店舗。

たぶん今もやってると思うのですが、北端辺りの荒物屋さんでお札を受け取り、南端辺りの薬局でそれを渡すと「満歩状」という記念品が貰えるとか。......実は私、端から端まで歩いたことありません。(笑)

他にも北区には、阪急東通り商店街、お初天神商店街、天五中崎通商店街など、飲食店が多く並び仕事帰りに繰り出すには最適の商店街から、ディアモール、ドーチカ、ホワイティうめだといった地下街や、エストや阪急かっぱ横町など線路の高架下に伸びるタイプもの、阪急三番街や32番街のような、建物として階層をなすタイプ、挙げればキリがないんですが、それらの多くが梅田を中心に繋がりあっています。梅田の地下街、通称「うめちか」と、それらに連なる各エリアは、大阪人でも迷子多発地域です。

・うめちかnavi
< http://www.umechikanavi.jp/ >

話はいわゆる「商店街」に戻りますが、ひとつの「商店街」に複数の「商店会」が存在することがあります。あります、というか、大きな商店街はたいてい。

例えば、天神橋筋商店街は......と、例示しようと思ったんですが、複雑すぎてよく分かりません。

天神橋一丁目商店街振興組合、天神橋二丁目商店街事業協同組合、天神橋三丁目商店街振興組合、天神橋筋四番街商店街振興組合、天四北商店会、天神橋筋五丁目商店街振興組合、天五中央商店会、天六商店街振興組合と、こんなところですかね。でも、そのうちの、天六商店街、天五商店街、天神橋筋四丁目北商店街、天神橋筋四番街の4つで、天神橋筋商店会ってなってたり。複雑。

ほか、阪急東通り商店街も、阪急東通第一商店会、阪急東通第二商店会、阪急東通第三商店会、阪急東中通商店街振興組合、パーク・アベニュー堂山商店会、阪急東中央商店街振興組合という具合に、複数の商店会で構成されています。

歩いていると、その境目で微妙に飾り付けが変わったり、案内サインが変わったりすることに気づくかもしれません。今、例示するにあたって、それら大阪市北区の商店会の連合組織である、大阪市北区商店会総連合会(北区商連)のサイトを見ました。北区商連には現在47もの商店会が加盟しているそうです。もちろん、商店会に加盟しない店舗があるように、北区商連に加盟していない商店会もあるので、実際にはもっとあることになります。

・北区商連Facebookページ
< https://www.facebook.com/kitakushoren >

◎──まだある大阪市北区

ほとんど梅田周辺の話だけでしたが、北区には中之島という地域にもまた色々あって面白いんですよ。次回に引っ張ろうかと思いましたが、やっぱ簡単に、今回に詰め込んじゃいます。中之島の皆さんゴメンナサイ。(笑)

中之島というのは、梅田から少し南側の、堂島川と土佐堀川に挟まれた中州を中心とした地域で、駅で言えば大阪市営地下鉄の土佐堀駅から北浜駅あたり。梅田のついでみたいに紹介する形になりましたけど、大阪市役所があるのは、中之島です。他にも、国の重要文化財に指定されている中之島中央公会堂や、中之島図書館があったり、日本銀行大阪支店、大阪国際会議場などがあります。

名前通り、中州部分が「中之島」ですが、周りの対岸もだいたいひっくるめて、中之島って呼ぶことが多いです。ちなみに北側の対岸には、福沢諭吉生誕の地があって、碑が建っています。対岸から中州にかけては20以上の橋が架かっていて、大阪が「八百八橋」って言われていたことにも頷いてしまいます。実際には大阪中で200ほどだったそうですけど。その200ほどのうち、公設のものはたった12で、他は町人が私財で架けたりしたそう。なにわのあきんど、すげー。

◎──北区編終了

思いがけず長くなってしまい、中之島があおりをくった北区編はこれで終わり。次回か、あるいはそのうち、続きをお届けします。全部の市区町村を回る気はありませんので、ご安心ください。(笑)

ほな、またー!

【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
合同会社かぷっと代表
< https://www.facebook.com/korowan >
< https://www.facebook.com/caputllc >

36年ほどの人生で10か月だけ、東京の中野区に住んでいました。


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■クリエイター手抜きプロジェクト[348]映像編
ブームが去った後の3Dカメラ

古籏一浩
< http://bn.dgcr.com/archives/20130325140200.html >
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ふとしたきっかけで、3D映像が撮影できるハイビジョンカメラを貸してもらったので、使ってみた感じなどを書いてみます。そのカメラはパナソニックのAG-3DA1です。

・AG-3DA1
< http://pro-av.panasonic.net/jp/3d/ag-3da1/index.html >

パナソニックは他にもいくつか3Dカメラを出しています。ハイエンドとしては以下のカメラがあります。

・AG-3DP1G
< http://pro-av.panasonic.net/jp/3d/ag-3dp1g/index.html >

ローエンドだとTM-750に3Dコンバージョンレンズをつけて3D撮影をします。

・TM-750
< http://panasonic.jp/dvc/tm750/ >

TM-750で撮影した映像は、サイドバイサイド(左右の映像が横幅半分になったものが一枚の映像になる)になります。実際に撮影した映像は以下にあります。

・フリー実写3D映像素材
< http://footage3.openspc2.org/HDTV/footage/HD/3D/ >

AG-3DA1には3Dアシスト機能がないみたいで、映像が3Dとして破綻していないかどうかの確認が大変です。AG-3DA1の3D映像の確認は、MIXモードボタンを押します。すると左右のカメラで撮影した映像が、半透明で合成されて表示されます。

これで視差がわかるのですが、あまり役に立たない感じがします。どうせなら、Nintendo 3DSのような裸眼立体視の方がいいんじゃないかと思ったりもします。200万円以上するカメラですし、そのくらいあっても文句は出ないでしょう。

とりあえず、AG-3DA1を使って何か所か撮影してきました。以下のページに、フリー素材としてアップロードしてあります。

・フリーFullHD 3D実写映像素材
< http://footage3.openspc2.org/HDTV/footage/3D/60i/ >

実際に撮影してみると、結構大変だということが分かります。まず、撮影した映像が、3Dにした時に破綻していないかどうか確認ができません。確認するにしても、SDカードのデータをパソコンにコピー(左右あるのでコピー時間も2倍)してから処理することになります。

ざっと確認するなら「裸眼立体視」を使います。撮影した左右二枚の映像の表示サイズを小さくして、QuickTimeプレイヤーで見るわけです。3D映像として破綻していないことを確認したら、ようやく編集になります。

撮影時に破綻していたら(失敗していたら)どうしようもないので、撮影に失敗しないことが前提です。遠景だけだと立体感がなく、かと言って手前を撮影すると3D映像として破綻します。

そこそこ手前から奥に向かって遠近感が出るような......例えば並木道のようなものであればきれいに立体感がでます。まあ、そんなに都合良い場所があるわけでもないので、撮影場所はかなり制限されてしまいます。

レンズの画角も特に広角というわけではないので、対象物から離れなければいけません。ズームも5.6倍ほどなので、花をズームしてアップしようとしても限界があります。大きくしようとして近づいて撮影すると、3D映像として破綻するという、なかなか難しいカメラです。

こうやって使ってみると、3D映像が注目されるきっかけになった「アバター」は、とても凄い映画だというのがわかりました。というか、よくそんなものを作った(3Dで作ろうと思った)としか言えません。だいたい、やること自体がおかしい。

・アバター
< http://ja.wikipedia.org/wiki/アバター_(映画) >

それから、AG-3DA1は二眼カメラなのですが、撮影した左右の映像の色味が違ってしまうことが結構あります。以前TM-700で左右に並べて試験的に3D映像を撮影したことがありましたが、この時も撮影した映像の色味が違ってました。

当時はカメラの個体差だと思ったのですが、200万円もするカメラでも結構色味が違うとなると、どうしようもない。後で調整するかないのでしょうけど。AG-3DA1を3Dカメラとしてではなく、普通のフルハイビジョンカメラとして見ても、今となっては厳しい部分があります。同じパナソニックの家庭用カメラよりも画質、性能とも格段に落ちます。

・X900M(一世代前の家庭用カメラ)
< http://panasonic.jp/dvc/x900m/ >

・X920M(こっちは今年出た家庭用カメラ)
< http://panasonic.jp/dvc/x920m/ >

3Dテレビがあっても、コンテンツがなければどうしようもありません。施設作ったけど制作者が誰もこないという状態にも似ています。仏作って魂入れず......。3Dカメラはパナソニック以外にもSONYやVictorが出していますが、いずれも売れませんでした。それでも、まだ撮影できるカメラが家庭用として出ただけよかったのかもしれません。

3Dの後は4Kだといって、家電メーカーがTVを出してきていますが、4Kなんて撮影できるカメラがほとんどないのに、どうするんでしょうか。


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
< http://www.openspc2.org/ >

3D映像は左右あるのでエンコードも2倍。転送時間も2倍。かなり無理があります......。貸してくれた方は、SDカード2枚入るから結婚式などで1枚壊れても予備として撮影されているから大丈夫なんですよ、みたいなことを言ってました。AG-3DA1は2台貸してもらったんですが、何とまだ2台会社にあるそうで......。

・フリーFullHD 3D実写映像素材
< http://footage3.openspc2.org/HDTV/footage/3D/60i/ >

・Nexus 10(アンドロイドタブレット)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Android/Nexus10/ >

・Kindle Fire HD使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Kindle/Fire_HD/ >

・Nexus 7(アンドロイドタブレット)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/Android/Nexus7/ >

・iPad mini(アイパッドミニ)使い方辞典
< http://www.openspc2.org/reibun/iPad/mini/2012/ >

・JavaScript逆引きハンドブック
< http://www.amazon.co.jp/dp/4863541082 >

・改訂5版JavaScriptポケットリファレンス
< http://www.amazon.co.jp/dp/4774148199 >

・ハイビジョン映像素材集
< http://www.openspc2.org/HDTV/ >

・クリエイター手抜きプロジェクト
< http://www.openspc2.org/projectX/ >

・Adobe Illustrator CS3 + JavaScript 自動化サンプル集
< http://www.openspc2.org/book/PDF/Adobe_Illustrator_CS3_JavaScript_Book/ >
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■データ・デザインの地平[28」
身体性を獲得するハードウェア

薬師寺 聖
< http://bn.dgcr.com/archives/20130325140100.html >
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●相次ぎ登場、Microsoft Surface、Kinect Fusion

3月15日、ついにMicrosoft Surface RTが日本で発売となりました(※1)。Surface はOffice 2013 RTを搭載しており、携帯性のある強力なビジネスツールとして、また、日常生活の中での気軽なPCとして活用できます(※2)。

また、今月は、Kinect for Windows SDK 1.7も、3月19日にリリースされています(※3)。

このSDKの目玉は、3Dスキャン技術。人とオブジェクト双方の3Dモデルをリアルタイムに生成できる "Kinect Fusion" です(※4)。そして、ジェスチャーによりボタン操作や画面操作ができる Kinect Interactions と、複数ユーザー利用への対応です。

Kinect の技術は、医療、工業、商業のあらゆる産業分野において、工程を変革し、インタフェースを刷新するでしょう。

※1 Microsoft SurfaceのCM。ビジネスと生活のシーンに溶け込んでいます。
< http://www.microsoft.com/Surface/ja-jp/commercials >

※2 Microsoft Surfaceの詳細な仕様については、同社の次のページを参照してください。
< http://www.microsoft.com/Surface/ja-JP/surface-with-windows-rt/specifications >

今回発売となったのは Surface RT です。Surface Pro は日本では未発売ですが、輸入して購入できます(Amazonでも購入できます)。

※3 Kinect for Windows SDK とドキュメント
< http://www.microsoft.com/en-us/kinectforwindows/develop/ >

※4 Kinect Fusion のデモ動画
< http://research.microsoft.com/apps/video/default.aspx?id=152815 >

●Microsoft Surface 国内発売のインパクト

タブレットPCは、既に国内では多数発売されてスタンダードになりつつあります。そこへ、Office搭載のSurfaceが登場。我々は、Microsoft Surfaceのインパクトを知ることになるでしょう。

(1)タブレット利用力が就業の必要条件になる

デジタルネイティブの世代の人々には信じられないでしょうが、15〜20年ほど前のビジネスシーンにおいて、Office が「ふるい」として機能したことがありました。手書きの紙の書類ではなく、Excelデータをやりとりできる業者が、取引上有利となることがありました。

職場にWordやExcelが普及した今、今度は、タブレットPCの利用能力が「ふるい」になる可能性があります。

日常業務の基本的な処理は、Officeで事足りることが少なくありません。タブレットを常時携行し、自在に操り、出先で作成したデータを共有して効率化をはかるスキルは、就労を続けるための条件となるでしょう。

一昔前には「スキル」と言われていたものが、できて当たりまえの作業となり、次々と必要とされるスキルが塗り替えられていきます。新しい知識獲得を苦痛と感じる人々が増えないように、技術指導者の奮起が望まれます(講師を生業とする人にとっては短期的にはビジネスチャンスです)。

(2)センサーとディスプレイの進化がスマホを置き換える

Microsoft Surfaceには、光センサー、加速度計、ジャイロスコープ、デジタルコンパスといったセンサーが搭載されています。

もっとも、タブレットとはいえPCです。Windows Phoneのように気軽にセンシングすることはできません。片手で振り回してゲームを楽しもうものなら、腱鞘炎になるでしょう。

が、Surfaceは出発点にすぎないと筆者は考えます。Surfaceの心臓部とどこでもディスプレイが連携するとき、タブレットとスマホとの間に大きな違いを見出すことができるでしょうか。従来はスマホ用に企画されていたアプリも、十分に利用できるようになるでしょう(※5)。

(3)手の拡張「感覚」と、記憶の依存が脳を変える

Windows 8からSurface登場の流れにより、タッチ操作は確定的なインタフェースになってきました。このことには、単に、マウス操作がタッチ操作になったという以上の意味があります。

指先が直接オブジェクトに触れて制御する「感覚」は、我々の脳に、なんらかの変化をもたらすに違いありません。また、SkyDriveは、機器への記憶の依存度を高めます。このことも、我々の脳機能を変化させるでしょう(※6)。

※5 第18回「コントローラー化する、携帯デバイス」参照 。
< http://bn.dgcr.com/archives/20120521140100.html >

※6 第26回「朽ちないデータ、という幻想」参照 。
< http://bn.dgcr.com/archives/20130128140100.html >

●Kinect Fusionのインパクト

Kinect のインパクトは、Surfaceよりもさらに強力です。

(1)リアルと区別できない存在の複製が出回る

いまや誰でも写真を撮り、PCで絵を描き、音楽を作り、映像を作ることができる、操作性に優れた環境があります。さらには立体も造形できるようになりつつあります。3Dプリンターの低価格化は、製造ラインに乗りにくい小ロットの製品の金型を不要にします。

しかしここでは、旅の思い出に、旅先の一輪の花を模したアクセサリーはいかが? といった、既にどこかで進行中に違いないビジネスについて話したいわけではありません。

Kinect Fusionは、あらかじめ存在するオブジェクトがなければ、データを生成しません。しかし、人や物がスキャンされ、それが3Dプリンターによって一度オブジェクト化されてしまうと、さらにそれを再スキャンできると考えられます。オブジェクトが存在している場所も問いません。取得されたデータを地球の裏側の3Dプリンターで増やすこともできるようになるでしょう。

つまり、度重なる複製による精度劣化を考慮しないならば、人や物の造形を無数に増やせる可能性があるということです。

複製された人体が街角に立っていたとき、それをチラ見した通行人は、それがプリンターの出力結果なのかリアルな存在なのか、判別できるでしょうか。

すでに人体の一部は生成できる時代です。そして人間にとって、視覚情報は非常に重要です。

「存在を写し取る」技術の影響は、ビジネスモデルの創出という枠におさまりません。いずれ印刷という一手間をかける時代が通り過ぎ、脳に働きかけるデータによって、"直接リアルな存在を認識させる" 時代が来るまで、さまざまなメリット、デメリットが浮上するでしょう。我々はそのメリットのみを享受し、デメリットを事前に予測して制していかなければなりません。

(2)身体感覚の拡張が脳を変える

Kinect Interactionsは、操作者の身体と、操作対象の間に、物理的な空間を作ります。操作者の手の延長にある画面までの間の空間は、幻肢のように、操作者の身体とつながるでしょう。動作インタフェースが一般化したとき、我々の心は、機器を含むまでに拡張するのではないでしょうか。身体の一部が拡張する「感覚」は、我々の脳を変化させるのではないでしょうか。

●新しいハードウェアは、ヒトというハードウェアも変える

子供のころテレビすらなかった時代を生きた高齢者たちは、ニュースを伝えるアナウンサーの喋りが年々速くなっていることに困惑しています。昔は、一人の人間が処理しなければならなかった単位時間あたりの情報量はもっと少なかったのです。

それに比べ、今を生きる若い人たちは、短時間で大量のデータを処理する能力を備えています。過剰適応かもしれませんが、進化する技術がヒトそのものを変えていることは確かでしょう。

我々は今、ハードウェアの転換期に生きています。

タッチ、声、動作、脳波、など、NUI(ナチュラル・ユーザー・インターフェイス)は日々進化しています。スマート家電、スマートハウスの一般家庭への普及はこれからです。それは、社会構造を変えます。

その昔「誰が食わせてやっている」と言われた昭和の女性たちは、経済力が発言力とばかりに、社会進出しました。それにつれ、家電は改良され、家事は合理化されました。専業主婦がいなくなり、内製によって節約することよりも、働いて収入を得て家事は機器に任せる生活が、いまや当たり前になりつつあります。ついには、自分の身体を使うべき行動の多くを機器に頼る生活が当たりまえになるでしょう。

ヒトの手足の一部と化したマシンと、ヒトとの境界は、徐々に消えていきます。"思考" がメインのインタフェースになった暁には、手足は退化し、耳や口が小さくなるなど、その影響は、我々の姿かたちにまで及びそうです。

●大量のデータ処理は"人類"を進化させる

大量のデータ処理を四六時中要求される人々は、勝ち残りをかけて、より速い理解力、より強い記憶力をもとめます。脳と機器が結びついたうえに、脳改造の医療技術が進化した暁には、社会はエンハンスメントを肯定する方向へ舵をきるでしょう。

ヒトの外見や性格や能力というプロパティを、長じて後から変更できるようになったなら、生まれ持った能力や現時点で獲得済みの知識の重要性は薄れます。努力できる姿勢も、コミュニケーション能力も、ヒトのプロパティのひとつに過ぎず、それですらエンハンスメントによ向上可能になるでしょう。

勉強嫌いで記憶力にも自信のない若者が、知識と経験を誇る努力家のベテランのスキルを簡単に上回る事態も起こりそうです。なぜなら、若者には脳エンハンスメントの加療に耐える体力があるからです。

産まれた者勝ち、存在した者勝ちの時代。国家にとっては、人口増とエンハンスメント施術のための予算確保が、各家庭にとっては親の資金力と子の体力がモノをいいます。

エンハンスメントが、まるでプチ美容整形のように、脳のプチ整形として気軽に捉えられるようになれば、副産物も生じます。数世代後には、脳機能のバグのために自立の難しい子を持つ親たちは、自分亡き後の子の生活を憂う必要がなくなるかもしれません。

大量データを高速処理できる脳と、生命科学の発展は、ヒトの出生の方法まで変えていきます。

年配の人々の中には、現在の若年層の草食化を、少子化と関連付けて憂える人もいます。しかし、筆者は、そうした憂いを新しいタイプの人類に向けることは、的外れのような気がします。

草食化は起こるべくして起こっている、進化の過程なのではないでしょうか。脳幹の力に支配されるよりも、大脳新皮質を進化させようとする、DNAレベルの何らかの意志が、技術進化をイベントハンドラとして起動したのではないでしょうか。

我々の子孫は、これから宇宙へ出ていきます。彼らは、宇宙の暮らしに適応すべく進化するでしょう。その脳と身体は───脳も身体の一部ですが───我々旧人類とは異なる原風景にもとづく新しい価値観を構築し、彼らと宇宙間通信しながら地球に生きる我々もまた、わずかながら変わっていくでしょう。

新しい機器が登場する度、華々しい発売イベントや、ベンダー間競争や、日常生活上における利便性、ビジネス上の変化が叫ばれ、ユーザーはそれらの情報のみに目を向けがちです。そして次の新しい機器が登場すると、一昔前の機器は泡沫のように忘れ去られてしまいます。

しかしそれは、歴史の上ではじけただけの泡ではありません。泡の浮かぶ川の流れをたどって遠くを眺めれば、我々の行くすえが、はるか彼方に浮かび上がって見えるでしょう。

Microsoft Surfaceは単なる小型軽量化PCではありません。Microsoft Kinect は、単なる新しいインタフェース機器ではありません。ぜひその先にあるものを、想像してみてください。

※本連載はあくまで筆者の個人的な考えを述べたものであり、Microsoft社の公式見解にもとづくものではありません。


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【薬師寺聖/個人事業所 セイザインデザイン】
個人事業所 < http://www.seindesign.net/ >
< infosei@seindesign.net >

絵・音・詩・文・コードを扱うフリーのクリエーター、思索家。エンジニアリング会社を経てデザイン事務所に勤務後、XML1.0勧告翌月に退職して開業。科学技術や医療・福祉分野のXML案件を手がけながら、書籍や記事を多数執筆(PROJECT KySS名義)。現在は、受託業務から独自開発にシフト中。Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2013)


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編集後記(03/25)

●近藤誠「医者に殺されない47の心得 医療と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法」を読む(アスコム、2012)。筆者は「医者はヤクザや強盗よりタチが悪い」なんて堂々と言う医者である。「医者は患者を脅してお金を払ってもらった上に、しょっちゅう体を不自由にさせたり、死なせたりする」。こんな同業者を怒らせることばかり言ってきたから、医療業界でバッシングされるのは当然で、30年も慶応大学医学部の講師のままである(こういう不都合な医師を排除しないでいる慶応大学も度量が広い)。

筆者は、がん治療における先駆的な意見を一般の人にもわかりやすく発表(がんは切らずになおる。抗がん剤は効かない。健診は百害あって一利なし。がんは原則として放置したほうがいい、など)し、ひとりで(村八分に腹をくくり)啓蒙を続けてきた功績をたたえられ、2012年に「第60回菊池寛賞」を受賞した。この本は、ムダに苦しむだけの治療や、悲惨な医療死からのがれる心得をまとめたものだ。3/25付オリコン[本」ランキンングの首位に立つ。

その「47の心得」の項目(見出し)は半分以上がサイトに上がっている。どうせなら全部出せばいいのにと思ったが、これも心得のひとつかい? というようなのもある。この本の構成は編集者によるものだと思う。47という数字を出すための、水増し編集テクニックである。まあ、それも悪くないが。とくに大事なところはゴチックで表記なのもいい。だが、100歳まで元気に生きる「食」の心得、100歳まで元気に生きる「暮らし」の心得、なんて章立てはいやだな。100歳まで生きたいなんて、身勝手で迷惑な人だとわたしは思う。

「今の日本で大人がかかる病気はたいてい『老化現象』で医者にかかったり、薬を飲んだりして治せるものではない」「多少の痛みや不自由は『自然の摂理だ、仕方がない。がまん』ととらえて仲よくつきあっていく」などを読むと、とても気楽になれる。高年齢者は読むべし。筆者が絶対の自信を持って言えることは「病院によく行く人ほど、薬や治療で命を縮めやすい」ということである。巻末の、倒れて病院に連れ込まれたとき用の「近藤誠のリビングウィル」がすばらしい。そっくりコピーさせて貰います。これで楽に死ねる。(柴田)

< http://www.ascom-inc.jp/book/9784776207641.html >
アスコムからの内容紹介
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4776207648/dgcrcom-22/ >
近藤誠「医者に殺されない47の心得」


●週刊ロビ。4号と5号が来たよ。2号は4月上旬、3号は4月中旬に届く予定。発送お知らせメールを登録しているが、メール到着20分後に郵便局の人が届けてくれるよ......。追跡番号で検索したら、引き渡し自体は前日の夜中なのになぁ。今後は隔週日曜日の朝は注意しておこうっと。

定期購読から生まれる恋って話あるのかな。配達してくれたのが創刊号と同じ人で、ああこれから定期的にこの人に会うんだわと思ってしまったのだ。本家は隔週配達だけど、毎週届けてくれる先もあるみたい。まぁ、最初に考えたのは、ロビ購入者と知られてしまっているんだなぁということと、八百屋お七というキーワードではあった(汗)。たとえば佐川男子に恋した女の子は通販マニアになるのだろうか。

友人(女性)が買うかもしれない。彼女も続ける自信やらはなく、でもCMを見てから気になっていたらしい。ロビは、私のまわりの女性に受けがいい。で、私が購入に踏み切った理由やら何やら説明したら、心が揺らいでいるようだ。彼女も購入しなくて済む理由を探していたに違いないのに。 (hammer.mule)

< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4864101825/dgcrcom-22/ >
うちに来るのは佐川女子、ヤマト男性、郵便(ペリカン)男性